軈て(読み)ヤガテ

デジタル大辞泉 「軈て」の意味・読み・例文・類語

やがて【×軈て/▽頓て】

[副]
1 あまり時間や日数がたたないうちに、ある事が起こるさま、また、ある事態になるさま。そのうちに。まもなく。じきに。「―日が暮れる」「東京へ出てから、―三年になる」
2 それにほかならない。まさに。とりもなおさず。
「自尊の念は―人間を支持しているもので」〈露伴・プラクリチ〉
3 そのまま。引き続いて。
「山の仕事をして、―食べる弁当が」〈左千夫・野菊の墓〉
「(道真ガ大宰府ニ流サレテ)―かしこにてうせ給へる」〈大鏡・時平〉
4 時を移さず。ただちに。すぐさま。
「―具して宮に帰りて后に立てむ」〈今昔・三一・三三〉
[補説]「軈」は国字。
[類語](1)間もなく・程なく・もうすぐ・もうじき・そろそろ・追っつけ・追って・そのうち・今に・追い追い・遠からず・遅かれ早かれ・早晩・いずれ・いつか・行く行く・近日・近近・直じきに・すぐ・直ちに・早速・じき・すぐに・すぐさま・即・直接・もう・来きたる・日ならずして・後日・他日・不日・又の日・近く・上げず・ぼちぼち・今に・目前・秒読み・カウントダウン・追っ掛け・時間の問題・ややあって・今日明日・すかさず・間を置く・時を移さず・この先・やおら・遠慮がち・穏やか・おっとり・おどおど・おとなしやか・おもむろに・穏健・穏当・穏和・温和・謙遜・こつこつ・さりげない・しおらしい・静か・静静・しっとり・しとやか・しなやか・粛粛・純朴・じわじわ・真率・そっと・そろり・たおやか・つつましい・つつましやか・なよなよ・なよやか・柔和・のろのろ・控えめ・朴訥ぼくとつ・ぼつぼつ・まめやか・物静か・物柔らか・優しい・柔らか・やんわり・悠然・ゆったり・ゆるゆる・ゆるり・ゆっくり・腰を据える・鷹揚おうよう

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精選版 日本国語大辞典 「軈て」の意味・読み・例文・類語

やがて【軈・頓】

  1. 〘 副詞 〙
  2. ① ある事態・状態がそのままで変わることなく、引き続いて次の事態・状態が出現するさまを表わす語。そのまま。そのままずっと。
    1. [初出の実例]「薬もくはず、やがて起きもあがらで病みふせり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 「『かしこより人おこせばこれをやれ』とていぬ。さてやがてのちつひにけふまで知らず」(出典:伊勢物語(10C前)九六)
  3. ② ある事態・状態から、格別の事柄を間にはさむことなく、あるいは、時間を経過することなく、次の事態・状態が出現するさまを表わす語。すぐさま。ただちに。
    1. [初出の実例]「御ぐしおろし給ひければ、やがて御ともにかしらおろししてけり」(出典:大和物語(947‐957頃)二)
    2. 「名を聞くより、やがて面影はおしはからるるここちするを」(出典:徒然草(1331頃)七一)
  4. ③ 他の事柄や状態ではなく、まさにその事柄や状態であることを強めていう語。とりもなおさず。ほかならず。直接名詞句を修飾し、「ほかならぬ…」と指示する用法もある。
    1. [初出の実例]「衣河の尻やがて海の如し」(出典:今昔物語集(1120頃か)二五)
    2. 「この尼ぜと申は、やがて法皇の御乳の人紀伊二位の事也」(出典:平家物語(13C前)三)
  5. ④ 事態が推移して、あるいは、ある程度の時間を経過して、引き続いて次の事態・状態が出現するさまを表わす語。間もなく。そのうちに。
    1. [初出の実例]「后宣旨かぶらせ給、〈略〉やかてみかどうみたてまつり給」(出典:大鏡(12C前)一)
    2. 「頓て人里に至れば、あたひを鞍つぼに結付けて馬を返しぬ」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)那須)

軈ての語誌

( 1 )「観智院本名義抄」に「便 スナハチ ヤガテ」とあるように、「すなわち」に近い意で用いられたが、「すなわち」が漢文訓読で用いられるのに対して、「やがて」は、もっぱら和文脈で用いられた。
( 2 )「今昔物語集」ほかに「軈而」の形が見え、のち「軈」一字を当てるようにもなるが、この字は国字で、「身をすぐに適応させる」意の会意文字と考えられる。
( 3 )②から④の用法に転ずる時期は、必ずしもはっきりしないが、中世以降に多くなる。
( 4 )語の成り立ちについては、感動詞「や」に可能肯定判断を表わす下二段動詞「かつ」の連用形「かて」が付いて古くできたものという説がある。
( 5 )日葡辞書には、「Yacate(ヤカテ)」の見出しもあるが、多く使われるのは「やがて」だと述べている。古くは清音だったか。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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