デジタル大辞泉
「代」の意味・読み・例文・類語
しろ【代】
1 代わりをするもの。代用。「霊代」
「丹がついたり、金銀の箔がついたりした木を、道ばたにつみ重ねて、薪の―に売っていた」〈芥川・羅生門〉
2 ある物の代わりとして出される品や金銭。「飲み―」「身の―」
「これを―に言訳して、と結構な御宝を」〈鏡花・草迷宮〉
3 材料となるもの。「雪―水」
4 何かをするための部分や場所。「糊―」「縫い―」
5 田。田地。「―をかく」「苗―」
6 上代・中世、田地の面積を測るのに用いた単位。1段の50分の1。
だい【代】[中国の王朝]
中国、五胡十六国時代の国。鮮卑の族長拓跋猗盧が晋から封ぜられて建国(315~376)。北魏はその後裔。
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だい【代】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 家督や王位などを受け継いで、その地位にある年月の間。
- [初出の実例]「右大弁云、寛元寛字、寛徳・長寛不快。強不レ可レ被レ用。其上元字多代末歟」(出典:平戸記‐嘉祿三年(1227)一二月一〇日)
- 「一体汝は此家の何でござるか、何ぞ此家は代(ダイ)が代りでもいたしましたか」(出典:いさなとり(1891)〈幸田露伴〉三八)
- ② 代わりとなるもの。代用のもの。また、つぐない。代償。代の物。
- [初出の実例]「其沙汰不レ成レ代、件田地進渡申事実也」(出典:高野山文書‐建暦三年(1213)二月七日・上津道太子田地去状)
- ③ 代わって仕事をする人。代理として物事に当たる人。代人。代理人。名代(みょうだい)。代の者。代官。
- [初出の実例]「大歌所別当中宮大夫藤原朝臣〈斉信〉不参。以二皇太后宮権大夫源朝臣〈経房〉一可レ為レ代之由経通令二奏聞一」(出典:小右記‐寛仁三年(1019)一一月一六日)
- 「半次郎儀、昨今病気重態ゆゑ、則ち私代(ダイ)を兼ね、罷り出ましてござりまする」(出典:歌舞伎・東京日新聞(1873)大切)
- ④ 特定の労力や商品などに相当する分の金銭もしくはそれに準ずるもの。代金。あたい。ねだん。しろ。
- [初出の実例]「絹四百卅余疋の内、二百疋の代、以レ銭被レ給者」(出典:貞信公記‐天暦二年(948)八月七日)
- 「そこで僕がなに代は構ひませんから、御気に入ったら持って入らっしゃいと云ふ」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一一)
- ⑤ =たい(代)
- [初出の実例]「二こく代(ダイ)の畑(はた)かから瓜大和瓜〈貞徳〉」(出典:俳諧・崑山集(1651)六)
- ⑥ 地質時代を大きく区分したその期間。主として生物の進化に基づいて、古生代・中生代・新生代の三つに大別される。代はさらに紀・世・期に細分する。〔英和和英地学字彙(1914)〕
- ⑦ 「だいひょうばんごう(代表番号)」の略。
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙
- ① 家督や王位を継いだ順序を数えるのに用いる。
- [初出の実例]「明王の御代、四代をなん見侍ぬれど」(出典:源氏物語(1001‐14頃)花宴)
- ② 年代や年齢のおおよその範囲(主として一〇年単位)を示すのに用いる。一九七〇年代、十代、三十代など。
- [初出の実例]「子供なのよね、堀にしても、田中にしても。みんな、まだ、二十代ですから」(出典:無口の妻とうたう歌(1974)〈古山高麗雄〉)
しろ【代】
- 〘 名詞 〙
- ① かわりとなるもの。代用。
- [初出の実例]「たな霧(ぎ)らひ雪も降らぬか梅の花咲かぬが代(しろ)に擬(そ)へてだに見む」(出典:万葉集(8C後)八・一六四二)
- ② かわりとして支払う、または、受けとる金銭や物品。代金。あたい。代価。代物(だいもつ)。値段。また、抵当。かた。
- [初出の実例]「食のならば、我が家に死たる魚多かり。其を此の蟹の代に与へむ」(出典:今昔物語集(1120頃か)一六)
- ③ その用となる、もとの物。もと。材料。
- [初出の実例]「夫おもひ渕に住んだる魚のわけ〈西伊〉 されば譬て煩悩のしろ〈満平〉」(出典:俳諧・飛梅千句(1679)賦何公誹諧)
- 「あるは聞く、化粧(けはひ)の料(シロ)は毒草の花よりしぼり」(出典:邪宗門(1909)〈北原白秋〉魔睡・邪宗門秘曲)
- ④ 田。田地。水田として開かれた湿地。→たしろ・なわしろ。
- [初出の実例]「早乙女の山田のしろに下り立ちて急げや早苗室のはや早稲」(出典:栄花物語(1028‐92頃)根合)
- ⑤ 田植えの前に田に水を引き、鍬、牛馬、耕耘(こううん)機などで土塊を砕きながらどろどろにすること。しろかき。
- ⑥ 古代、令制前における田地の面積の単位。一代は段の五〇分の一で、大化の改新の詔(六四五)・大宝令(たいほうりょう)制(七〇一)・和銅六年(七一三)の制などの七歩二分、大化・大宝の中間の制での五歩にあたる。令制下では、町・段・歩制が用いられたが、「代」の単位も残存し、中世末期まで田地目録などに見える。また、高知県など一部地域では今日も用いられている。ただし、中世では、「代」に「たい」の読みをあてていたものと思われる。日本書紀の古訓では「頃」の字に「しろ」をあてたものがある。
- [初出の実例]「古記曰。慶雲三年九月十日格云。〈略〉令前租法。熟田百代。租稲三束」(出典:令集解(706)田)
代の補助注記
①②③は、現代では語素的に用いる。
がわりがはり【代】
- 〘 接尾語 〙 ( 名詞「かわり(代)」の変化したもの )
- ① 名詞に付いて、その代わりとなるもの、代用となるものの意を表わす。
- [初出の実例]「土産がはりに橋本の薬を取出した」(出典:家(1910‐11)〈島崎藤村〉上)
- ② 時間を表わす語に付いて、その期間で交替する意を表わす。
- [初出の実例]「半月代りにでも為(し)やうかねへ」(出典:落語・雪解の富士(1893)〈三代目春風亭柳枝〉)
だい【代】
- [ 一 ] 中国古代の地名・国名。現在の河北・山西両省の辺境地帯。紀元前五世紀頃、非漢民族の代戎がその地に建国して、代国と呼ばれた。漢以後は郡県として中国に編入。
- [ 二 ] 中国の五胡十六国時代に、鮮卑の首長拓跋猗盧(たくばついろ)が晉に封ぜられて建てた国(三一五‐三七六)。その後裔が北魏。
たい【代】
- 〘 名詞 〙 田積の単位。五十代を一段とする。令制の町段歩よりも古く、奈良時代から中世に全国的に用いられ、部分的には近世に及んだ。だい。しろ。
- [初出の実例]「畠百町六反三十たい」(出典:岩松家文書‐享徳四年(1455)閏四月・新田荘田畠在家注進状)
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普及版 字通
「代」の読み・字形・画数・意味
代
常用漢字 5画
[字音] ダイ・タイ
[字訓] かわる・よ
[説文解字]
[字形] 形声
声符は弋(よく)。代に古く(とく)の声があり、(職)部の韻に入ることが多い。〔説文〕八上に「(かは)るなり」と更代の意とし、心部の字条十下に「るなり」とあって同訓。代・の字の従う弋は、おそらくもと(しゆく)に作る字で、は戚(まさかり)の初文。その(戚)を呪器として、更改の呪儀を行うことを代といい、というのであろう。ゆえにともに更改の意がある。更改の意をもつ(更)・改・變(変)は、すべてその呪的な方法を示す字で、みな攴(ぼく)に従い、その呪器を殴(う)つ意を示す。改のような呪儀も同じ。代は(戚)による呪儀で、これによって禍殃を改め、他に転移させることができた。そのように代替することから、代理・更代の意となる。世代の義も、更代からの引伸義であろう。
[訓義]
1. かわる、いれかわる。
2. かわるがわる、みがわり。
3. 世代がかわる、よ。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕代 ヨ・ヨヨ・カフ・カハル・カハルカハル・シロ/代々 ヨヨ/代 カハルカハル
[声系]
〔説文〕に代声として岱・の二字を収める。(とく)十下は「常を失ふなり」とあり、と声義の同じ字である。
[語系]
代dk、遞(逓)dyekは声近く、逓次交替の意がある。(迭)dyetも声近く、その義に用いる。代は戚、遞は虎皮、失は巫女がエクスタシーの状態で舞う形。みな呪的な転移の方法に関する要素を含む字である。
[熟語]
代価▶・代換▶・代間▶・代匱▶・代語▶・代工▶・代行▶・代興▶・代耕▶・代講▶・代哭▶・代子▶・代死▶・代謝▶・代舎▶・代序▶・代叙▶・代償▶・代奏▶・代替▶・代代▶・代田▶・代馬▶・代筆▶・代弁▶・代面▶・代輸▶・代用▶・代労▶
[下接語]
異代・一代・永代・易代・奕代・希代・今代・近代・現代・古代・交代・更代・後代・曠代・時代・重代・初代・承代・昭代・上代・世代・聖代・盛代・絶代・千代・先代・前代・当代・同代・年代・万代・末代・明代・累代・歴代・列代
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代(地質学的な時間区分単位)
だい
地質学的な時間(時代)区分単位のうち普通に使われる最大の単位。時間層序(時代―岩相)区分単位の界に相当する。すなわち、界に相当する岩石地層の形成堆積(たいせき)した時間間隔を代とよぶ。カンブリア紀以降の地質時代は、古生代、中生代、および新生代に分けられ、その時代区分は地球上の生命の発展段階と対応している。代は、地質時代区分の階級では紀より大きく、それぞれの代は二つ以上の紀を含み、また累代より小さい。古生代、中生代、新生代は一括して顕生累代とよばれる。それより前は隠生累代といわれ、古い始生代と新しい原生代に二分されたこともあったが、最近では隠生累代に多くの化石が発見され、さらに放射年代の測定の結果、この二分が時間的な区分になっていないことがわかったため、現在これらは一括され先カンブリア時代とよばれている。
[花井哲郎]
代(土地丈量の単位)
しろ
日本古代の土地丈量の単位。大化前代、稲の収穫量を基準に測った田積の単位で、1代とは稲1束(籾(もみ)で1斗、米にして5升、現在の2升)を生産すべき面積をいうが、これは高麗尺(こまじゃく)で6尺×30尺の長方形の面積に相当し、約23平方メートル弱である。大化以後は町段歩制を採用し1段=50代を250歩としたが、大宝令(たいほうりょう)制では1段360歩制がとられた。なお、中世、近世に至っても、50代1段制が町段歩制と混用される地方があった。
[黛 弘道]
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代 (しろ)
〈頃〉とも書く。日本の古代・中世において用いられた土地面積の単位。はじめは稲1束を収穫しうる面積を1代とよび,広狭は一定していなかった。後に高麗尺(こまじやく)6尺四方を1歩とする5歩の面積に固定するようになった。《日本書紀》では,中国の字を借用して〈頃〉の字を用いるが,一般には〈代〉の字を用いる。令制により代制は廃止され,町反(段)歩が面積単位となるが,慣習として広く残り,平安時代以降再び全国的に面積単位として用いられるようになった。このときには反の下の単位として用いられ,50代を1反とするから,当時の360歩1反制の下では7.2歩の面積を表す単位となった。とくに中国地方中部,九州,土佐などで多く使用され,中世では多く〈たい〉とよばれる。土佐地方においては江戸時代においても使用されているが,この場合は1反300歩制に改まったため6歩の面積を表している。
執筆者:歌川 学
代 (だい)
Dài
中国,山西省北部の都市。内長城の内側,滹沱河(こだか)の上流にある。漢代に広武県(太原郡に所属)がおかれ,隋代に雁門と改名し代州の中心とした。中華民国に至り代県として省に直属し今日に及んでいる。春秋戦国時代の代国は,今の河北省北西部,蔚県(うつけん)南西の代王城の地で,漢代に代県をおいて代郡に所属させたが,隋以後廃止され,代の名は現在の地に移った。なお北魏のとき今の大同地方を代郡としたことがある。
執筆者:日比野 丈夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
代[地質年代]
だい[ちしつねんだい]
era
地質年代区分の単位の一つ。地質年代層序区分の界に対応する。全地質時代は,古いほうから先カンブリア時代 (始生代,原生代 ) ,古生代,中生代,新生代に区分される。区分の基準は生物の進化に基づく。 (→地質時代 )
代
しろ
頃とも書く。おもに大化前代に用いられた田地をはかる単位。1代とは稲1束 (当時の5升,現在の2升にあたる) を収穫しうる面積であり,高麗尺 (こまじゃく) で 30尺 (10.68m) ×6尺 (2.13m) の長方形の田地の面積をいう。これは大化改新の制の5歩にあたる。大化改新以後,町,段,歩に改められた。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
代
しろ
古代,田地の面積を測る単位
大化以前に用いられ,稲1束を収穫し得る面積を1代とした(高麗尺 (こまじやく) で5歩に相当)。大化以後,町段歩制が行われたが,中世になっても四国・九州では混用された。この場合,1代=6歩,50代=1段。
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
代【だい】
地質年代の最も大きな区分単位。たとえば古生代。代の境界は生物界の最も大きな変遷の時期に対応する。代に相当する地質系統は界。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
世界大百科事典(旧版)内の代の言及
【代分け】より
…漁民の共同漁獲物,あるいはその販売収益を分配する際,代(しろ)という分配単位を用いて勘定することをいう。代分けは古くからの地先漁業にみられる漁獲物の伝統的な分配慣行であり,ほとんど現物をもって行われた。…
【代】より
…〈頃〉とも書く。日本の古代・中世において用いられた土地面積の単位。はじめは稲1束を収穫しうる面積を1代とよび,広狭は一定していなかった。…
【束】より
…律令制下では10把を1束として籾1斗,米5升(後の2升強)となるのを標準とし,田租も稲束によって収納した。1束の稲を収穫しうる面積を1代(しろ)とよんだことから,50束を1反(段)とする面積単位となったこともある。近世でも束刈(そくかり)という面積単位が民間で行われている。…
※「代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」