乱(映画)(読み)らん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「乱(映画)」の意味・わかりやすい解説

乱(映画)
らん

日本映画。1985年(昭和60)作品。黒澤明(くろさわあきら)監督。原作はシェイクスピアの『リア王』。1980年『影武者』の成功に続き、時代劇大作として製作された。『影武者』が戦争による一国の解体をテーマにしたのに対して、『乱』では、一文字秀虎(いちもんじひでとら)(仲代達矢(なかだいたつや)、1932― )とその3人の息子を通して、家族間の骨肉の争いから名家が没落してゆくさまを描き、とくに女性の政争への介入から一家の破滅に至るプロセスを重視している。映像には能の様式を採用し、また色彩効果によって画面の格調を整え、高齢化した当主退位から郎党とともに原野に漂泊していく劇的なプロセスに手腕を発揮した。1957年に同じシェークスピアの『マクベス』を原作として製作された『蜘蛛巣城(くものすじょう)』とも通じるところがあり、親族に対する不信というテーマが色濃く表れた作品である。第58回アカデミー衣装デザイン賞を受賞。

[千葉伸夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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