普及版 字通 「物」の読み・字形・画数・意味
物
常用漢字 8画
[字訓] もの・しるし
[説文解字]
[字形] 形声
声符は勿(ぶつ)。〔説文〕二上に「物なり。牛を大物と爲す。天地の數は牽牛よりる。故に牛に從ひ、勿聲」とする。牽牛の星座を首として天地が左動するというような考えかたは、戦国期以後のものである。勿を〔説文〕九下に三游(吹き流し)の象とし、物を勿声とするが、卜辞に牛と物とを対文として用いる例があり、物とは雑色の牛、その従うところは勿ではなく(り)(耒(すき)、犂(すき))である。物はもと物色の意に用い、〔周礼、春官、人〕「其の物を辨ず」、〔春官、保章氏〕「五雲の物を以てす」は、みな色を以て区別することをいう。それで標識の意となり、〔左伝、定十年〕「叔孫氏の甲に物り」、〔周礼、春官、司常〕「雜帛(ざつぱく)を物と爲す」、〔儀礼、郷射礼記〕「旌(はた)には各其の物を以てす」のようにいう。物を氏族標識として用いることになって、それはやがて氏族霊を象徴するものとなった。〔周礼、秋官、司隷〕「其の物を辨ず」の〔注〕に、「物とは衣、兵の屬なり」とあり、それらに氏族霊を示す雑帛がつけられた。さらに拡大して万物の意となる。〔詩、大雅、烝民〕「物れば則(のり)り」とは、存在のうちに、存在を秩序づける原理があるとの意である。また特に霊的なもの、すなわち鬼をもいう。わが国の「もの」にも、無限定な一般の意と、「物の化」という霊的な、識られざるものの意とが含まれている。
[訓義]
1. 雑色の牛、いろいろのもの。
2. もののしるし、氏族のしるし、はた。
3. もの、すべてのもの、存在するもの。
4. 形のあるもの、財貨、物質、禽獣。
5. 鬼、鬼神。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕物 モノ・コトゴトク・シルシ・カタチ・タグヒ
[熟語]
物彙▶・物役▶・物価▶・物賈▶・物化▶・物華▶・物我▶・物怪▶・物外▶・物官▶・物鬼▶・物軌▶・物器▶・物宜▶・物議▶・物曲▶・物件▶・物故▶・物估▶・物候▶・物貢▶・物采▶・物際▶・物在▶・物産▶・物資▶・物主▶・物序▶・物象▶・物情▶・物色▶・物数▶・物性▶・物勢▶・物則▶・物徹▶・物土▶・物靡▶・物表▶・物物▶・物変▶・物望▶・物方▶・物穆▶・物▶・物務▶・物誉▶・物用▶・物妖▶・物理▶・物慮▶・物料▶・物累▶・物類▶・物霊▶・物論▶
[下接語]
悪物・衣物・異物・遺物・一物・逸物・雲物・英物・詠物・遠物・応物・下物・荷物・貨物・怪物・開物・外物・格物・活物・官物・乾物・玩物・物・奇物・鬼物・棄物・器物・物・旧物・究物・御物・凶物・禁物・供物・群物・景物・傑物・古物・故物・好物・貢物・鉱物・穀物・才物・財物・作物・産物・死物・至物・私物・賜物・事物・時物・質物・什物・書物・庶物・象物・物・上物・食物・植物・神物・進物・人物・水物・瑞物・生物・斉物・牲物・静物・贅物・節物・銭物・造物・臓物・贓物・即物・俗物・大物・代物・鋳物・長物・珍物・天物・典物・蠹物・動物・毒物・鈍物・難物・二物・廃物・博物・備物・微物・品物・不物・賦物・風物・文物・幣物・弁物・方物・宝物・法物・魔物・務物・名物・毛物・薬物・唯物・尤物・用物・養物・礼物・霊物・老物
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報