デジタル大辞泉
「義」の意味・読み・例文・類語
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ぎ【義】
- 〘 名詞 〙
- ① 五常(仁・義・礼・智・信)の一つ。他人に対して守るべき正しい道。物事の道理にかなっていること。道義。
- [初出の実例]「命をかろんじ、義をおもんじて、一戦の功をはげますといへども」(出典:平家物語(13C前)七)
- [その他の文献]〔書経‐仲虺之誥〕
- ② 道理。条理。理由ある事。
- [初出の実例]「誠に其の義ありとて、打っ立ちければ」(出典:保元物語(1220頃か)上)
- ③ 意味。意義。わけ。
- [初出の実例]「題の義おもふ心を句の中にくばりこむる也」(出典:名語記(1275)五)
- [その他の文献]〔大学章句〕
- ④ 趣旨。趣意。すじ。
- [初出の実例]「我も此の義を思ひつる処に、いしくも申したり」(出典:太平記(14C後)一五)
- ⑤ 教説。教義。教え。
- [初出の実例]「さきざき見さし給へる文どもの深きなど、阿闍梨も請じおろして、ぎなどいはせ給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)橋姫)
- ⑥ 仏教でいう「自力」を存在せしめる主体的な心のはたらき。
- [初出の実例]「義(ギ)といふは行者のおのおののはからふこころなり」(出典:尊号真像銘文(1255)末)
- ⑦ キリスト教で、神の属性としての正しさ。また、神を信じることによって与えられる人間の正しいあり方。
- ⑧ ある関係を本質として持たないものが、その関係を結ぶこと。親子、兄弟など親族関係に用いる場合が多い。義理。
- [初出の実例]「今此(この)乙女の逃げたりとも、又再会の時ありて、義(ギ)の姉妹(あねいもと)となるものぞ」(出典:人情本・貞操婦女八賢誌(1834‐48頃)初)
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普及版 字通
「義」の読み・字形・画数・意味
義
常用漢字 13画
[字音] ギ
[字訓] ただしい・よい
[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[字形] 会意
羊+我。我は鋸(のこぎり)の象形。羊に鋸を加えて截り、犠牲とする。その牲体に何らの欠陥もなく、神意にかなうことを「義(ただ)し」という。〔説文〕十二下に「己の威儀なり」とするが、もと牲体の完全であることをいう。羲はその下体が截られて下に垂れている形。金文の〔師鼎(しきてい)〕に「義(よろ)しく~すべし」という語法がみえ、宜と通用する。宜は且(そ)(俎)上に肉をおく形。神に供薦し、神意にかなう意で、義と声義が通ずる。
[訓義]
1. ただしい、よい、神意にかなう。
2. ただしい道、みち、のり。
3. 法則、道理、つとめ、義務。
4. 宜と通じ、よい、便宜、すぐれる。
5. 儀と通じ、威儀。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕義 ヨシ・ヨロシ・ノリ・アマル 〔立〕義 コトワリ・コハシ・ノリ・アマシ・ヨシ・サイハヒナル・ムベナリ
[声系]
〔説文〕に義声として議・羲・儀、羲声として犧(犠)など九字を収める。義・羲・犧は犠牲に関する字。議・儀は祭祀儀礼に関する字。(艤)は儀装の意であろう。
[語系]
義・宜ngiaiは同声。互訓の例が多い。義は犠牲、宜は俎肉を供薦して、神意にかなう意である。ゆえに義正・適正の意となる。
[熟語]
義意▶・義役▶・義捐▶・義園▶・義解▶・義▶・義感▶・義旗▶・義気▶・義旧▶・義居▶・義挙▶・義▶・義訓▶・義軍▶・義髻▶・義犬▶・義故▶・義功▶・義行▶・義穀▶・義作▶・義士▶・義子▶・義旨▶・義志▶・義師▶・義嗣▶・義試▶・義児▶・義社▶・義舎▶・義趣▶・義衆▶・義塾▶・義漿▶・義心▶・義人▶・義髄▶・義井▶・義節▶・義説▶・義絶▶・義戦▶・義銭▶・義▶・義荘▶・義倉▶・義贈▶・義胆▶・義男▶・義塚▶・義帝▶・義田▶・義殿▶・義度▶・義徳▶・義夫▶・義婦▶・義風▶・義憤▶・義兵▶・義母▶・義方▶・義法▶・義民▶・義問▶・義勇▶・義理▶・義旅▶・義廩▶・義類▶・義例▶・義烈▶・義路▶
[下接語]
異義・意義・一義・引義・義・演義・奥義・音義・恩義・起義・棄義・疑義・狭義・教義・訓義・経義・結義・古義・語義・公義・広義・弘義・行義・孝義・高義・講義・鴻義・旨義・志義・私義・詩義・字義・事義・時義・辞義・失義・質義・釈義・主義・首義・秀義・衆義・集義・順義・彰義・仗義・情義・信義・深義・新義・仁義・正義・声義・清義・精義・節義・義・存義・大義・談義・忠義・通義・定義・転義・同義・道義・徳義・篤義・難義・非義・秘義・不義・扶義・服義・奮義・文義・慕義・法義・謀義・本義・名義・明義・勇義・要義・理義・六義・律義・礼義・論義・和義
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義 (ぎ)
yì
中国思想の概念。〈義は宜(ぎ)(よろし)なり〉(《中庸》など)というのが伝統的な定義。ことがらの妥当性をいう。儒教では五常(仁義礼智信)のひとつとして重視され,しばしば〈仁義〉〈礼義〉と熟して使われるが,対他的,社会的行為がある一定の準則にかなっていることをいう。《礼記(らいき)》礼運篇では人の義として,父の慈,子の孝,兄の良,弟の弟(てい)(目上の者に対する従順さ),夫の義,婦の聴(聴き従う),長の恵,幼の順,君の仁,臣の忠の十義を列挙する。朱子学では,仁を温和慈愛の道理とし,義を宜としたうえで断制裁割(利刀で物を断ち切るようにけじめをつける)の道理とする。つまり,区別された個々のことがらに宿る妥当性だというのである。〈名義〉〈字義〉〈義疏(ぎそ)〉などという場合の義(言葉のもつ意味)も上の義とつながっていよう。義はほかに公共性や慈善性を意味する場合がある。〈義倉〉(飢饉用の公共の米倉),〈義舎〉(旅人のための公共宿舎),〈義冢(ぎちよう)〉(無縁仏のための共同墓地),〈義荘〉(一族の貧者のための田地)などの語がそれをあらわす。また,〈義父(養父)〉,〈義児(養子)〉,〈義兄弟〉のような言葉もある。
執筆者:三浦 国雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
義
ぎ
中国の思想界では絶えず利と対比される概念で、正義、人としてなすべきことの基準の意。『論語』里仁篇(りじんへん)の「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る」のことばに代表されるように、儒家は利を排して義を選ぶ。孟子(孟軻(もうか))は極端に利を排し、ときには生命と義とを比較して、生命を捨てても義を選ぶと断言する。利に対して容認的態度をとる荀子(じゅんし)でも、義を優先させる点では同じである。
これに対して墨家(ぼくか)は「義とは利なり」と定義し、義とは人民の大利だと考える。これは、儒家は利を私利の意に、墨家は公利の意にとるためである。宋(そう)代の道学では義すなわち公、利すなわち私として両者を峻別(しゅんべつ)し、義を著しく重視するようになる。しかし南宋以後、利を重視する考え方も現れ、しだいに義と利をあわせ重視する考えが支配的になってくる。また義と利を政治の治乱と結び付けて、義を重視すれば治まり、利に走ると混乱に陥るという政治思想は、戦国時代の孟子以来、儒家的思想家に継承されている。
[澤田多喜男]
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義
ぎ
dikaiosynē theou; justitia Dei
ユダヤ教,キリスト教においては「神の義」の意味で用いられる。この際,義は普通の倫理的な意味における「正義」とは異なり,唯一神の属性であり,それにのっとることこそ人間の義なる (正しき) 生活の規範とされた。旧約聖書では神の義は神ヤハウェの動的啓示的行為として現れ,しいたげられたユダヤ民族はそこに示された神の意志に服従し,律法を遵守するとき民が救われると考えられた (イザヤ書 45・8,51・5~7など) 。新約聖書における義の観念もユダヤ教の義の延長上にあるが,パウロにより徹底的に深化され,律法によらずキリストを信じることにより,恩恵的に与えられるものとされた (ローマ書4・11,13など) 。この信仰による義においては,人間の生は「義の武器として神にささげ」 (同6・13) られたものとみなされる。このように信仰によって義とされることを義認あるいは義化 dikaiosis,justificatioという。
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世界大百科事典(旧版)内の義の言及
【赤穂浪士】より
…1701年(元禄14)3月14日に,江戸城本丸松之廊下で播磨赤穂城主(5万3500石)浅野内匠頭長矩(ながのり)が高家肝煎(きもいり)(旗本)であった吉良上野介義央(よしなか)に突然斬りかかって傷を負わせた事件があった。この日は幕府の年賀に対する答礼のため京都から遣わされた勅使・院使に対して,将軍徳川綱吉の挨拶が白書院で行われるはずであったが,事件は勅使らの到着直前に起こった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」