根(植物)(読み)ね

日本大百科全書(ニッポニカ)「根(植物)」の解説

根(植物)

維管束植物の基本器官の一つ。シダ植物、裸子植物、被子植物の植物体は、根・・葉の三つの基本器官からなる体制をもち、それらはそれぞれ特有の形態、機能、組織構成、発生様式を示す。ただし、なかにはシダ植物のマツバランのように、系統発生のうえで根をもつに至らない段階の植物もある。根は普通、植物体の地下部にあり、植物体の地上部を支持するとともに、地中の水分や無機塩類の吸収と地上部への輸送の働きを果たしている。根は、茎や葉と比べて、その形態や機能の変異は少ないが、それでもなお、さまざまな形態や機能に特殊化したものがある。

[西野栄正]

根の発生と成長

根は最初、(はい)発生中に幼根として分化するが、やがて、その先端部にある根端と、根端の周辺部にある細胞の増殖・分化によって成長を始める。このような胚から直接由来した根を第一次根とよび、裸子植物や双子葉植物では、主根としてまっすぐ地中深く伸長し、主根から分枝した側根、さらに側根から再分枝した側根などによって主根系とよばれる根系を形成する。しかし、シダ植物や単子葉植物では、第一次根はほとんど発達することがなく、最初の根より上の部分から比較的均一で細いひげ根とよばれる根をたくさん生じ、ひげ根系を形成する。

 根は、その先端部のもっとも若い部分からすこし隔たったところで分枝し、側根を生じることによって殖えていく。普通、根からは側根しか生じないが、ヒメスイバノウゼンカズラ、ニセアカシア、フジなどでは、自然状態で不定芽を生じ、栄養繁殖をする。根以外の器官である茎や葉から生じた根、および古い根から生じた根は不定根とよばれる。これに対して、通常の発生で生じた側根は定根とよばれる。

[西野栄正]

内部構造

根の内部構造は、茎と比べるとより単純であり、系統発生のうえからみてもより原始的である。これは、根が葉のような側生器官をつけないために節がなく、しかも軸器官であることにもよっている。一次組織からなる根の横断面を見ると、茎や葉と同様に三つの組織系、すなわち、表皮系の表皮、基本組織系の皮層、維管束組織系の維管束柱からなっている。維管束柱の内部には、があるものが多い。

(1)表皮 表皮は一層からなるが、根の先端付近の表皮細胞のうち、あるものは細長く糸状に外側へ伸長して根毛となる。根毛によって、根の表面積は著しく拡大し、水や無機養分の吸収に際しては主要な部分となる。若い根で吸収の働きをする部分をみると、非常に薄いがクチクラ層が存在する。熱帯のランや着生のサトイモ科植物では、多層となった表皮が死んだあとにも残り、根被とよばれる構造をつくる。根被は根を保護する役を果たしている。

(2)皮層 皮層はほとんどが柔組織からなり、細胞間隙(かんげき)に富んでいる。皮層の最内層は内皮とよばれる組織で、この細胞の接線面を除く細胞壁には、鉢巻状にカスパリー線とよばれるスベリン(木栓質)を含む部分があり、内皮細胞どうしはここで互いに強く接着している。また、内皮細胞の細胞膜もカスパリー線と強く結合している。このような特徴から、根毛などで吸収した水などが内部の維管束組織へ移動する際には、内皮が重要な働きをもっていると考えられている。

(3)維管束柱 維管束柱は内鞘(ないしょう)、木部篩部(しぶ)、および髄からなる。内鞘は外側にある一ないし数層の細胞層で、その内側には、木部と篩部とが交互に環状となって並んでいる。このような維管束柱を中心柱説(高等植物の基本構造に中心柱を置く考え方)では放射中心柱とよぶ。放射中心柱は、根の内部構造をもっともよく特徴づけるものである。木部は、その数によって、二原型、三原型、四原型、多原型などに区別される。多原型は、単子葉植物にもっとも普通にみられる。放射中心柱の個々の木部のうち、もっとも早く成熟するのは外側で、道管や仮道管は外側の原生木部では細く、内側の後生木部ではより太くなる。こうした外原型木部の構造は根の重要な特徴で、形成層によって二次肥大した根の場合でも、この構造はそのまま残るので、とくに注目されている。木部が中心部まで占めていない場合、中心部は髄とよばれ、柔組織または厚壁柔組織からなっている。

 木本などのように二次肥大する根では、木部と篩部の間を縫って環状に形成層がつくられ、内側に二次木部、外側に二次篩部となる組織ができる。こうした二次維管束組織の構成については、茎の場合と基本的に相違がない。また、表皮は、コルク形成層の活動後、周皮にとってかわられるし、側根は、内鞘の細胞が増殖して根端分裂組織を構成したあと成長し、皮層などを突き抜けて出てくる。このように内部の組織からの発生を内生的発生とよび、葉や腋芽(えきが)のように表層の細胞の増殖による外生的発生とは区別される。

 根の組織は、先端部の根冠に包まれた根端分裂組織の活動によってつくられる。根冠は、根端分裂組織から根の成長方向側に形成されていくが、土壌との衝突により次々と外側から破壊されるため、ほぼ一定の大きさを保っている。根端分裂組織より上部(地上側)には細胞の伸長が活発な部分があり、屈地性などの反応はここでおこる。さらにこの上部は、組織が分化・成熟する部分となり、根毛はここで形成される。側根の発生は、根毛の形成部分よりもさらに上部となる。

[西野栄正]

特殊化した根

根は普通、地中にあるが、地上にあるものは気根とよばれ、付着根、支柱根、呼吸根などに分けられる。このほか、特別な働きをもつ特殊化した根としては、寄生根貯蔵根、収縮根、菌根などがあげられる。寄生根は、寄生植物が宿主から栄養を得るために形成するもので、ヤドリギなどでは主根自身が寄生根となる。貯蔵根は、紡錘形や円錐(えんすい)形に肥大して貯蔵物質を蓄えるもので、サツマイモやダリアにみられる。収縮根は、とくに単子葉植物の球茎や鱗茎(りんけい)をつくる植物でよくみられ、根の収縮によって球茎などをより土中深く引っ張り込む。オニユリの鱗芽(むかご)は地上に落ちたあと、収縮根の働きで地中へ引き込まれていく。菌根は、皮層細胞内に菌類が入り込んだり、根端を包み込んだりして養分の供給が共生関係にある根をいう。同様に、菌類と共生して根にこぶをつくるものに根粒があり、マメ科植物の根でよく知られている。

[西野栄正]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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