静か・閑か(読み)しずか

精選版 日本国語大辞典 「静か・閑か」の意味・読み・例文・類語

しず‐か しづ‥【静か・閑か】

(「か」は接尾語)
[1] 〘形動〙
① 止まって動かないさま。
書紀(720)神代上(兼方本訓)「是を以て幽宮(かくれみや)を淡路之洲(あはちのくに)に構(つく)りて寂然(シツカ)に長隠(なかくかくれ)ましき」
※百法顕幽抄平安中期点(900頃)「生无く滅无く湛(シヅカナル)こと虚空の若し
② あわただしくないさま。
(イ) 落ち着いているさま。あわてないさまB
※書紀(720)継体元年正月(前田本訓)「是に、男大迹天皇晏然(シツカニ)自若(つねのことくし)胡床(あくら)に踞坐(ましま)す」
太平記(14C後)一一「一首の歌を詠じ、十念高らかに唱へて、閑(シヅカ)に首をぞ打(うた)せける」
(ロ) いそがないさま。ゆっくり。
※千里集(894)「しつかなる時をもとめていづくにか花のあたりをともに尋ねん」
※多武峰少将物語(10C中)「さらばしつかに参らむ」
※人情本・春色辰巳園(1833‐35)後「『はやくもう一ぺん行って来な』『なにしづかでもいいやアな』」
③ さわがしくないさま。わずらわしくないさま。
(イ) 安らかで穏やかなさま。平穏であるさま。のどか。
源氏(1001‐14頃)薄雲「天変しきりにさとし、世中しつかならぬは」
方丈記(1212)「ただしづかなるを望みとし、憂へ無きをたのしみとす」
徒然草(1331頃)一七〇「身も草臥(くたび)れ、心も閑(しづか)ならず」
(ロ) うるさい物音の聞こえないさま。やかましくないさま。ひっそり。
※続日本紀‐天平一五年(743)五月三日・宣命「上下を斉(ととの)へ和らげて、无動(うごきな)く静加爾(しづカニ)令有(あらしむる)には」
蜻蛉(974頃)下「午時(むまとき)許より雨になりて、しづかにふりくらすまま」
※徒然草(1331頃)一三七「しづかなる山の奥」
(ハ) 心が清くやすらかなさま。
※書紀(720)白雉元年二月(北野本訓)「又王者の清素(シツカナル)ときは則ち山に白雉出づ」
※徒然草(1331頃)五八「心は縁にひかれて移るものなれば、閑ならでは道は行じがたし」
④ (禅・定・禅定を静慮と訳すところから「定」を「静(じょう)」にかけて訓よみしたもの。「定」と同義に用いる) 仏語。心の動揺をしずめて一つの対象に専注するさま。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)七「過を知り静を楽しび空閑に住し、諸根を念守して心寂(シツカ)に定せり」
[2]
[一] 「しずかごぜん(静御前)」のこと。
[二] 北海道最初の鉄道である幌内鉄道で活躍したテンダー式の一C機関車の名。義経号・弁慶号の姉妹機で明治一八年(一八八五)にアメリカから購入。現在は小樽市の北海道鉄道記念館に保存されている。
[3] 〘名〙 てきや・盗人仲間の隠語で、五をいう。
※落語・磯の白浪(1890)〈七代目土橋亭りう馬〉「清助さんが其品(それ)をまた他(わき)へ(シズカ)両に納めたと云ふので」
[補注]「しずむ(沈)」と同語源の語か。(一)④については「釈氏要覧‐下」に「静。能断金剛論云、定石静以禅者。説名寂静」とある。
しずか‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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