(読み)ナン

デジタル大辞泉 「難」の意味・読み・例文・類語

なん【難】

災い災難。「あやうくを逃れる」
むずかしいこと。むずかしさ。困難。「を避け、やすきに就く」
欠点。「少々のある品」「強いてをいえばやや甘さが足りない」
非難すべき点。難点。「うかつだったとのを免かれない」
[類語](1災害災難災い被害禍害惨害惨禍災禍被災天変地異天災人災地変風害風水害冷害霜害雪害干害渇水旱魃水涸れ病虫害虫害煙害公害薬害災厄凶事禍根舌禍筆禍試練危難国難水難水禍海難受難遭難罹災貧乏くじ馬鹿を見る弱り目にたたり目泣き面に蜂/(3欠陥難点短所くせ遜色弱点欠点盲点瑕疵かし瑕瑾かきんあら弱み泣き所負い目引け目付け目デメリットウイークポイントハンディキャップ

なん【難】[漢字項目]

[音]ナン(呉) [訓]かたい むずかしい むつかしい にくい
学習漢字]6年
事態がうまくいかない。容易でない。むずかしい。「難易難解難局難渋難所難色難題難病難問困難至難
つらく苦しい事態。苦しみ。災い。「海難艱難かんなん救難苦難国難困難災難受難殉難水難遭難多難盗難避難
非を責める。なじる。「難詰難点非難弁難論難
非難すべき点。欠点。「七難無難

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精選版 日本国語大辞典 「難」の意味・読み・例文・類語

なん【難】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 欠点を責めたてること。なじること。そしること。非難。
      1. [初出の実例]「東宮、さとり有る御子なり、もののしせん人の、なんいたすべき御子にあらず」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
      2. [その他の文献]〔東方朔〕
    2. 非難すべき点。難点。欠点。短所。おちど。きず。
      1. [初出の実例]「なよびかに女しと見れば、あまり情にひきこめられて、とりなせばあだめく、これを、はじめのなむとすべし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
    3. 仏語。論義会の問答で、竪者(りっしゃ)の答に問者が加える異議。
      1. [初出の実例]「静寛記云〈略〉又問者之題、竪者之初答許にて、未難之時、申上事あり」(出典:醍醐寺新要録(1620))
    4. 身を危うくするようなこと。災難。わざわい。苦しい目。つらい目。
      1. [初出の実例]「君始め約を結しに、縦ひ諸の難有りとも、吾が心に不違(たがは)じと云ひき」(出典:観智院本三宝絵(984)上)
      2. [その他の文献]〔易経‐否卦〕
    5. ( 「難をかまえる」「難におもむく」などの形で用いる ) 特に、戦争。いくさ。
      1. [初出の実例]「彼国『仏国(フランス)』との確執発り、彼の二氏も亦難(ナン)に赴(おもむ)き」(出典:新聞雑誌‐七号・明治四年(1871)七月)
      2. [その他の文献]〔春秋公羊伝‐隠公四年〕
    6. たやすく処理できないむずかしいこと。むずかしさ。困難さ。また、むずかしい物事。困難な物事。めんどうな物事。⇔易(い)
      1. [初出の実例]「欧羅巴の文明を求るには難を先にして易を後にし」(出典:文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉一)
      2. [その他の文献]〔論語‐雍也〕
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙 他の語の上、または下に付けて、困難な状態、思うようにいかない状態などの意を表わす。「難事業」「難工事」「就職難」など。
    1. [初出の実例]「下宿屋難にある私の煩悶を一挙に解決してくれた」(出典:引越やつれ(1947)〈井伏鱒二〉西南館)

かたき【難】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形容詞「かたし」の連体形を名詞に用いたもの ) むずかしいこと。たやすくないこと。むずかしさ。困難。⇔やすき
    1. [初出の実例]「道はちかきにあれど、是を遠きに求、ことはやすきにあれど、是をかたきに求といふ」(出典:狂言記・箕被(1700))

がた【難】

  1. ( 形容詞型活用の接尾語「がたい(難)」の語幹 ) 動詞の連用形に付いて、そうするのが困難である意を示す。→がたに
    1. [初出の実例]「吹く風にこぞの桜は散らずともあな頼みがた人の心は」(出典:伊勢物語(10C前)五〇)

むずかしむづかし【難】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形容詞「むずかしい」の語幹から ) 解決の困難な事柄。もめごと。
    1. [初出の実例]「文七がきた時むづかしでもできては、たがいにわるい」(出典:洒落本・青楼五雁金(1788)一)

むつかし【難】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙むずかしい(難)

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普及版 字通 「難」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 18画

(旧字)
人名用漢字 19画

[字音] ナン・ダン・ダ
[字訓] なやむ・なじる・かたし・むつかしい

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
旧字はに作り、(かん)+隹(すい)。〔説文〕四下に「鳥なり」とし、声とする。鳥名としては、王紹蘭の〔説文段注訂補〕に、南越の木難また難にして金翅鳥、その本名を難というとするが、字はもっぽら難易の意に用いる。は金文の字形によると矢(かぶらや)の形と火に従っており、火矢の形かとみられ、火矢を以て隹(鳥)をとる法を示す字かと思われる。儺(だ)(鬼やらい)の儀礼と関係があり、鳥占(とりうら)に関して、呪的な目的で行われたものであろう。それでなやむ意から、困難の意となった。金文の〔斉大宰盤(せいたいさいばん)〕に「靈命老いからんことを」のように用いる。

[訓義]
1. なやむ、なやます、わずらい、うれえ、くるしみ。
2. せめる、とがめる、なじる。
3. かたい、むつかしい、なしがたい、こばむ、はばむ、はばかる。
4. 儺と通じ、おにやらい。
5. 阿難(あだ)。草がわかわかしい、茂る、美しい。

[古辞書の訓]
名義抄 カタシ・クルシブ・ハヂ・ナヤム・モユ・ウヂハヤシ・ハバカル・ウレフ・ウム・ムチハヤク・タシナム 〔立〕 カタシ・ハバカル・ナヤム・ツツシム・ナヅム・ハバカリ・ソシル

[声系]
〔説文〕に声として・儺・など五字を収める。(だん)と通用の字。儺・の声義を承け、その呪儀に関する字であろう。

[熟語]
難易・難謂・難解・難関・難艱・難顔・難期・難義・難疑・難儀・難詰・難局・難極・難句・難月・難険・難行・難航・難字・難事・難処・難所・難勝・難色・難船・難阻・難題・難治・難得・難駁・難物・難弁・難保・難民・難問・難路・難老
[下接語]
阿難・畏難・火難・家難・禍難・解難・外難・扞難・患難・戡難・艱難・危難・奇難・詰難・急難・救難・凶難・苦難・遇難・剣難・嶮難・蹇難・行難・攻難・後難・克難・国難・困難・災難・済難・作難・至難・七難・受難・恤難・殉難・女難・小難・攘難・水難・綏難・世難・説難・責難・阻難・遭難・賊難・多難・大難・脱難・黜難・屯難・定難・敵難・殄難・難・盗難・内難・万難・批難・非難・避難・赴難・無難・兵難・弁難・法難・免難・問難・厄難・憂難・厭難・罹難・臨難・論難

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