素直(読み)すなお

精選版 日本国語大辞典 「素直」の意味・読み・例文・類語

す‐なお ‥なほ【素直】

〘形動〙
飾り気がなくありのままであるさま。素朴。質朴。
書紀(720)神武即位前(北野本室町時代訓)「今、運(とき)、此屯蒙(わかくくらき)に属(あひ)、民(をほむたからのみこころ)朴素(スナヲ)なり」
古今(905‐914)仮名序「千はやぶる神世には、歌のもじも定まらずすなほにして」
② 心の正しいさま。ねじけた心、腹黒い心などを持っていないさま。正直。
源氏(1001‐14頃)初音「かくいとすなほにしもあらぬものをと思あはせ給ふ事もあらじやはとなむ思ふ」
徒然草(1331頃)八五「人の心すなほならねば、偽りなきにしもあらず」
③ 心や気だてが他に逆らわないで、おだやかなさま。ひねくれたところのないさま。従順
※源氏(1001‐14頃)若菜下「帝と聞こゆれど、ただすなほに、おほやけざまの心ばへばかりにて」
滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「お嬢さんは直(スナホ)だから、アイとお云ひだ」
④ とどこおりのないさま。物事が抵抗なくすんなりいくさま。また、平穏無事なさま。
極楽寺殿御消息(13C中)第四七条「仏法をあかめ、心を正直にもつ人は、今生もすなをに、後生極楽にまいり」
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「人情にかけた事をして善事があるものか。どうで直(すぐ)すなをにやァいくめへ」
形状がまっすぐであるさま。曲がったりゆがんだりしていないさま。
※寛永版曾我物語(南北朝頃)一「形のゆがめる時は影のすなほならんことを思ふ」
技芸などに癖がなくて正しいさま。
すなお‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「素直」の意味・読み・例文・類語

す‐なお〔‐なほ〕【素直】

[形動][文][ナリ]
ありのままで、飾り気のないさま。素朴。
「―なる山家やまが育ちのたのもしき所見えて」〈露伴風流仏
性質態度などが、穏やかでひねくれていないさま。従順。「素直性格」「素直に答える」
物の形などが、まっすぐで、ねじ曲がっていないさま。「素直な髪の毛」
技芸などにくせのないさま。「素直な字を書く」
物事が支障なく、すんなり進行するさま。
餌食を―に与へざれば、痩せおとろへてぞありける」〈仮・伊曽保・下〉
[派生]すなおさ[名]
[補説]インタビューでスポーツ選手などが用いる「素直に嬉しい」は、混じりけなしの嬉しさだと強調したのか、結果に不満はあるが、それはそれとして嬉しいとへりくだって見せたのか、はっきりしない言い方である。
[類語]内気弱気引っ込み思案気弱内弁慶陰弁慶臆病大人しいこわがり小心小胆怯懦怯弱意気地なし小心翼翼弱腰薄弱惰弱柔弱軟弱優柔不断やわやわ弱弱しい女女しい・弱音を吐く・音を上げる・悲鳴を上げる・気が弱い腰が弱い煮え切らない肝が小さい・肝っ玉が小さい・温順柔順従順温柔温良順良穏和おだやか物静かおとなしやか控えめ優しい・内向的・人見知りしんねりむっつりシャイ

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