[1] 〘名〙
① 是と非。
道理があることと道理がないこと。よいことと悪いこと。善悪。正邪。
※勝鬘経義疏(611)序「聖人之教雖二復時移易一レ俗、不レ能レ改二其是非一」
※
平家(13C前)二「進退惟
(これ)きはまれり。是非いかにも弁へがたし」
② (━する) 是と非とを判断すること。ものごとのよしあしを判断すること。批評すること。是を是とし、非を非とすること。
品評。
※続日本紀‐天平三年(731)一一月癸酉「其職掌者。差二発京及畿内兵馬一。捜下捕結レ徒集レ衆。樹レ党仮レ勢。劫二奪老少一。圧二略貧賤一。是二非時政一。臧二否人物一。邪曲冤枉之事上」
※発心集(1216頃か)六「それもろもろの道理をまもりて是非すとも」
※ふらんす物語(1909)〈永井荷風〉再会「新に
アカデミーの会員に選ばれると云へば、全都全国の新聞が全紙面を埋めて是れを是非
(ゼヒ)する位ぢゃないか」 〔孟子‐公孫丑・上〕
[2] 〘副〙 (「是非共(とも)に」の意から)
① 事情がどうあろうとも、あることを実現しよう、実現したいという強い意志や要望を表わす語。是が非でも。どうあっても。きっと。ぜひとも。
※蒙古襲来絵詞(1293頃)「是非(セヒ)げざんにいるるぶきゃうなかりしあひだ」
※虎明本狂言・米市(室町末‐近世初)「其時ぜひのまふと云て、こしらへる時」
※
吾輩は猫である(1905‐06)〈
夏目漱石〉八「是非仕舞迄精読しなくてはいかん」
② 相手に、軽くまたは儀礼的に行為を求めるさまを表わす語。なにとぞ。どうぞ。ぜひとも。
※
狂言記・連歌毘沙門(1700)「さらばこなたから連歌を被
レ成。いやまづなされまいか。是非
(ゼヒ)こなた被
レ成」
③ ある条件のもとでは、必ずそういう結果になると断定する意を表わす語。きまって。かならず。
※
洒落本・初葉南志(1780)「長兵衛なんぼ気の強ひ客達でも町人衆と侍のお客なればぜひせきが出て
カウ出さうなものと」
※
青春(1905‐06)〈
小栗風葉〉春「理論上認めます! 理論上是非然ういふ結論に至るので」