デジタル大辞泉
「鈍」の意味・読み・例文・類語
なま‐くら【▽鈍】
[名・形動]
1 刃物の切れ味が鈍いこと。また、そのさまや、その刃物。「鈍な包丁」
2 力が弱いこと。意気地がないこと。また、そのさまや、その人。「鈍なからだ」「そんな鈍なことでどうする」
3 腕前が未熟であること。また、そのさまや、その人。「鈍な芸」
[類語]無能・無能力・非力・駄目・能無し・能がない・非才・無力・低能・
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
にぶ・い【鈍】
〘形口〙 にぶ・し 〘形ク〙
① 切れ味が悪い。鋭利でない。
※枕(10C終)二五九「紙をあまたおし重ねて、いとにぶきかたなして切るさまは」
② 動作や反応がすばやくない。のろい。また、頭のはたらきがおそい。勘がするどくない。
※源氏(1001‐14頃)幻「おぼしたつほど、にぶきやうに侍らんや」
※浮世草子・
傾城禁短気(1711)二「毎日五六十の届の文、是でも仕手のにぶい時は」
③ 音の響きなどが低く、するどくない。光などが弱く、鮮やかでない。また、痛みなどの刺激がするどくはないが重苦しい。
※雑俳・軽口頓作(1709)「さあさあさあ・空がにぶいぞみこし様」
※雁(1911‐13)〈
森鴎外〉二二「黒ずんだ上に鈍
(ニブ)い
反射を見せてゐる水の面を」
④ 取引相場で、相場が活気なく下落気味である。
にぶ‐げ
〘形動〙
にぶ‐さ
〘名〙
なま・る【鈍】
〘自ラ五(四)〙
① 鍛え方が不十分なために、なまくらになる。刃物の切れあじが悪くなる。
※
史記抄(1477)一二「頓、銕のなまりたを云ぞ」
※二人むく助(1891)〈
尾崎紅葉〉六「先頃四頭の馬を殺せしに刃や鈍
(ナマ)りたらむ」
② わざの冴えがにぶる。技量が落ちる。
※
歌舞伎・三人吉三廓初買(1860)
序幕「浪人なせど安森が
家来の
手練(てなみ)神影流、鈍
(なま)らぬ腕の太刀先を、ならば手柄に受けて見よ」
※浄瑠璃・本朝二十四孝(1766)四「腕もなまり五体もしびれ」
④ 決心がにぶる。貫徹しようとする意志が弱まる。
のろ・い【鈍】
〘形口〙 のろ・し 〘形ク〙
① 速度がおそい。進み方がゆっくりしている。はかどらない。
※延慶本平家(1309‐10)五本「宇治河は上はのろくて底はやし」
② 動作、頭の働きがおそい。おろかである。愚鈍である。にぶい。
③ 異性に甘い。色情におぼれやすい。
※
洒落本・
通言総籬(1787)二「をれが顔のたたねへやうな事するなよ。こんなのろい句を出すやうになっちゃあ」
のろ‐げ
〘形動〙
のろ‐さ
〘名〙
にぶ・る【鈍】
〘自ラ五(四)〙
① にぶくなる。するどさがなくなる。
※書紀(720)天智即位前(北野本訓)「鋭(といさき)鈍(ニフリ)力竭(つ)きて抜くこと能はず」
② 力や勢いが弱くなる。衰える。
※
福翁自伝(1899)〈
福沢諭吉〉緒方の塾風「少し疲れて筆が鈍
(ニブッ)て来ると」
③ ぼんやりする。どんよりとする。また、空が曇る。
※
神楽坂(1935)〈矢田津世子〉三「ただ、そんな時の内儀さんは妙に
気力のぬけた鈍った
表情をしてゐて」
おぞまし・い【鈍】
〘形口〙 おぞま
し 〘形シク〙 いやな感じがするほどばからしい。愚かしい。
※読本・
椿説弓張月(1807‐11)後「ここへ伴ひ進
(まゐ)らせながら、面忘れたるこそ鈍
(オゾ)ましけれ」
おぞまし‐げ
〘形動〙
おぞまし‐さ
〘名〙
なま‐くら【鈍】
〘名〙 (形動)
① 切れ味がにぶいこと。また、そのもの。鈍刀。なまくら物。
※
葉隠(1716頃)七「ためし習に仕候が、なまくらにて候由」
※白鳥の歌(1954)〈
井伏鱒二〉「なまくらの
庖丁では無理である」
② 意気地がなかったり、なまけ者であったりすること。また、そのようなさまや人。なまくら者。
※雑俳・卯の花かつら(1711)「折紙がつくとなまくら娘にて」
③ ごまかし、うそを、上方でいう。
おぞ・い【鈍】
〘形口〙 おぞ・し 〘形ク〙 (「おそい(遅)」の変化した語) 頭のはたらきがにぶい。のろまで気が利かない。おろかである。
※読本・椿説弓張月(1807‐11)後「鈍(オゾ)き奴かな。などて吾を欺(あざむ)くぞ」
[語誌]頭や心のはたらきののろさをいう「おそい(遅)」から変化したもの。時間的意味の「遅い」との意味分化によって生じたもので、近世、近代にもちいられた。
おぞ‐げ
〘形動〙
にぶ・む【鈍】
〘自マ五(四)〙
① 鈍色(にびいろ)になる。特に、喪服を着ることをいう。にばむ。
※栄花(1028‐92頃)鶴の林「世中の十が九は、皆にぶみ渡りたり」
② 色などの鮮やかさがなくなる。
※青井戸(1972)〈秦恒平〉「時代の艷も黄金(きん)色に鈍んだまんまるい手焙り」
のろ【鈍】
〘名〙 (形動) (形容詞「のろい」の語幹から) 動作や頭の働きなどがおそいこと。また、そのようなさまや人。
※いさなとり(1891)〈幸田露伴〉二一「此女房(かみさん)に使はれるは中々愚鈍(ノロ)では及付(おっつ)かぬ」
どん【鈍】
〘名〙 (形動) にぶいこと。のろいこと。まがぬけていること。愚かなこと。また、そのさま。また、鈍重なさま。⇔
鋭。
※今昔(1120頃か)一四「我が根性の鈍なる事を歎て云く」
どん‐・する【鈍】
〘自サ変〙 どん・す 〘自サ変〙 にぶくなる。ぼける。ばかになる。「貧すれば鈍する」
※ブラリひょうたん(1950)〈高田保〉私談「しかし鈍しては居らぬぞと息張ってみせたら、その息張るところがお若いお若いと冷やかされた」
にば・む【鈍】
〘自マ四〙 にび色になる。薄墨色に染まる。また、にび色が喪服の色であるところから、喪服を着ることにいう。
※源氏(1001‐14頃)葵「にばめる御衣奉れるも夢の心地して」
にび【鈍】
※枕(10C終)八三「あるかなきかなる薄にび、あはひも見えぬきぬなどばかり」
に・ぶ【鈍】
〘自バ上二〙 鈍色(にびいろ)になる。鈍色を帯びる。にばむ。
※源氏(1001‐14頃)朝顔「にびたる御衣どもなれど」
おぞまし【鈍】
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報