関(市)(読み)せき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「関(市)」の意味・わかりやすい解説

関(市)
せき

岐阜県中南部にある刃物工業都市。1950年(昭和25)関町が千疋(せんびき)村、田原(たわら)村を編入して、市制施行。1951年下有知(しもうち)村、1954年富野村、1955年小金田(こがねだ)村を編入。さらに2005年(平成17)には、武芸川(むげがわ)、武儀(むぎ)の2町、洞戸(ほらど)、板取(いたどり)、上之保(かみのほ)の3村を編入した。この結果、市域北西北東に延び、面積は従前の4倍強となった。中心市街地は、長良(ながら)川の支流津保川(つぼがわ)の北岸の台地に発達。長良川鉄道、国道156号、248号、418号が通じ、東海北陸自動車道の関インターチェンジ、東海環状自動車道の関広見インターチェンジも設置され、交通も便利。また、北部を国道256号が縦貫する。関の名を全国に高めた刀鍛冶(かじ)は鎌倉時代におこり、戦国時代には全盛期を迎え、初代孫六兼元(かねもと)の作が有名。しかし、江戸時代には衰え、鍛冶職は、1597年(慶長2)の170軒から、1872年(明治5)の61軒に減少。明治中期からポケットナイフの生産が輸出とともに伸び、剃刀(かみそり)の替刃包丁、鋏(はさみ)なども生産されてきた。また、第二次世界大戦後、とくに洋食器刃物の生産が駐留アメリカ軍の需要や輸出に支えられて発展。刃物は、替刃のように一貫生産されるものもあるが、多くの工程のうち、研磨作業をはじめ各種の加工作業は、関市および近接市町で小規模な家内工業として下請けされている。一方、縫製業や自動車部品製造業なども伸びつつある。北東部や北西部の山村では木材の生産が盛んで、関刃物の研磨や家具製造なども行われている。国指定史跡の弥勒寺跡(みろくじあと)のほか、刀鍛冶の守護神春日(かすが)神社や吉田観音(きったかんのん)とよばれる新長谷(しんちょうこく)寺のほか、宗休(そうきゅう)寺(関善光寺)もある。面積472.33平方キロメートル、人口8万5283(2020)。

[上島正徳]

『『関市史』(1967・関市)』『『新修関市史』全8巻(1993~1999・関市)』


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