デジタル大辞泉 「醜」の意味・読み・例文・類語
しゅう〔シウ〕【醜】
1 みにくいこと。また、そのさま。
「日本服には美な運動も見えるけれど―な運動も見える」〈子規・墨汁一滴〉
2 はじ。「
[類語]見苦しい・みっともない・はしたない・醜悪・

(酉)(ゆう)。
は
ともと同字であった。〔説文〕九上に「惡(にく)むべきなり」とし、
声とする。金文の図象に「亞醜形」とよばれるものがあって、亞(亜)字形の中に醜の字形を加える。鬼の部分は鬼の形ではなく、礼冠を著けた人の形で、
に従うのは鬯酌(ちようしやく)(礼酒を酌む)の意であるらしい。卜辞に、邑に祟(たたり)があると考えられるとき、醜の儀礼を行うことを卜するものがあり、その鬯酌によって祓うことが行われたのであろう。
と同声であることからいえば、呪詛に関する意をもつ字である。また州は醜竅(しゆうきよう)(尻の穴)で、醜にもその意がある。〔孟子、公孫丑下〕「今、天下、地醜(ひと)しく、
齊(ひと)し」は、おそらく儔の仮借義であろう。〔詩〕に「執訊(しつじん)
醜(くわくしう)」「醜
」「戎醜」「醜
」「群醜」、また〔礼記〕に「醜夷」「醜
」などの語がある。また讐と声義の通ずるところがある。
(い)ふ、
泉の鬼なり。今世の人、小兒を
れしめんが爲に許々女(ここめ)と
ふは、此の語の訛(なま)れるなり 〔名義抄〕醜 カタナシ・ハヂ・モロモロ・ミニクシ・アシ 〔字鏡集〕醜 タノシ・ココメ・カタクナシ・ハナツ・モロモロ・ミニクシ・ツタナシ・アシ・ニクム
(祝)tjiukは声近く、醜は呪祝のとき鬯酌する形。ゆえに醜悪などの意となる。
tjiu、
tiuもまた呪祝に関する字。儔儕の意は讐zjiu、儔diuと通仮の用法であり、また醜悪・醜竅の意は
(臭)thjiuと同声であり、また州tjiu(醜竅の意)は声近くして通用の義である。
▶・醜生▶・醜声▶・醜石▶・醜拙▶・醜
▶・醜扇▶・醜俗▶・醜態▶・醜恥▶・醜詆▶・醜徒▶・醜毒▶・醜比▶・醜婦▶・醜誣▶・醜聞▶・醜末▶・醜名▶・醜虜▶・醜類▶・醜
▶・醜麗▶・醜陋▶・醜老▶・醜穢▶
醜・好醜・詬醜・黒醜・戎醜・衰醜・壮醜・美醜・俘醜・貌醜・余醜・虜醜・類醜・老醜出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
美に対立する概念である。だが美には,ふつう〈美しい〉と連想される狭義の美と,美的価値すべてをつつむ広義の美とが区別される。対立は前者に対してのことであり,感性および精神にかかわる両面的価値の総称たる後者においては,醜は美学や芸術研究における重要な論題である。醜の形式的特徴は無形態や歪曲や構成破壊と指摘されるが,いずれにせよ力強く現れてはじめて醜と認められる。狭義の美は人々の仰ぐ積極的価値であり,これと対立する以上,醜は消極的で否定的となるが,しかしその現れは美が薄れて弱まった状態どころでなく,むしろ美を圧伏するほどの迫力をみなぎらせている。消極的価値ながら積極的現象というのが醜の特質である。美に対するこのようなあり方は,古来,善に対する悪,形式に対する素材,存在に対する無などと類比的に醜を扱う伝統を培ってきた。善や形式や存在の圧倒的優位を信奉するところでは,醜は美の引立て役,美的印象全体の生動感を強める刺激剤と位置づけられるのが常であり,主要な美的範疇たる崇高や悲壮や滑稽に混入するものとして論じられる。また特性美や近年ではグロテスクとの相関性も注目されている。
芸術にすすんで醜を登場させたことは近代の特質に数えられる。ルネサンスの古典美尊重をみたのち,新たな表現をさぐるマニエリスムやバロックの時代に醜はその勢いをみせはじめ,やがて,写実主義とか自然主義の美術や文芸は真理探究を唱え,醜悪な素材をも直視して表現にもたらした。これと並行しつつ〈芸術のための芸術〉を謳歌し,ひいてはデカダンスを強調する一派は,不快,悪,虚偽,背信など醜の相貌いちじるしい精神的内容にまで立ち入って,これを独特の魅惑につつんで呈示した。20世紀に入るや諸流派の激動を経て美術における醜の表現は日常事と化し,文芸でも世界を不条理とみる立場では醜を美と称揚する者さえ現れている。醜を主要な美的範疇と数えるべきか否か,芸術の現況に照らしてみると,醜はいよいよ切実な哲学的主題の一つである。
→美
執筆者:細井 雄介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…一瞬きらめいてたちまち消えてゆくはかなさも美の特性であり,ここから美は私のあずかり知らぬところという態度も生じようが,ästhetischの意味での美ならば,上記の規定からこれは人間の必ずかかわらざるをえぬ価値である。また醜は美の反対概念であるが,これが醜として成り立つには感性を強烈に刺激する力をもたねばならず,したがって精神的価値としては否定方向をとるとはいえ醜さえも〈美的なるもの〉には含まれる。こうして〈美的〉なる概念の確立後,美については狭義の美(純粋美beauty,Schönheit)と広義の美(美的なるもの)とが語られることになった。…
※「醜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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