不(漢字)

普及版 字通 「不(漢字)」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 4画

[字音] フ・ヒ
[字訓] はなふさ・おおきい・しからず

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 仮借
否定・打ち消しの「ず」に借用する。字はもと象形、花の柎(がくふ)の形であるが、その義に用いることはほとんどない。〔説文〕十二上に「鳥飛んで上し、下り來らざるなり。一に從ふ。一はほ天のごときなり」とするが、卜文の字形には一を含むことがなく、鳥の翔ぶ形でもない。〔詩、小雅、常棣〕「常棣(からなし)の 鄂不(がくふ)(ゐゐ)たり」とある鄂不は柎、花のつけ根のところで、これが字の本義に用いる例である。金文に「不顯」とあるものは「丕顯(ひけん)」、「丕(おお)いに顕(あき)らかなる」の意。柎に実がつきはじめて丕となり、否・(ほう)となり、さけて剖判(ほうはん)となる。不・丕・否は通用することがあり、金文に「不(ひひ)」「不(ひひ)」のように用いる。

[訓義]
1. はなぶさ、へた。
2. 丕と通じ、大きい。
3. 仮借して否定語に用いる。ず、あらず、せず、なし、しからず、なかれ。
4. 否と通じ、いな、いなや。

[古辞書の訓]
名義抄〕不 セズ・イナ・ナシ・アラズ・イナヤ 〔立〕不 ヤ・セズ・ナシ・シカラザルニハ・マジ・イナヤ・アラジ 〔字鏡集〕不 イナ・ナシ・アラズ・イナヤ・スフ・セズ・コトハ

[部首]
〔説文〕〔玉〕に、否をこの部に属する。柎より、胚胎(はいたい)し生長する過程を不・丕・否・という系列で示すのであるから、これらの字は本来はこの部に属すべきものである。

[声系]
〔説文〕に不声として丕・・否・・坏・など十三字を収める。一下を「んなるなり」と訓するが、その字は不を形声化した字。胎、よく字の初義を存するものである。

[語系]
不・否piuは同声。否は不の実のふくらんだ形。弗piutは払戻の字。おそらく否定の声義をもつものであろう。否よりとなり、倍・培buはふくらみを加える意。剖ph、副phiukはふくらんで剖(さ)ける意。力を加えて剖くことを劈phyekという。みな一の語系をなすものである。

[熟語]
不顕・不安・不意・不・不易・不一・不乙・不允不韻・不運・不懌・不億・不穏・不可・不佳・不快・不愨・不学不刊・不堪不軌・不・不羈・不義不誼・不給不朽・不急・不共・不協・不恭・不不謹・不具・不虞・不遇・不屈・不群・不経・不恵・不敬・不慧・不稽・不・不・不潔・不虔・不験・不言・不辜・不公・不幸・不肯・不皇・不遑・不穀・不才・不材・不錯・不・不子・不私・不貲・不歯・不時・不二・不次・不弐・不慈・不識・不悉・不日不実・不若不輸・不淑・不粛・不純・不順・不醇・不如・不祥・不称・不肖不浄・不常不辰・不審・不臣不信・不尽不是・不世・不正・不斉・不精・不宣・不然不測・不・不妥・不第・不端不断・不男不治・不智不忠・不衷・不弔・不調不通・不庭・不・不弟・不定・不貞・不悌・不迪・不敵・不天・不腆・不典・不殄・不図・不度・不当不党・不動不道・不徳・不佞・不能不抜・不備・不敏・不服・不物・不文・不平・不変・不偏・不弁・不便・不方・不法・不凡・不磨・不昧・不満・不眠・不明・不滅・不毛・不問・不夜・不予・不利・不理・不律・不慮・不良・不料・不倫・不類・不令・不禄・不和・不惑
[下接語]
鄂不

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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