恐ろしい(読み)オソロシイ

デジタル大辞泉 「恐ろしい」の意味・読み・例文・類語

おそろし・い【恐ろしい】

[形][文]おそろ・し[シク]《動詞「恐る」の形容詞化
危険を感じて、不安である。こわい。「―・い目にあう」「戦争になるのが―・い」「ほめるだけほめて後が―・い」
程度がはなはだしい。
㋐驚くほどすぐれている。はかりしれない。「―・く頭の回転が速い」「人の一念とは―・いものだ」
㋑驚きあきれるほどである。ひどい。「―・く寒い」「こんなことも知らないとは―・い」
[派生]おそろしがる[動ラ五(四)]おそろしげ[形動]おそろしさ[名]
[用法]おそろしい・こわい――「草原で恐ろしい毒蛇にあい、怖かった」「彼の恐ろしい考えを知って、怖くなった」のように用いる。それぞれの「恐ろしい」「怖い」を入れ換えるのは不自然である。◇「恐ろしい」は、「怖い」に比べて、より客観的に対象の危険性を表す。「怖い」は主観的な恐怖感を示す。「草原で恐ろしい蛇にあって」も「怖い」とは感じない場合もあるわけである。◇「恐ろしい」は、「日曜行楽地は恐ろしいばかりの人出だ」「習慣とは恐ろしいものだ」のように、程度がはなはだしいとか、驚くほどだ、ということを示す場合もある。この場合、「怖い」とはふつう言わない。「怖いほどの人出」と言えば、自分に危険が及びそうな、という主観的表現となる。
[類語](1怖いおっかない空恐ろしい物恐ろしいおどろおどろしい気味悪い不気味不安恐れる心配懸念危惧きぐ危懼きく疑懼ぎく恐れ胸騒ぎ気がかり心がかり不安心心細い心許こころもとない憂い危なっかしいおぼつかない/(2とても非常大層大変極めて至ってはなはすこぶ至極しごくごくいとも実にまことに大いにいたく・ひどく・すごくものすごく滅法めっぽうさんざっぱらさんざんさんざこってり異常極度けた外れ桁違い並み外れ格段著しい甚だしいすごいものすごい計り知れないひどいえらい途方もない途轍とてつもないこの上ない筆舌ひつぜつに尽くしがたい言語げんごに絶する言語ごんごに絶する並並なみなみならぬ一方ひとかたならずめためためちゃくちゃめちゃめっちゃ底抜け恐るべきこよなく殊の外ひときわ特段度外れ法外べらぼうとんでもない類がない比類ない無上よっぽど度が過ぎる行き過ぎどえらい飛び切り段違い圧倒的かけ離れる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「恐ろしい」の意味・読み・例文・類語

おそろし・い【恐】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]おそろ〘 形容詞シク活用 〙
  2. 身に危険が感じられて、不気味である、不安である。こわい。おっかない。
    1. [初出の実例]「これやわが求むる山ならむと思ひて、さすがにおそろしくおぼえて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  3. たいしたものだ。えらい。
    1. [初出の実例]「かく久しく世を保たせ給ひつるもいとおそろし」(出典:栄花物語(1028‐92頃)月の宴)
    2. 「熟練は恐しいもので」(出典:坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉五)
  4. 驚きあきれることである。ひどい。
    1. [初出の実例]「『こっちは雲の上人だ』『菰(こも)の餓人(うえびと)ではござりませんか』『おそろしい』」(出典滑稽本浮世風呂(1809‐13)四)
  5. 物事の程度がはなはだしい。
    1. [初出の実例]「私(わっち)も一躰、おそろしい我儘ものサ」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)初)

恐ろしいの語誌

( 1 )の「竹取」例などに見られるように対象に対する主観的な恐怖を表わしたが、中世以降、対象が客観的に見ても恐怖の対象となる状態であることをも示すようになっている。
( 2 )中世には、「天草版平家」の「ヨノ キコエモ vosoroxixito(ヲソロシシト) アッテ」のように、終止形「おそろしし」の形も存在した。
( 3 )近世以降「恐ろしい」は「程度がはなはだしい」意で程度副詞のようにも用いられる。これは、「恐ろしい」に「対象の持つ属性の程度が、常識をはるかに超えている」という意味が含まれているために成立した用法と思われる。

恐ろしいの派生語

おそろし‐が・る
  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙

恐ろしいの派生語

おそろし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

恐ろしいの派生語

おそろし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

恐ろしいの派生語

おそろし‐み
  1. 〘 名詞 〙

おとろし・い【恐】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]おとろ〘 形容詞シク活用 〙 ( 「おそろしい」の変化したもの。関西地方でいう ) おそろしい。また、うんざりする。めんどうくさい。
    1. [初出の実例]「きくはにわかに身をふるひ、あらおとろしやすさまじや、今より後は其事あらじ、ゆるしてたべと」(出典:浮世草子・忘花(1696)一)

恐ろしいの派生語

おとろし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

恐ろしいの派生語

おとろし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

おっそろし・い【恐】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙 「おそろしい(恐)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「とぼし迎ときちゃア、おっそろしくいそがしい」(出典:洒落本・船頭深話(1802)一)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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