忽・乍・儵(読み)たちまち

精選版 日本国語大辞典 「忽・乍・儵」の意味・読み・例文・類語

たち‐まち【忽・乍・儵】

〘副〙 (古くは多く「に」を伴って用いる)
① 動作がきわめて短い時間に行なわれるさまを示す。またたく間に。すぐ。
万葉(8C後)九・一七四〇「立ち走り 叫び袖振り 臥(こ)いまろび 足ずりしつつ 頓(たちまちに) 心消失せぬ 若かりし 膚も皺(しわ)みぬ 黒かりし 髪も白けぬ」
源氏(1001‐14頃)宿木「又たちまちの我心のみだれにまかせて、あながちなる心をつかひてのち心安くしもはあらざらむものから」
徒然草(1331頃)四九「はからざる病を受けて、忽にこの世を去らんとする時にこそ」
② ある動作や状態が、予期しないで突然起こるさまを示す。にわかに。急に。ふと。
※天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「普光寺僧栖玄徳〈略〉奄然(タチマチニ)坐化せり」
※春甫他宛一茶書簡‐文政三年(1820)一二月八日「あやしき菰にて家の四方をくるみ廻せば、忽、常闇の世界とはなれりけり」
③ 現実の様子をさし示す。実際に。現に。まさに。
今昔(1120頃か)六「汝が身は既に不浄に成りにたり。我が身忽に不浄に非ずと云へども、思えば亦、不浄也」
[語誌](1)中古の和文資料では類義の「にはかに」の方が多く用いられているが、中世和漢混淆文になると逆に「たちまちに」の方が多くなる。
(2)③の意味は「にはかに」にはなく、「今昔物語集」以降の説話に限られるようである。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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