精選版 日本国語大辞典 「軽」の意味・読み・例文・類語
かる・い【軽】
① 目方が少ない。重くない。
※韻字集(1104‐10)「輶 カルシ」
※浮世草子・世間胸算用(1692)五「小判をりんだめにてかける事なし。かるきをとれば、又其ままにさきへわたし」
② たいした程度でない。重大でない。ちょっとした。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)四「荼羅の人の、破戒の趣法の重罪に親近せむよりも軽(カル)し」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「痘瘡(おやく)を遊ばしたさうでございますネ。夫でも至極お軽(カル)い御様子で」
③ 軽薄である。また、軽率である。
※伊勢物語(10C前)二一「出でて去なば心かるしといひやせん世のありさまを人は知らねば」
④ 軽快である。また、気持がはればれしている。
※申楽談儀(1430)音曲の心根「此一うたひかかりて、かるく謡ふべし」
※俳諧・江戸広小路(1678)「もすそを見ればかるい装束 中返り帰る所をしらんとて〈芭蕉〉」
⑤ 淡泊である。あっさりしている。大げさでない。
※行人(1912‐13)〈夏目漱石〉友達「どんな軽(カル)い液体でも狂った胃が決して受付ない」
※空気男のはなし(1974)〈金井美恵子〉「卵三ダース、〈略〉、ミルクティーバケツ四杯、を軽くたいらげるという」
⑥ 身分が低い。また、財産が少ない。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)一「世の風儀をみるに、手前よき人、表むきかるう見せるは稀なり」
※ぢいさんばあさん(1915)〈森鴎外〉「尾張中納言宗勝の奥の軽(カル)い召使になった」
[語誌](1)「かるし」は「かろし」の母音交替形。「かるし」の方が古いとするが逆の説もある。
(2)上代には形容詞としての確例はないが、語幹が地名「軽」を指すのに使われる。平安、鎌倉時代には「かろし」の方が普通に使われ、「かるし」は用例が少ない。
(3)中世以降は、「かろし(い)」と併用されるが、狂言や抄物では「かるい」の方が普通であり、キリシタン資料でも口語性の強い作品で「かるい」、文語系の作品で「かろい」が使用されることが多い。ただ、口語形を多く載せるといわれる「甲陽軍鑑」の写本などでは「かろい」の方が多いので、「かるい」を口語形であるとは決めがたい。「日葡辞書」も両形を載せている。
(4)近世においても、近松や西鶴の作品には両形見られるが、近代以降「かるい」の方が優勢となる。
(2)上代には形容詞としての確例はないが、語幹が地名「軽」を指すのに使われる。平安、鎌倉時代には「かろし」の方が普通に使われ、「かるし」は用例が少ない。
(3)中世以降は、「かろし(い)」と併用されるが、狂言や抄物では「かるい」の方が普通であり、キリシタン資料でも口語性の強い作品で「かるい」、文語系の作品で「かろい」が使用されることが多い。ただ、口語形を多く載せるといわれる「甲陽軍鑑」の写本などでは「かろい」の方が多いので、「かるい」を口語形であるとは決めがたい。「日葡辞書」も両形を載せている。
(4)近世においても、近松や西鶴の作品には両形見られるが、近代以降「かるい」の方が優勢となる。
かる‐げ
〘形動〙
かる‐さ
〘名〙
かる‐み
〘名〙
かろ・い【軽】
〘形口〙 かろ・し 〘形ク〙 =かるい(軽)
① 目方が少ない。重くない。
※源氏(1001‐14頃)乙女「風にちる紅葉はかろし春の色をいはねの松にかけてこそみめ」
※尋常小学読本(1887)〈文部省〉三「荷をかろくせんとて」
② たいした程度でない。重大でない。
※源氏(1001‐14頃)常夏「まだ下臈なり。世の聞き耳かろしとおもはれば」
※徒然草(1331頃)六〇「世をかろく思ひたる曲者にて」
③ 重みがない。軽薄である。また、軽率である。
※宇津保(970‐999頃)祭の使「君がためかろき心もなきものを涙にうかぶころにもあるかな」
④ 軽快である。機敏である。
※俳諧・俳諧一葉集(1827)「山おろし小柴のかげにさっと吹 しら雲かろき手水手ぬぐひ〈似春〉」
※鳥影(1908)〈石川啄木〉四「下駄を脱ぐ音がして、軽(カロ)い跫音が次の間に入った」
⑤ 淡泊である。あっさりしている。
※浮世草子・西鶴置土産(1693)一「世はかろく暮して埒(らち)をあけぬ」
⑥ 身分が低い。
※源氏(1001‐14頃)桐壺「をのづから、かろきかたにも見えしを」
[語誌]→「かるい(軽)」の語誌。
かろ‐げ
〘形動〙
かろ‐さ
〘名〙
かろ‐み
〘名〙
かる‐・む【軽】
[1] 〘自マ四〙 軽くなる。かろむ。
※青表紙一本源氏(1001‐14頃)玉鬘「ともかくも引き助けさせ給はむ事こそは、罪かるませ給はめ」
※あさぢが露(13C後)「ただ罪深き身かるむばかりに静かにおはせん折は経など読みてきかせ給はば」
[2] 〘他マ下二〙
① 重さやものごとの程度などを軽くする。かろむ。
※羅葡日辞書(1595)「イタミヲ carumuru(カルムル) ツケグスリ」
※こんてむつすむん地(1610)二「人は、善のよろこびをもてこころをかるめられずといふ事なし」
② 存在や価値を軽く見る。軽視する。ばかにする。あなどる。かろむ。
※源氏(1001‐14頃)若菜下「さだ過ぎ人をも、同じくなずらへ聞えて、いたくなかるめ給ひそ」
かろ‐・む【軽】
[1] 〘自マ四〙 軽くなる。かるむ。
※源氏(1001‐14頃)玉鬘「ともかくも引き助けさせ給はむ事こそは、罪かろませ給はめ」
[2] 〘他マ下二〙
① 重さや物事の程度を軽くする。かるむ。
※源氏(1001‐14頃)賢木「我にその罪をかろめてゆるし給へ」
② 軽く見る。ばかにする。あなどる。かるむ。
※源氏(1001‐14頃)行幸「さかしらに迎へ給ひて、かろめ嘲(あざけ)り給ふ」
[3] 〘他マ四〙 (二)②に同じ。
※蘇悉地羯羅経略疏天暦五年点(951)「軽(カロミ)蔑(ないがしろにする)ことらを懐くこと无(な)し」
かる【軽】
〘名〙
① 袋入りまたは俵入りの穀類の中身が正確な量目よりも減っていること。海運業者仲間の語で、減量の大きなものを大軽、小さなものを小軽という。
② 漢語や国語のアクセントを示す四声説で、その声調の中で高く始まる音を示す語。「平の軽」「入の軽」などという。
※わらんべ草(1660)二「\・ヨ 上声のかる〈略〉\+‥ 入声のかる」
③ 「かるがも(軽鴨)」の略。
※俳諧・滑稽雑談(1713)五月「黒鴨子 仙覚万葉抄云、黒鴨一名かると云は、鴨の類也」
かろ‐・ぶ【軽】
〘自バ上二〙
① 身軽な様子である。かるがるとしている。
※枕(10C終)三五「さばかりかろびすずしげなる御中に、あつかはしげなるべけれど」
② 軽率にふるまう。軽薄で重みがない。
※源氏(1001‐14頃)帚木「かかるすきごとどもを、末の世にも聞きつたへて、かろびたる名をや流さむ」
③ 軽い身分である。身分が低い。
※源氏(1001‐14頃)竹河「いとかろびたる程に侍めれど、おぼし許す方もや」
かろん‐・ずる【軽】
〘他サ変〙 かろん・ず 〘他サ変〙
① 程度を軽くする。
※平家(13C前)二「刑の疑はしきをばかろんぜよ」
② 軽く見る。ばかにする。あなどる。軽蔑する。
③ 惜しくないと思う。大切なものでないと思う。
※平家(13C前)七「命をかろんじ、義をおもんじて、一戦の功をはげますといへ共」
かる【軽】
奈良県橿原市大軽付近、畝傍山の南麓一帯をいった。懿徳(いとく)・孝元・応神の三天皇が都を置いた所とされる。
※古事記(712)中「大倭日子鉏友命(おほやまとひこすきとものみこと)軽(かる)の境岡宮に坐しまして、天の下治らしめしき」
かろび【軽】
〘名〙 (動詞「かろぶ(軽)」の連用形の名詞化) 身軽なこと。
※枕(10C終)四三「蟻(あり)は、いとにくけれど、かろびいみじうて、水の上などを、ただあゆみにあゆみありくこそをかしけれ」
かるん‐・ず【軽】
〘他サ変〙 =かろんずる(軽)
※太平記(14C後)一六「死を軽(カル)んぜんに便(たより)あり」
かる‐び・る【軽】
〘自ラ下二〙 量が多くなくて、軽々としている。一説に、ひからびてつやけがなくなる意とも。
※栄花(1028‐92頃)つぼみ花「織物に髪乱るといふことは、髪のかるびれ少なき時のことなりけり」
かる‐・ぶ【軽】
〘自バ上二〙 軽々しくふるまう。重みがない。かろぶ。
※源氏(1001‐14頃)総角「筋殊に思ひ聞え給へるに、かるびたるやうに人の聞ゆべかめるも、いとなむ口惜しき」
かる・し【軽】
〘形ク〙 ⇒かるい(軽)
かろ・し【軽】
〘形ク〙 ⇒かろい(軽)
かろん‐・じる【軽】
〘他ザ上一〙 サ変動詞「かろんずる(軽)」の上一段化した語。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報