円(曲線)(読み)えん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「円(曲線)」の意味・わかりやすい解説

円(曲線)
えん

平面上で一定点から一定の距離にある点の全体でできる曲線のこと。その定点を円の中心、一定の距離を円の半径、その曲線を円周という。円周のことを円ということもある。このときは円周で囲まれた図形を円板という。円周上の2点を結ぶ線分を弦(げん)といい、とくに円の中心を通る弦を円の直径という(図A)。直径の長さは半径の2倍である。直径の長さに対する円周の長さの比はどの円でも一定で、この値を円周率という。したがって、円周の長さlは、半径をr、円周率をπとすればl=2πrである。また、円の面積SS=πr2である。

 円はその中心に関して点対称であり、どの直径を軸にとっても線対称である。円はこの整った対称性が活用されて、車輪マンホールの蓋(ふた)、硬貨円卓など、直線に次いで日常至る所で目に触れる図形である。円の弦によって分けられる円周の二つの部分を円の弧(こ)といい、弦と弧で囲まれる図形を弓形(きゅうけい)という。とくに直径で分けられる図形を半円という。また、中心で直交する二つの直径で分けられる四つの図形をそれぞれ四分円(しぶんえん)という。円の中心を端点とする二つの半直線のなす角を、その半直線でできる弧に対する中心角という。このとき二つの半直線でできる二つの角のうち、小さいほうでできる弧を劣弧(れっこ)、大きいほうでできる弧を優弧といい、この二つの弧を互いに他の共役弧(きょうやくこ)であるという。円周によって平面は円の内部外部に分けられる。円の内部の2点を結ぶ線分上の点はまた円の内部にあり、内部の点と外部の点を結ぶ線はかならず円周と共有点がある。

 円と直線の位置関係は三つある(図B)。円と直線が2点で交わるとき、この直線を円の割線(かっせん)という。円と直線がただ一つの点だけを共有するとき、この直線を円の接線といい、その共有点を接点という。接線は接点を通る直径と直交している。第三の場合は円と直線が共有点をもたない場合である。

 二つの円の位置関係は五つの場合がある(図C)。二つの円をA、Bとして、円Aを固定して考える。まず、円Bが円Aの内部にあり、それぞれの円周に共有点がない場合である。とくに中心が一致すれば、二つの円を同心円という。次に円Bが円Aの内部にあってただ一つの点を共有する場合で、円Bは円Aに内接するという。第三は、2円A、Bが2点を共有する場合で、2円は交わるといい、その2点を結ぶ線分を共通弦という。第四の場合は、円Bが円Aの外部にあってただ一つの点を共有する場合で、2円は外接するという。第五の場合は、2円が互いに他の外部にある場合である。第一の場合を除いて2円に共通な接線を引くことができ、その個数はそれぞれの順に1、2、3、4である。

[柴田敏男]

円の方程式

座標平面で、中心の座標が(a, b)、半径がrの円の方程式
  (xa)2+(yb)2r2
である。とくに、中心が原点、半径が1の円を単位円という。

[柴田敏男]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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