しこ【醜】
〘名〙
① (特に人について) 強く恐ろしいこと。強く頑丈なこと。「
古事記‐上」の「
大国主神。亦の名は大穴牟遅神〈略〉と謂ひ、亦の名は
葦原色許男神(あしはらシコをのかみ)〈略〉と謂ひ」に見える「葦原色許男」の「色許」は、
神名の一部として用いられた例。
② 醜悪なこと。けがらわしいこと。多く、接頭語的、または「しこの」「しこつ」の形で、ののしったりへりくだったりする場合に用いられる。「
醜女(しこめ)」「
醜草(しこぐさ)」「
醜手(しこて)」「醜
(しこ)ほととぎす」「
醜屋(しこや)」「醜
(しこ)つ翁
(おきな)」「醜
(しこ)の御楯
(みたて)」など。
しゅう シウ【醜】
〘名〙
① (形動) 顔だちや姿のみにくいこと。美しくないさま。また、その人。
※
花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一「幸にして汝が
面貌、醜
(シウ)ならざれば」
※妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)六「もしは好、もしは醜(シウ)(〈注〉アシキ)、もしは美、もしは不美」
しこめ・し【醜】
※
書紀(720)神代下(兼夏本訓)「凶目杵
(シコメキ)国
(くに)歟
(か)と宣ひて」
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デジタル大辞泉
「醜」の意味・読み・例文・類語
しこ【▽醜】
(多く接頭語的に、また「しこの」の形で用いて)醜悪なもの、憎みののしるべきものなどにいう。また、卑下の気持ちを込めて用いることもある。「醜女」「醜草」「醜の御楯」
[補説]本来は、他に、強く恐ろしいことの意もあり、神名などに残る。→しこお2
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醜
しゅう
ugliness; das Hässliche
美学上,美と相関的に扱われる概念。普通は反美的なものとされ,美的形成を拒み,作品の内容と形式を乖離させて,不快感をもよおさせるものをいう。 1853年 K.ローゼンクランツが『醜なるものの美学』 Ästhetik des Hässlichenにおいて醜を美的範疇の一つとして以来,美をきわだたせる補助手段 (概念) としてその積極的価値が論じられている。しかし,これらは作品を形式と内容に分け,内容あるいは素材の醜から類推的に行われる判断であり,美的判断に別の判断が介入しているといえる。作品を不可分な統一体としてみる B.クローチェなどの美学では,作品であるかぎり美であり,醜は論外とされる。
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しゅう【醜 ugliness】
美に対立する概念である。だが美には,ふつう〈美しい〉と連想される狭義の美と,美的価値すべてをつつむ広義の美とが区別される。対立は前者に対してのことであり,感性および精神にかかわる両面的価値の総称たる後者においては,醜は美学や芸術研究における重要な論題である。醜の形式的特徴は無形態や歪曲や構成破壊と指摘されるが,いずれにせよ力強く現れてはじめて醜と認められる。狭義の美は人々の仰ぐ積極的価値であり,これと対立する以上,醜は消極的で否定的となるが,しかしその現れは美が薄れて弱まった状態どころでなく,むしろ美を圧伏するほどの迫力をみなぎらせている。
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世界大百科事典内の醜の言及
【美】より
…一瞬きらめいてたちまち消えてゆくはかなさも美の特性であり,ここから美は私のあずかり知らぬところという態度も生じようが,ästhetischの意味での美ならば,上記の規定からこれは人間の必ずかかわらざるをえぬ価値である。また醜は美の反対概念であるが,これが醜として成り立つには感性を強烈に刺激する力をもたねばならず,したがって精神的価値としては否定方向をとるとはいえ醜さえも〈美的なるもの〉には含まれる。こうして〈美的〉なる概念の確立後,美については狭義の美(純粋美beauty,Schönheit)と広義の美(美的なるもの)とが語られることになった。…
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