(読み)デン

デジタル大辞泉 「伝」の意味・読み・例文・類語

でん【伝〔傳〕】[漢字項目]

[音]デン(呉) テン(漢) [訓]つたわる つたえる つたう つて
学習漢字]4年
〈デン〉
つたえる。つたわる。「伝言伝授伝染伝送伝達伝統伝播でんぱ遺伝喧伝けんでん誤伝直伝じきでん所伝宣伝相伝秘伝流伝るでん・りゅうでん
言い伝え。「伝説俗伝
経書や詩文などの注釈。「経伝古事記伝
人の一代記。「伝記小伝評伝略伝列伝自叙伝
人や物を送る中継所。宿場。「駅伝
〈テン〉5に同じ。「伝馬
[名のり]ただ・つぐ・つた・つたえ・つとう・つとむ・のぶ・のり・よし
[難読]言伝ことづて伝手つて手伝てつだ

でん【伝】

昔からの言い伝え。また、その記録。「家々の」「左甚五郎作」
個人の生涯を記録したもの。伝記。「古書にそのが見える」「トルストイ
経書などの注釈。「春秋公羊」「古事記
やりかた。方法。「そのでやろう」
律令制で、諸国の各郡に置き、伝馬てんまを用意して官人の旅行に利用した設備
[類語](2伝記評伝史伝立志伝武勇伝列伝本伝外伝/(4仕方方法り方仕振り仕様しようよう方式流儀り口致し方手段手口メソッド方途機軸定石てだて方便術計

つて【伝】

離れている人に音信などを伝える方法・手段。また、仲立ち。「連絡するがない」
自分希望を達するための手がかり。縁故。てづる。「を頼って就職する」
人の話。人づて。
「―に聞く、虎狼の国衰へて、諸侯蜂のごとく起こりし時」〈平家・九〉
もののついで。
「―に見し宿の桜をこの春は霞へだてず折りてかざさむ」〈椎本
[類語](2縁故手蔓コネクション人脈えにしゆかりつながりかかりあいかかわり関係よし縁由

てん【伝/殿/電】[漢字項目]

〈伝〉⇒でん
〈殿〉⇒でん
〈電〉⇒でん

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「伝」の意味・読み・例文・類語

でん【伝】

  1. 〘 名詞 〙
  2. つたえること。また、そのことば。伝言。
    1. [初出の実例]「あはでうかりし文枕して〈卜尺〉 むば玉の夢は在所の伝となり〈雪柴〉」(出典:俳諧・談林十百韻(1675)上)
  3. 令制で、諸国の各衛に設置された官人の旅行用の交通設備。伝馬五疋を置き、三〇戸ほどの伝戸や伝子があった。公用のため、伝符を携行して旅行する官人、すなわち新任国司の任地赴任、諸種の部領使(ことりづかい)や相撲人などに利用された。
    1. [初出の実例]「駿河郡帯三駅二伝、横走・永倉・柏原駅家是也」(出典:日本三代実録‐貞観六年(864)一二月一〇日)
  4. 古典などを、くわしく解釈すること。または、そのような文書や書籍。また、賢人の著書。「古事記伝」「春秋左氏伝」など。
  5. 昔からいい伝えられていること。世間に広くいい伝えられていること。いい伝え。また、それを書きとどめたもの。伝記。伝書。記録。
    1. [初出の実例]「西国の伝に云く」(出典:今昔物語集(1120頃か)六)
    2. [その他の文献]〔孟子‐梁恵王・下〕
  6. 個人の履歴を書きしるした書物。ある人の一生の事跡を書きとどめたもの。伝記。
    1. [初出の実例]「このことこまかには日蔵聖人之伝に侍り」(出典:宝物集(1179頃))
  7. 基準となるやり方に従った方法。しかた。俗ないい方で、形式名詞としても用いられる。
    1. [初出の実例]「日外(いつぞや)久松が衒(かた)られたもてうど此伝(でン)」(出典:浄瑠璃新版歌祭文お染久松)(1780)油屋)

つたえつたへ【伝】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「つたえる(伝)」の連用形名詞化 ) 伝えること。また、その伝える内容や伝える人。
  2. ことづて。伝言。たより。音信。
    1. [初出の実例]「ぬば玉の夜霧に隠り遠くとも妹が伝(つたへ)は早く告げこそ」(出典:万葉集(8C後)一〇・二〇〇八)
    2. 「おぼしめしよりておもひもよらぬ御つたへ、此(この)方も若ひものの事なれば、いやでもあらず候へども」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)三)
  3. 言い伝え。伝説。伝承。また、伝記。
    1. [初出の実例]「夜かたらずとか女房のつたへにいふなり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)横笛)
  4. 学問技芸を授けること。また、その学問技芸。教え。伝授。
    1. [初出の実例]「今よりしか教へ奉りたらんこそ、いと二なきつたへならめ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上下)
  5. 伝える人。取りつぎ。
    1. [初出の実例]「内のおほい殿の中将の、このさぶらふみる子をぞ、もとより見知り給へりける、つたへにて侍りける」(出典:源氏物語(1001‐14頃)胡蝶)

つて【伝】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「つつ(伝)」の連用形の名詞化 )
  2. 人の話。ひとづて。うわさ。
    1. [初出の実例]「つてにきく、此山に金ありと」(出典:観智院本三宝絵(984)下)
  3. 仲立ち。とりなし。媒介。てびき。
    1. [初出の実例]「いまもさるべき風のつてにもほのめき聞こえ給ふことたえざるべし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)
  4. ついで。もののついで。折り。
    1. [初出の実例]「つてにてもとひけるものをはてもなくよりなき身とも思ひけるかな」(出典:忠見集(960頃))
  5. 縁故。てづる。
    1. [初出の実例]「よきひいき、つてのあるものが、よきさぶらいともてなされて」(出典:翁問答(1650)上)
  6. 手段。
    1. [初出の実例]「よき門路(ツテ)もがなと思ひ候に」(出典:読本・昔話稲妻表紙(1806)五)

づたいづたひ【伝】

  1. 〘 造語要素 〙 ( 動詞「つたう(伝)」の連用形から ) 地形・建造物などを示す名詞について、それを伝わって行くことを表わす。「峰づたい」「線路づたい」など。
    1. [初出の実例]「再び渓流づたひにその山径を下りてきた」(出典:美しい村(1933‐34)〈堀辰雄〉夏)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「伝」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 6画

(旧字)傳
人名用漢字 13画

[字音] デン
[字訓] つたえる・おくる・うつす

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
旧字は傳に作り、人+專(専)(せん)、專は(ふくろ)の中にものをつめこんだ形。これを負って運ぶことを傳という。他に運び伝える意である。〔説文〕八上に「遽(きよ)なり」とあるのは伝遽。すなわち駅伝形式で運ぶことをいう。金文の〔散氏盤(さんしばん)〕に「傳」という語があり、遠方に流罪とする意。この金文では、自己詛盟の語として用いる。を負って、所払いとなることをいう。〔孟子、万章下〕の「傳質(でんし)」は、贄(し)(謁見のときの献上物)を負って歴遊し、出仕を求めること。のち伝達・伝習の意に用いる。

[訓義]
1. つたえる、はこぶ。
2. おくる、のこす、のちに伝える。
3. ひろめる、のべる。
4. うつす、かきつたえる、とりつぐ。
5. やど、やどり、はたご、宿駅、とらえておくる。
6. わりふ、てがた、旅券。
7. 古書の注。古義を解きつたえる。
8. 伝記、人の生涯の記録。

[古辞書の訓]
名義抄〕傳 ツタフ・ワカツ・タノム・アマネシ・イカル・タスク・ツテニオクル・タダ・ヲシフ 〔字鏡集〕傳 ツタフ・ヲシフ・オクル・カシヅク・アマネシ・タノム・ワカツ・タスク・ツネニ・ツテニ・イタル・タダ・スヂ・ククタル

[熟語]
伝位・伝意・伝胤・伝駅・伝家・伝下・伝火・伝訛・伝看・伝柑・伝館・伝観・伝奇・伝記・伝騎・伝遽・伝教・伝業・伝空・伝形・伝継・伝檄・伝言・伝呼・伝鼓・伝後・伝語・伝国・伝座・伝催・伝賛・伝尸・伝屍・伝質・伝示・伝写・伝車・伝舎・伝授・伝受・伝襲・伝習・伝祝・伝述・伝書・伝誦・伝抄・伝承・伝称・伝唱・伝觴・伝乗・伝情・伝食・伝心・伝神・伝信・伝真・伝進・伝訊・伝世・伝声・伝説・伝宣・伝染・伝・伝禅・伝・伝送・伝単・伝置・伝致・伝注・伝注・伝逓・伝統・伝灯・伝道・伝・伝播・伝売・伝拝・伝杯・伝蹕・伝布・伝・伝諷・伝服・伝覆・伝聞・伝・伝法・伝烽・伝本・伝馬・伝名・伝命・伝夜・伝訳・伝与・伝用・伝来・伝吏・伝略・伝流・伝留・伝令・伝臚・伝漏
[下接語]
遺伝・永伝・駅伝・家伝・訛伝・皆伝・外伝・記伝・久伝・旧伝・急伝・給伝・虚伝・口伝・駆伝・経伝・喧伝・古伝・誤伝・再伝・史伝・書伝・星伝・盛伝・宣伝・相伝・俗伝・置伝・馳伝・逓伝・飛伝・秘伝・必伝・伝・評伝・風伝・別伝・流伝・列伝

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「伝」の意味・わかりやすい解説

伝 (でん)
zhuàn

(1)中国で,後世に伝えるべきりっぱな書物をいう。経(永遠の真理を論じた書)が聖人の著作であるのに対して,伝は賢人の著述である。《博物志》に〈聖人の制作を経と曰い,賢人の著述を伝と曰う〉と見える。(2)経書の意義を解釈し敷衍した書物をいう。たとえば《春秋》の三伝,すなわち《公羊(くよう)伝》《穀梁伝》《左氏伝》がこれに当たる。《漢書》顔師古注に〈伝とは経義を解説した書を謂う〉と見える。(3)文体の名。人の事跡を記載して後世に伝えるもの。
経書
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「伝」の解説

でん【伝】

鹿児島芋焼酎。黄麹を用いて甕で仕込み、木桶蒸留のあと甕で貯蔵する。原料はさつま芋、米麹。アルコール度数25%。蔵元の「濱田酒造」は明治元年(1868)創業。所在地はいちき串木野市湊町。

出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報

デジタル大辞泉プラス 「伝」の解説

鹿児島県、濱田酒造が製造する焼酎の商品名。甕仕込み、木桶蒸留、甕貯蔵の本格芋焼酎。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【過所】より

…旅行者の身分,姓名,年齢,携帯品,行先と目的,交付年月日,責任者などを記載。居延漢簡にも過所の字句がみえるが,当時は旅行証を伝と総称し棨(けい)や符などの種類があった。宋以後の旅行の一般化とともに過所の名は消滅した。…

【旅券】より

…旅行者を取り締まるため陸上交通では関,水上交通では津を置いた。漢代では旅行者の身分を証明する文書は一般に伝と呼ばれたが,そのうち木簡に書いたものを棨(けい)といい,本人の居住する郷の嗇夫(しよくふ)という官が前科のない旨を証明し,県の長吏が副署し,津関においてとどめないように依頼する形式であった。公用旅行者には上司より発給し,近距離の関の出入りには符を用いた。…

【八大山人】より

…明の諸生となったが,1645年(順治2),20歳のときに明朝が滅んで寧藩に清軍が侵攻すると,南昌東南の進賢県介岡の灯社に隠れて僧となり,のち師の宏敏を継いで奉新県新興郷の耕香庵の法嗣となる。法名は伝(でんけい)。その後,55歳のとき,臨川県令胡亦堂(こえきどう)に召喚され抑留中に発狂し,南昌に戻り還俗。…

※「伝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android