日本大百科全書(ニッポニカ) 「紫(色)」の意味・わかりやすい解説
紫(色)
むらさき
紫は単色光では現れない色相である。紫という色名は古代色名にもあり、紫根(しこん)染めの代表的な色とされている。
紫は中性系の色であるため、強烈な印象は与えない。したがって、そのイメージもあまりはっきりした特徴をもっているとはいえないが、比較的強いものをあげると次のようになる。すなわち、やや不自然な、やや暗い、重々しい、ややくどい、やや複雑な、やや古い、やや沈んだ、という印象になる。紫の象徴するものとしては、嫉妬(しっと)、不安などがあげられる。また、女性的な、華やかな、甘い、といったイメージももたれやすい。
紫に対応する感情の性質としては、厳粛、優艶(ゆうえん)、神秘、不安、優しさなどがあげられる。
紫色は古い時代には、西洋、日本においても高貴な色として認知されていたようである。これは、地位のある人が用いたことにもよっているであろう。
紫はある意味で複雑な色ともいえる。赤と青の混合の割合により、赤紫から青紫の変化が生じる。この複雑さが、赤・青のような比較的はっきりした感情と異なり、複雑な感情に対応するものと思われる。また、色の好みにおいても、青みに寄っている紫か、赤みに寄っている紫かといったことにより、選択され方が異なってくる。このため、実際に紫を使用する場合(とくに服装など)は、ある意味で、むずかしい色ということができよう。
[相馬一郎]