中央(市)(読み)ちゅうおう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「中央(市)」の意味・わかりやすい解説

中央(市)
ちゅうおう

山梨県中部にある市。甲府盆地(こうふぼんち)のほぼ中央部に位置する。2006年(平成18)中巨摩(なかこま)郡玉穂町(たまほちょう)、田富町(たとみちょう)、東八代(ひがしやつしろ)郡豊富村(とよとみむら)が合併して市制施行、中央市となる。市名は県のほぼ中央部に位置することによる。東は甲府市、北は昭和町に、西は南アルプス市に、南は市川三郷(いちかわみさと)町に接する。市域の中央を笛吹川(ふえふきがわ)が南西流し、南アルプス市境を南流する釜無川(かまなしがわ)とに挟まれた笛吹川の右岸沖積平野、同左岸は御坂(みさか)山地の北麓丘陵地と分かれている。西部をJR身延(みのぶ)線が縦貫し、笛吹川に沿って国道140号線が通じ、北東端部を中央自動車道がかすめる。

 釜無川はかつて現流路より東方を流れ、乙黒(おとぐろ)付近で笛吹川に合流していたとされる。このため笛吹川右岸一帯は釜無・笛吹両川の氾濫原となり、治水急務であった。戦国期、武田信玄による釜無川の堤構築(いわゆる信玄堤)はその一環で、江戸時代初頭にかけて流路が付け替えられ、現在の流路に近い姿となった。1731年(享保16)には代官伊沢弥三右衛門によって鎌田川(かまだがわ)(笛吹川支流)の瀬替が行われ、このころにほかの諸支流の工事も実施されたとみられる。その後、笛吹川右岸一帯は肥沃(ひよく)な水田地帯となった。1980年(昭和55)国立山梨医科大学(現、山梨大学医学部)が開設され、文教地区化。また精密機械工業の企業などが進出し、住宅も増えて甲府市の近郊都市化が進んでいる。

 遺跡の残らなかった右岸平野と異なり、左岸丘陵上には旧石器時代‐弥生(やよい)時代の弥二郎(やじろう)遺跡、縄文時代‐古墳時代まで続く高部宇山平(たかべうやまだいら)遺跡など、遺跡が数多く分布。5世紀の帆立貝形の前方後円墳、王塚古墳(おうづかこふん)がある。丘陵上は大正年間から桑畑で占められ、養蚕が主体であったが、近年は果樹、野菜栽培に転換している。面積31.69平方キロメートル、人口3万1216(2020)。

[編集部]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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