デジタル大辞泉
「乱」の意味・読み・例文・類語
らん【乱】[作品名]
黒沢明監督・脚本による映画の題名。日仏合作。日本では昭和60年(1985)に公開。シェークスピアの戯曲「リア王」をモチーフに、架空の戦国武将がたどる悲劇的な運命を描く。全米映画批評家協会最優秀作品賞、英国アカデミー賞外国語映画賞、第40回毎日映画コンクール日本映画大賞受賞。黒沢による最後の時代劇作品。
海老沢泰久の小説。昭和49年(1974)、第2回小説新潮新人賞を受賞した、著者の処女作。
らん【乱】
1 秩序がみだれること。
「酒宴の興も過ぎて、既に―に入って居る」〈木下尚江・良人の自白〉
2 戦争や騒動が起こり世の中の安寧が失われること。「応仁の乱」
[補説]作品名別項。→乱
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らん【乱】
- 〘 名詞 〙
- ① みだれること。弁別のなくなること。秩序を失うこと。また、その行為。
- [初出の実例]「好んで酒を飲べからず。〈略〉乱に及ばずの節」(出典:俳諧・五七記(1760)芭蕉翁行脚掟)
- [その他の文献]〔論語‐郷党〕
- ② 世の中の安寧が失われること。社会の平和がそこなわれること。騒動。騒乱。動乱。戦争。戦乱。
- [初出の実例]「をもひがけぬ国のらむいできたりしに、まどはしてそのゆきがたをしらず」(出典:法華修法一百座聞書抄(1110)三月二七日)
- [その他の文献]〔易経‐繋辞下〕
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普及版 字通
「乱」の読み・字形・画数・意味
乱
常用漢字 7画
(旧字)亂
13画
[字音] ラン・ロン
[字訓] おさめる・みだれる
[説文解字]
[その他]
[字形] 会意
旧字は亂に作り、(らん)+乙(いつ)。は糸かせの上下に手を加えている形で、もつれた糸、すなわち乱れる意。乙は骨べら。これでもつれを解くので、亂はおさめる意。「亂(をさ)む」とよむべき字である。〔説文〕十四下に「治むるなり。乙に從ふ。乙は之れを治むるなり」という。〔段注〕にその文を誤りとし、紊乱の字であるから「治まらざるなり」と改むべしとする。字形からいえば、が乱れる、亂が治める意の字。のち亂にの訓を加え、「乱る」「治む」の両義があり、反訓の字とする説を生じたが、一つの文字が、同時に正反の二訓をもつということはない。受に授受、行に去来の二義があるのは、行為者の立場をかえての訓であるから、矛盾的に両義を生ずるのではない。〔楚辞〕形式の作品に多くみえる「亂辭」は、紛乱を解く辞の意で、一の結束とする。金文の〔牧(ぼくき)〕「廼(すなは)ち(みだ)るること多し」、また〔書、皋陶(かうえうぼ)〕「亂にして」は治政の才をいう。この・亂はそれぞれ字の本義の用法である。乱はのち多く紛乱の意に用いる。
[訓義]
1. おさめる。
2. みだれる、みだす。
3. まがう、まよう、なやむ。
4. くらい、あやまる、無道。
5. 水をよこぎる。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕亂 ミダル・ヲサム・タダス・ワタル・ミダリガハシ
[語系]
亂・・luanは同声。亂は乱れた糸を骨べらで解く意で、は攴(ぼく)を加える意。〔説文〕三下に「は煩(わづら)はしきなり」とし、の亦声とする。
[熟語]
乱▶・乱雲▶・乱河▶・乱階▶・乱魁▶・乱▶・乱攪▶・乱紀▶・乱気▶・乱逆▶・乱虐▶・乱▶・乱曲▶・乱君▶・乱軍▶・乱群▶・乱劇▶・乱▶・乱原▶・乱源▶・乱国▶・乱獄▶・乱昏▶・乱根▶・乱山▶・乱▶・乱辞▶・乱次▶・乱主▶・乱象▶・乱常▶・乱臣▶・乱神▶・乱真▶・乱心▶・乱人▶・乱酔▶・乱世▶・乱▶・乱石▶・乱説▶・乱▶・乱▶・乱草▶・乱想▶・乱俗▶・乱賊▶・乱治▶・乱帙▶・乱梯▶・乱▶・乱点▶・乱頭▶・乱抖▶・乱闘▶・乱道▶・乱入▶・乱媒▶・乱悖▶・乱罰▶・乱髪▶・乱班▶・乱飛▶・乱舞▶・乱風▶・乱兵▶・乱峰▶・乱亡▶・乱邦▶・乱謀▶・乱亡▶・乱萌▶・乱本▶・乱麻▶・乱余▶・乱葉▶・乱離▶・乱吏▶・乱略▶・乱流▶・乱倫▶・乱惑▶
[下接語]
乱・胡乱・禍乱・壊乱・乱・潰乱・乱・霍乱・危乱・狂乱・徼乱・交乱・寇乱・攪乱・昏乱・混乱・錯乱・散乱・首乱・酒乱・乗乱・擾乱・衰乱・酔乱・靖乱・戦乱・僭乱・沮乱・争乱・喪乱・騒乱・雑乱・賊乱・大乱・治乱・動乱・内乱・悩乱・波乱・悖乱・敗乱・撥乱・反乱・乱・煩乱・紊乱・不乱・払乱・紛乱・兵乱・変乱・貿乱・迷乱・理乱・凌乱・撩乱・繚乱・零乱・惑乱
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乱 (みだれ)
箏曲・地歌の曲名。《みだれりんぜつ(乱輪舌)》《十段のしらべ》《十二段すががき》などともいう。《糸竹初心集》《糸竹大全》などに収載される《りんぜつ》を原曲として,10段ないし12段構成の陰音階(平調子・本調子)の器楽曲に発展させたもので,箏曲としては八橋検校の作曲と伝えられるが異説もある。段構造の切れ目は一定せず,流派による異同が多い。段物ないし調べ物の曲としては例外的な曲となっている。筑紫箏では,《糸竹大全》当時の3段構成のものに類する陽音階のものが《りんぜつ(倫説)》として伝承されており,また,沖縄にも1段構成の陽音階のものが《滝落菅搔》として流伝している。そのほか,津軽箏曲に発展の途中の段階を示す段構造のものが数種遺存している。三味線曲化したものは,生田検校ないし深草検校の作曲と伝えられる。江戸の野田検校が,本雲井調子の替手を作曲しているが,京都などでは,平調子の替手が付けられ,八重崎検校の編曲と伝えられる。山田流箏曲では,能の《猩々(しようじよう)》からとった前歌を付すこともある。
執筆者:平野 健次
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乱
みだれ
日本音楽の曲名,能の囃子と箏曲とが有名。 (1) 能では『猩々 (しょうじょう) 』と『鷺 (さぎ) 』の舞の部分を「乱」という。『猩々』は本来「中の舞」であるが,特殊な演出を行う場合に「乱」の囃子を用い,能としての全体の曲名を『猩々乱』あるいは『乱』という。舞は特殊な形の連続であって,流儀差が著しく,それぞれいくつもの演出があり,2人または数人の舞もある。また囃子は,笛,大小鼓,太鼓で奏するが,舞同様に流儀,演出によってさまざまなやり方がある。『鷺』の舞は常に「乱」であるが『猩々』とは曲も型も異なり,装束も『猩々』が赤を基調とするのと対照的に白で統一され,舞のなかに羽ばたきを表わす型など特殊な技巧がある。 (2) 箏曲では,「乱輪舌」と書いて「みだれりんぜつ」ともいうが,単に「みだれ」ともいう。器楽曲である段物の一つであるが,例外的に各段の拍数も一定しておらず,またその段分けも流派によって異なる。『糸竹初心集』収載の「りんぜつ」が原曲に近いものとして考えられるが,これを発展させたものが,筑紫箏にも数種伝承され,八橋検校以降の箏曲では異なる展開を示して複雑化したものが伝承されている。現行のものの作曲者は一応八橋検校とされるが,倉橋検校とする異説もある。現在の生田流,山田流の両方で演奏される。替手は,京都で八重崎検校 (山口巌の補作もある) 作曲の平調子のものが行われ,これを「京乱」といい,江戸の生田流の野田検校の作曲した本雲井調子のものは「雲井乱」といい,山田流でも行われる。
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乱(映画)
らん
日本映画。1985年(昭和60)作品。黒澤明(くろさわあきら)監督。原作はシェイクスピアの『リア王』。1980年『影武者』の成功に続き、時代劇大作として製作された。『影武者』が戦争による一国の解体をテーマにしたのに対して、『乱』では、一文字秀虎(いちもんじひでとら)(仲代達矢(なかだいたつや)、1932― )とその3人の息子を通して、家族間の骨肉の争いから名家が没落してゆくさまを描き、とくに女性の政争への介入から一家の破滅に至るプロセスを重視している。映像には能の様式を採用し、また色彩効果によって画面の格調を整え、高齢化した当主の退位から郎党とともに原野に漂泊していく劇的なプロセスに手腕を発揮した。1957年に同じシェークスピアの『マクベス』を原作として製作された『蜘蛛巣城(くものすじょう)』とも通じるところがあり、親族に対する不信というテーマが色濃く表れた作品である。第58回アカデミー衣装デザイン賞を受賞。
[千葉伸夫]
乱(箏曲)
みだれ
箏曲(そうきょく)の曲名。『乱輪舌(りんぜつ)』の略称。八橋検校(やつはしけんぎょう)(1614―85)作曲の箏(こと)独奏曲。「輪舌」とは、雅楽の『越天楽残楽三返(えてんらくのこりがくさんぺん)』の後半や、『五常楽急(ごしょうらくのきゅう)』にある箏の演奏法をさし、分散和音や装飾音などのような楽箏の技巧的な演奏法のこと。それが、筑紫(つくし)流箏曲の『輪舌』に取り入れられ、のちに生田(いくた)流に入ったもの。各段の拍数がまちまちで、一曲中のテンポがいろいろに変化する。声楽曲の多い箏曲のなかで、器楽的に発展する音楽構造をもつ数少ない作品の一つ。
[茂手木潔子]
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乱【みだれ】
箏曲の曲名。《乱輪舌(みだれりんぜつ)》の略。伝八橋検校作曲。〈段物〉に属するが,《六段》などと異なる点は,各段の拍数が一定していないこと。段の切り方も流派によって異なり,江戸生田流および山田流では12段,関西では10段に分けるのが一般的。
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乱〔映画〕
1985年公開の日仏合作映画。英題《Ran》。監督・脚本:黒澤明、脚本:小国英雄ほか。出演:仲代達矢、寺尾聰、根津甚八、隆大介、植木等、井川比佐志ほか。シェークスピアの悲劇『リア王』をモチーフとする時代劇。英国アカデミー賞外国語映画賞受賞。第28回ブルーリボン賞作品賞受賞。第40回毎日映画コンクール日本映画大賞、監督賞、男優助演賞(井川比佐志)受賞。
乱〔曲名〕
日本のポピュラー音楽。歌と作詞作曲は日本のバンド、LUNA SEA。2013年発売。テレビ朝日系で放送のドラマ「都市伝説の女 Part2」のオープニングテーマ。
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世界大百科事典(旧版)内の乱の言及
【猩々】より
…唐土の揚子(ようず)の里に高風(こうふう)という孝行な酒売り(ワキ)がいた。その店へ近くの海中にすむ猩々がきて,酒を飲んで舞い戯れ(〈渡り拍子・乱(みだれ)〉),いくら汲んでも尽きない酒瓶を高風に与えて祝福する。乱は遅速の変化の多い特殊なリズムの曲で,舞い方も,普通の擦り足でなしに,抜き足,蹴上げる足,流れ足(つま先で立っての滑走)などを用いて,水上を戯れ遊ぶていを見せる。…
【猩々】より
…唐土の揚子(ようず)の里に高風(こうふう)という孝行な酒売り(ワキ)がいた。その店へ近くの海中にすむ猩々がきて,酒を飲んで舞い戯れ(〈渡り拍子・乱(みだれ)〉),いくら汲んでも尽きない酒瓶を高風に与えて祝福する。乱は遅速の変化の多い特殊なリズムの曲で,舞い方も,普通の擦り足でなしに,抜き足,蹴上げる足,流れ足(つま先で立っての滑走)などを用いて,水上を戯れ遊ぶていを見せる。…
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