(読み)ゲン

デジタル大辞泉 「厳」の意味・読み・例文・類語

げん【厳/×儼】

[ト・タル][文][形動タリ]
態度や処置などがきびしいさま。「―として慎むべきだ」「―たる態度で臨む」
おかしがたく、おごそかなさま。「今も―として存在する」「―たる事実」
[形動ナリ]に同じ。→げん
「然るに封鎖―にして此の目的を達し得ざる時は」〈独歩・愛弟通信〉
[類語]厳か厳粛粛粛厳然森厳荘厳荘重重厚重重しい物物しい厳めしい厳として重量感どっしりずっしりずしりずしっとどっかとがっしり重み広量堂堂大度太っ腹マッシブ存在感睥睨へいげい厳しい厳格厳重厳酷厳正冷厳峻厳しゅんげん峻烈しゅんれつ苛酷険しい辛辣しんらつ粛然貫禄威厳威徳尊厳威儀権威威信威名威望名望威光威力権力勢威重圧すご脅威威圧威風威風堂堂威容偉容英姿雄姿勇姿仰仰しいご大層息が詰まる大風呂敷を広げる

げん【厳〔嚴〕】[漢字項目]

[音]ゲン(漢) ゴン(呉) [訓]おごそか きびしい いかめしい いつくし
学習漢字]6年
〈ゲン〉
おごそか。いかめしい。「厳粛厳然威厳謹厳尊厳
容赦がない。きびしい。「厳格厳重厳正厳密戒厳冷厳
激しい。ひどい。「厳寒厳冬
自分の、または他人の父に対する敬称。「厳君厳父家厳
〈ゴン〉おごそか。「荘厳そうごん・しょうごん
[名のり]いかし・いず・いつ・いつき・いわ・かね・たか・つよ・ひろ・よし

いつ【厳/稜威】

(「いつの」の形で、またはそのまま体言に続けて用いられる)
み清めたこと。神聖なこと。
「―ぬさの緒結び」〈祝詞・出雲国造神賀詞
勢いの激しいこと。威力の強烈なこと。
「―の男建をたけびふみたけびて」〈・上〉

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精選版 日本国語大辞典 「厳」の意味・読み・例文・類語

いかし【厳】

  1. ( シク活用形容詞「いかし」の語幹。ただし、語幹用法だけで、シク活用の確例はない ) 勢いが盛んなさま、繁栄しているさま、いかめしいさま、などを表わす。「厳日(いかしひ)」「厳矛(いかしほこ)」「厳穂(いかしほ)」「厳御世(いかしみよ)」など。
    1. [初出の実例]「伊賀志(イカシ)の御世に幸(さき)はへまつれ」(出典:延喜式(927)祝詞)

厳の語誌

( 1 )イカヅチ(雷)、イカシホ(瞋塩)のイカを、イカシの語幹とすれば、やはり語幹の用法のみではあるが、ク活用の例も上代にはあったことになる。
( 2 )シク活用は、イカシホ(厳穂)、イカシミヨ(厳御世)などのように、特定の語について、祝詞の類に多く見られる特殊な用法か。
( 3 )中古以降、ク活用で現われ、中世には口語において、イカイの形で多くは連体修飾語として用いられる。


いつ【厳・稜威】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 勢いの激しいこと。激しい力のあること。また、尊厳な性質があること。
    1. [初出の実例]「斬(き)りたまひし刀(たち)の名は、天之尾羽張(あめのをはばり)と謂ひ、亦(また)の名は伊都(イツ)之尾羽張と謂ふ」(出典:古事記(712)上)
  3. いみ清められていること。神聖な力のあること。
    1. [初出の実例]「伊都(イツ)(ぬさ)の緒(を)結び」(出典:延喜式(927)祝詞)

いか‐つ【厳】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 ) ( 「いか」は「いかめしい」「いかい」などの「いか」と同語源 ) かどばってやわらかみのないさま。武張ってあらあらしいさま。周囲に気兼ねなく、図々しいさま。また、そのような態度や行為。
    1. [初出の実例]「心も鬼なれば、いづれも、いかつの見風にて」(出典:二曲三体人形図(1421))

厳の語誌

( 1 )「厳強(いかつよ)し」の略〔大言海〕とも「厳(いか)つ」の「つ」は古代の格助詞〔近世上方語辞典=前田勇〕ともいわれる。
( 2 )中・近世の用例は、形容動詞としての用法が多く、近世後期から、形容詞「いかつい」が多くなる。


いかめ【厳】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 形容詞「いかめし」から ) いかめしいさま。おそろしいさま。
    1. [初出の実例]「やらいかめの寺やぞ」(出典:四河入海(17C前)一)

厳の語誌

「平家‐二」に、祐慶が「大の目を見いからし」たことから「いかめ房」と呼ばれたという記事があり、多くの諸本の表記から、イカメが「厳目」と理解されていたことがうかがえる。こうした理解が存したために、シク活用「いかめし」の「いかめ」が独立性を持つようになり、口語形活用の形容詞イカメイ及びその語幹用法が室町期に成立するに至ったものか。


げん【厳・儼】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動ナリ・タリ ) 態度や処置などがきびしいこと。また、いかめしくて、反対できないようなさま。おごそかなこと。厳重。厳格。→厳に
    1. [初出の実例]「七花、儼(ゲムトシテオコソカ)にして以て歩みを承け」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝院政期点(1080‐1110頃)九)
    2. [その他の文献]〔詩経‐小雅・六月〕

いっかい【厳】

  1. 〘 副詞 〙いかい(厳)〔副〕
    1. [初出の実例]「いっかい苦にしてござる上、煩(わづら)やつたらどうあらう」(出典:浄瑠璃彦山権現誓助剣(1786)五)

おごそか【厳】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 威厳があるさま。礼儀正しく近よりにくいさま。
    1. [初出の実例]「世尊の行歩したまふ威容は、斉しく粛(オコソカなル)こと師子王のごとし」(出典:彌勒上生経賛平安初期点(850頃))

いかめし【厳】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙いかめしい(厳)

きびし【厳】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙きびしい(厳)

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普及版 字通 「厳」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 17画

(旧字)嚴
人名用漢字 20画

(異体字)
14画

[字音] ゲン
[字訓] つつしむ・おごそか・きびしい

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は(げん)。は嚴の初文。嚴はの上に祝の器((さい))を並べた形。金文には三口((さい))を列する形がある。は〔説文〕厂(かん)部九上に「崟(きん)なり」と巉巌の意とし、また嚴二上には「なるなり」とするが、・嚴の字義に関するところがない。は嚴の初文で、金文に敢・・嚴を同義に用いる。「敢て」というのは「粛(つつし)みて」というのと同じ。敢は鬯酒(ちようしゆ)(におい酒)を酌(く)む形で鬯(かんちやう)の儀礼を示す。厂は崖下の聖所を示す形であるが、金文の字形屋に従う。中で鬯の儀礼を厳修する意。金文の〔鐘(はつしよう)〕に「先王其れ嚴としての左右に在り」とみえ、多く神事に関して用いる。

[訓義]
1. つつしむ、おごそか、神事を厳修することをいう。
2. きびしい、おそれる、いかめしい。
3. たっとい、つよい。
4. さしせまる、いそがしい、はげしい。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕嚴 カザル・ヨソフ・イツクシ・ハゲシ・トトノフ・キビシ・ウヤマフ・タフトシ・スミヤカナリ

[熟語]
厳畏・厳威・厳家・厳科厳苛厳駕・厳介・厳戒厳誡厳恪・厳格厳愨厳確厳覈・厳寒・厳顔・厳毅・厳器・厳客・厳究・厳急・厳恭・厳・厳凝・厳棘・厳禁・厳具・厳君・厳訓・厳刑・厳敬厳勁厳警・厳潔・厳献厳譴・厳厳厳乎・厳姑・厳刻・厳酷・厳査・厳削・厳察・厳旨・厳師・厳事・厳侍・厳執・厳守・厳重・厳粛・厳峻・厳処・厳妝・厳飾・厳色・厳審・厳親・厳・厳正・厳静・厳整・厳切・厳設・厳然・厳荘・厳装・厳霜・厳尊・厳憚・厳断・厳重・厳懲・厳飭・厳提・厳程・厳敵・厳冬厳罰・厳備・厳冰・厳父・厳風・厳慕・厳貌・厳法・厳密・厳命・厳明・厳猛・厳容・厳翼・厳栗・厳慄・厳・厳麗・厳令・厳冷・厳烈
[下接語]
威厳・家厳・戒厳・寛厳・簡厳・禁厳・謹厳・師厳・峻厳・森厳・深厳・清厳・精厳・荘厳・装厳・尊厳・端厳・法厳・令厳・冷厳

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