和歌山[県](読み)わかやま

百科事典マイペディア 「和歌山[県]」の意味・わかりやすい解説

和歌山[県]【わかやま】

近畿地方南西部の県。県庁所在地は和歌山市。4724.69km2。100万2198人(2010)。〔沿革〕 かつての紀伊国にあたり,畿内に隣接するため,海岸部と高野山を中心に古くから開発された。中世には高野山,熊野三山,根来(ねごろ)寺の権力が増大,のち数十の小領主が割拠した。1619年徳川頼宣の和歌山居城後,江戸期を通じ紀伊徳川藩55万5000石の領地であった。1871年和歌山,新宮,田辺の3藩が県となり同年和歌山県に統一。〔自然〕 紀伊国は木国(きのくに)といわれるほどで,大部分紀伊山地の山地帯である。北境に和泉山脈が東西に走り,その南に中央構造線に沿って紀ノ川が西流,流域和歌山平野が広がる。紀伊山地を刻んで有田川,日高川,日置(ひき)川,古座川熊野川などが流れるが,いずれも河口部を除き流域平野は発達しない。紀伊水道に面する西部の海岸はリアス式海岸をなす。南端潮岬突出。南紀(南部)は北東流する黒潮の影響で海洋性気候を呈し温暖多雨,紀北(北部)は瀬戸内式気候で比較的少雨。沿岸部と内陸部の気温差が著しい。〔産業〕 産業別人口構成は第1次10.4%,第2次23.1%,第3次64.8%(2005)。耕地面積は7.7%で,その32%(2003)が和歌山平野を中心とする水田で,米の自給はできない。樹園地は61.5%(2003)を占め,古くからミカン類の多産地として有名で,有田川,紀ノ川などの流域の傾斜地をはじめ各地で栽培される。オレンジの輸入自由化以後ウメ,富有柿,モモへの転換が進んでいる。那賀郡のタマネギ,南紀海岸のエンドウの産が多い。県域の81%を林野が占める林産県で,スギ,ヒノキ,アカマツ,クロマツの美林が生育,製材・パルプ用材として切り出され,新宮,御坊などが大集散地をなす。特産のシュロや,シイタケ,たけのこも多い。勝浦,串本,田辺などの良港に富み水産業が盛んで,遠洋漁業が発達,カツオ,マグロ,サバ,ブリ,サンマの水揚げが多い。熊野灘沿岸のブリ定置網漁も有名。県下にある近畿大学の各水産研究所では,タイ,ヒラメの養殖実用化に成功,アユの養殖も盛ん。太地,古座はかつて捕鯨で栄えた。工業は田辺,新宮の製材,御坊の化学などのほか,在来の貝ボタン,シュロ皮製品,高野豆腐,漆器などの軽工業があるが,阪神工業地帯の延長として和歌山,海南に鉄鋼,下津・初島地区に石油精製などの重化学工業が立地,近年機械,精密機器,食品などの工場誘致が進められている。吉野熊野国立公園の熊野三山,瀞(どろ)峡,潮岬,瀬戸内海国立公園の友ヶ島,和歌浦,高野竜神国定公園の高野山,竜神温泉,南紀海岸の南国的景観と白浜温泉,椿温泉など観光資源が豊富である。奈良県,三重県にもまたがる〈紀伊山地の霊場と参詣道〉は2004年世界文化遺産に登録された。〔交通〕 海岸沿いに紀勢本線と国道42号線,紀ノ川沿いに和歌山線と国道24号線が通じ,大阪から海南市まで阪和自動車道が通じる。1994年近畿自動車道和歌山線が全線開通した。和歌山市周辺と高野山へは大阪から南海電鉄が通じるが,大部分を占める山間部は沿岸諸都市からのバス交通にたよるため不便である。
→関連項目近畿地方

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