春風駘蕩(読み)シュンプウタイトウ

デジタル大辞泉 「春風駘蕩」の意味・読み・例文・類語

しゅんぷう‐たいとう〔‐タイタウ〕【春風××蕩】

[ト・タル][文][形動タリ]
春風がのどかに吹くさま。「春風駘蕩たる穏やかな日和
物事に動じないで余裕のあるさま。ゆったりとのんびりしているさま。「春風駘蕩たる大人たいじん
[類語](1颯颯嫋嫋晴朗晴れやか晴れ晴れうららかうらうらのどか好天晴天/(2物静か内気弱気引っ込み思案気弱内弁慶陰弁慶臆病大人しいこわがり小心小胆怯懦きょうだ怯弱きょうじゃく意気地なし小心翼翼弱腰薄弱惰弱柔弱軟弱優柔不断やわやわ弱弱しい女女しい弱音を吐く・音を上げる悲鳴を上げる・気が弱い腰が弱い煮え切らない肝が小さい・肝っ玉が小さい・温順柔順従順温柔温良順良素直穏和おだやかおとなしやか控えめ優しい内向的人見知りしんねりむっつりシャイ心静か安らか安穏のどか悠長悠然悠悠悠揚浩然どっしり気長伸び伸び伸びやかのんびり屈託無い自然体のんどりしなやかしとやかなよやかなよなよしっとり物柔らか静静しずしずソフトおっとり婉然えんぜんしおらしい閑語たおやかナイーブ心優しい柔和温雅鷹揚おうよう静心しずこころ従容しょうよう悠悠閑閑おおどかつつましい奥ゆかしい泰然自若平静冷静安静しみじみしっぽりしんみり静まる温顔温容穏便粛粛静謐せいひつ静粛

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精選版 日本国語大辞典 「春風駘蕩」の意味・読み・例文・類語

しゅんぷう‐たいとう‥タイタウ【春風駘蕩】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用タリ 〙 春の風ののどかに吹くさま。また、人の態度性格、その場の雰囲気などがのんびりとして温和なさまのたとえ。
    1. [初出の実例]「陽艷三月、春風駘蕩(シュンプウタイタウ)の調に移ったのに」(出典恋慕ながし(1898)〈小栗風葉〉二三)
    2. 「春風駘蕩としてゐて起居動作が日常と少しも変ってゐなかった」(出典:家族会議(1935)〈横光利一〉)

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四字熟語を知る辞典 「春風駘蕩」の解説

春風駘蕩

春の風ののどかに吹くさま。また、人の態度や性格、その場の雰囲気などがのんびりとして温和なさまのたとえ。

[活用] ―たる・―として。

[使用例] 春風駘蕩、桜花まさに開かんとす。夜銀座におもむく。散策の人織るがごとし[永井荷風断腸亭日乗|1927]

[使用例] 容貌もごつく、学生を馬鹿呼ばわりして口が悪かったが、からだ全体に春風駘蕩たる風格を漂わせ、どこに居てもすぐ目につくような人であった[島尾敏雄*湾内の入江で|1982]

[使用例] こうしてみると、ホワースの牧師館の人々は、故国アイルランドの窮乏とはまるきり関係なく、春風駘蕩たる空気のなかにあったように見える[松本清張*過ぎゆく日暦|1990]

[解説] 「春風駘蕩たる○○」の形でよく使います。例文の[湾内の入江で]が典型的です。ここでは、海軍予備学生の指導官である少佐の様子を「春風駘蕩たる(=温和な)風格」と表現しています。
 「春風」というなじみ深い文字に、「駘蕩」という難しい文字が続く成語です。辞書では「駘蕩」は「のどかな様子」「穏やかな様子」と説明しますが、どうしてそうなるのでしょう。
 実は、漢字の意味はあまり考えなくてかまいません。「駘蕩」は、のどかさ、穏やかさを表すオノマトペ擬態語)で、漢字は音を表しているだけです。
 「駘」も「蕩」も、最初の子音が同じ(現代中国語ではd音)で、頭韻を踏んでいます。こういう熟語は、そうせいと言って、よくオノマトペとして使われます。
 もっとも、漢字の意味がまったく無関係とまでは言えません。「駘」はのろい馬の意味、「蕩」はゆらゆら広がる意味などでも使われます。春風ののどかな様子と通じる部分もあります。

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