(読み)ギ

デジタル大辞泉 「義」の意味・読み・例文・類語

ぎ【義】[漢字項目]

[音](呉)(漢)
学習漢字]5年
人のふみ行うべき正しい筋道。「義務義理恩義信義仁義正義大義忠義道義徳義不義
私欲を捨て、公共のためにすること。「義塾義倉義捐金ぎえんきん
意味。主旨。「意義奥義疑義教義原義語義広義講義字義多義定義本義名義
血縁でなく約束でつながった関係。「義姉義父義兄弟
実物のかわり。仮の。「義眼義歯義足
[名のり]あき・いさ・しげ・たけ・ただし・ちか・つとむ・とも・のり・みち・よし・より

ぎ【義】

儒教における五常の一。人として守るべき正しい道。道義。「仁・・礼・智・信」
道理条理
意味。意義。「読書百遍ひゃっぺんおのずかあらわる」
教え。教義。
血縁上のものでない義理の関係。「を結ぶ」
[類語]道義正義人道人倫大道仁義意味意義概念いいこころ語意語義字義文意含意含み意味合いニュアンス語感本義広義狭義

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精選版 日本国語大辞典 「義」の意味・読み・例文・類語

ぎ【義】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 五常(仁・義・礼・智・信)の一つ。他人に対して守るべき正しい道。物事の道理にかなっていること。道義。
    1. [初出の実例]「命をかろんじ、義をおもんじて、一戦の功をはげますといへども」(出典:平家物語(13C前)七)
    2. [その他の文献]〔書経‐仲虺之誥〕
  3. 道理。条理。理由ある事。
    1. [初出の実例]「誠に其の義ありとて、打っ立ちければ」(出典:保元物語(1220頃か)上)
  4. 意味。意義。わけ。
    1. [初出の実例]「題の義おもふ心を句の中にくばりこむる也」(出典:名語記(1275)五)
    2. [その他の文献]〔大学章句〕
  5. 趣旨。趣意。すじ。
    1. [初出の実例]「我も此の義を思ひつる処に、いしくも申したり」(出典:太平記(14C後)一五)
  6. 教説。教義。教え。
    1. [初出の実例]「さきざき見さし給へる文どもの深きなど、阿闍梨も請じおろして、ぎなどいはせ給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)橋姫)
  7. 仏教でいう「自力」を存在せしめる主体的な心のはたらき。
    1. [初出の実例]「義(ギ)といふは行者のおのおののはからふこころなり」(出典:尊号真像銘文(1255)末)
  8. キリスト教で、神の属性としての正しさ。また、神を信じることによって与えられる人間の正しいあり方。
  9. ある関係を本質として持たないものが、その関係を結ぶこと。親子、兄弟など親族関係に用いる場合が多い。義理。
    1. [初出の実例]「今此(この)乙女の逃げたりとも、又再会の時ありて、義(ギ)の姉妹(あねいもと)となるものぞ」(出典:人情本・貞操婦女八賢誌(1834‐48頃)初)

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普及版 字通 「義」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 13画

[字音]
[字訓] ただしい・よい

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
羊+我。我は鋸(のこぎり)の象形。羊に鋸を加えて截り、犠牲とする。その牲体に何らの欠陥もなく、神意にかなうことを「義(ただ)し」という。〔説文〕十二下に「己の威儀なり」とするが、もと牲体の完全であることをいう。羲はその下体が截られて下に垂れている形。金文の〔師鼎(しきてい)〕に「義(よろ)しく~すべし」という語法がみえ、宜と通用する。宜は且(そ)(俎)上に肉をおく形。神に供薦し、神意にかなう意で、義と声義が通ずる。

[訓義]
1. ただしい、よい、神意にかなう。
2. ただしい道、みち、のり。
3. 法則、道理、つとめ、義務。
4. 宜と通じ、よい、便宜、すぐれる。
5. 儀と通じ、威儀。

[古辞書の訓]
名義抄〕義 ヨシ・ヨロシ・ノリ・アマル 〔立〕義 コトワリ・コハシ・ノリ・アマシ・ヨシ・サイハヒナル・ムベナリ

[声系]
〔説文〕に義声として議・羲・儀、羲声として犧(犠)など九字を収める。義・羲・犧は犠牲に関する字。議・儀は祭祀儀礼に関する字。(艤)は儀装の意であろう。

[語系]
義・宜ngiaiは同声。互訓の例が多い。義は犠牲、宜は俎肉を供薦して、神意にかなう意である。ゆえに義正・適正の意となる。

[熟語]
義意・義役・義捐・義園・義解・義・義感・義旗・義気・義旧・義居・義挙・義・義訓・義軍・義髻・義犬・義故・義功・義行・義穀・義作・義士・義子・義旨・義志・義師・義嗣・義試・義児・義社・義舎・義趣・義衆・義塾・義漿・義心・義人・義髄・義井・義節・義説・義絶・義戦・義銭・義・義荘・義倉・義贈・義胆・義男・義塚・義帝・義田・義殿・義度・義徳・義夫・義婦・義風・義憤・義兵・義母・義方・義法・義民・義問・義勇・義理・義旅・義廩・義類・義例・義烈・義路
[下接語]
異義・意義・一義・引義・義・演義・奥義・音義・恩義・起義・棄義・疑義・狭義・教義・訓義・経義・結義・古義・語義・公義・広義・弘義・行義・孝義・高義・講義・鴻義・旨義・志義・私義・詩義・字義・事義・時義・辞義・失義・質義・釈義・主義・首義・秀義・衆義・集義・順義・彰義・仗義・情義・信義・深義・新義・仁義・正義・声義・清義・精義・節義・義・存義・大義・談義・忠義・通義・定義・転義・同義・道義・徳義・篤義・難義・非義・秘義・不義・扶義・服義・奮義・文義・慕義・法義・謀義・本義・名義・明義・勇義・要義・理義・六義・律義・礼義・論義・和義

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改訂新版 世界大百科事典 「義」の意味・わかりやすい解説

義 (ぎ)

中国思想の概念。〈義は宜(ぎ)(よろし)なり〉(《中庸》など)というのが伝統的な定義。ことがらの妥当性をいう。儒教では五常(仁義礼智信)のひとつとして重視され,しばしば〈仁義〉〈礼義〉と熟して使われるが,対他的,社会的行為がある一定の準則にかなっていることをいう。《礼記(らいき)》礼運篇では人の義として,父の慈,子の孝,兄の良,弟の弟(てい)(目上の者に対する従順さ),夫の義,婦の聴(聴き従う),長の恵,幼の順,君の仁,臣の忠の十義を列挙する。朱子学では,仁を温和慈愛の道理とし,義を宜としたうえで断制裁割(利刀で物を断ち切るようにけじめをつける)の道理とする。つまり,区別された個々のことがらに宿る妥当性だというのである。〈名義〉〈字義〉〈義疏(ぎそ)〉などという場合の義(言葉のもつ意味)も上の義とつながっていよう。義はほかに公共性や慈善性を意味する場合がある。〈義倉〉(飢饉用の公共の米倉),〈義舎〉(旅人のための公共宿舎),〈義冢(ぎちよう)〉(無縁仏のための共同墓地),〈義荘〉(一族の貧者のための田地)などの語がそれをあらわす。また,〈義父(養父)〉,〈義児(養子)〉,〈義兄弟〉のような言葉もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「義」の意味・わかりやすい解説


中国の思想界では絶えず利と対比される概念で、正義、人としてなすべきことの基準の意。『論語』里仁篇(りじんへん)の「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る」のことばに代表されるように、儒家は利を排して義を選ぶ。孟子(孟軻(もうか))は極端に利を排し、ときには生命と義とを比較して、生命を捨てても義を選ぶと断言する。利に対して容認的態度をとる荀子(じゅんし)でも、義を優先させる点では同じである。

 これに対して墨家(ぼくか)は「義とは利なり」と定義し、義とは人民の大利だと考える。これは、儒家は利を私利の意に、墨家は公利の意にとるためである。宋(そう)代の道学では義すなわち公、利すなわち私として両者を峻別(しゅんべつ)し、義を著しく重視するようになる。しかし南宋以後、利を重視する考え方も現れ、しだいに義と利をあわせ重視する考えが支配的になってくる。また義と利を政治の治乱と結び付けて、義を重視すれば治まり、利に走ると混乱に陥るという政治思想は、戦国時代の孟子以来、儒家的思想家に継承されている。

[澤田多喜男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「義」の意味・わかりやすい解説



dikaiosynē theou; justitia Dei

ユダヤ教キリスト教においては「神の義」の意味で用いられる。この際,義は普通の倫理的な意味における「正義」とは異なり,唯一神の属性であり,それにのっとることこそ人間の義なる (正しき) 生活の規範とされた。旧約聖書では神の義は神ヤハウェの動的啓示的行為として現れ,しいたげられたユダヤ民族はそこに示された神の意志に服従し,律法を遵守するとき民が救われると考えられた (イザヤ書 45・8,51・5~7など) 。新約聖書における義の観念もユダヤ教の義の延長上にあるが,パウロにより徹底的に深化され,律法によらずキリストを信じることにより,恩恵的に与えられるものとされた (ローマ書4・11,13など) 。この信仰による義においては,人間の生は「義の武器として神にささげ」 (同6・13) られたものとみなされる。このように信仰によって義とされることを義認あるいは義化 dikaiosis,justificatioという。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【赤穂浪士】より

…1701年(元禄14)3月14日に,江戸城本丸松之廊下で播磨赤穂城主(5万3500石)浅野内匠頭長矩(ながのり)が高家肝煎(きもいり)(旗本)であった吉良上野介義央(よしなか)に突然斬りかかって傷を負わせた事件があった。この日は幕府の年賀に対する答礼のため京都から遣わされた勅使・院使に対して,将軍徳川綱吉の挨拶が白書院で行われるはずであったが,事件は勅使らの到着直前に起こった。…

※「義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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