ブラック(James Whyte Black)(読み)ぶらっく(英語表記)James Whyte Black

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ブラック(James Whyte Black)
ぶらっく
James Whyte Black
(1924―2010)

イギリスの薬理学者。スコットランドのハイランド地方に生まれる。1946年セント・アンドリューズ大学医学部を卒業、1947年シンガポールに渡り、エドワード7世大学で教職についた。1950年イギリスに戻り、グラスゴー大学を経て、1958年総合化学会社のICIに入社、1964年スミス・クライン・アンド・フレンチ研究所に移り、1973年ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの薬学部主任教授に就任した。その後、1977年ウェルカム研究所で部長職につき、1984年からロンドン大学キングズ・カレッジで薬学教授を務めた。

 交感神経の働きを調節するための神経遮断薬を研究し、1964年に心筋に関するβ(ベータ)受容体の遮断薬であるプロプラノロールの開発に成功、この薬は狭心症や高血圧の治療に広く用いられるようになった。さらにヒスタミン受容体の研究では、胃液分泌抑制作用をもつH2受容体遮断薬シメチジンを1975年に開発した。従来の新薬開発試行錯誤と偶然に頼っていたのに比べ、彼は仮説を立て、理論に基づいて合理的に薬を開発していった。1988年、「薬物療法における重要な原理を発見」したとして、アメリカのG・B・エリオン、G・H・ヒッチングスとともにノーベル医学生理学賞を受賞した。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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