デジタル大辞泉
「紅」の意味・読み・例文・類語
もみ【▽紅/紅=絹】
《ベニバナをもんで染めるところから》紅で染めた無地の平絹。女物長着の胴裏や袖裏に用いる。もみぎぬ。
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べに【紅】
- 〘 名詞 〙
- ① 紅花から製した鮮紅色の顔料。染料や、頬紅・口紅など化粧品の原料とし、また、食品の着色などに用いる。臙脂(えんじ)。〔訓蒙図彙(1666)〕
- ② 紅花から製した鮮紅色の顔料をおしろいに混ぜ合わせたもの。頬紅。ももいろおしろい。〔十巻本和名抄(934頃)〕
- ③ 口紅。古くは、猪口(ちょく)、皿、茶碗などに塗りつけたものを、指や筆で溶いて用いた。
- [初出の実例]「旦那のお口の端へ紅(ベニ)がついて居りますぜ」(出典:歌舞伎・裏表柳団画(柳沢騒動)(1875)二幕)
- ④ 「べにばな(紅花)」の略。
- [初出の実例]「朝月夜双六うちの旅ねして〈杜国〉 紅花(べに)買みちにほととぎすきく〈荷兮〉」(出典:俳諧・冬の日(1685))
- ⑤ 「べにいろ(紅色)」の略。
- [初出の実例]「白いつつじに紅のとび入〈芭蕉〉 陽炎の傘ほす側に燃にけり〈支考〉」(出典:俳諧・百囀(1746)歌仙)
くれないくれなゐ【紅】
- 〘 名詞 〙 ( 「呉(くれ)の藍(あい)」の変化した語 )
- ① 植物「べにばな(紅花)」の異名。《 季語・夏 》
- [初出の実例]「紅(くれなゐ)の花にしあらば衣手に染めつけ持ちて行くべく思ほゆ」(出典:万葉集(8C後)一一・二八二七)
- ② 赤く鮮明な色。紅花の汁で染めだした紅色。臙脂色。
- [初出の実例]「紅萌ゆる岡の花 早緑匂ふ岸の色」(出典:三高逍遙の歌(1906頃)〈沢村胡夷〉)
- ③ 江戸時代、京都で染めた紅絹。京紅。
- [初出の実例]「しわひ所とてくれなひが上手也」(出典:雑俳・柳籠裏(1783‐86)五月二八日)
- ④ 香木の名。分類は伽羅(きゃら)。香味は甘辛。六十一種名香の一つ。〔香名秘録〕
もみ【紅・紅絹】
- 〘 名詞 〙 ( 紅花を揉んで染めるところから ) べに色で無地に染めた絹布。和服の袖裏や胴裏などに使う。ほんもみ。
- [初出の実例]「春風のもみ紅梅はうら見哉〈親重〉」(出典:俳諧・犬子集(1633)一)
- 「眼のさめるやうな京染の紅絹(モミ)の色は」(出典:夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第二部)
こう【紅】
- 〘 名詞 〙 くれない。べにいろ。紅色。
- [初出の実例]「眼辺に紅(コウ)を帯ぶ」(出典:花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉二〇)
- [その他の文献]〔司馬相如‐大人賦〕
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普及版 字通
「紅」の読み・字形・画数・意味
紅
常用漢字 9画
[字音] コウ・グ
[字訓] くれない・あか・べに
[説文解字]
[その他]
[字形] 形声
声符は工(こう)。〔説文〕十三上に「帛(はく)の赤白色なるものなり」とあり、桃紅色に近いものであろう。先秦の文献にほとんどみえず、古くは絳を用いる。絳はいわゆる大赤、濃紅色。「くれない」は「呉藍(くれあい)」の意である。
[訓義]
1. くれない、あか。
2. べに、顔料。
3. 工と通じ、女工、女仕事。
[古辞書の訓]
〔和名抄〕紅 辨色立に云ふ、紅、久禮乃阿井(くれのあゐ)〔名義抄〕紅 クレナヰ
[語系]
紅hong、絳komは声近く、紺kmもこの系統の語であろう。みなその色相に関係がある。馬の「皇駁」とは、赤白の馬と黄白の馬とをいう。その皇huangもまた、色相としてこの系統の色をいう語であろう。
[熟語]
紅夷▶・紅衣▶・紅印▶・紅雨▶・紅雲▶・紅暈▶・紅英▶・紅鉛▶・紅▶・紅於▶・紅▶・紅霞▶・紅花▶・紅華▶・紅蝦▶・紅▶・紅蟹▶・紅顔▶・紅眼▶・紅肌▶・紅旗▶・紅朽▶・紅頰▶・紅鏡▶・紅旭▶・紅玉▶・紅巾▶・紅錦▶・紅▶・紅裙▶・紅閨▶・紅▶・紅霓▶・紅纈▶・紅臉▶・紅絹▶・紅光▶・紅缸▶・紅黄▶・紅沙▶・紅采▶・紅彩▶・紅▶・紅桟▶・紅蚕▶・紅紫▶・紅子▶・紅糸▶・紅脂▶・紅示▶・紅児▶・紅日▶・紅珠▶・紅酒▶・紅綬▶・紅袖▶・紅皺▶・紅▶・紅湿▶・紅絨▶・紅春▶・紅潤▶・紅▶・紅女▶・紅椒▶・紅裳▶・紅牆▶・紅粧▶・紅燭▶・紅色▶・紅心▶・紅脣▶・紅塵▶・紅翠▶・紅▶・紅雪▶・紅牋▶・紅線▶・紅染▶・紅船▶・紅磚▶・紅鮮▶・紅▶・紅▶・紅妝▶・紅粟▶・紅黛▶・紅単▶・紅男▶・紅茶▶・紅虫▶・紅帳▶・紅頂▶・紅潮▶・紅呈▶・紅定▶・紅亭▶・紅土▶・紅灯▶・紅豆▶・紅桃▶・紅銅▶・紅▶・紅暾▶・紅緞▶・紅▶・紅旆▶・紅梅▶・紅白▶・紅帛▶・紅髪▶・紅筆▶・紅氷▶・紅縹▶・紅腐▶・紅粉▶・紅文▶・紅米▶・紅壁▶・紅片▶・紅墨▶・紅本▶・紅末▶・紅毛▶・紅薬▶・紅腴▶・紅友▶・紅螺▶・紅羅▶・紅藍▶・紅欄▶・紅爛▶・紅鸞▶・紅痢▶・紅鯉▶・紅榴▶・紅▶・紅▶・紅▶・紅緑▶・紅涙▶・紅蓮▶・紅瀲▶・紅炉▶・紅楼▶・紅録▶
[下接語]
暗紅・暈紅・鉛紅・嫣紅・花紅・霞紅・含紅・擬紅・残紅・羞紅・愁紅・女紅・猩紅・真紅・深紅・翠紅・浅紅・閃紅・鮮紅・退紅・褪紅・丹紅・朝紅・踏紅・縹紅・羅紅・紅・冷紅・老紅
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紅
べに
ベニバナの花からとる紅色の色素。ベニバナは黄と紅の二つの色素を含み、その特色は、紅色素は水には溶けないが、アルカリ性の液には溶け、これに酸を加えて沈殿させてとる。わが国では山形市郊外がその代表的な産地で、俗に「最上(もがみ)の紅花(べにばな)」といわれている。紅は布帛(ふはく)類を紅染めにしたり、化粧の材料にしたり、食料品を赤く染めて祝儀に用いたりする。紅染めにするには、ベニバナを水に浸して黄色素が出るのをみて袋に入れ、これをもみ出す。半日以上経過してから、アルカリ剤を加えて放置しておく。一晩たって、これを絞ると花が白くなり、水は褐色を呈するようになる。この水に、さらに酸を加えると鮮紅色となる。この中に布帛を入れて、しばらく放置したものを薄い酢酸液に浸し、水洗いして乾燥するとできあがる。この方法を繰り返すとしだいに濃くなり、望む色合いが出るようになる。
[遠藤 武]
化粧用の紅はまず紅餅(もち)づくりから始まる。7月上旬に黄色いベニバナの花をむしり取り、水で洗って花の毛羽を取り去り、これを足で踏んでから莚(むしろ)を敷いた箱に広げて、一晩ねかせると花は発酵して赤くなる。これを臼(うす)で搗(つ)いて餅のようにし、両手で団子のように丸め、この上から莚をかけて踏むと、平たい餅の形となる。これが紅餅で、乾燥させたものを紅屋に運ぶのである。紅屋では、紅餅を一晩水につけて黄色素を絞り、残った餅に木灰(アルカリ)を加え、ぬるま湯を注いでその上澄みをとる。さらに木灰を加えて何回となく絞り、夾雑物(きょうざつぶつ)を取り去るために麻布を入れ、少しずつ酸を加えて麻に染め付けてから、これをろくろで水切りをし、固まった麻に酸を加えて絞ると、赤黒い液が得られる。これに酸を加えると液は真っ赤となり、紅分が沈殿する。これを羽二重(はぶたえ)で漉(こ)すと紅が残る。これを猪口(ちょこ)、茶碗(ちゃわん)などに塗り付けたものが小町紅で、江戸時代には寒(かん)に売り出されるのをとくに寒紅とか丑紅(うしべに)と称し、女性たちは競って購入した。
[遠藤 武]
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紅【べに】
ベニバナからとる赤い色素。主成分はカルタミンで,古くから化粧料,画料,染料とされた。花弁を圧搾して餅(もち)紅(板紅)を作り,灰汁(あく)に浸して色素を析出,酸を加えて沈殿させ絹布でこす。これを泥紅といい,猪口(ちょこ)や貝殻に塗り口紅とした。産地では山形県の最上(もがみ)紅が,製造では京都の京紅が有名。現在ではほとんど使用されない。→口紅/頬紅(ほおべに)
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紅(くれない)
日本のポピュラー音楽。歌は日本のバンド、X(エックス)。1989年発売。作詞・作曲:YOSHIKI。第22回日本有線大賞最優秀新人賞受賞。
紅(べに)
日本のポピュラー音楽。歌は女性演歌歌手、藤あや子。1996年発売。作詞:坂口照幸、作曲:水森英夫。
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出典 講談社色名がわかる辞典について 情報
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の紅の言及
【細り】より
…〈ほそりのヤレ出所は大和の壺坂この節を直すにゃノウサテ……〉という詞章のものなどが代表的なものとされるが,この詞章は,山梨県民謡《道志ほそり》として遺存する。〈忍ぶ細道に松と胡桃……〉の歌が本歌であろうともされるが,この詞章は,三味線組歌奥組の《細り》(組歌中唯一の三下り曲)の第1歌にとり入れられ,また,柳川流破手組の《下総(しもうさ)細り》の第7歌(野川流《紅(くれない)》の第5歌)でもある。なお,《下総細り》の第5・6歌(《紅》の第3・4歌)は,前述《道志ほそり》としても行われている。…
【口紅】より
…唇を美しく彩り,輪郭をととのえると同時に,唇の荒れを防ぐための化粧品。古くは植物性の染料をそのまま使っていたが,現代では主として色素(顔料,染料)を油脂と蠟との混融基剤に混和したものを棒状にした棒紅(ぼうべに)(リップスティック)と,容器に流し込んだ練紅(ねりべに)とがある。古代エジプトやメソポタミアでは,唇や頰は赤色黄土や[ヘンナ],[ベニバナ](紅花)からとった染料で彩っていた。…
【化粧品】より
…1948年施行の新薬事法によれば,化粧品とは人の身体を清潔にし,美化し,魅力を増し容貌を変え,皮膚や毛髪をすこやかに保つなどの目的で身体に塗擦,散布,その他これに類する方法で使用され,人体に対する作用の緩和なものをいう,とある。セッケン,化粧水,乳液,[クリーム]などのように肌を清潔にし整えることを目的とする基礎用化粧品と,ファウンデーション,紅(べに),[おしろい],[アイシャドー],[マニキュア]のように,色調によって肌色や立体感を調節する仕上用(メーキャップ)化粧品,さらに頭髪用化粧品,芳香用化粧品,薬用化粧品(医薬部外品)などに分類される。化粧品の同義語に化粧料があるが,歴史的には両者を区別して使ったほうが理解しやすい。…
【サンゴ(珊瑚)】より
…また白地のボケを〈マガイボケ〉などと呼ぶことがある。おもに高知県の沖合で採取される濃赤色の血赤(ちあか)サンゴはオックス・ブラッド(牡牛の血),紅(べに)ともいわれ,珍重される。赤白の小斑点のあるものは〈鹿の子(かのこ)〉と呼ばれる。…
※「紅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」