(読み)スエ

デジタル大辞泉 「末」の意味・読み・例文・類語

すえ〔すゑ〕【末】

もとに対して)続いているものの先端の方。末端。「毛の
川下かわしも。下流。
「山中の渓流の―である河は」〈大岡・野火〉
中央から離れた端の所。場末・野ずえ・末席など。「の座」
本筋から隔たった物事。つまらないこと。「そんな細かいことはだ」
物事の行われたのち。あげく。「ごたごたの落ち着く」「苦心の完成した」
ある期間の終わりのほう。「今月の
一生の最後の時期。晩年。「人一代の
今からのち。行く末。将来。「が思いやられる」
子孫。「源氏の
10 一番あとに生まれた子。末っ子。「は女です」
11 仏教がおとろえ人心がすさみ、道徳も秩序も乱れ衰えた時代。末世まっせ。「世もとなる」
12 短歌のしもの句。
13もとに対して)後編。
14 神楽歌を奏するのに、神座に向かって右方の座席。また、そこにすわる奏者。
15 草木の伸びている先。こずえ、枝先など。
「うぐひすの…紅梅の―にうち鳴きたるを」〈・若菜上〉
16 山頂。山のいただき。
「高山、短山ひきやまの―より」〈祝詞・六月晦大祓〉
17 江戸時代、将軍・大名などに仕えた女中。おすえ。
18 身分の低いもの。下等。下級。
「―の傾城四人まゐりて」〈浮・一代男・八〉
[下接語]し方行く末・末の末・場末もと行く末(ずえ)末末月末野末葉末穂末
[類語](1先端突端あたま末端先っぽヘッドはな端っこ突先とっさき突端とっぱな一端いったん/(6終わりしまい最後最終ラスト末尾どん詰まり結果/(8将来今後未来近未来行く末末末前途向後自今来たる目先行く先行く手行く行く行方先行き先先生い先あとのちあとあとのちのち後年他年この後これから向こう

まつ【末】[漢字項目]

[音]マツ(呉) バツ(漢) [訓]すえ うら うれ
学習漢字]4年
〈マツ〉
物の端の方。物事の終わりの方。最後。果て。すえ。「末裔まつえい末期まっき末期まつご末日末梢まっしょう末端末尾末葉巻末期末結末月末毫末ごうまつ歳末始末終末週末端末顛末てんまつ年末幕末文末本末
中心的でないこと。主要でない。とるにたりない。「末学末席末節末輩瑣末さまつ粗末
小さく細かいもの。「粉末
〈バツ〉
すえ。終わり。「末子末孫末弟
主要でない。下位。「末席
[補説]の語例の「末」は「マツ」とも読む。
〈すえ(ずえ)〉「末広月末野末葉末場末
[名のり]とめ・とも・ひで・ひろし・ほず・ま
[難読]末枯うらが末生うらな木末こぬれ

うら【末】

植物の葉や枝の先。こずえ。うれ。
「小里なる花橘はなたちばなを引きぢて折らむとすれど―若みこそ」〈・三五七四〉
すえ。端。「はず
[補説]古くは「うれ」が単独で用いられたのに対し、「うら」は「うら葉」のような複合形に用いられることが多い。

まつ【末】

終わり。すえ。「三月の」「世紀
こな。粉末。
「薬ヲ―ニスル」〈和英語林集成

うれ【末】

草の葉や茎、木の枝の先端。こずえ。うら。
「うちなびく春立ちぬらし我がかどの柳の―にうぐひす鳴きつ」〈・一八一九〉

ばつ【末】[漢字項目]

まつ

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精選版 日本国語大辞典 「末」の意味・読み・例文・類語

すえすゑ【末】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 草木の上方の末端。また、こずえや枝先など。
    1. [初出の実例]「奇(めつら)しき鳥(とり)来て杜(かつら)の杪(スヱ)に居り」(出典:日本書紀(720)神代下(兼方本訓))
    2. 「うぐひすの、若やかに、ちかき紅梅のすゑにうち鳴きたるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
  3. 物の先端。末端。
    1. [初出の実例]「御峰(みを)の竹を 掻き刈り 末(すゑ)押し縻(な)ぶる如(な)す」(出典:古事記(712)下・歌謡)
    2. 「毛のすゑには金の光し、ささやきたり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  4. 山のいただき。山頂。また、山の奥。
    1. [初出の実例]「宮の材(き)(たた)れ、山の椒(スヱ)(うつも)れたり」(出典:日本書紀(720)斉明二年(北野本訓))
  5. 道や野のはて。はずれ。
    1. [初出の実例]「むさしのやゆけども秋のはてぞなきいかなる風か末に吹くらん〈源通光〉」(出典:新古今和歌集(1205)秋上・三七八)
  6. 子孫。あなすえ。
    1. [初出の実例]「もののたがひ目ありて、そのむくいにかくすゑは無きなり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
    2. 「伊弉諾(いざなぎ)の裔(スヱ)、人の子ら、ながき嘆(なげき)のなからめや」(出典:二十五絃(1905)〈薄田泣菫〉矢馳使の歌・あまくだり)
  7. 将来。未来。ゆくすえ。のち。
    1. [初出の実例]「大太刀を たれはき立ちて 抜かずとも 須衛(スヱ)はたしても 会はむとぞ思ふ」(出典:日本書紀(720)武烈即位前・歌謡)
  8. ある期間の終わり。おわり。末期
    1. [初出の実例]「七日の頭(スヱ)に到りて、肉団(ししむら)開敷(ひら)きて百の童子有り〈真福寺本訓釈 頭 数恵爾〉」(出典:日本霊異記(810‐824)下)
  9. 生涯の終わりの時期。晩年。
    1. [初出の実例]「残りとまれる齢(よはひ)のすゑにもあかず悲しと思ふこと多く」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
  10. 道義や政治、風俗、財産などの衰えた世。末の世。
    1. [初出の実例]「彌陀の教へをたのまずは、末の法、よろづ年々ふるまでに余経の法はよもあらじ」(出典:光悦本謡曲・当麻(1435頃))
  11. 月末。下旬。
    1. [初出の実例]「時に建久四年、五月のすゑのいつの夜の、天はくらしと申せども」(出典:幸若・夜討曾我(室町末‐近世初))
  12. 時間がかなりたったあと。
    1. [初出の実例]「むげのすゑに参り給へりし入道の宮に」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
  13. 物事の行なわれたあと。結果。また、なごり。
    1. [初出の実例]「さらばかうにこそはと打ち解け行くすゑにありありて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
  14. 人の行ったその方向。これから行く方向。
    1. [初出の実例]「飛ぶが如くに迯(にげ)けるを、人末に多く走合て捕(とらへて)打伏せて縛て」(出典:今昔物語集(1120頃か)二三)
  15. 複数の子のうち、いちばん年少の子。末子。
    1. [初出の実例]「かく心ことなる御腹にて、すゑに出ておはしたる」(出典:源氏物語(1001‐14頃)柏木)
  16. 幼少。
    1. [初出の実例]「すゑの君だち思ふさまにかしづき出だして見むとおぼしめすにぞ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)絵合)
  17. 末座。末席。下座。
    1. [初出の実例]「みこたちの御座のすゑに源氏つき給へり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
  18. 短歌の下の句
    1. [初出の実例]「かち人の渡れど濡れぬえにしあれば、と書きて、すゑはなし」(出典:伊勢物語(10C前)六九)
  19. 文や単語の終わり。文末や語尾
    1. [初出の実例]「『色変はる袖をば露の宿りにてわが身ぞさらにおき所なき、はつるる糸は』とすゑは言ひ消ちて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)椎本)
  20. 後編。
    1. [初出の実例]「巻上 末」(出典:明衡往来(11C中か))
  21. もと。起点
    1. [初出の実例]「明暁寅刻虧初、辰刻復末」(出典:玉葉和歌集‐寿永元年(1182)一一月一五日)
  22. 宮中、将軍、大名などにつかえた女中。おすえ。
    1. [初出の実例]「得選女官六人夜参。召末給酒」(出典:看聞御記‐永享七年(1435)一二月二六日)
  23. 下等。下級。また、そのもの。
    1. [初出の実例]「末(スヘ)の傾城四人まいりて」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)八)
  24. 主要でないこと。
  25. 下流。川下。しも。
    1. [初出の実例]「石清水流れのすゑぞたのまるる心もゆかぬ水屑とおもへば」(出典:梁塵秘抄(1179頃)二)
  26. 神楽歌を奏するのに神座に向かって右方の座席。また、そこにすわる奏者。末方。末方の主唱者である末拍子(すえびょうし)にもいう。また、その受持ちの歌の部分。
    1. [初出の実例]「〈本〉榊葉の 香をかぐはしみ〈略〉〈末〉神籬の 御室の山の 榊葉は 神の御前に 茂りあひにけり」(出典:神楽歌(9C後)採物)
  27. 七、または八をいう、呉服屋仲間の符丁。

まつ【末】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. こな。粉末。
      1. [初出の実例]「僧、松栢の脂の末を以て法義に令食しむ」(出典:今昔物語集(1120頃か)七)
    2. 中国の旧劇の役割の一つで、端役のこと。
      1. [初出の実例]「開場事を始るを、命(なづく)るに末(マツ)(〈注〉スヱ)ここにいふ立役すぢし也。序びらきに狂言のすぢをいふ をもてし」(出典:読本・曲亭伝奇花釵児(1804)序)
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 月や年など、ある期間の終わりにあたる時期。
    1. [初出の実例]「毎年末(マツ)予算案の編成をまって」(出典:東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉十二月暦)

うら【末】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 枝先。こずえ。うれ。
    1. [初出の実例]「小里(をさと)なる花橘を引きよぢて折らむとすれど宇良(ウラ)若みこそ」(出典:万葉集(8C後)一四・三五七四)
  3. 先端。すえ。
    1. [初出の実例]「箸の本末と云事個とは、ほそきはうら、ふときは本なり」(出典:京極大草紙(室町後)躾式法之事)

うれ【末】

  1. 〘 名詞 〙 草の茎や葉、木の枝などの先端。はずえ。こずえ。すえ。うら。
    1. [初出の実例]「後見むと君が結べる磐代(いはしろ)の小松が宇礼(ウレ)をまた見けむかも」(出典:万葉集(8C後)二・一四六)

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普及版 字通 「末」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 5画

[字音] マツ・バツ
[字訓] すえ・しも・よわい・ない

[説文解字]
[金文]

[字形] 指事
木の枝の末端。その部分に肥点を加えて、その部位を示す。位置的な表示の方法で、掌(てのひら)の上下を上下とするのと同じ。〔説文〕六上に「木上を末と曰ふ。木に從ひ、一其の上に在り」とするが、一はもと部位を示す肥点であった。末端であるから、弱小・終末の意がある。無・などと音が通じ、否定詞に用いる。

[訓義]
1. すえ、こずえ、さき。
2. こな、しも、おわり、えだは。
3. よわい、かすか、小さい。
4. くず。
5. 演劇の立役者、シテ。
6. 無・などの音と通じ、ない、なかれ、あらず。

[古辞書の訓]
名義抄〕末 スヱ・ノチ・ナシ・ハシ・ヲハル・ヲハリ・エダ/末世 スヱノヨ 〔字鏡集〕末 ナシ・スヱ・キノエヘ(ダ)・トホシ・ハシ・エダ・ノチ・ヨハシ・ハテ・ツクス・ヲハリ

[声系]
〔説文〕に末声として・沫など四字を収める。は目明らかならず、沫は水沫、ともに末の声義を承ける字である。

[語系]
末muatは蔑miatと声近く、ともに否定詞に用いる。無・毋miua、mak、靡miai、(亡)・罔miuangも声近く、いずれも否定詞に用いる。〔論語、子罕〕「由末(な)きのみ」のように、〔論語〕に「末(な)し」を用いる例が多い。

[熟語]
末姻・末裔・末・末科・末学・末官・末季・末技・末境・末業・末契・末芸・末限・末減・末行・末坐・末歳・末作・末産・末師・末事・末疾・末緒・末梢・末世・末勢・末席・末戚・末節・末造・末俗・末属・末代・末端・末秩・末茶・末朝・末庭・末泥・末塗・末弩・末年・末派・末輩・末班・末品・末風・末編・末暮・末法・末民・末命・末薬・末葉・末利・末流・末僚・末路
[下接語]
裔末・末・巻末・季末・期末・澆末・結末・月末・毫末・些末・瑣末・座末・細末・歳末・始末・終末・週末・錐末・趨末・席末・浅末・粗末・疎末・旦末・端末・天末・末・年末・農末・卑末・末・眇末・粉末・末・豊末・本末・流末・僚末

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「末」の意味・わかりやすい解説


まつ
mo

中国演劇の役柄の一つ。元雑劇では主役として重要な役柄であったが,家従,馬夫など端役に変り,老生に組入れられ,次第にすたれつつある。老生は中年と老年を演じ黒いひげをつけるが,白いひげをつけた老年を末という。現在,末を除く4つが中国演劇の主要な役柄となった。 (→京劇 )

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