心ならず(読み)ココロナラズ

デジタル大辞泉 「心ならず」の意味・読み・例文・類語

こころ‐なら◦ず【心ならず】

[連語]
自分本心ではないのだが。不本意ながら。「―◦ず大役を引き受けるはめになった」
思いどおりにならない。
「はかなさを恨みもはてじ桜花うき世はたれも―◦ねば」〈千載・雑中〉
気が気でない。
「せがれがそのやうな目にあひはせぬかと―◦ず」〈伎・四谷怪談
意識しない。われ知らず。
「子の命をかなしみて、―◦ずに母走りむかひ」〈曽我・七〉
[類語]唯唯諾諾諾諾義務的受動的しぶしぶ不承不承いやいや気が進まない言い成りあなた任せ人任せ・他人任せ・一任成り行き任せ天道任せ運任せ風任せ行き当たりばったり仕方ない仕方がない仕様がないせん方ない余儀ないよんどころない否応なし已む無いやむを得ずやむを得ないやむにやまれぬ背に腹はかえられない

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「心ならず」の意味・読み・例文・類語

こころ【心】 ならず

  1. 本意ではない。自分の意思に反している。
    1. [初出の実例]「おのが心ならず、まかりなむとする」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 「病の、心ならぬ里居十日ばかりするにも、恋しく床しく思ひ参らせつるに」(出典:讚岐典侍(1108頃)上)
  2. 思い通りにすることができない。自由にはできない。
    1. [初出の実例]「鹿の音や心ならねばとまるらんさらでは野辺をみな見する哉〈忍西〉」(出典:続詞花和歌集(1165頃)秋上)
  3. 不安でじっとしていることができない。気が気でない。
    1. [初出の実例]「あそこ爰心ならずや宿の月〈枳風〉」(出典:俳諧・花摘(1690)上)
    2. 「もしや倅が其やうな目にあひはせぬかと、心(ココロ)ならず」(出典:歌舞伎・東海道四谷怪談(1825)三幕)
  4. われ知らず。無意識に。うっかり。
    1. [初出の実例]「童子心ならずして『法花経なり』とこたふ」(出典:観智院本三宝絵(984)中)
    2. 「云量(いふばかり)無きわりなき姿に引れて心ならず〈略〉御入候へかしと云ければ」(出典:太平記(14C後)二三)

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