(読み)ヨ

デジタル大辞泉 「余」の意味・読み・例文・類語

よ【余/予】

[代]一人称人代名詞。わたくし。われ。現代では改まった文章や演説などで用いる。
「―が執らんとする倫理学説の立脚地を」〈西田・善の研究〉
[類語]吾人我が輩それがし自分わたくし・わたしおれわし手前小生愚生あたくしあたしあたいあっしわらわあちき俺等おいらおら当方此方こちらこっちこちとらてめえ・愚輩・拙者身共不肖ふしょう迂生うせい

よ【余〔餘〕】[漢字項目]

[音](呉)(漢) [訓]あまる あます われ
学習漢字]5年
必要な分をこえて残る。引き続いてあとに残る。あまり。「余韻余剰余震余地余熱余白余分余命余裕余力刑余月余残余剰余酔余年余有余
当面のものから外れた部分。それ以外。ほか。「余技余興余罪余事余人余談自余
われ。自分。「余輩
[補説]本来12は「餘」、3は「余」で別字。
[難読]余波なごり余所よそ

よ【余】

そのほか。それ以外。「の儀」「は知らず当面のことを考えよう」
あまって残ったもの。残り。あまり。残余。「は追って通知する」
(「…の余」の形で)多く数量を表す語に付いて、その数量をわずかに上まわる意を表す。「五年のを経て完成する」
数を表す語に付いて、その数より少し多い意を表す。おおよその数を示してその端数を漠然という場合に用いる。…あまり。「二十年の労苦」
[類語](1その他自余

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精選版 日本国語大辞典 「余」の意味・読み・例文・類語

あまり【余】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「あまる(余)」の連用形の名詞化 )
    1. 必要な分を満たした残り。残余。余分。超過分。
      1. [初出の実例]「枯野(からの)を 塩に焼き 其(し)が阿麻里(アマリ) 琴に作り」(出典:古事記(712)下・歌謡)
      2. 「なすべき事おほし。そのあまりの暇、幾(いくばく)ならず」(出典:徒然草(1331頃)一二三)
    2. ( 上に行動や気持などを表わす連体修飾句が付いて ) 行動や気持などが普通の程度を超えること。過度になった結果。
      1. [初出の実例]「もろもろの事をすて給はぬあまりに、いにしへの事をも忘れじ、ふりにし事をもおこし給ふとて」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
      2. 「よろこびのあまりに、あるわらはのよめる歌」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月五日)
    3. 割り算で、割り切れないで出た残り。割り切れるときは、「0」を余りとする。
    4. ある限度に達するまでのゆとり、余地。使わない、または達しないで残っている部分。
    5. 酢をいう忌み詞。発酵の過程でいったん甘くなることからいうともする。
      1. [初出の実例]「さもこそは名におふ秋の夜半ならめあまり澄たる月の影哉〈略〉あまりといひて、すとは聞えたるを、かさねてすとよめるやいかが」(出典:七十一番職人歌合(1500頃か)七一番)
  2. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙 必要、期待以上であるさま。程度のはなはだしいさま。あんまり。
    1. [初出の実例]「常人の恋ふといふよりは安麻里(アマリ)にてわれは死ぬべくなりにたらずや」(出典:万葉集(8C後)一八・四〇八〇)
    2. 「余りのいぶせさに、目をふさいでぞおとしける」(出典:平家物語(13C前)九)
    3. 「余(アマ)りな人とこみ上るほど思ひに迫れど」(出典:たけくらべ(1895‐96)〈樋口一葉〉一三)
  3. [ 3 ] 〘 副詞 〙
    1. 物事の程度が、必要、期待以上に及ぶさまにいう。度を過ぎて。非常に。あんまり。
      1. [初出の実例]「あまり心よしと人にしられぬる人」(出典:枕草子(10C終)二七)
      2. 「あまりうちしきる折々は」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
    2. ( 下に打消の語を伴って ) それほど(…ではない)。たいして。あんまり。
      1. [初出の実例]「いとあまりむつまじうもあらぬまらうど」(出典:枕草子(10C終)三一)
      2. 「強い許りでちっとも教育がないからあまり誰も交際しない」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一)
  4. [ 4 ] 〘 接尾語 〙
    1. 数量を表わすことばに付いて、それよりもいくらか多い意を表わす。
      1. [初出の実例]「背の長さ七尺(ひろ)(アマリ)」(出典:日本書紀(720)神代下(水戸本訓))
      2. 「ななとせあまりがほどに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
    2. 一〇以上の数を表わす場合に、数詞と数詞の間に入れて用いる。
      1. [初出の実例]「みそち阿麻利(アマリ)ふたつかたち」(出典:仏足石歌(753頃))

よ【余】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. それ以外。そのほか。その他。別。ほか。他。
      1. [初出の実例]「伯一人。〈掌神祇祭祀、祝部。〈略〉惣判官事。余長官判事准此〉」(出典:令義解(718)職員)
      2. 「只、人、一向の風斗を得て、十体にわたる所を知らで、よを嫌ふ」(出典:申楽談儀(1430)序)
    2. あまったもの。あとに残ったもの。あまり。残り。余分(よぶん)。残余(ざんよ)
      1. [初出の実例]「独(ひとり)の老人、小鰯(しらす)といふ魚を荷(にな)ひて売ありきしが、余(ヨの)所の魚を皆人にくれて帰りし」(出典:浮世草子・近代艷隠者(1686)四)
      2. [その他の文献]〔孟子‐離婁・下〕
    3. 数量を表わす語に格助詞「の」の付いたものを受けて、その数量より少し上まわっていることを表わす。
      1. [初出の実例]「半年の余(ヨ)海上にて渡世を暮らせば」(出典:浮世草子・新色五巻書(1698)四)
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙 数を表わす語に付いて、その数より少し多いことを表わす語。おおよその数をあげて端数を漠然という場合に用いる。あまり。有余(ゆうよ)
    1. [初出の実例]「玉の木を作りつかうまつりし事、五こくをたちて、千余日に力をつくしたる事すくなからず」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))

あんまり【余】

  1. [ 1 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙あまり(余)[ 二 ]
    1. [初出の実例]「私がってんいたさぬを、らうぼをたらしたたきつけ、あんまりななされやう」(出典:浄瑠璃・曾根崎心中(1703))
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙
    1. あまり(余)[ 三 ]
      1. [初出の実例]「あんまり御まきれ申候事、一大事の事にて候」(出典:大乗院寺社雑事記‐文明一一年(1479)一一月朔日紙背)
      2. 「あんまりあまふて物がいはれませぬ」(出典:狂言記・柿売(1660))
    2. あまり(余)[ 三 ]
      1. [初出の実例]「おめへだってあんまりものしりぶられもしねへぜ」(出典:西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉八)

よ【余・予】

  1. 〘 代名詞詞 〙 自称。われ。おのれ。自分。平安時代から男子が用い、明治以降も改まった、あるいはやや尊大な表現として用いられた。
    1. [初出の実例]「予拝礼間、主人答拝、王卿皆立退、数盃後、主人卿・中務卿・予同車参朱雀院」(出典:九暦‐九暦抄・天暦元年(947)正月二日)
    2. 「余(ヨ)はいまだに、ぜんざいを食った事がない」(出典:京に着ける夕(1907)〈夏目漱石〉)
    3. [その他の文献]〔書経‐太甲〕

まり【余】

  1. 〘 接尾語 〙 ( 「あまり(余)[ 四 ]」の変化したもの ) 数量を表わすことばについて、それよりいくらか多い意を表わす。また、一〇以上の数をかぞえる時、一〇の位あるいは一〇〇の位などの数と、一の位、一〇の位などその下のけたの数との間に入れて用いる。
    1. [初出の実例]「七つぎの御代にまわへる百箇(ももち)万利(マリ)十の翁(おきな)の舞たてまつる」(出典:続日本後紀‐承和一二年(845)正月乙卯)

あまりに【余】

  1. あまり(余)[ 二 ]

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普及版 字通 「余」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 7画

(旧字)餘
16画

[字音]
[字訓] あまり・あまる・ゆたか・ひま

[説文解字]

[字形] 形声
旧字は餘に作り、余(よ)声。〔説文〕五下に「饒(おほ)きなり」とあり、前条に「饒(ぜう)はくなり」とあって、食余をいう。すべて残余・余意の存する状態をいう。一人称の余とは別の字であるが、いま余の字を餘の常用漢字として用いる。

[訓義]
1. あまり、あまる、のこり。
2. ゆたか、おおい。
3. ひま、ひさしい。
4. あと、のち、あげく、そのほか。

[古辞書の訓]
名義抄〕餘 アマル・アマリ・アマス・アマレリ・ノコル・ノコス・ミナ・ホカ・ユタカナリ

[語系]
餘jiaはjiengと声義近く、餘(よえい)と連用することがある。羨zianにまたjianの声があり、羨余の義とする。jiaは餘と同声、zjiaも、肥大するものの意であろう。

[熟語]
余哀・余威・余意・余音・余韻・余・余栄・余裔・余・余炎・余怨・余衍・余煙・余霞・余華・余暇・余課・余花・余悔・余寒・余閑・余間・余・余歓・余暉・余基・余喜・余棄・余輝・余・余泣・余興・余響・余業・余煦・余薫・余・余慶・余景・余馨・余隙・余月・余・余・余絢・余言・余絃・余功・余巧・余行・余光・余恨・余債・余罪・余財・余師・余子・余址・余祉・余思・余貲・余滓・余資・余積・余事・余日・余須・余臭・余習・余衆・余春・余・余胥・余暑・余緒・余・余・余照・余剰・余饒・余津・余親・余人・余塵・余燼・余数・余生・余清・余勢・余責・余跡・余銭・余喘・余胙・余祚・余賊・余粟・余唾・余帯・余沢・余談・余地・余痴・余蓄・余丁・余・余滴・余怒・余党・余盗・余徳・余肉・余熱・余年・余念・余波・余派・余憊・余白・余飯・余夫・余風・余福・余物・余憤・余分・余兵・余弊・余芳・余謀・余民・余務・余命・余名・余明・余勇・余裕・余流・余糧・余力・余類余齢・余零・余瀝・余烈・余禄・余論
[下接語]
遺余・雨余・紆余・盈余・暇余・閑余・窮余・刑余・月余・行余・歳余・三余・残余・詞余・詩余・自余・余・旬余・閏余・胥余・緒余・諸余・丈余・剰余・酔余・睡余・声余・羨余・徳余・夫余・分余・俸余・有余


7画

[字音]
[字訓] われ・あまり

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 仮借
余は把手(とつて)のある細い手術刀。これで膿漿を盤(舟)に除き取るを(よ)といい、兪(ゆ)()の初文とみられる。余は〔説文〕二上に「語の舒(ゆる)やかなるなり」とするが、静かに刀を動かすを徐という。卜文に王子中の一人に・余というものがあり、また我というものもあって、余・我はもと身分称号的な語であったらしいが、金文では余は一人称主語に、(朕)は所有格的に用いることが多い。〔左伝、僖九年〕「小白(斉の桓公の名)余」のように、その名にそえて、複称的にいうこともある。余一人・余小子のように用いる。余は手術刀、他は仮借の義である。いま餘の常用漢字として用いる。

[訓義]
1. われ。
2. 餘の略字。常用漢字として用いる。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕余 予は古なり。アマレリ・タツ 〔字鏡集〕余 ナムヂ・アレ・ノブ・アマル・アマレリ

[声系]
〔説文〕に余声として・徐・敍(叙)・餘・・斜・除など二十六字を収める。その基本は、除くことによって安徐をえて(よろこ)ぶことである。余は手術刀の形で、治療の方法を示す。その針で膿漿(のうしよう)を去って舟(盤)に移すことをといい、兪の初文。兪に(癒)の意がある。余は手術刀という字の原義において用いることはなく、形声・会意の字によって、その初形初義を考えることができる。

[語系]
余・予jiaは同声。一人称代名詞に用いる。吾nga、我ngai、ngangも声義近く、一人称の代名詞に用いる。みな仮借の用義。余・我は主格、吾・予は所有格に用いるという傾向がある。

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