オペラ

百科事典マイペディア 「オペラ」の意味・わかりやすい解説

オペラ

歌劇と訳す。ヨーロッパで発展した音楽(独唱重唱,合唱,管弦楽など)による劇作品の総称。初め音楽によるドラマと呼ばれたものが,17世紀中ごろからopera in musica(音楽による作品)となってオペラと略された。1598年にフィレンツェの〈カメラータ〉で上演されたペーリ作の《ダフネ》が現在のようなオペラの最初とされる。ポリフォニーを離れ言葉を重んじ,通奏低音を伴う独唱を中心とした形式は,次いでベネチアのモンテベルディによって早くも完成の域に達し,初期バロック・オペラの様式が確立された。さらにナポリのA.スカルラッティ,ペルゴレーシへ受け継がれるとともに各国にも普及し,フランスのリュリ,ラモー,英国のパーセル,ドイツおよびオーストリアのグルックモーツァルト,ベートーベンらが発展に寄与した。19世紀になるとイタリアではロッシーニ,ドニゼッティ,ベリーニ,ベリズモのプッチーニ,マスカーニ,レオンカバロ,ドイツではウェーバーがオペラにおけるロマン主義の道を開拓し,フランスではグノー,トーマらが出たが,中でもイタリアのベルディとドイツのR.ワーグナーの業績が大きい。また一方では,ロシアのグリンカ,チャイコフスキー,ムソルグスキー,リムスキー・コルサコフ,チェコのスメタナらが民族色を鮮明に打ち出した作品を残した。その後のオペラはヤナーチェク,ドビュッシー,R.シュトラウスらによって継承され,以後シェーンベルク,バルトーク,ストラビンスキー,ベルク,ワイル,ガーシュウィン,ダラピッコラ,ショスタコービチ,ブリテン,ヘンツェ,B.A.ツィンマーマン,A.ライマン〔1936-〕,シュニトケなどの多様な作品が書かれた。日本では団伊玖磨(だんいくま)の《夕鶴》(1952年初演),清水脩の《修禅寺物語》(1954年初演)などを先駆として間宮芳生,松村禎三らの注目すべきオペラが生まれ,1990年代以降は中国の作曲家譚盾(タン・ドゥン)〔1957-〕の作品などが誕生。オペラという形式は欧米以外の地でもその可能性を拡げつつある。フェルゼンシュタインやW.ワーグナーの登場以来,オペラ演出家の存在も重みを増した。なおオペラはスタイルによって,オペラ・セーリア(悲劇的題材のイタリア正歌劇),オペラ・ブッファ(幕間狂言に由来する喜歌劇),グランド・オペラ(フランス正歌劇。広義には,叙事詩的な題材による大規模なオペラをいう),オペラ・コミック(語りが入るフランス・オペラの一形式),ジングシュピール楽劇オペレッタなどに分類される。→アリア序曲シンフォニアミュージカルレチタティーボ
→関連項目ウォルフ・フェラーリ売られた花嫁オーベールカッチーニ管弦楽間奏曲グルックサルスエラシュトラウス絶対音楽チマローザディッタースドルフドン・ジョバンニパイジェロパーセル標題音楽ベッキペーリペルゴレーシボイエルデューモンテベルディロッシーニ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オペラ」の意味・わかりやすい解説

オペラ
opera

音楽を中心とする総合舞台芸術。音楽面は独唱,重唱,合唱,管弦楽などで構成され,独唱の部分はレチタティーボアリアなどから成る。起源はギリシア悲劇にさかのぼるが,現存最古のオペラは J.ペーリ作曲『エウリディーチェ』 (1600) 。初期には 17世紀初頭のイタリアのモンテベルディがオペラの劇的性格を高め,その後 A.スカルラッティらのナポリ楽派,フランスの J.リュリ,ラモーらが活躍し,18世紀にはドイツでもオペラが盛んになった。グルックは『オルフェオとエウリディーチェ』 (1762) 以後,歌唱一辺倒のナポリ楽派オペラを改め,演劇的な合理性を強めることによってオペラ改革を行なった。現在上演される大部分の作品は彼以後のものが多い。ドイツではモーツァルトがイタリアオペラの様式に自国の伝統を取入れ,19世紀にはワーグナーが従来のオペラ様式と異なった楽劇を大成。同じ頃イタリアではベルディが多数の傑作を発表。その後オペラはヨーロッパを中心に多様に変遷してきており,日本でも第2次世界大戦後オペラの上演や創作が活発になった。

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精選版 日本国語大辞典 「オペラ」の意味・読み・例文・類語

オペラ

〘名〙 (opera) 一七世紀初頭からイタリアに発達した音楽上の一形式。独唱のアリア、重唱、合唱に管弦楽演奏の前奏曲、間奏曲をおりまぜた音楽的要素に、舞台美術、演技、バレエなどを合わせた総合芸術として発達した。歌劇。
※航西日乗(1881‐84)〈成島柳北〉三月一二日「ブーセイ同行諸子を招き『オペラ』の演劇を観せしむ」

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色名がわかる辞典 「オペラ」の解説

オペラ【opera】

色名の一つ。明るい赤紫のこと。20世紀初頭に登場した色名で、オペラピンク、オペラモーヴともいう。主に絵の具の色名に使われる。歌劇、あるいは歌劇場の華やかなイメージを意味するとされるが、正確な由来は明らかでない。日本でもドレスストールに用いられる色。

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デジタル大辞泉 「オペラ」の意味・読み・例文・類語

オペラ(Opera)

ノルウェーのオペラソフトウエア社が開発したブラウザー。複数のウェブページを表示し、タブキーで切り替えて閲覧することができるタブブラウザー機能をもつ。パソコンのほか、携帯型ゲーム機器や携帯電話でも使用されている。

オペラ(〈イタリア〉opera)

歌唱を中心にして演じられる音楽劇。16世紀末イタリアで誕生。管弦楽を伴奏とし、扮装ふんそうした歌手が舞台上で演技を行う。歌劇。
[補説]語源はラテン語で、骨折りの意。
[類語]歌劇楽劇喜歌劇オペラコミックオペラセリアオペラブッファオペレッタミュージカル

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IT用語がわかる辞典 「オペラ」の解説

オペラ【Opera】

ノルウェーのオペラソフトウェアが開発したウェブブラウザーWindowsMac OSLinuxなど、さまざまなオペレーティングシステムで利用できる。タブブラウザー機能を持つ。

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デジタル大辞泉プラス 「オペラ」の解説

オペラ

イミュ株式会社が販売するアイメイク用品、ベースメイク用化粧品のブランド名。

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世界大百科事典 第2版 「オペラ」の意味・わかりやすい解説

オペラ【opera】


【概観】
 オペラは〈作品〉や〈動作〉を意味するイタリア語のopera(ラテン語opusの複数形)を語源とし,本来はopera in musica(音楽による作品)あるいはopera scenica(舞台付きの作品)と呼ぶべきものを,略してオペラと呼ぶようになった。古くはfavola in musica(音楽による物語),dramma per musica(音楽によるドラマ)等の呼称もあった。日本では〈歌劇〉と訳されている。

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知恵蔵 「オペラ」の解説

オペラ

Opera」のページをご覧ください。

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世界大百科事典内のオペラの言及

【イタリア演劇】より


[ルネサンス以前]
 イタリア演劇の発生的形態は,12世紀から13世紀にかけて中部イタリアを中心に歌われたり,演じられたラウダlauda(神をたたえる歌)であるとされているが,それはかならずしも演劇ばかりではなく,オラトリオやオペラの起源でもある。このラウダの作者や演じ手は,主として〈兄弟団〉といわれる宗教組織に属する聖職者たちであった。…

【イタリア音楽】より


[バロック]
 1580年代のフィレンツェで,一群の貴族と文学者と音楽家がカメラータ(同志の意)と自称したアカデミアに結集し,古代ギリシアの音楽のあり方を探りつつ,ギリシア悲劇を復興しようとする運動を起こした。その結果,オペラが生まれ,バロック様式のひとつの基礎となった通奏低音伴奏の独唱歌が生み出された。カメラータのリヌッチーニOttavio Rinuccini(1562‐1621)の台本,ペーリの作曲による《エウリディーチェ》(1600)は,今日まで伝えられた最古のオペラである。…

【ダベナント】より

…1642年,革命によって劇場が閉鎖され,せりふ劇の上演が不可能になって以後は,音楽劇と称して自作《ロードス島の包囲》(1656初演)などを上演した。この作品はイギリス最初のオペラとみなされることがある。60年,王政復古に際して劇場経営の勅許を得,リンカンズ・インズ・フィールズに公爵劇場を開場,T.ベタートンを中心とする劇団の本拠とした。…

【バロック音楽】より

…同時代の美術の場合と同じく,バロック音楽を社会的に支えたのは,ベルサイユの宮廷に典型を見る絶対主義の王制と,しだいに興隆する都市の市民層であった。前者は威儀を正した華麗で祝祭的な表現に向かい(序幕付き5幕の宮廷オペラ,宮廷バレエ,管弦楽組曲,二重合唱のためのモテットなど),後者はつつましやかな規模の中に音楽的な喜びをひめた家庭音楽(鍵盤楽器のための組曲や変奏曲,小規模なソナタと歌曲など)を出発点としながら,しだいにその要求を高め組織化して,後期には市民のための公開コンサートの制度を確立するまでになった(パリのコンセール・スピリチュエルなど)。
[音楽的特色]
 いうまでもなく,ほぼ1世紀半にわたる音楽的な営みの中には歴史的な推移があり,国民様式の差異があるが,前後の時代と比較した場合,バロック音楽の音楽的特色は,以下のようにまとめることができよう。…

※「オペラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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