デジタル大辞泉
「難」の意味・読み・例文・類語
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なん【難】
[1] 〘名〙
① 欠点を責めたてること。なじること。そしること。非難。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「東宮、さとり有る御子なり、もののしせん人の、なんいたすべき御子にあらず」 〔
東方朔〕
② 非難すべき点。難点。欠点。短所。おちど。
きず。
※源氏(1001‐14頃)
帚木「なよびかに女しと見れば、あまり情にひきこめられて、とりなせばあだめく、これを、はじめのなむとすべし」
③ 仏語。論義会の問答で、竪者
(りっしゃ)の答に問者が加える
異議。
※醍醐寺新要録(1620)「静寛記云〈略〉又問者之題、竪者之初答許にて、未レ加レ難之時、申上事あり」
④ 身を危うくするようなこと。災難。わざわい。苦しい目。つらい目。
※観智院本三宝絵(984)上「君始め約を結しに、縦ひ諸の難有りとも、吾が心に不違(たがは)じと云ひき」 〔易経‐否卦〕
⑤ (「難をかまえる」「難におもむく」などの形で用いる) 特に、戦争。いくさ。
※新聞雑誌‐七号・明治四年(1871)七月「彼国『
仏国(フランス)』との確執発り、彼の二氏も亦難
(ナン)に赴
(おもむ)き」 〔春秋公羊伝‐隠公四年〕
⑥ たやすく処理できないむずかしいこと。むずかしさ。困難さ。また、むずかしい
物事。困難な物事。めんどうな物事。⇔
易(い)。
[2] 〘
語素〙 他の語の上、または下に付けて、困難な
状態、思うようにいかない状態などの意を表わす。「
難事業」「
難工事」「
就職難」など。
※引越やつれ(1947)〈
井伏鱒二〉西南館「下宿屋難にある私の
煩悶を一挙に
解決してくれた」
かた・い【難】
〘形口〙 かた・し 〘形ク〙
※万葉(8C後)一四・三四〇一「中麻奈(なかまな)に浮き居る船の漕ぎ出なば逢ふこと可多思(カタシ)今日にしあらずは」
※
徒然草(1331頃)一〇九「鞠
(まり)も、かたき所を蹴出してのち、やすく思へば、必ず落つと侍るやらん」
② (有ることがむずかしいの意) めったにない。まれだ。
※古今(905‐914)
物名・四四三「ありとみてたのむぞかたきうつせみのよをばなしとや思ひなしてん〈よみ人しらず〉」
かた‐げ
〘形動〙
かた‐さ
〘名〙
がた・い【難】
(形容詞ク活用型) (形容詞「かたい(難)」から) 動詞の
連用形に付いて、その
動作の
実現が困難であることを表わす。容易には…できない。…しにくい。…するのがむずかしい。
※万葉(8C後)一四・三五七三「あしひきの山かづらかげましばにも得我多岐(ガタキ)かげを置きや枯らさむ」
※徒然草(1331頃)
一九「すべて、思ひすてがたきこと多し」
かたき【難】
〘名〙 (形容詞「かたし」の
連体形を
名詞に用いたもの) むずかしいこと。たやすくないこと。むずかしさ。困難。⇔
やすき。
※狂言記・箕被(1700)「道はちかきにあれど、是を遠きに求、ことはやすきにあれど、是をかたきに求といふ」
がた【難】
(形容詞型活用の接尾語「がたい(難)」の語幹) 動詞の連用形に付いて、そうするのが困難である意を示す。→
がたに。
※伊勢物語(10C前)五〇「吹く風にこぞの桜は散らずともあな頼みがた人の心は」
かたみ‐・す【難】
〘他サ変〙 むずかしいとする。困難であると思う。かたんず。
※万葉(8C後)一二・三二一五「白栲(しろたへ)の袖の別れを難見為(かたみし)て荒津の浜に宿りするかも」
なん・じる【難】
〘他ザ上一〙 (サ変動詞「なんずる(難)」の上一段化したもの) =
なんずる(難)※稲熱病(1939)〈岩倉政治〉五「野木の地方ばなれしたやり方を難じる気配が」
かたん‐・ず【難】
〘他サ変〙 「かたみす(難)」の変化した語。〔書陵部本名義抄(1081頃)〕
※蓬莱曲(1891)〈北村透谷〉二「おのれてふものを御することを難(カタ)んずるも是非なけれ」
なん‐・ずる【難】
〘他サ変〙 なん・ず 〘他サ変〙 非難する。悪く言う。難癖をつける。難じる。
※源氏(1001‐14頃)帚木「なんずべきくさはひまぜぬ人は、いづこにかはあらむ」
むずかし むづかし【難】
〘名〙 (形容詞「むずかしい」の語幹から) 解決の困難な事柄。もめごと。
※洒落本・青楼五雁金(1788)一「文七がきた時むづかしでもできては、たがいにわるい」
むつかし【難】
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報