デジタル大辞泉
「印」の意味・読み・例文・類語
じるし【印】
[接尾]人名や事物名の後半を略した形に付いて、その人や事物を遠まわしに言い表すのに用いる。
「丹―にかかるとまことに愚智だよ」〈人・梅児誉美・後〉
かね【▽印】
牛馬などの家畜のももに押す焼き印。飼育地・飼い主・品位などを示す。かなやき。
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いん‐・する【印】
[1] 〘他サ変〙 いん・す 〘他サ変〙 (古くは「いんず」とも)
① 印や型を押す。
※俳諧・蕪村句集(1784)秋「一行の雁や端山に月を印す」 〔旧唐書‐職官志・三〕
② ある力などを加えたしるしを残す。あとをつける。
※正法眼蔵(1231‐53)出家功徳「
剃髪染衣すれば、たとひ不持戒なれども無上大涅槃の印のために印せらるるなり」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈
夏目漱石〉九「吾が顔に印せられる痘痕の銘」 〔薛昭薀‐浣渓沙詞〕
③ 物の影や光などを他の物の上に投げかける。また、人の心に強い印象を与える。
※悪魔(1903)〈
国木田独歩〉五「此時ほど我心に其清くして澄たる、意味ありげなる趣を印
(イン)したことはないからである」 〔范成大‐丙戌登姑蘇台詩〕
④ 教えなどを人に強く吹きこむ。
※日蓮遺文‐守護国家論(1259)「一代聖教之外仏印二迦葉一伝二此法一」
[2] 〘自サ変〙 いん・す 〘自サ変〙
① ある力の加わったしるしが残る。あとがつく。
※
四河入海(17C前)八「屐をはいて遊だあとが苔に印して有ぞ」
② 物の影や光が他の物の上に現われる。
※自然と人生(1900)〈
徳富蘆花〉湘南雑筆「カイヅは隊をなして〈略〉水を游
(およ)げば、其影ちらちらと底に印
(イン)せり」
③ 仏語。師と弟子の心が一致する。会得開悟する。
※
空華日用工夫略集‐永和三年(1377)五月二日「高野大師嘗印
二禅宗
一曰、以
二西天仏心
一印
二東土仏心
一」
いん【印】
〘名〙
① 判(はん)。木、角(つの)、鉱物、金属などに文字や図形を彫刻し、それに墨や印肉を付けて、文書などに押し、個人、官職、団体などのしるしとするもの。はんこ。印判。印形。印章。おしで。
※続日本紀‐慶雲四年(707)三月甲子「給二鉄印于摂津伊勢等廿三国一。使レ印二牧駒犢一」 〔史記‐留侯世家〕
② しるし。記号。
③ (mudrā 牟陀羅の
訳語。標識の意) 仏像の手指の示す特定な形。その種類によって仏、
菩薩の悟りや誓願の内容が示される。密教では僧が
本尊を観念し
呪文を唱える時に、指でいろいろな形をつくること。また、その形。印相。印契。→
印を作る・
印を結ぶ。
④ 茶道の蓋置
(ふたおき)に用いた、
名士の印章。〔南方録(17C後)〕
[補注]①は、古く中国では、
天子の用いるものを「璽
(じ)」、臣のものを「印」として区別した。
かね【印】
〘名〙 牛や馬の股におす焼き印。飼い主、飼育地、品位などを表わす。その形によって、
琴柱(ことじ)、菴
(いおり)、雀、
目結(めゆい)、
輪違(わちがい)、
引両(ひきりょう)、四目結
(よつめゆい)、丸、遠雁
(とおがり)、
鹿笛(ししぶえ)などの名がある。らくいん。かねやき。かなやき。
※
尺素往来(1439‐64)「其印
(カネ)鹿笛者北方、飛雀者南方、此内羽折雀・小雀、殊可
レ有
二御賞翫
一候」
じるし【印】
〘接尾〙 人名や事物を表わす、ある語の後半を略した形に付けて、その人や物を遠まわしに表現するのに用いる。元来、近世の通人の間に用いられた言い方。「ワじるし」「フじるし」など。
※浮世草子・世間侍婢気質(1771)三「与印より おのぶどのへ」
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)後「丹印(たんジルシ)にかかるとまことに愚智だョ」
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世界大百科事典(旧版)内の印の言及
【印鑑】より
…日常生活上は,文書の内容を認める意思表示として当事者が押す判を総称し,印,印形(いんぎよう),はんこなどと呼ばれる。印を押す行為を捺印(なついん)または押印といい,紙などの上に形成された押跡を印影という。…
【印刷】より
…印刷は文書,絵画,写真などの平面的な画像を多数複製する手段であるが,現在ではその技術は多種多様となり,印刷とは何かを定義することは困難である。
【歴史】
[源流]
ふつう印刷術は中国に始まったと考えられており,その場合の印刷術は木版に文字を彫りそれに墨を塗り,上から紙をあて〈[バレン]〉のようなもので文字を刷りとる方法が行われたのである。…
【印章】より
…エジプト,ヨーロッパにも伝わり,東アジアでも古くより用いられた。日本では印,判,印判,はんこなどともいう。形体,機能,用途等は多様であり,かつ地域,時代による相違,変遷がある。…
【印籠】より
…重ね容器とするのも,異種の薬品を一具の中に納めるための配慮であろう。印籠は本来印判や印肉を納める容器であり,薬籠というべきこの種の容器を印籠と呼び慣わすようになった経緯はつまびらかでない。中世における印籠は,1437年(永享9)に後花園院が室町殿に行幸した際の室内飾の記録である《室町殿行幸御餝(おかざり)記》をはじめ,《蔭涼軒日録》や《君台観左右帳記》などの記事によっても明らかなように,薬籠,食籠(じきろう),花瓶などとともに押板(おしいた)や違棚(ちがいだな)に置かれ,室内の御飾とされるのが通例であった。…
【日本画】より
…刷毛には幅1寸から8寸まで各種あり,一定幅に均一に塗る絵刷毛,広い面積をぼかしたりするカラ刷毛,どうさを塗るどうさ刷毛と,筆を横に何本もつなげた連筆に大別される。
[印,印泥]
絵を描き上げ,作家の名をしるし,印を押して日本画は完成である。印泥は朱をヒマシ油,松脂,白蠟などと練り合わせたもので,時間をかけて十分に練られたものがよい。…
※「印」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」