カール(谷)(読み)かーる(英語表記)Kar ドイツ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カール(谷)」の意味・わかりやすい解説

カール(谷)
かーる
Kar ドイツ語

氷河侵食によって山稜(さんりょう)直下の谷頭部につくられる円形ないし馬蹄(ばてい)形の平面形をもつ谷。圏谷(けんこく)ともよばれる。切り立ったカール壁と、比較的緩やかな傾斜をもつカール底からなり、カール底は急なカール壁によって三方を囲まれる。カール底の末端では傾斜が急に変わり、下流に向かって階段状に急傾斜で落ち込む場合と、大きな傾斜の変化をもたずにカール底からそのまま氷食谷へ連続する場合とがある。カール底末端で傾斜が急変するときには、カール底が逆傾斜して末端に基盤岩の高まりをつくることが多い。この高まりは谷棚(たにだな)とよばれる。逆傾斜したカール底には、解氷後に湖がつくられる(カール底湖)。

 カールの成因については諸説があるが、氷河の表面より上方にそびえる急なカール壁で強力な凍結破砕作用が働き、カール壁を侵食・後退させること、および氷河底面での侵食作用によるカール底の掘り下げが重要視される。カール底はほぼ雪線(せっせん)の高さに形成されるので、その高度はカールがつくられた時期の雪線高度の復元に用いられる。カールは積雪量多く日射を受けにくい所にできやすいから、北半球では山脈北側東側に多い。日本では日高山脈日本アルプスの森林限界付近に、氷期につくられた多くのカール地形がみられる。

[小野有五]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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