デジタル大辞泉
「出」の意味・読み・例文・類語
で【出】
1 外へ出ること。「日の出」
2 出る状態・度合い。「水の出がいい」「人の出が少ない」
3 ある場所に出ること。
㋐出勤すること。「明日も出だよ」
㋑俳優などが舞台に登場すること。また、芸人が高座に出ること。「楽屋で出を待つ」
㋒芸者が招かれて客の座敷に出ること。「出の着物」
4 物事のはじめ。書き出し、歌い出しなどをいう。「出がうまくいけばあとは大丈夫」
5 出どころ。出身地・出身校などをいう。「九州の出」「旧家の出」「大学出」
6 物の出ている部分。
㋐建築物の突出部。また、その寸法。「軒の出」
㋑艫の最も高い部分。
7 (多く動詞の連用形に付き、下に「ある」「ない」を伴って)物事をなすのに十分な分量。また、物事をなしおえるのに要する時間・労力。「読み出がある」
「西洋の新聞は実に―がある。…残らず読めば五六時間はかかるだろう」〈漱石・倫敦消息〉
[類語](5)生まれ・出身・出自・出所・お里
しゅつ【出】
1 その土地・家系などから出ること。生まれ。出身。「藤原氏の出」
2 そこから出ること。また、出るもの。
3 出来のよいこと。
「稽古、安心をなさば、などか、―不出の其のゆゑを知らざらん」〈拾玉得花〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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でる【出】
- 〘 自動詞 ダ下一段活用 〙
[ 文語形 ]づ 〘 自動詞 ダ下二段活用 〙 - ① ある限られた所から、その外へ進み動いて行く。また、外のある場所に位置を変える。いず。
- (イ) ( 出発点に重点がおかれ、動作性が強い場合 ) 外へ行く。出かける。出発する。
- [初出の実例]「カノシマヲ zzuruni(ヅルニ) ノゾウデ」(出典:天草本伊曾保(1593)ネテナボ帝王イソポに御不審の条々)
- 「おのしゃア此ごろは、商売にゃア出(デ)るかへ」(出典:洒落本・卯地臭意(1783))
- 「トラックが一時間ほどしたら出るそうです」(出典:曠野(1964)〈庄野潤三〉六)
- (ロ) ( 行先に重点がおかれ、状態性が強い場合 ) ある場所に姿を現わす。行先がある働きを必要とする場所であるときには、出仕、出勤、出陣、出場、出演、出席などをする意になる。
- [初出の実例]「ただあきらも刀を抜きて、御だうざまにでたるに」(出典:古本説話集(1130頃か)四九)
- 「御奉公に出(デ)る為の稽古だから」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三)
- (ハ) ( ある働きをやめる事情が含まれている場合 ) そこから離れ去る。離職、離婚、卒業などをする。
- [初出の実例]「片付た先から、出(デ)るの、引くのと」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
- 「中学を出て高等学校に移った明けの春であった」(出典:枯菊の影(1907)〈寺田寅彦〉)
- ② (今まで隠れていた物やなかった物などが)表に現われる。いず。
- (イ) (隠れていた物、しまってあった物、ひっこんでいた物などが)現われる。出現する。
- [初出の実例]「恋しけば袖も振らむを武蔵野のうけらが花の色に豆(ヅ)なゆめ」(出典:万葉集(8C後)一四・三三七六)
- 「証拠の出たのと見える」(出典:雪中梅(1886)〈末広鉄腸〉上)
- (ロ) (なかった物が)新しく生じる。発生する。また、ある土地から産出する。
- [初出の実例]「火をきることは急にとどけてもまねば火がでぬぞ」(出典:玉塵抄(1563)三)
- 「労症の病ひが発(デ)るだらうなんぞと」(出典:人情本・英対暖語(1838)初)
- (ハ) 表だった所に発表される。掲示、掲載、出版などされる。
- [初出の実例]「合巻とやら申(もうす)草双帋が出(デ)るたびに買ますが」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
- ③ 外に向かって張り出す。でっぱる。つきでる。
- [初出の実例]「棚の横木に釘が出てゐるのを」(出典:桑の実(1913)〈鈴木三重吉〉二六)
- ④ 数量、力、値うちなどが加わる。
- [初出の実例]「『暑い中は這入人(へゑりっと)が少へ』『これから湯も入(いり)が出(デ)て来る』」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
- ⑤ ある限界、標準などを超える。
- [初出の実例]「漢江繻子だって此位なものは一両二分、片側の太織が爾うサ二両少(ちっ)と出るかナ」(出典:破垣(1901)〈内田魯庵〉一)
- 「すべて臆測を出ない」(出典:私小説の系譜(1948)〈中野好夫〉)
- ⑥ あるもとから現われる。そこから起こる。
- [初出の実例]「目のふちへ紅を付るのも一体は役者から出(デ)た事らしいネ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三)
- ⑦ 売れたり、支払ったりして品物や金銭が手もとからなくなってゆく。
- [初出の実例]「世間の交際も気張らなければならず、〈略〉何かにつけて出ることが余計になるから」(出典:社会百面相(1902)〈内田魯庵〉老俗吏)
- ⑧ 金品、食料、また、許可、暇などが与えられる。
- [初出の実例]「イトマガ zzuru(ヅル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- 「腹を痛めないかぎりに許しがでるのを」(出典:銀の匙(1913‐15)〈中勘助〉後)
- ⑨ ある態度をとって相手に対する。
- [初出の実例]「足下のやうに、さう意地わるく出(デ)られては」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
- 「助は喜悦(よろこび)意外に出(デ)しが」(出典:夜の雪(1898)〈幸田露伴〉下)
- ⑩ 道をたどって行ってそこに至る。
- [初出の実例]「大森の橋の際へ出(デ)たが」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)
- ⑪ 性交する。
- [初出の実例]「うじゃくひがしへとんでから一つ出る」(出典:雑俳・末摘花(1776‐1801)二)
- 「『下女にしてはいい女だ、ちらとでたい』『べらぼうめ、下女といろをするなら〈略〉』」(出典:咄本・落噺年中行事(1836)上)
出の語誌
古くは「いづ」が普通に用いられたが、その頭音「い」の落ちた「づ」もすでに「万葉集」に見られる。ただし、「漕ぎづ」、また、名詞形の「思ひで」「門で」など、他の語と複合した場合に多く見られ、単独で使われているのは東歌と防人歌だけである。しかし、「名語記‐四」には「出はいづ也。ただづるとばかりいへり、如何。いづるのいをいはざること例おほき也」とあるので、鎌倉時代ごろには相当広く「い」の落ちた形が使われていたと見られる。
で【出】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「でる(出)」の連用形の名詞化 )
- ① ある限られた場所からその外へ進み動くこと。また、出かけること。多く「船出」「門出」など他の語と複合して用いる。
- [初出の実例]「なる程この口の潮のやうに入るばかりで出(デ)がなけりゃアマア上策(むめへ)理屈ですが」(出典:西洋道中膝栗毛(1874‐76)〈総生寛〉一二)
- ② (隠れていたものや、なかったものなどが)表に現われること。「日の出」
- [初出の実例]「その窓から、遠い月の出を眺めてゐる」(出典:偸盗(1917)〈芥川龍之介〉六)
- ③ 出勤すること。また、芸者がお座敷に行くことやその時の着物もいう。「午後からの出」
- [初出の実例]「此芸妓が〈略〉其時まだ『出(デ)』の姿で居た」(出典:油地獄(1891)〈斎藤緑雨〉二)
- 「それとも今日は日曜でも出なのかい」(出典:妻隠(1970)〈古井由吉〉)
- ④ 役者や芸人などが、舞台や高座に出てゆくこと。出演の場面。
- [初出の実例]「出があるに早くと馬のあしをよび」(出典:雑俳・柳多留‐一五(1780))
- ⑤ 物事のやりはじめ。特に、書きはじめ、話しはじめ、歌いはじめなど。
- [初出の実例]「高く浪花節の出(デ)の如く引張って」(出典:恋慕ながし(1898)〈小栗風葉〉一三)
- 「『新年の御慶目出度申納候。…』いつになく出が真面目だ」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二)
- ⑥ 人や物事の現われる状態やぐあい。「お茶の出が悪い」
- [初出の実例]「今日は天気は能し、遊人(デ)が多からふから」(出典:人情本・春色恋白波(1839‐41)二)
- 「今年は芍薬の出(デ)が早いとか」(出典:それから(1909)〈夏目漱石〉九)
- ⑦ 物の出どころ。出所や産地。
- [初出の実例]「わっちらが持て来るものは、本の事たが、出(デ)が違はア」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
- ⑧ その人の生地、家柄、出身校、元の身分など。「中学出」「下町出」など他の語と複合しても用いる。
- [初出の実例]「立振舞から物の言ひ様、裾捌まで一点の申分のない女ですから、〈略〉是は定めし出の宜しい者だらうと」(出典:真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉五四)
- ⑨ 分量やかさが多く感じられる状態。また、時間や労力を多く要するように感じられる状態。「書き出」「読み出」など他の語と複合しても用いる。
- [初出の実例]「命には扨もでの有佐世の山」(出典:雑俳・松の雨(1750か))
- 「西洋の新聞は実にでがある。始から仕舞まで残らず読めば五六時間はかかるだらう」(出典:倫敦消息(1901)〈夏目漱石〉一)
- ⑩ 建築物で突出している部分。また、その寸法。「軒ので一尺五寸」
- ⑪ 歌舞伎の芝居小屋で、平土間よりは一段高く、下桟敷よりは低く前に出ている座席。高土間。でまご。
- [初出の実例]「どうでよい桟敷は厶りますまい、出を取りに遣りましょかい」(出典:浄瑠璃・替唱歌糸の時雨(1782)上ノ口)
- ⑫ 囲碁で、相手の勢力圏や要所に石をのび出させる手。
- [初出の実例]「『マア喧譁をせずに、出(デ)と打たう』『サアこれで切れた。一隅みな死んだ。モウ恢復の望みはあるまい』」(出典:雪中梅(1886)〈末広鉄腸〉下)
- ⑬ 楊弓、大弓で、金銭を賭け物にする時、六銭をいう。〔随筆・一話一言(1779‐1820頃)〕
だし【出】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「だす(出)」の連用形の名詞化 )
- ① 城の一種。出城(でじろ)、出丸(でまる)のこと。
- [初出の実例]「城の大手のだしにおき申女房にて候故」(出典:立入左京亮入道隆佐記(17C前))
- ② 建物などの外に張り出しているもの。
- [初出の実例]「又南巽之だしの磊出来、只今東之だし沙二汰之一」(出典:言継卿記‐永祿一二年(1569)四月二日)
- ③ 指物(さしもの)などの棹(さお)の頭につける飾り物。
- [初出の実例]「指物のまっ先に出しと云物が有。旦那が出しはさかばやしだぞ」(出典:雑兵物語(1683頃)下)
- ④ 端午の飾り鎧(よろい)の上などに付ける経木(きょうぎ)や厚紙の装飾。
- [初出の実例]「ホロノ daxi(ダシ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- ⑤ =だしかぜ(出風)
- [初出の実例]「越後にて東風をだしといふ」(出典:物類称呼(1775)一)
- ⑥ =だしじる(出汁)
- [初出の実例]「生白鳥料理は〈略〉味噌に出を入て、かへらかして、鳥を入候也」(出典:大草家料理書(16C中‐後か))
- ⑦ 自分の利益や都合のために利用する人や物事。方便。口実。→だしに使う。
- [初出の実例]「旦那の病気を虚託(ダシ)にして栄耀ぢゃな」(出典:浄瑠璃・右大将鎌倉実記(1724)一)
- ⑧ 「だしがい(出貝)」の略。
- [初出の実例]「合レ貝為二遊戯一〈略〉右貝称レ地而並二床上一左貝称レ出(ダシ)毎二一箇一而出二置中央之隙地一」(出典:雍州府志(1684)七)
- ⑨ ( 「かきだし(書出)」の略 ) 請求書。勘定書。
- [初出の実例]「げせぬ事めでたくかしくだしへ書き」(出典:雑俳・川柳評万句合‐天明八(1788)満二)
- ⑩ 邦楽の用語で、「唄い出し」「語り出し」の略。現在はあまり使われない。
しゅつ【出】
- 〘 名詞 〙
- ① その人の腹から生まれたこと。その家の出身であること。生まれ。出身。
- [初出の実例]「岡西氏の出(シュツ)次男矢嶋優善二十四歳」(出典:渋江抽斎(1916)〈森鴎外〉五三)
- ② そこから出ること。また、出るもの。
- [初出の実例]「費散者は出を量りて入を制するに非ず」(出典:文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉五)
- ③ 良くできること。でき上がりのよいこと。
- [初出の実例]「是、力なき時節と申しながら、稽古・安心をなさば、などか、出(シュツ)・不出(ふしゅつ)の其ゆへを知らざらん」(出典:拾玉得花(1428))
- ④ ( 形動 ) さしでがましいこと。出しゃばること。また、そのさま。
- [初出の実例]「賢者が是非を別せいでえ申さぬではない、申たらば必ずしゅつなど云て必ず罪科せられう程に」(出典:京大二十冊本毛詩抄(1535頃)一八)
- 「おのれがしゅつな。何事をいのる」(出典:咄本・醒睡笑(1628)二)
じょずぢょず【出】
- 〘 連語 〙 ( 動詞「でる(出)」の未然形に推量の助動詞「うず」のついた「でうず」の変化したもの ) 出ようとする。
- [初出の実例]「明日はじょづもの、舟がじょづもの、思たげもなと、お寝(よ)る殿御や」(出典:歌謡・松の葉(1703)一・飛騨組)
出の補助注記
虎寛本狂言「靫猿」の小歌には、「明日は出やうず物、舟が出やうずもの」と「出やうず」の形で見られるが、「じょずるもの」「出やうずるもの」の形をとらないのは、歌謡のためか。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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普及版 字通
「出」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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