どん(読み)ドン

デジタル大辞泉 「どん」の意味・読み・例文・類語

どん[名・副]

[名]正午を知らせる空砲。サイレンの普及する以前の明治初期から昭和初期にかけて行われ、東京では丸の内で鳴らした。
[副]
弾薬などが炸裂するときや、太鼓を強く打ったときなどに響く、低くて大きい音を表す語。「祝砲がどんと鳴り響く」
音をたてるほど勢いよく押したり、突いたり、ぶつかったりするさま。「肩口をどんと突く」
[類語]ちゃらちゃらちゃりんじゃらじゃらちりんちりんがちゃがちゃとんとんとんどんどんかたりがたりかたんがたんかたかたがたがたかたことがたごとことことごとごとことりごとりことんごとんこんこんこんごんごんがつんこつんごつんかちゃかちゃかちりかちかちこつこつかちゃりがちゃりかちゃんがちゃんかちんがちんからからがらがらがらりかんかんがんがんどたどたどかどかどっとどすどすどしどしばんばんやかましいうるさい騒騒しい騒がしいかまびすしいかしましいにぎやか騒然喧騒喧喧囂囂けたたましいどてんどたんどたりすとんずどんずしんずしりどすんどさりどしりどかんどしんばあんぱあんばたりぱたりばたんぼおんぽおんぽんとぽんぽこぼこぼこぽこぽこ

ドン(〈スペイン〉・〈イタリア〉Don)

スペインイタリアなどで、男性の姓または姓名の前につける敬称。「ドンキホーテ」「ドンファン」「ドンジョバンニ」
首領。ボス。「政界のドン
[補説]もとは貴族の出身を示し、フランスの「ド」、ドイツの「フォン」などに対応する。
[類語]ちょうおさかしらトップ大将主将闇将軍親方親分親玉棟梁首領頭目ボス

どん[接尾]

[接尾]《「どの(殿)」の音変化》人名、または人を表す名詞に付いて、軽い敬愛の気持ちを表す。商家などで、同輩または目上の人が奉公人を呼ぶときなどに用いる。「お梅どん」「長どん(=長吉のこと)」
[補説]九州南部では一般の敬称としても用いる。

どん[接頭]

[接頭]名詞に付いて、まさにそれに相当するものであることを強調していうのに用いる。接頭語「ど」をさらに強めた語。「どんじり」「どん底」「どんづまり」

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精選版 日本国語大辞典 「どん」の意味・読み・例文・類語

どん

  1. [ 1 ] 〘 副詞 〙 ( 多く「と」を伴って用いる ) 銃砲などを発射する音、太鼓などを強く打つ音、重い物が落ちたりぶつかったりする音などを表わす語。
    1. [初出の実例]「太鼓喚鐘も、どんともちゃんともいはぬもの」(出典:談義本・教訓続下手談義(1753)二)
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙
    1. 正午の号砲。午砲。サイレンの普及する前に、東京の丸の内で、空砲を鳴らして正午の時刻を知らせたもの。転じて、正午をいう。
      1. [初出の実例]「手砲(ドン)が響(なっ)てから余程たって」(出典:怪化百物語(1875)〈高畠藍泉〉上)
    2. ( 太鼓の音にかけて ) 近世の遊里で、太鼓持ちをいう隠語。
      1. [初出の実例]「牽頭持(たいこもち)をどん」(出典:楽屋図会拾遺(1802)下)
    3. 花札で、一勝負(一二回)の最後の回をいう隠語。

どん

  1. 〘 接尾語 〙 ( 「どの(殿)」の変化したもの ) 人名、または人を表わす名詞に付いて、軽い敬愛の気持を示す。一般には、江戸後期から近代にかけて、商家などで奉公人を、同輩または目上の者が呼ぶ時に使われる。九州南部などでは、普通の人に対しても用いられた。
    1. [初出の実例]「かうじ町の三味(しゃむ)せんの師匠どんで」(出典:咄本・喜美賀楽寿(1777)ふたつ文字)
    2. 「御乳母(おんば)どんけふは遅かったの」(出典:滑稽本・浮世床(1813‐23)初)

ドン

  1. 〘 名詞 〙 ( [スペイン語イタリア語] Don )
  2. スペイン、イタリアなどで男の名の前につけて、敬意を表わす語。
  3. 首領。ボス。「政界のドン」
    1. [初出の実例]「マフィアの首領(ドン)の地位に」(出典:汚れた英雄 黄金篇(1968)〈大藪春彦〉諍い)

どん

  1. 〘 名詞 〙 断層や割れ目を伝って地中から上昇し、炭層中の石炭を熱によってコークス化させた火山岩の俗称。

どん

  1. 〘 接頭語 〙 接頭語「ど」をさらに強めたもの。「どんじり」「どんけつ」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「どん」の意味・わかりやすい解説

ドン
どん
Jorge Donn
(1947―1992)

舞踊家。ブエノス・アイレス生まれ。テアトロ・コロン附属バレエ学校でダンスと演劇を学び、13歳で初舞台を踏む。1963年、モーリス・ベジャール率いるベルギー国立二十世紀バレエ団の南米公演に感激し、同年ブリュッセルのベジャール主宰ムードラ研究所を経て、同バレエ団に入団した。66年にトップ・ソリストに昇格し、ベジャールの作品に欠かせない存在となった。76年から芸術監督ベジャールの代理を務め、81年には芸術監督に就任した。87年にバレエ団がスイスのローザンヌに移転し、ローザンヌ・バレエ団となってからも、ベジャール作品の美学をもっとも体現するダンサーとして活躍した。『ニジンスキー・神の道化』(1971)、『愛が私に語りかけるもの』(1974)、『我々のファウスト』(1975)、『ペトルーシュカ』(1977)など、しなやかな肢体と確かな技術に裏付けられた独特のエロティシズムで多くの観客を魅了した。日本でも1979年に『ボレロ』を踊り衝撃的に紹介された。その後たびたび来日し、91年には歌舞伎(かぶき)の坂東玉三郎と自作品『生のための死』を共演している。男性舞踊家の新しいイメージをつくりあげ、エイズに倒れた後もその美しさは伝説的に語られている。映画『愛と悲しみのボレロ』(C・ルルーシュ監督)に出演し、1968年にブエノス・アイレスの批評家賞を受賞した。

[國吉和子]

『M・ベジャール著、前田允訳『舞踊のもう一つの唄』(1998・新書館)』『『ダンスマガジン――ドン、ニジンスキーを踊る』(1991・新書館)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「どん」の意味・わかりやすい解説

ドン
Donn, Jorge

[生]1947.2.28. ブエノスアイレス
[没]1992.11.30. ローザンヌ
アルゼンチン生れの舞踊家。ロシア系の両親のもとに生れる。コロン劇場バレエ学校で学んだのち,1963年 M.ベジャールの 20世紀バレエ団に入団,すぐにソリストとなる。ベジャールの創作意欲を駆りたて,体現する存在として,その作品の多くに主演した。特に映画『愛と哀しみのボレロ』 (1981) の R.ヌレエフをモデルにしたダンサー役でも踊った『ボレロ』は,空前のブームを巻き起した。野性的な情熱と,中性的な化粧などによる繊細なエロティシズムにあふれた踊りは,新しいバレエ・ダンサーのイメージをつくりあげたといえる。そのほか代表的な主演作品は『ニジンスキー・神の道化』『我々のファウスト』など。

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「どん」の解説

どん

正式社名「株式会社どん」。英文社名「Don Co., Ltd.」。小売業。昭和45年(1970)「株式会社フォルクス」設立。平成18年(2006)「株式会社どん」を吸収合併し現在の社名に変更。本社は埼玉県鶴ヶ島市柳戸町。吉野家ホールディングス子会社の外食チェーン。「ステーキのどん」「フォルクス」などステーキハウスの出店規模国内トップクラス。しゃぶしゃぶ・イタリア料理店も展開。大阪証券取引所第2部旧上場。平成22年(2010)上場廃止

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デジタル大辞泉プラス 「どん」の解説

ドン

サンリオキャラクターシリーズ「ゴロ・ピカ・ドン」のメインキャラクター。カミナリの国にすむ男の子。緑色の髪の毛で、頭のてっぺんに角がある。虎柄のパンツをはいている。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のどんの言及

【歌舞伎】より

… 浪音(なみおと)波が寄せてくるさまを表現する囃子。大太鼓を長桴(ながばち)で〈ズドンズドン〉と打って波頭を表し,続けて左桴は革に当てたまま右桴で下から刻み上げてくる。〈(さざなみ)〉〈大波〉などの種類がある。…

※「どん」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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