(読み)ヘン

デジタル大辞泉 「辺」の意味・読み・例文・類語

へん【辺】

漠然と、それに近い場所や位置。あたり。付近。「そのを散歩する」
漠然とした事柄。「そのの事情はわからない」
およその程度。くらい。「そので勘弁しろ」
はて。限り。「一望、なし」
数学で、等号不等号の両側にある
幾何学で、多角形多面体などをつくっている各線分または半直線
囲碁で、隅を除いた、5~4線あたりより外側の部分。「上」「左
[類語]辺り周辺近辺四辺周囲まわり近く付近界隈かいわい近傍一帯ぐるり周縁周回外周四方四囲四面八方見渡す限り

へん【辺〔邊〕】[漢字項目]

[音]ヘン(呉)(漢) [訓]あたり べ へ ほとり
学習漢字]4年
〈ヘン〉
中央から隔たった所。国境。果て。「辺境辺塞へんさい辺地広大無辺
ある物を中心としてその付近。あたり。「縁辺海辺机辺近辺口辺周辺身辺水辺那辺なへん炉辺
幾何学で、多角形の一つの線分。「斜辺底辺等辺四辺形
数学で、等号や不等号の左右にある数・式。「右辺左辺
〈べ〉「海辺うみべ上辺うわべ岸辺野辺浜辺

ほとり【辺/畔】

その付近。近辺。あたり。そば。「道の―」
「子供の身の―の世話から言っても」〈藤村新生
海や川・池などの水際。きわ。「川の―を散歩する」
はし。はずれ。辺際。
「―のくにいまだしづまらず」〈神武紀〉
側近の者。また、縁故の者。縁辺。
「人ひとりを思ひかしづき給はむ故は、―までも匂ふためしこそあれ」〈真木柱
[類語]かたわわき片方かたえ手もと手近身辺間近近く付近近辺近傍近所最寄り足元きわ

へ【辺/方】

[名]
そのものにごく近い場所、また、それへの方向を示す。近く。ほとり。あたり。
「大君の―にこそ死なめ」〈続紀・聖武・歌謡〉
(多く「」と対句になって)海のほとり。うみべ。
「沖見ればとゐ波立ち―見れば白波さわく」〈・二二〇〉
[接尾]名詞、動詞の連体形の下に付く。普通「え」と発音され、また濁音化して「べ」ともなる。
その辺り、その方向などの意を表す。「かた―」「く―」「海―うみべ」「水―みずべ
その頃の意を表す。「にし―」「春―はるべ」「夕―ゆうべ

へた【辺/端】

[名]へり。ほとり。はた。特に、海べ。波うちぎわ。
近江あふみの海―は人知る沖つ波君をおきては知る人もなし」〈・三〇二七〉
[接尾]名詞のあとに付き、その側面、その方面の意を表す。促音を間にはさんで「ぺた」となる。「尻っぺた」「ほっぺた」など。

べ【辺/方】

[接尾]へ(辺)

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精選版 日本国語大辞典 「辺」の意味・読み・例文・類語

あたり【辺】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 基準とする所から近い範囲。また、範囲を明確に定めないでその付近の場所をいう。その辺の場所。付近。近所。わたり。
    1. [初出の実例]「わが見が欲し国は 葛城高宮 わぎへの阿多理(アタリ)」(出典古事記(712)下・歌謡)
    2. 「あたりさへすごきに板屋のかたはらに堂建てておこなへる尼の住ひいとあはれなり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
  3. 血縁的に近いこと。また、その人。近親。縁故。
    1. [初出の実例]「御あたりをひろうかへりみ給御こころぶかさに」(出典:大鏡(12C前)三)
  4. おおよその目安、目当てを示す語。また、それとはっきり示さず、漠然とあるいは間接的、婉曲(えんきょく)にそれをさす。
    1. (イ) 場所についていう。
      1. [初出の実例]「春の野にあさる雉の妻恋ひに己が当(あたり)を人に知れつつ」(出典:万葉集(8C後)八・一四四六)
    2. (ロ) 人についていう。
      1. [初出の実例]「かかる貧しきあたりと思ひあなづりて言ひくるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蓬生)
      2. 「世に古りぬる事をも、おのづから聞もらすあたりもあれば」(出典:徒然草(1331頃)二三四)
    3. (ハ) 時についていう。ころ。時分。
      1. [初出の実例]「素人口じゃア屠(しめ)て二日目あたりが最上だネ」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三)
    4. (ニ) 数量、程度などについていう。くらい。
    5. (ホ) 事柄についていう。
      1. [初出の実例]「よかった、よかったと西洋映画あたりの場面だったらさしずめ頬っぺたに接吻でもしかねまじく」(出典:後裔の街(1946‐47)〈金達寿〉三)

へん【辺】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 国と国と境を接する地帯。国境。
    1. [初出の実例]「是以聖王立制、亦務実辺者、蓋以中国也」(出典:続日本紀‐養老六年(722)閏四月乙丑)
    2. [その他の文献]〔史記‐韓長孺伝〕
  3. 漠然とある場所や位置、また、その場所に住んでいる人を示していう語。ほとり。あたり。そば。付近。へ。
    1. [初出の実例]「舎人やつれ給ひて、難波のへんにおはしまして」(出典:加賀本竹取(9C末‐10C初))
  4. 漠然と物事の程度や目安などを示していう語。大体の程度。おおよその状況。ほど。くらい。
    1. [初出の実例]「何へんともなき者ども、三人つれだち」(出典:咄本・醒睡笑(1628)四)
  5. 遠まわしに漠然と出来事や事実を指摘する語。
    1. [初出の実例]「先日凡被仰候石崎と徳之淵口事辺出来候」(出典:上井覚兼日記‐天正一三年(1585)八月八日)
    2. 「読者諸君も恐らく此辺(ヘン)の想像は付くだらう」(出典:海底軍艦(1900)〈押川春浪〉一二)
  6. かぎり。はて。「一望、辺なし」
  7. 数学で、多角形をつくっている線分。空間図形の二つの面が交わってできる線分。角をつくっている線分または半直線。〔工学字彙(1886)〕
  8. 数学で、方程式・不等式などの関係式の両側の項。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕
  9. 囲碁で、盤面を大ざっぱに区分したとき、隅(すみ)と隅との間の部分をいう。棋譜にとった場合や対局者の位置によって、それぞれ上辺・下辺・右辺・左辺と呼ぶ。〔モダン新用語辞典(1931)〕

へ【辺・方】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 時に濁音化して「べ」の形でも用いられる )
    1. あたり。ほとり。そば。
      1. [初出の実例]「をとめの 床の辨(ベ)に 我が置きし つるぎの太刀 その太刀はや」(出典:古事記(712)中・歌謡)
    2. 海辺。岸辺。海などの岸に近いあたりをさしていう。⇔
      1. [初出の実例]「沖つ藻は 陛(ヘ)には寄れども さ寝床も 与はぬかもよ 浜つ千鳥よ」(出典:日本書紀(720)神代下・歌謡)
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙 ( 普通「え」と発音され、濁音化して「べ」ともなる ) ( 名詞、または動詞の連体形に付く )
    1. そのあたり、その方向などの意を表わす。「片(かた)え」「後(しり)え」「行(ゆ)くえ」「海辺」「沖べ」など。
    2. その頃(ころ)の意を表わす。「春べ」「夕べ」「去(い)にしえ」など。

辺の補助注記

( 1 )この「へ」は、上代特殊仮名遣では、甲類の仮名が使われている。これと非常によく似た意味・用法をもつ、乙類の「へ(上)」があるが、一応、別語と見るべきであろう。→「上(へ)」の補注。
( 2 )この「へ」は、格助詞「へ」の源にもなっている語。


ほとり【辺】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物の占める空間の縁辺、末端など。
    1. (イ)(はし)。はずれ。はて。辺際。
      1. [初出の実例]「亦は虚空の際(ホトリ)有ること無きが如し」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)二)
    2. (ロ) 特に、川や海などのきわ。ふち
      1. [初出の実例]「海の浜(ホトリ)に遊猟して」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
  3. ある物の近辺。それに近いあたり。かたわら。
    1. [初出の実例]「州城門の首(ホトリ)の堂の上にして」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
  4. ( その近辺の人の意で ) 縁故のある者、近親や側近の者などをいう。
    1. [初出の実例]「この宮の木立を心につけて、はなち給はせてむやと、ほとりにつきて案内し申さするを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蓬生)

辺の補助注記

「あたり」が、基準となる場所も含めて付近一帯をさすのに対して、「ほとり」は、基準となるもののはずれ、ないし、その近辺をさしていう。


わたり【辺】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ある場所の、そこを含めた付近。また、そこを漠然とさし示していう。その辺一帯。あたり。へん。へ。近所。
    1. [初出の実例]「山城の 狛(こま)和太利(ワタリ)の」(出典:催馬楽(7C後‐8C)山城)
    2. 「東の五条わたりにいと忍びていきけり」(出典:伊勢物語(10C前)五)
  3. 特定の人のもとを、婉曲にさしていう。人のもと。人のところ。
    1. [初出の実例]「かかるわたりには急ぐ物なりければ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)
  4. 人や、人々のことを漠然とさしていう。
    1. [初出の実例]「かのわたりは、かくいともむもれたる身に引きこめてやむべきけはひにも侍らねば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)橋姫)
  5. ある時間、時刻を漠然とさしていう。
    1. [初出の実例]「明後日わたり罷下可申上候」(出典:醍醐寺文書‐(年未詳)(16C)六月一九日・僧亮淳書状)

へた【辺・端】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ほとり。へり。はた。特に、海辺、水ぎわをさすことが多い。
    1. [初出の実例]「淡海の海辺多(へタ)は人知る沖つ波君をおきては知る人も無し」(出典:万葉集(8C後)一二・三〇二七)
    2. 「湖の東のへたに村あり」(出典:東路記(1685)美濃関が原より越前の敦賀へ行道)
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙 ( 促音、拗音を間にはさんで、「ぺた」「べた」となる ) 名詞、代名詞に付いて、その側面、その方面の意を表わす。「尻(しり)っぺた」「ほっぺた」「こっちべた」「あっちべた」など。

へち【辺・端】

  1. 〘 名詞 〙 はずれ。ほとり。ふち。みぎわ。
    1. [初出の実例]「浪かくるへちに散りしく花の上を心して踏め春の山伏〈源仲正〉」(出典:木工権頭為忠百首(1136頃)桜)

べ【辺】

  1. 〘 名詞 〙へ(辺)

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普及版 字通 「辺」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 5画

(旧字)邊
19画

[字音] ヘン
[字訓] くにざかい・あたり・ほとり・はし

[説文解字]
[金文]
[その他]

[字形] 形声
旧字は邊に作り、(へん)声。はまたに作る。自は鼻の象形。下は台架の形。鼻穴を上にして台上におかれた屍体の形で、首祭として知られている祭梟の俗を示す。いわゆる髑髏棚(どくろだな)である。は架屍の象。方は人を(たく)する形。これを外界と接する要所に設けて、呪禁とした。それで境界の意となり、辺境の意となり、辺端の意となる。〔説文〕二下に「垂崖を行くなり」とし、辺崖の意とする。〔説文〕四上(へん)に「宮見えざるなり。闕」としており、の形義について説解を加えていない。〔爾雅、釈詁〕「垂なり」、〔広雅、釈詁四〕「方なり」は、両者を合わせて外方の意となるが、邊は本来祭梟(さいきよう)を行う塞外の地をいう語である。金文の〔大盂鼎(だいうてい)〕に「殷の邊侯甸(でん)」の語があり、辺境の諸侯をいう。侯は候望の意。辺塞をまた辺徼(へんきよう)という。徼もまた髑髏の形である白と、架屍(かし)の象である方とに従い、これを攴(う)つ祭梟の俗を示す字で、辺塞の呪禁をいう。

[訓義]
1. くにざかい、外界と接するところ、祭梟の地。
2. はし、はずれ、かぎり、へり、ふち、はて。
3. かたすみ、あたり、ほとり、そば。
4. いなか、かたいなか、とおい。

[古辞書の訓]
和名抄〕邊鄙 師、阿豆万豆(あづまつ)、西京の賦の附訓に安川万宇止(あづまうど)とみえる 〔名義抄〕邊 サカヒ・ハカリ・スツ・ホトリ/兩邊 コナタカナタ 〔字鏡集〕邊 トホシ・ハカリスツ・カタハラ・サカヒ・ハカル・ホトリ・サカシ

[語系]
邊pyen、濱(浜)pienは声近く、陸に邊といい、水に濱という。bien、(墳)biunも声義に関係のある語である。邊は祭梟、は墳(ふんえい)で、犠牲などを埋めるところ。濱・は水に臨んで霊を賓送して祀る意を原義とする。みな一系の語。

[熟語]
辺域・辺裔・辺衛・辺役・辺駅・辺遠・辺縁・辺音・辺火・辺界・辺涯・辺扞・辺捍・辺患・辺関・辺郷・辺境・辺疆・辺徼・辺近・辺垠・辺隅・辺勲・辺郡・辺計・辺警・辺隙・辺月・辺県・辺功・辺荒・辺候・辺寇・辺獄・辺塞・辺最・辺際・辺朔・辺策・辺使・辺事・辺守・辺戍・辺愁・辺将・辺障・辺牆・辺上・辺壌・辺城・辺色・辺人・辺塵・辺陲・辺燧・辺陬・辺声・辺俗・辺粟・辺地・辺籌・辺鎮・辺庭・辺廷・辺亭・辺都・辺土・辺頭・辺難・辺馬・辺畔・辺備・辺鄙・辺表・辺撫・辺風・辺幅・辺兵・辺僻・辺防・辺烽・辺民・辺務・辺野・辺邑・辺憂・辺落・辺吏・辺略・辺塁・辺炉・辺粮・辺論・辺和
[下接語]
一辺・雲辺・沿辺・縁辺・檐辺・下辺・花辺・河辺・界辺・開辺・辺・檻辺・岸辺・巌辺・橋辺・近辺・沙辺・塞辺・朔辺・四辺・戍辺・周辺・上辺・身辺・水辺・綏辺・拓辺・池辺・籌辺・枕辺・定辺・底辺・天辺・道辺・那辺・日辺・半辺・備辺・撫辺・保辺・北辺・無辺・籬辺・林辺・炉辺

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改訂新版 世界大百科事典 「辺」の意味・わかりやすい解説

辺 (へん)
side
edge

数学用語。(1)角をつくる二つの半直線を角の辺という。(2)多角形を囲む各線分を多角形の辺という。n角形はn個の辺をもつ。(3)多面体を囲む各多角形の辺を多面体の辺という。これはまた多面体の稜とも呼ばれる。例えば四面体は6個の辺をもち,立方体は12個の辺をもつ。
執筆者:

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【皮∥革】より

…ハイドは大動物(ウシ,ウマなど)の皮で,アメリカ,カナダ規格では皮重量25ポンド(約11kg)以上のもの,スキンはそれ以下のもので,幼動物または小動物(子ウシ,ヒツジ,ブタなど)の皮をさす。ハイドはその使用目的によって原料皮,または革になったとき,サイドside(背線での半裁),ショルダーshoulder(肩部),バットbutt(背部),ベリーbelly(腹部)などに裁断されることがある(図)。 動物からはいだままの生皮は腐敗しやすいので,ただちに乾燥(乾皮),塩づけ(塩蔵皮),塩づけののち乾燥(塩乾皮),防腐剤で処理後,乾燥(薬乾皮)などの方法で保存される(仕立て,キュアリング)。…

※「辺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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