(読み)ユウ

デジタル大辞泉 「雄」の意味・読み・例文・類語

ゆう【雄】[漢字項目]

常用漢字] [音]ユウ(漢) [訓]お おす
〈ユウ〉
おす。「雄蕊ゆうずい雄性雌雄
おおしい。勇ましく強い。胆力・知力のすぐれた人。「雄姿・雄壮・雄弁英雄奸雄かんゆう梟雄きょうゆう群雄豪雄両雄老雄
規模が大きい。「雄渾ゆうこん雄大雄図雄飛雄編
〈お〉「雄牛雄蕊おしべ
〈おす〉「雄犬」
[名のり]かず・かた・かつ・たか・たけ・たけし・のり・よし
[難読]雄叫おたけ雄鳥おんどり

おす〔をす〕【雄/×牡】

動物性別で、精巣をもち、精子をつくるほう。また、植物雄花をつけるもの。お。⇔めす
雄ねじ。またはコネクターなどの接続部品において、接続部が凸になっている側(ピン)。⇔
[類語]男性男子野郎男児おのこ壮丁そうてい壮夫ますらお丈夫じょうふ紳士殿方ジェントルマン有性無性雌雄

ゆう【雄】

生物のおす。おとこ。
強く勢いのあること。特にすぐれていること。また、その人。「政界の
[類語]英雄ヒーロー老雄群雄奸雄両雄風雲児巨星巨人英傑傑物傑士傑人人傑俊傑怪傑大人物逸材大物女傑大器

おん〔をん〕【雄】

おす。お。⇔めん
「―はいないのだが、どこかで子種をもらって来たよ」〈志賀暗夜行路

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精選版 日本国語大辞典 「雄」の意味・読み・例文・類語

ゆう【雄】

  1. 〘 名詞 〙
  2. おす。牡。古くは、鳥類のおすにいう。⇔雌(し)
    1. [初出の実例]「此劔必ず雄(ユウ)と雌と二つ有るべし。其雌雄一所に在ざる間、是を悲で泣者也」(出典:太平記(14C後)一三)
    2. [その他の文献]〔説文解字‐四篇・佳部〕
  3. ( 形動 ) 雄々しいこと。強くいさましいこと。また、すぐれていること。傑出していること。また、その人。
    1. [初出の実例]「新田左中将の首京都に著ければ、是れ朝敵の最(さい)、武敵の雄(ユウ)なりとて、大路を渡して獄門に懸らる」(出典:太平記(14C後)二〇)
    2. [その他の文献]〔春秋左伝‐襄公二一年〕

【雄・男・牡・夫】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 男。男性。また、夫。⇔め。
    1. [初出の実例]「汝(な)こそは 遠(ヲ)にいませば 〈略〉若草の 妻持たせらめ」(出典:古事記(712)上・歌謡)
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙
    1. 人間の男性を表わす。「ますらお」「うわお(後夫)」
    2. 動植物のおすを表わす。「お鹿」「男餓鬼
    3. ( 陰に対して ) 陽を表わす。「めお(陰陽)」
    4. 男らしい、勇ましいなどの意を表わす。「雄たけび」「雄心」
    5. 相対するもののうち、男性的な連想を伴うもののほうに付ける。「男かわら」「男松」「雄竹」

おすをす【雄・牡】

  1. 〘 名詞 〙 一般に精巣をもち、精子をつくる動物をいう。植物などでは小配偶子をつくるものや、雄の形質を多くもつ個体をいう。お。おん。⇔雌(めす)。〔倭語類解(17C後‐18C初)走獣〕
    1. [初出の実例]「私の方に矮鶏(ちゃぼ)の雌(めす)が御座りますが、雄(ヲス)がないので」(出典:人情本・恋の若竹(1833‐39)中)

おんをん【雄・牡】

  1. 〘 名詞 〙 お。おす。⇔めん
    1. [初出の実例]「おんとめんとほたへてゐる中のよいのが、ちんちんぢゃ」(出典:咄本・新板一口ばなし(1839)一六)
    2. 「鶏鳥(にわとり)の牡(ヲン)なり」(出典:狐の裁判(1884)〈井上勤訳〉一)

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普及版 字通 「雄」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 12画

[字音] ユウ
[字訓] おす・おとこ・まさる・さかん

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(こう)とされているが、声が合わず、右の変化したものであろう。漢碑には右に従う字が多い。〔説文〕四上に「鳥なり」とし、声とする。鳥の雌雄をいう字であるが、雄壮・雄健など、男性的な徳性をいうことが多い。

[訓義]
1. おす、おんどり。
2. おとこ、おおしい。
3. まさる、かつ、おさ、かしら
4. さかん、あざやか、立派。

[古辞書の訓]
名義抄〕雄 ヲドリ・スグル・カツ・ウルハシ・ヤドル・サキ・ヨル・ヲ 〔字鏡集〕雄 スグル・ヲドリ・ヲヲシ・マク・カツ・ウルハシ・ヲ・ヤドル・サキ・ヨシ

[語系]
雄hiungは右hiuと声義近く、雄はもと右(ゆう)声の字である。また弘hung、宏・hongとも声義の関係がある。右よりへの転化が容易であったのであろう。

[熟語]
雄偉・雄・雄艶・雄快・雄捍・雄気・雄毅・雄奇・雄規・雄・雄強・雄勁・雄・雄傑・雄跨・雄耿・雄狡・雄・雄豪・雄国・雄渾・雄才・雄猜・雄材・雄算・雄姿・雄視・雄志・雄雌・雄児・雄辞・雄俊・雄雋・雄駿・雄勝・雄心・雄深・雄臣・雄声・雄盛・雄節・雄戦・雄贍・雄争・雄壮・雄爽・雄大・雄胆・雄誕・雄断・雄談・雄長・雄張・雄鎮・雄図・雄覇・雄抜・雄藩・雄班・雄飛・雄富・雄武・雄風・雄文・雄・雄弁・雄・雄・雄名・雄略・雄烈・雄劣
[下接語]
英雄・奸雄・姦雄・鬼雄・強雄・梟雄・驍雄・群雄・豪雄・才雄・詞雄・雌雄・七雄・俊雄・文雄・両雄

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「雄」の意味・わかりやすい解説

雄 (おす)
male

一般には,雌雄異体の生物において精巣,すなわち精子を形成する器官をもつほうの個体をさす。植物や下等動物では,比較的小さくて活発に運動する小配偶子を相手個体(雌)へ移すほうの個体を雄という。しかし,遺伝的に雄であっても,下等生物では,環境条件や発生途中で性が転換するものがあり,またアオミドロや魚のベラやハナダイのように個体の性が相対的にきまるものもいるため,生物学的には雄に共通な性質(雄形質という)をより多くもった個体を雄という。雄形質とは,精子をつくる精巣(一次性徴),輸精管や貯精囊など生殖腺付属器官(二次性徴),そして雌とはちがう雄に特有の外形(三次性徴)をいう。脊椎動物,特に哺乳類では,雄の一次性徴には,いくつかの遺伝子,特にH-Y抗原に関する遺伝子が,二次性徴には雄性ホルモン(アンドロジエン)が関与しており,近年その解析が活発にすすめられている。

 植物ではタバコやドクダミ,動物ではハチやアリマキ,ワムシやある種の魚など自然界には広く単為生殖によって子孫を増やす生物が知られている。また,実験的にウニや魚やカエル,さらに哺乳類でも人為単為発生を誘起することができるのみならず,マウスにおいて単為発生卵を成体まで成長させることが成功している。このように雌のみで種を増やすことが可能なので雄は無用の存在にみえる。しかし,進化の立場からみると,雄と雌の有性生殖によって遺伝子の組換えをおこし,さまざまな環境の変化に適応しうる多様な子孫をうみだすという意味で,雄はなくてはならない存在だといえる。C.vonリンネは,雄の生物学的記号として♂を採用したが,これは,占星術ローマの軍神マルスと結びつけられる火星のシンボルを転用したものである。

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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「雄」の意味・わかりやすい解説


おす

雌雄異体の生物のなかで、精巣のある動物個体や、小配偶子を生産する植物個体をさす。雌の対語。ただし、下等生物では雄と雌の区別は個体間の相対的な関係で決まる場合もある。有性生殖において、雄のつくる配偶子(精子など)は雌の生産する配偶子(卵など)に比べて小形で、運動性のあるものも多い。動物では生殖に際して性行動がみられるものが多いが、縄張り行動、異性の探索、求愛、交尾などの諸行動において積極的な役割を果たすのは主として雄である。動物の雄では、雌にない外形的あるいは行動的特徴(二次性徴)のあるものが多いが、これらの特徴の多くは前述の諸行動において信号的な役割を果たしている。

[木村武二]

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