(読み)モク(英語表記)eye
Auge[ドイツ]
œil[フランス]

デジタル大辞泉 「目」の意味・読み・例文・類語

もく【目】[漢字項目]

[音]モク(呉) ボク(漢) [訓]め ま さかん
学習漢字]1年
〈モク〉
め。「目前刮目かつもく耳目衆目属目しょくもく着目注目鳥目瞠目どうもく眉目瞑目めいもく面目
目で見る。めくばせする。「目撃目送目測目礼一目
めじるしとするもの。内容を表すもの。「目次目的目標目録曲目書目題目名目
分類上の区分。「科目項目綱目細目種目条目
大切な箇所。「眼目要目
主となる者。「頭目
碁盤上の交点。「一目井目せいもく
〈ボク〉め。「面目
〈め〉「目玉目安境目白目役目横目
[名のり]より
[難読]傍目おかめ傍目はため御披露目おひろめ粗目ざらめ真面目まじめ目差まなざ目映まばゆい目眩めくるめ目出度めでた目眩めまい目論見もくろみ

め【目/眼】

[名]
物を見る働きをする器官。光線・色などを感受して脳に送る感覚器官で、脊椎動物では眼球およびその付属器の涙腺などと視神経からなる。「澄んだ美しい―」「―をあける」
物を見るときの目つき。まなざし。「するどい―で見る」
物を見る能力。視力。「―が悪い」
見ること。見えること。「お―にかける」
注意して見ること。注目。「世間の―がこわい」
見分ける力。洞察力。「私の―に間違いはない」
見たときの印象。外観。「見た―がよくない」
その者が出会ったありさま。体験。「つらい―にあう」「いい―を見る」
位置・形状などが1に似たもの。
㋐主要な点。物の中心。「台風の―」
㋑眼球の形をしたもの。「うおの―」
㋒縦・横の線などが交わってできるすきま。「網の―」「碁盤の―」
10 線状に1列に並んだものの間にできたすきまや凹凸。「くしの―」
11 のこぎりの歯や、やすり・すりばちなどの表面に付けた筋。「―立て」
12 さいの面につけられた一から六までの点。また、振るなどして表れたその数。「賽の―」「いい―が出る」
1312から転じて》よい結果になる可能性。「優勝の―はもう消えた」
14 囲碁で、連結が完全な石で囲んである空点。「―が二つでいき
15 物差し・はかりなどに数量を示すために付けたしるし。「はかりの―」
16 はかり・升などではかった量。重さ。「―が足りない」
17 木材の切り口に現れる年輪の線。木目もくめ。「―の粗い板」「まさ―」
18 文様または紋所の名。方形またはひし形の中心に点を一つ打った形のもの。「五つ―」
[接尾]
数を表す語に付いて、その順序にあたる意を表す。「二番―」「一〇年―」
動詞の連用形に付いて、その状態にあること、また、その状態にあるところを表す。「弱り―」「落ち―」「結び―」「別れ―」「こげ―」
形容詞の語幹に付いて、そのような性質や傾向をもっている意を表す。「長―」「細―」
数を表す語に付いて、もんめの意を表す。「百―」「一貫―」
[類語](1アイ/(2目付き眼差し目遣い目元目くばせ目顔目色炯眼眼光

もく【目】

[名]
生物分類の段階の一。の下、の上に位置する。「昆虫綱トンボヤンマ科」
律令制で、国司主典さかんのこと。
[接尾]助数詞。囲碁で、碁盤のの数や碁石の数を数えるのに用いる。「三勝つ」「二置く」

ま【目】

め。多く、複合語として用いる。「のあたり」「つげ」「なじり」「なざし」「なかい」

ぼく【目】[漢字項目]

もく

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精選版 日本国語大辞典 「目」の意味・読み・例文・類語

め【目・眼】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. [ 一 ] ヒトや動物に備わる感覚器官の一つ。光の刺激を受けて、外界の状況を知るための器官。普通、ヒトをはじめ脊椎動物のように頭部に二つあって対をなすものをいう。動物の種類によってその個数・位置・構造・機能は異なり、一様でない。まなこ。
      1. 眼球・眼瞼などを含む視器全体をいう。
        1. [初出の実例]「是に左の御目を洗ひたまふ時に、成れる神の名は、天照大御神」(出典:古事記(712)上)
        2. 「此事を歎くにひげも白く、腰も屈まり、目も爛れにけり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 視器の主要部分である眼球をいう。ヒトをはじめ脊椎動物のものは、鞏(きょう)膜・脈絡膜・網膜に包まれ、その内部に水様液・ガラス液を満たし、レンズのはたらきをする。目玉。目の玉。
        1. [初出の実例]「御目は白(しら)めにて臥し給へり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
        2. 「俄にくづれうめられて、隠かたなく平に打ひさがれて二の目など一寸斗うち出されたるを」(出典:嵯峨本方丈記(1212))
      3. 人の顔の中の、のついている位置、高さ。高さを表わす基準としていう。
        1. [初出の実例]「配膳の様、古は飯点心肴以下をも目より上に持たる由申候へ共」(出典:宗五大草紙(1528)公私御かよひの事)
    2. [ 二 ] [ 一 ]のはたらきをいう。視覚をつかさどるものとして、また、心情を表出するものとしての目。
      1. ものを見る目。また、そのはたらき。ものを見る動作。「目につく」「目を離す」「目を配る」「目恥ずかし」などの形で用いる。
        1. [初出の実例]「父おとど限りなくかなしうし給て、片時、御めはなち給はぬ御子なりけり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
      2. 特に、恋しくおもう人を見ること。男女が会うこと。
        1. [初出の実例]「雲隠る小島の神のかしこけば目(め)は隔てども心隔てや」(出典:万葉集(8C後)七・一三一〇)
      3. 対象を見る目の向き。視線。「目をそばめる」「目を引く」「目を注ぐ」「目が移る」「目のやり場に困る」などの形で用いられる。
      4. 目の様子。めつき。まなざし。また、目で情意を表わすしぐさ。目の表情。目づかい。目顔。「目を見す」「目で知らせる」「目で殺す」「目に物言わす」などの形で用いられる。
      5. 目で見た感じ。それを見る時の気持。「目を喜ばす」「目を驚かす」などの形で用いられる。
        1. [初出の実例]「まつばら、めもはるばるなり」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月五日)
      6. ( 限定の語を伴って ) その立場に立って見ること。それを見る立場。見方。
        1. [初出の実例]「多くの年へだてたるめには、ふとしも見わかぬなりけり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)
      7. 対象を正当に認識し評価する力。鑑賞、鑑定、洞察、識別などをする目の力。眼力。見識。めがね。「目を肥やす」「目がきく」「目かしこし」などの形で用いられる。
        1. [初出の実例]「不知にこそ有けれ。目有者ぞ見付る。我、此の石取てむ」(出典:今昔物語集(1120頃か)二六)
        2. 「もし正清が縁りの者か、おん目の程のかしこさよ、わらはは鎌田が妹に」(出典:謡曲・烏帽子折(1480頃))
      8. 眠ること。睡眠。「夜の目」
        1. [初出の実例]「晦日の夜からゆふべ迄あんじて一めもをよらずお心つかれお身の毒かへっておやすみなされませ」(出典:浄瑠璃・生玉心中(1715か)中)
      9. 好意、贔屓(ひいき)などの心ざし。そのような心ざしをもって見ること。「目をかける」「目に入れる」などの形で用いられる。
      10. にらみつけること。にらんで叱ること。また、そのしぐさ。目玉。お目玉。「目をもらう」「目をする」などの形で用いられる。
      11. 動物の目に準ずる機械の作用。光学機器や電波探知機などの、物の像をつくりだすはたらきを比喩的にいう。「カメラの目」「ミクロの目」「レーダーの目」
    3. [ 三 ] 見る対象をいう。
      1. 見る対象となる顔や姿。特に、「君が」「妹が」などの限定を伴って会いたいと思う人の顔や姿をいう。上代において多く用いられた。
        1. [初出の実例]「君が梅(メ)の恋(こほ)しきからに泊(は)てて居てかくや恋ひむも君が梅(メ)を欲(ほ)り」(出典:日本書紀(720)斉明七年一〇月・歌謡)
      2. 目に見える姿や様子。「日の目」「人目」「そばめ」などの形で用いられる。
      3. 目に見る姿、様子の意から転じて、その者が出会う、自身の有様、境地、境遇。めぐりあわせ。体験。「憂き目」「つらい目」
        1. [初出の実例]「かかるめ見んとは思はざりけむなど、あはれがる」(出典:枕草子(10C終)九)
        2. 「かく難堪(たへがた)き目を久く見給ふべきに非ず」(出典:今昔物語集(1120頃か)五)
    4. [ 四 ] 位置、形状、価値などが[ 一 ]に似ている物事をいう。
      1. 事柄の中心となる点、または主要な点。
        1. (イ) 主眼。眼目。
          1. [初出の実例]「此卿の眼と見給へる歌書は古今集一部とせり」(出典:随筆・戴恩記(1644頃)下)
        2. (ロ) 物の中心。中心にある穴など。「台風の目」
      2. 目、特に眼球を思わせる形状のもの。
        1. (イ) 双六(すごろく)などに用いる賽(さい)の面につけられた、一から六までの点。「賽の目」
          1. [初出の実例]「一二の目(め)のみにはあらず五六三四さへありけり双六の頭(さえ)」(出典:万葉集(8C後)一六・三八二七)
        2. (ロ) 紋様、または紋所の名。方形または菱形の中心に点を一つ打った図柄のもの。紋所には「いつつめ」「かどたてひとつめ」「じゅうろくめ」などがある。
          1. [初出の実例]「或は茶の類にて四つ目の紋を白に染ぬき縫にもする也」(出典:随筆・守貞漫稿(1837‐53)一四)
        3. (ハ) 鏑矢(かぶらや)の鏑にあけた穴。通常、三ないし八か所にあける。
          1. [初出の実例]「なま朴の鶉の長八寸の目九さしたるにて、六寸、なひば八寸の大かりまたをねぢすけみ」(出典:半井本保元(1220頃か)上)
        4. (ニ) 幕の部分の名。軍陣に用いる幕にあけた物見のための穴。全部で九つあけ、上の二つは大将、中の三つは臣下、下の四つは諸軍勢の物見とする。また、上の二つは日月を、中と下との七つは七曜を表わすともいう。物見。
          1. [初出の実例]「目のあき所は不定、もんのあひあひに、あくる。目いづれも、広(ひろさ)かねの、五寸にあくる」(出典:甲陽軍鑑(17C初)品四四)
        5. (ホ) 縫針の、糸を通す孔。めど。耳。
          1. [初出の実例]「絹糸を細長く目(メ)に貫いた儘」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉九)
    5. [ 五 ] 連続する、物と物との隙間(すきま)。間の区切り。区切りをつける線条。また、そのように刻まれたもの。
      1. 交差する何本もの線条の間にできる隙間。
        1. (イ) 織られた糸と糸との間にできた隙間。織り目。布目。
          1. [初出の実例]「しつのめのあさけのころもめをあらみはげしき冬はかぜもさはらず」(出典:曾丹集(11C初か))
        2. (ロ) 網、籠、垣、筵などの、編まれた間にできた隙間。編み目。
          1. [初出の実例]「天離る 鄙つ女の い渡らす迫門(せと)石川片淵 片淵に 網張り渡し 妹(メ)ろ寄しに 寄し寄り来ね 石川片淵」(出典:日本書紀(720)神代下・歌謡)
        3. (ハ) 碁、将棋、双六の盤や方眼紙などで、縦横の線がまじわるところ。また、縦横の線によって区切られた中の部分。縦横に交わる何本もの線の間にできる空所。〔日葡辞書(1603‐04)〕
        4. (ニ) 囲碁で、連結が完全な石で囲んである一つ、または連結した二つの空点。また、交互の着手によって最終的にそうなる形。個別に二つ以上の目がある一連の石は、イキといって絶対に取ることができない。
          1. [初出の実例]「法深房の方の石、目一つくりて、其うへこふをたてたりければ、ただにはとらるまじといはれけり」(出典:古今著聞集(1254)一二)
        5. (ホ) 相接する物と物との間の隙間。板や瓦などを並べ合わせたときにできる隙間。「板目(いため)」「目張り」「目塗り」
          1. [初出の実例]「いと多うも降らぬが、瓦のめごとに入りて」(出典:枕草子(10C終)二五一)
      2. 間をおいて並んでいる線条、または、稜(りょう)
        1. (イ) 碾臼(ひきうす)、擂鉢(すりばち)などの、物をすりつぶす面に立てた筋。
          1. [初出の実例]「目のつぶれたる摺鉢に」(出典:仮名草子・東海道名所記(1659‐61頃)六)
        2. (ロ)(のこぎり)の歯、三つ目錐(きり)などの先、鑢(やすり)の面などのように、多数に立てた稜をもつ突起。「鋸の目」
          1. [初出の実例]「鋸の鑪の目を叩て居る」(出典:福翁自伝(1899)〈福沢諭吉〉幼少の時)
        3. (ハ) 木材の縦の断面にあらわれる筋。「正目」「木目(もくめ)
        4. (ニ) 道具を使ってできる筋目。箒(ほうき)で掃いた後や櫛けずった後の筋。
          1. [初出の実例]「すがすがしく箒の目がついてゐた」(出典:桑の実(1913)〈鈴木三重吉〉七)
    6. [ 六 ] 空間的、時間的な切れめ。二つの物、あるいは二つの事態の区切りや接点。転じて、物の条理、また計量の区切りや、単位をいう。多くの場合、動詞の連用形と複合して用いられる。「切れ目」「切り目」「分け目」「折り目」「境目」「繋ぎ目」「綴じ目」など。
      1. 物を切り離し、または合わせた箇所に生ずる線状の痕跡(こんせき)。または離合する先端の部分。
      2. 異質のものが部分的に混在する部分。「焦げ目」「よごれ目」など。
      3. 異なる状況に転ずる境目。状況が転換する時点。その間際。動詞の連用形と複合して用いられる。「死に目」「弱り目」「落ち目」「金の切れ目」「時候の変わり目」
      4. 物事の条理。筋道。筋目。普通には「文目(あやめ)」という。
      5. 計量・計測のために、秤(はかり)その他の計器類に刻んだしるし。計量、計測の区切りを表わすしるし。目盛(めもり)。→目に掛ける
        1. [初出の実例]「Meuo(メヲ) ヨム、または、カゾユル〈訳〉重量を知るために、目盛を数える」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      6. 秤、または枡(ます)ではかる量。量目(りょうめ)。目方。秤目(はかりめ)。枡目(ますめ)。→目を掛ける。「出目(でめ)」「目減(めべ)り」「目が足らぬ」
      7. (うつわ)の容量。全量。転じて、物事の可能な範囲。「目いっぱい」「七分目」「目八分」
      8. 近世における銀貨の量目の単位、匁(もんめ)の略。一の位の数が零であるときにだけ用いられる。ただし、一〇を除く。
        1. [初出の実例]「ヒャク me(メ)」(出典:コリャード日本文典(1632))
    7. [ 七 ] 近世から明治時代にかけて行なわれた茶商の符丁で、八の意。
  2. [ 2 ] 〘 感動詞 〙 目をむき、にらみつける動作に伴って発することば。特に人を叱ったりたしなめたりするときに用いるが、実際の発音は、「めえ」ないし「めっ」となる。→[ 一 ][ 二 ]
    1. [初出の実例]「『いい加減にしないと、母ちゃん、本気にメよ』と奥さんは子供に言い」(出典:三ちゃんも三ちゃんや(1971)〈古山高麗雄〉一)
  3. [ 3 ] 〘 接尾語 〙
    1. 数詞のあとに付いて、初めから数え進んでひと区切りをつけた、その区切りまでの数を表わすのに用いる。
      1. [初出の実例]「されば、昼二番めによき能の体を、夜の脇にすべし」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)三)
      2. 「今日より三日猶予はすべし。第三日めの薄暮には、残らず明て引取り候へ」(出典:人情本・清談若緑(19C中)三)
    2. 形容詞の語幹、動詞の連用形などに付いて、そのような度合、加減、性質、傾向の意味を添える。「細め」「長め」「控えめ」「おさえめ」など。→語誌( 3 )
      1. [初出の実例]「火鉢出で茶菓出で、続いて鼈甲羅宇とやら、ちと太いめの長煙管、桝形の煙草箱」(出典:置炬燵(1890)〈斎藤緑雨〉上)

目の語誌

( 1 )「め(芽)」「見る」などと同源とされる。
( 2 )類義語「まなこ」の語源は、一般に「ま(目)+な(助詞)+子」とされ、「め」が眼全体を表わすのに対して「まなこ」は黒目の部分を指すといわれる。
( 3 )[ 三 ]の場合、現代の共通語では「語幹+め」が普通だが、関西では「多いめ、高いめ、硬いめ」のように連体形に接続させて用いることが多い。ただし、共通語でも語幹が一音節の形容詞「濃い」だけは例外で、「濃め」ではなく、「濃いめ」となる。


もく【目】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 条項の小分け、また、何段階かに分類する階級の一つ。
      1. (イ) 箇条、条目。
        1. [初出の実例]「凡案成者。具条納目。〈謂。〈略〉目目録也。〈略〉此皆毎目別巻〈略〉〉目皆安軸」(出典:令義解(718)公式)
        2. [その他の文献]〔論語‐顔淵〕
      2. (ロ) 箇条書きなどで、「項」の下、「節」の上位に当たる区分。
        1. [初出の実例]「第一各省の予定経費要求書、但し各項各目の明細を記入すべし」(出典:会計法(明治二二年)(1889)六条)
      3. (ハ) 生物分類上の階級の一つで、「綱」の下で「科」の上位に当たる区分。
        1. [初出の実例]「凡植物の大綱を、二十四に別つは〈略〉其一綱毎に各数目あり」(出典:小学読本(1874)〈榊原・那珂・稲垣〉三)
    2. 内容を示す標題、目録の類。
      1. [初出の実例]「凡諸国考選文及雑公文。〈略〉訖弁官惣計造目申太政官」(出典:延喜式(927)一一)
    3. 令制で、国司の第四等官。主典(さかん)のこと。
      1. [初出の実例]「佑官 〈略〉国曰目郡曰主張家曰書吏〈皆佐官〉」(出典:二十巻本和名抄(934頃)五)
    4. ( 「目安(めやす)」「目当て」などの意で ) もくろみ。たくらみ。
      1. [初出の実例]「僕は〈略〉猶文学の何れの方面を指す可きであらふかと、其目を請ひ問ふた」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉六)
    5. てんもくぢゃわん(天目茶碗)」の略。
      1. [初出の実例]「鳥居前で、目(モク)で一杯やりかけう」(出典:浄瑠璃・本朝二十四孝(1766)二)
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 囲碁で、碁盤のめを数えるのに用いる。また、碁石の数にもいう。
    1. [初出の実例]「あれは天性の利溌者でござる。〈略〉男も一二目(モク)はおかねばならぬ」(出典:内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉八)

ま【目】

  1. 〘 名詞 〙 「め(目)」の古形。多く、他の語と熟して用いられる。「まつ毛」「まなこ」「まなじり」「まなかい」「まぶた」「まもる」「まばゆし」「まのあたり」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「目」の意味・わかりやすい解説

目/眼 (め)
eye
Auge[ドイツ]
œil[フランス]

動物における光刺激を受容する感覚器官をいうが,散在皮膚光覚器のように,形態視ができないものは除く場合がある。目は,体の正中線またはその近くにある中央眼と体の両側方にある側眼に大別される。爬虫類や円口類の顱頂眼(ろちようがん)や昆虫成虫の背単眼が中央眼である。

無脊椎動物の目の構造や機能は,種類によって大きく異なっている。最も原始的なものは,単細胞生物である原生動物のミドリムシにみられる感光性の細胞小器官の眼点である。今日では,ミドリムシの真の感光点は,いわゆる眼点と呼ばれる色素性構造と異なり,繊毛の基部にあることが明らかにされている。構造の簡単な光覚器としては,光受容細胞が表皮に単独で散在する散在皮膚光覚器があり,ミミズなどに見られる。光受容細胞が表皮の一部に集まったものは平眼または眼斑と呼ばれ,テングミズミミズに見られる。いずれの場合も形態視はできないが,明暗識別や光に対する定位を行うことができる。光受容細胞が集まってできた表皮の部分が落ち込んで,くぼみになると杯状眼と呼ばれる。杯状眼のうち落込みが大きく,光の入射する穴が小さくなって,ピンホール暗箱のようになったものは窩眼(かがん)または穴眼(けつがん)と呼ばれる。穴眼の入口が閉じて,目が表皮の下で胞状になったものが胞状眼と呼ばれる。杯状眼はツノガイなどに,穴眼はオウムガイに,胞状眼はマイマイなどに見られる。これらの目は単眼と呼ばれることもある。胞状眼の表皮側と表皮が接する部分にレンズができたのがタコやイカの目であり,脊椎動物の目に匹敵する複雑な構造となっている。昆虫の幼虫の目や,成虫の中央眼は単眼と呼ばれるが,杯状眼の変形と考えられている。動物の目のうちでも特異なのは節足動物の複眼である。複眼は個眼が集まってできたもので,個眼の数は少ないもので100~300個,多いものでは3万個弱にもなる。

 脊椎動物の目の網膜では,光の進行方向に対して,目のいちばん奥にある視細胞が最初に興奮し,興奮は網膜の表面に向かって,光の進行方向と逆向きに網膜内を伝わる。このような網膜を倒立網膜という。倒立網膜はプラナリアなどの杯状眼やタコやイカなど軟体動物腹足類の特殊な目にも見られる。これに対して多くの無脊椎動物の目では,目に入射した光は最初に視細胞の光感受部にあたり,その興奮が光の進行方向にそって神経を伝わる。このような網膜を直立網膜と呼ぶ。

ヒトをも含めて,脊椎動物の側眼はほぼ球形の眼球とその前方にレンズを備えた形状から,カメラ眼と呼ばれる。眼球の壁は,外側から内側に向かって,強膜,脈絡膜,網膜という3層構造をなし,前方の強膜は透明になって少し突き出し,角膜となる。また脈絡膜の前縁は小さなひだ状の毛様体となり,透明な繊維でできたチン小体を介して水晶体に連なる。一方,毛様体から水晶体の前方に虹彩(こうさい)がのび,瞳孔(どうこう)が形成される。網膜には視細胞やその他の神経要素があり,視覚情報処理の一部がここで行われる。
執筆者:

眼球の発生のようすは脊椎動物の各系統を通じて共通である。眼球の構成要素のうち,網膜,視神経,色素上皮,毛様体と虹彩の上皮は中枢神経の一部である眼胞optic vesicleがもとになって形成される。水晶体,角膜の上皮,結膜の上皮は外胚葉性の表皮由来であり,角膜の支質と内皮,強膜,脈絡膜,毛様体と虹彩の上皮以外の部分は中胚葉性の間充織由来である。眼胞は前脳胞の側壁の一部が外方にふくれ出したもので,頭部の表皮と接している。やがて,眼胞は中央部がへこみ眼杯optic cupと呼ばれる内外2層の細胞層からなる杯状の構造となる。眼杯の内側の細胞層から網膜が,外側の細胞層から色素上皮が形成される。頭部の表皮のうち眼胞が接している部位は肥厚し,水晶体板を形成する。水晶体板は陥入し,ついには表皮下に完全にくびれ落ちて胞状の水晶体胞を形成する。水晶体胞がもとになって水晶体が形成される。眼杯を覆う表皮から角膜の上皮と結膜の上皮が形成される。眼杯の周囲の中胚葉性の間充織から,疎な結合組織である脈絡膜と密な結合組織である強膜とが形成される。脈絡膜の前方部の結合組織は,眼杯の辺縁部由来の上皮に裏打ちされて,毛様体と虹彩となる。強膜の前方部の結合組織は角膜の支質と内皮を形成する。

 発生起源を異にする眼球構成要素は複雑な相互作用に基づいて形成される。表皮から水晶体胞が形成される過程では眼杯の存在が不可欠の条件である。イモリやサンショウウオなどの有尾両生類では,眼胞や眼杯を取り除くと水晶体胞の形成が見られず,また,眼胞を予定水晶体域以外の表皮下に移植すると,移植された眼胞に接する表皮から水晶体胞が形成されることが確かめられている。このような現象を眼杯による表皮からの水晶体胞の誘導と呼んでいる。水晶体胞の網膜に面した部域の細胞が伸長し,水晶体繊維に分化することにより水晶体が完成するが,この過程に網膜が関与している。水晶体胞を前後を逆転して移植しても,水晶体繊維の分化はつねに網膜に面した部域に起こる。

 有尾両生類では水晶体や網膜は再生される。成体の完成した水晶体を取り除くと,虹彩の背側縁から新たな水晶体が再生する。眼球から網膜を取り除くと,色素上皮が増殖し網膜を形成する。このように水晶体や網膜はまったく異なった組織から再生してくるため,通常の再生現象と区別し化生metaplasiaと呼んでいる。虹彩からの水晶体再生は発生初期のニワトリ胚でも起こることが確認されているが,哺乳類では水晶体の再生は起こらない。しかし,哺乳類の色素上皮細胞を適当な条件下で培養すると,クリスタリンと呼ばれる水晶体に特有なタンパク質を合成する水晶体細胞に転換することがしられている。
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〈目は心の鏡〉〈目は口ほどに物をいう〉などとよくいわれるが,医学的にも数多くの全身の病気のときに目にいろいろの症状が出るので,目をみると全身の病気がわかるという意味で〈目は病気の縮図〉といわれる。また,脳や心臓,腎臓の病気のときにも目の症状を起こすため,〈目は脳・心・腎の鏡〉ともいわれる。

ヒトの目は左右1対,頭部の中央よりやや上方,頭骨の前面にある眼窩の中にある。皮膚はここで上下の眼瞼(がんけん)いわゆる〈まぶた〉をつくっている。上下の眼瞼の合する内側のところは,内眼角(いわゆる〈めがしら〉)といい,外側は外眼角(いわゆる〈めじり〉)という。日本人でしばしば上眼瞼から鼻根の方へ続く皮膚のひだが内眼角のところを覆っている。これがいわゆる〈蒙古ひだ〉すなわち蒙古皺襞(しゆうへき)(内側眼瞼ヒダ)である。

 目は主として眼球と視神経(視束)とからなりたっており,これに眼球付属器官(副眼器)すなわち眼瞼,結膜,涙器,外眼筋などが加わって視器(視覚器)を構成する。眼球は直径約24mmのほぼ球形をなし,外壁は外・中・内3層の膜からなる。外膜は角膜と強膜,中膜は虹彩,毛様体および脈絡膜,内膜は網膜からなり,中膜全体をぶどう膜ともいう。眼球の内容の大部分は硝子体で満たされ,その前方には水晶体があり,水晶体の周囲と角膜にいたるすきまである前房は房水で満たされる。虹彩の中央には円形の穴すなわち瞳孔がある。

(1)強膜 強膜は眼球の外壁の大部分を占める白く不透明な硬く強い膜で,厚さは約1mmである。前方は角膜に連なり,後方で視神経鞘(ししんけいしよう)に連なる。外側は結膜,テノン組織,脂肪組織に包まれ,内側はぶどう膜に接する。角膜とともに眼球の形を保つ。

(2)角膜 角膜は眼球の前方にある透明な膜で,周辺部は不透明となり強膜につながる。直径は横11mm,縦10mmで,横が縦より1mm大きい。厚さは約1mm。外側から見ると奥にある虹彩が見え,中央に瞳孔が見える。光線を通過させてこれを屈折させ,眼内に光を送る。また強膜とともに眼球の外壁を構成してその形を保つ。

(3)ぶどう膜 ぶどう膜は虹彩,毛様体および脈絡膜の三つからなる。眼球外壁の強膜と内側の網膜との間にあり,色素と血管に富む。脈絡膜はぶどう膜の大部分を占める眼球外壁の中間の膜で,色素と血管に富み,眼球内に余分の光が入るのを防ぐとともに,網膜の外層を栄養する。毛様体は房水を産生し,角膜と水晶体の栄養に関与するとともに,毛様体筋の働きによってチン小帯を介し,水晶体の厚さを変えて調節の作用を営む。虹彩は角膜を通して見える茶色の部分で,虹彩にある二つの筋肉(瞳孔括約筋瞳孔散大筋)の働きによって,瞳孔の大きさを変えて,眼球内に入ってくる光の量を加減する。瞳孔は虹彩の中央にあり,角膜から眼球内に入った光をさらに眼内へ導く。瞳孔は明るいところでは小さくなり,暗いところでは大きくなる。

(4)網膜 網膜は眼球壁の最も内側の膜で,眼底から,毛様体,虹彩の裏面の部分までを覆う。錐状体および杆(かん)状体という2種類の視細胞があり,光,色,形を感ずる。

(5)視神経 視細胞からの視覚情報を脳へ伝える神経。網膜神経節細胞から出た軸索は眼球後極の視神経乳頭に集まり,視神経となる。長さ35~55mm。100万本もの神経繊維からなるといわれる。

(6)眼底 検眼鏡で見える眼球外壁の裏側の部分を眼底という。神経細胞からの神経繊維の集まる視神経乳頭があり,その耳側にある円形の部分が黄斑である。黄斑の中心は中心窩といい,最も視力がよい。視神経乳頭からは,神経のほか網膜の動脈と静脈が出入する。

(7)硝子体 硝子体は眼球の内容の大部分を占めるゲル様組織である。約4㏄あり,眼内容の3/4を占める。眼球の形を保ち,外力による変形に抵抗するとともに,透明で,網膜まで光線を通過させる。また水晶体や網膜の代謝産物の通路ともなる。

(8)水晶体 水晶体は直径約9mmの厚い凸レンズ状をなし,前面は虹彩,後面は硝子体に接する。薄い水晶体囊の中に,ゼリー状の水晶体質があり,やや黄味を帯びるが透明で,毛様体筋の働きによって,厚さを変えて屈折率を変化させ,これによって網膜に映る像を調節する。

(9)眼球付属器官 眼瞼,結膜,涙器などが含まれるが,これらは主として,眼球保護の役割をなす。眼瞼は上眼瞼と下眼瞼からなり,眼瞼挙筋,瞼板筋,眼輪筋の三つの筋肉の働きで,眼裂を開いたり閉じたりしている。眼裂を開くのは動眼神経と交感神経,閉じるのは顔面神経の働きによる。眼瞼の縁には睫毛(しようもう)(まつ毛)がある。睫毛は刺激に敏感で,ここに異物が触れると反射的に眼瞼を閉じて目の中に入るのを防いでいる。眼瞼を閉じると,外力は直接眼球に及ばない。また,〈まばたき〉はこれによって角膜の表面をうるおす。結膜は眼球の表面と眼瞼の裏面を覆う薄い粘膜で,眼球と眼瞼をつないでおり,相互の運動を円滑にしている。また,粘液を分泌して,角膜の表面をうるおしている。

 涙器はを分泌する涙腺と,涙を鼻腔へ排出する涙道からなる。涙腺は主涙腺と副涙腺からなり,涙を分泌する。涙は眼球表面の異物などを洗い流すとともに,表面をうるおして,滑らかにし,角膜の光学的機能を維持する。涙道は涙囊,鼻涙管などからなる。なお,眼窩は眼球および眼球付属器を入れる骨のくぼみであるが,ここには豊富な脂肪組織があって,外力が眼球に直接作用しないようにする働きがある。

胎生2~3週で外胚葉から将来脳になる第1次脳胞,その外側から1対の第1次眼胞ができるのが眼球のもとになる。胎生9ヵ月で眼球は完成するが,それまでの眼球の発生の過程で異常が起こると先天異常が起こるし,9ヵ月に満たないで出生すると未熟児網膜症発生の可能性がある。

 満期で出生した新生児の目は構造上はほぼ完成しているが,機能のうえでは未完成で,視力もひじょうに悪い。体が発育していくのにしたがって,目もしだいに見えるようになり,1ヵ月でものをじっと見ることができるようになる。2ヵ月から色がわかり,4ヵ月では動くものを追って目を動かす。3歳になれば視力の検査ができて,半数以上で1.0まで見える。6歳となれば大部分が視力1.0となる。機能の中で最も高次の働きである両眼視も6歳で完成する。すなわち,視機能はおおよそ6歳でできあがる。眼球の大きさも新生児では直径17mmと小さく,成人の24mmに達するまでには屈折状態も変化していく。

外からの光は角膜から眼球内に入り,瞳孔を通って水晶体,硝子体を通って網膜の視細胞を刺激する。視細胞には錐状体(錐体)と杆状体(杆体)の2種類がある。錐状体は網膜の中心部に多く,明るいところで働き,色を感ずる。杆状体は視野の20度から30度にあたる周辺部に最も多く分布し,暗いところで働き,主として明暗を感じ,色を感じない。

(1)色覚と光覚 視覚には色覚と光覚がある。色覚は色を感ずる目の機能のことで,色覚は錐状体の働きによることから,網膜の中心部でよく,周辺部では不良であり,明るいところではよく,暗いところでは悪い。

 光覚は,光を感じ,その強さを区別する目の機能で,暗所では杆状体が,明所では錐状体が関与する。暗所では杆状体が働くから,視野の周辺部が比較的よく見え,色は感じない。杆状体が主として働いている状態を暗順応といい,錐状体が主として働いている状態のことを明順応という。明るいところから急に暗いところに入ると,初めは見えないがだんだん見えてくる。これに対して,暗いところから急に明るいところに入ると,初めは見えないがすぐ見えてくる。すなわち,暗順応の時間は長いが,明順応の時間は短い。夜盲は暗順応の障害のことをいい,杆状体の機能障害によって起こる。これに対して錐状体の機能障害を昼盲といい,暗いところのほうがよく見える。
光覚 →色覚
(2)屈折と調節 光を屈折させる目の機能を屈折という。目の光学系は角膜,房水,水晶体および硝子体で構成されている。目に入ってきた光は角膜で強く屈折され,房水ではあまり屈折されず,水晶体ではかなり屈折され,硝子体ではわずかに拡散して網膜に像を結ぶ。網膜の上に映った像は上下が逆になっているが,脳のほうでは,逆さまになった像を正常と見るように慣らされているので,逆さまでないように感ずる。

 調節とは毛様体筋の働きによって,水晶体の厚さを変え,水晶体の屈折率を変化させて,網膜に鮮明な像を結ぶ目の機能をいう。近いところを見るときには,毛様体筋が収縮し,チン小帯(水晶体小帯)がゆるんで水晶体はその弾性によって厚くなり,遠いところを見るときには,毛様体筋がゆるんで,チン小帯が緊張し,水晶体はうすくなる。毛様体筋の収縮は動眼神経の中の副交感神経により,毛様体筋のゆるむのは,交感神経の働きによる。調節力は年齢とともに弱くなる。42~43歳になると調節に必要な水晶体の弾性が低下し,近いところを見るときに水晶体が十分に厚くならず,近くが見えにくくなる。これが老視(いわゆる老眼)である。調節が行われるためには神経が正常であるとともに水晶体の弾性も必要である。

(3)視力と視野 物体の形や存在を認識する目の機能を視力という。中心窩には視力のよい視細胞である錐状体が多いことから,視力は中心窩の機能を表す。中心窩で見ることができない場合,視力はひじょうに悪くなる。

 視野とは目を動かさないで見ることのできる範囲である。正常の視野では,見ようとする点の耳側15度の位置に直径5度の円形の見えない部分(盲点)がある。この部位は眼底の視神経乳頭に相当し,網膜の視細胞がないためである。視野は網膜から大脳後頭葉のどの部位に障害があっても異常を生じうるが,網膜の視細胞の杆状体の障害では視野の周辺が狭くなり,これを視野狭窄(きようさく)という。錐状体の障害では視野の中心部が見えにくくなり,中心暗点という。視交叉(しこうさ)およびそれより上の視覚路の異常では視野の半分が見えなくなり,これを半盲という。
視野 →視力
(4)視覚路 光刺激によって,興奮した視細胞からの視覚信号は,まず双極細胞(水平細胞)を経て網膜神経節細胞に送られる。ここから出た神経繊維は視神経となって眼球から出,視交叉(視神経交叉)に達する。ここで左右の視神経繊維のうち,耳側の繊維はそのまま同じ側へいくが,鼻側の繊維はそれぞれ反対側にいくというように半分が交叉する。視交叉の後ろの部分を視索といい,間脳の外側膝状体(しつじようたい)に達する。外側膝状体を出た神経繊維は視放線となって大脳後頭葉に達するが,大脳後頭葉には視覚中枢があり,ここまで視覚信号が達して初めて視覚を生ずる。網膜視細胞から大脳後頭葉までの視覚伝導の経路を視覚路または視路という。眼球および視路のどの部位に異常があっても正しい視覚は得られない。

(5)両眼視 両眼視とは両目で受け入れた感覚を脳で統合して一つの新しい感覚とする機能をいい,融像と立体視がある。融像とは右目と左目それぞれの網膜に映った像を一つにまとめてみる働きのことである。立体視とはものを立体的にみる感覚で,これは右目と左目とが離れていて,それぞれの目の網膜に映った像の位置が異なるために起こる。したがって,片目では立体視は起こらない。両眼視が円滑に行われるためには,両目にほぼ同じ大きさの像が映り,両目の視線にずれがなく,眼球運動が円滑に行われていることが条件となる。

(6)眼球運動 眼球運動は外眼筋の収縮によって行われる。外眼筋は一つの目に六つあり,それらの筋肉の働きで,眼球は水平,上下,斜めの方向へ動く。両目の視線を目前の1点に集中させる働きが輻湊(ふくそう)convergenceである。近いところを見るときには輻湊とともに調節が起こる。これに対して輻湊していた両目の視線を開くことを開散divergenceという。外眼筋は動眼神経,滑車神経および外転神経によって支配されている。眼球運動は自分の意思で行うことができるが,反射的に意思とは無関係にも行われる。
眼球運動 →眼筋

目の病気は,炎症,腫瘍,機能の異常などがあるが,目の各部位の病気と機能の異常に大別される。おもなものを表に示した。これら,目自体の病気のほか,他の臓器や全身性の疾患によっても影響を受け,種々の症状を現す。目と関係の深い他臓器の,あるいは全身性の病気には次のようなものがある。(1)循環器疾患(高血圧症,動脈硬化),(2)血液の疾患(白血病,貧血),(3)呼吸器疾患(サルコイドーシス),(4)内分泌疾患バセドー病,甲状腺機能低下症,糖尿病),(5)神経系の疾患(脳腫瘍,脳動脈炎,脳出血),(6)感染症(梅毒,淋病,トキソプラズマ症,風疹),(7)耳鼻咽喉疾患(副鼻腔腫瘍,中耳炎),(8)免疫病(膠原(こうげん)病,エリテマトーデス,リウマチ)などである。このほか,全身の栄養状態も関係が深く,ビタミンA欠乏症による夜盲症をはじめとして,ビタミンB1欠乏症,ビタミンB2欠乏症も眼症状を現す。また,妊娠中毒症も視力障害をひき起こす。
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古代エジプトの医学文書として名高い前16世紀の《エーベルス・パピルス》は,目の化膿,盲目化,結膜浮腫,白内障,眼瞼外反,眼瞼内反,目の肉芽,水腫眼,虹彩炎,角膜白斑,瞼裂斑,翼状片,ブドウ腫,睫毛乱生(逆まつ毛)というように,眼病を驚くほど細かく診別している。ここではまた硫酸銅で治療した目の流行病にふれているが,これはトラコーマであったと思われる。トラコーマはギリシア・ローマ時代にもよく知られ,その後十字軍,モンゴル族の侵略,ナポレオン戦争,ロシア革命など人間の大移動のたびに流行を繰り返し,今日ではアジア,アフリカの貧困地帯で猛威をふるっている。

 日本はとくに眼病が古くから多かった。養老令では両目盲を篤疾(とくしつ),一目盲を残疾(ざんしつ)と規定しており,平安末期の《病草紙》には眼病手術が描かれ,三条天皇の眼病は緑内障であったことが知られている。江戸時代には馬島流のほか41派におよぶ眼科専門医が各地で流派を競っていたことは,日本に眼病の多かったことを物語る。眼病のうち最も恐れられていたのは風眼(ふうがん)で,目が急にはれあがり,血膿が流れ出し,結膜が浮腫し,やがて角膜をかくす。これは淋菌性膿漏眼と推定される。水晶体の混濁する白内障は古くからあり,手術も行われていた。夕暮れになると視力がなくなる夜盲症は〈とりめ〉といわれ,鳥目,雀盲と書かれた。これは劣悪な栄養と過酷な労働に起因して発生した。このほか病目(やみめ),はやり目といわれる急性・慢性結膜炎,ただれ目といわれる眼瞼縁炎,星目,目星といわれるフリクテン,打目(うちめ),突目(つきめ)などの外傷,あるいはものもらい,目いぼといわれる麦粒腫,それにトラコーマ,虹彩炎,翼状片,緑内障,弱視など,江戸時代の眼病は多彩をきわめていた。また江戸時代にはおよそ7万5000人以上の盲人がいたといわれ,疫病や栄養失調のために失明し,彼らは当道(とうどう)や瞽女(ごぜ)などの集団を形成していた。
盲人
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古代中国では,目は肝臓の精気が体表に通ずる穴で,目を見れば肝臓の健康状態がわかり,肝臓のぐあいが良ければ,目はよく五色を見分けて機能良好であると考えた。黄疸の病理をつとに知っていたのだが,さらに骨の精は瞳(ひとみ)となって腎をつかさどり,筋の精は黒目となって肝をつかさどり,肌肉の精は約束(上下のまぶた)となって脾と胃をつかさどるなどというのは理解しがたい。《和漢三才図会》によれば,天は西北の方向に足りず,地は東南の方向に満ちていないから,南面する人の天に近い耳や目は右より左のほうが明敏で,地に近い手足は右のほうが力強いと説明している。

 神話伝説の中に目に関する話はきわめて多い。中国の巨人盤古(ばんこ)が死んだ後,左眼は太陽に,右眼は月になった。また北方の章尾山に人面蛇身の燭竜(しよくりゆう)という神がいて,目は顔の真ん中に縦についており,この目が開くと明るくなって昼,閉じれば夜になる(《山海経》)。別に鐘山にある石で造った人の首の交互に開閉する左眼は太陽,右眼は月で,左眼が開けば昼となり,右眼を開けば夜になるともいう(《元中記》)。伊弉諾(いざなき)尊が左眼を洗って天照大神を,右眼を洗って月読(つくよみ)尊を生んだのと似ている。一方,古代インドの《リグ・ベーダ》の一つ,〈プルシャ(原人)の歌〉によれば,太陽はプルシャの目から生じ,月は彼の意から生じたという。また《アタルバ・ベーダ》中の〈ブラーティアの歌〉には,ブラーティアの右眼が太陽,左眼が月と歌われている。エジプトの太陽神ラーの右眼は昼で,左眼は夜だった(《アメン・ラー讃歌》)。その目はセト神の攻撃にあって重傷を負うが,トート神が吐きかけた唾(つば)によってまもなく回復した(〈死者の書〉)。なお,《アメン・ラー讃歌》にはアメンの都市テーベが〈全土の目〉〈アトゥム神の聖眼〉〈ラー神の目〉とたたえられている。他方,バビロニアの天地創造物語《エヌマ・エリシュ》によれば,女神ティアマトの両眼はユーフラテス川とティグリス川の源となった。

 北欧神話の主神オーディンは片目である。神々の住む聖所のかたわらにそびえるトネリコの大樹イグドラシルの根もとに知恵と知識を与える泉があり,オーディンが泉の持主ミーミルに片目を抵当にしてその水を飲ませてもらったからで,その目は泉の中に入れられた(《ギュルビたぶらかし》)。ヒッタイト神話の嵐神は竜神に心臓と目を奪われたが,竜神の娘と結婚させた自分の息子を使って心臓と両眼を取り戻し,のちに竜神に復讐(ふくしゆう)した(《竜神イルルヤンカシュの神話》)。エジプト神話のホルスは母イシスの首をはねた罰としてセトの手で両眼をえぐられた。セトはこれを山に埋めて両眼が大地を照らすようにし,両眼は球根となってロータスが生える。女神ハトホルはガゼルの乳をホルスの眼窩に注いで両眼を再生させた(《ホルスとセトの争い》)。ナワ族神話のショロトルは,太陽に光を与えるため犠牲となって死んでいく仲間を悲しんで泣いたあまり,両眼が眼窩から流れ出てしまった。マヤ族の伝説では魔術師シュピヤコシュが怪物ブクブ・カキシュのエメラルドの歯と両眼をくりぬいて代りにトウモロコシの粒をつめ,これを殺している。ケルト神話の巨人バロールは,熊手でかき上げねばならないくらい眼瞼が下垂していたが,その目ににらまれると軍隊も戦力を失うほどの力があった。しかしその孫の〈すべての技芸の主〉ルーグが魔法の石投機で石を投じて〈目の悪い〉バロールの目を頭の後ろにとばしたため,味方の中に落ちた目はバロール側の戦力を麻痺させてしまい,ルーグの軍が勝利を収めた。

 バロールの目のように,見るものに危害や不幸を与えるものを邪視evil eyeという。邪視信仰は有史以前から世界各地にあった。見るものにあらゆる種類の損害を与えるこの魔力は,その目をもつ人の意思にかかわりなく作用してしまうとされ,婦人,小児,動物は邪視の影響を受けやすく,夫や母や飼主がこれらを賛嘆のまなざしで見ても,その目が邪視なら不幸になる。エジプト,バビロニアはもちろん,ギリシアやパレスティナなどでも邪視が信じられており,ローマ人はこれを魔術の一つに数えていた。大プリニウスは凝視して人を殺す部族の例をあげ,キケロを援用しつつスキュティア(スキタイ)の女性のように目に瞳が二つあると邪視になると説く(《博物誌》第7巻)。当時はテオクリトスの《牧歌》にあるように,邪視の予防には唾を吐くとよいといわれた。ヘブライ語の邪視ayin haraという語は旧約聖書にはまったく見られないが,《申命記》7章15節の〈エジプトの悪疫〉や《民数記》6章24節の,主がイスラエル人を守ると約束するくだりは,邪視に関連しているという説がある。

 伝承の中では歴史上有名な人々が邪視をもっていたといわれた。オルフェウス,ゾロアスター,ソクラテス,アリストテレス,テュアナのアポロニオス,デモクリトス,エンペドクレス,アプレイウス,ウェルギリウス,アレクサンドロス大王,アーサー王と魔術師マーリン,イブン・シーナー,R.ベーコン,教皇ベネディクトゥス8世と同9世,T.カンパネラ,G.カルダーノ,ジャンヌ・ダルク,O.クロムウェル,ナポレオン3世,J.オッフェンバックらである。またドイツにはフィンランド人とイタリア人は邪視をもつと信じる人が少なくないし,シュレジエンなどにはユダヤ人に見つめられると傷つくという迷信が残っている。一方,ユダヤ教のタルムードや伝説の中にも邪視の話は少なくない。日本でも南方熊楠は随筆《小児と魔除》に邪視の例を数多く挙げている。《塵塚物語》巻三では魔物の目を見るなと警告している。

 《往生要集》には阿弥陀仏の目から発する光は四方に分枝して十方を照らし,青い光には青い化仏(けぶつ)が,白い光には白い化仏がいて超人的な力を現すとあるが,これは仏教が極端な異形を好まなかったからで,ヒンドゥー教のシバ神の3眼のうち,眉間の1眼が仏では白毫(びやくごう)に変わったとされる。一般に目が二つあるのは通常人で,3眼あれば超人や神を表している。数の3が能動,受動とその中間,または創造,保全と破壊を象徴し,シバの神性を示している。他方,1眼の場合は相反する両義をもち,2眼より少ないから人より下等とするかたわら,この1眼が額中央にあればギリシア神話のキュクロプスのように超人的な力をもったり,モンゴル伝承のドア・ソホルのように歩いて3日かかる先まで見える千里眼となる。額のほかに手や腕,胴や翼にある異所性の目も千里眼であることが多く,空想上の動物や天使の姿などに往々描かれている。なお,ギリシア神話には1眼以下の怪物もいる。ケトが近親姦(かん)を通じて生んだパンプレドとエニュオとデイノは3人で1眼を交互に使っていた。《山海経》には1眼や多眼の怪物・怪獣が枚挙にいとまがないほどあるが,インドでもたぐいない美女ティローッタマーを眺めるためにインドラ神に1000個の目ができたという話がある。けれども一般に多眼も両義性を表すとされ,満天の星のごとく万象を照らしながらも多眼の当人は暗黒に取り残されているのは,ギリシア神話で100眼をもつアルゴスが一瞬の眠りにすべての目を閉じたすきにヘルメスに首を切られた例に象徴される。

 仏教には五眼(ごげん)がある。人間のもつ肉眼,天人の天眼,声聞(しようもん)乗と縁覚乗の人のもつ慧眼(えげん),菩薩の法眼,仏陀の仏眼と,それぞれ視野が異なって仏眼だけがすべてを見る。《日本霊異記》にある,行基が女の髪油を猪の油と見ぬいた話は,行基は菩薩の化身というものの法眼の威力を述べたとはいえず,神通の眼力という程度である。他方,ゾロアスター教の聖典アベスターに,ウィーシュタースパ王が恍惚(こうこつ)状態に入って〈天眼〉を得た(〈ヤスナ〉第51章)というのは,五眼の思想につながるものがある。また仏教には悟りの深浅を目の数にたとえたものもあった。《大般涅槃経》に〈世に三人あり。一は目なく,二は一目,三は二目なり。目なき者というは,常に法を聞かず。一目の人は,しばしば法を聞くといえども,その心住(とどま)らず。二目の人は,専心聴受し,聞きしがごとくに行なう〉とあるのを引用する南方熊楠は,中国人がさらにこれを転用して中国人は2眼,ラテン人は1眼,他は盲目などという例を列挙している。禅宗でいう一隻眼(いつせきげん)ももとは不十分な見識を指したのに,時代を経るうちにひとかどの見識,さらに心眼へと格上げされ,そのある位置も頭頂部の〈頂門〉ということになってしまった。

 偓佺(あくせん)という仙人の両眼は四角形をしていたというが(《列仙伝》),古代エジプト人の定義によれば,人の目は口の形をしていて,その中に太陽たる瞳を包む。のぞきこむ人の姿がそこに小さく子どものように写って見えるから〈ひとみ〉であり〈瞳〉である。ラテン語pupulusは少年で,pupulaとpupillaは瞳のことで,英語のpupilにつながっている。蒲松齢《聊斎志異》に,眼疾で失明した男が目の中で小人が会話するのを聞き,鼻孔から出入するのを見,後に右眼の瞳人が移ったため,左眼の瞳が2個となって視力を回復した話がある。《五雑俎》によれば舜には4個の瞳があった。医学的には多瞳multiple pupilのおのおのに括約筋があることはめったになく,瞳孔膜が複雑に残ったため複数個に見えたりする,虹彩の奇形によることが多い。

 盲目を治した予言者はどの宗教にもおり,《日本霊異記》などにも盲目が治った話が散見する。《古事談》には逆に,《大般若経》の虚読(そらよみ)をつねとした罰で両眼がとれて経本についてしまった僧の話もある。ユダヤ伝説によれば,アレクサンドロス大王は人間の目が1個入った小箱をエデンの園の門番から渡されたとき,重くて持てなかった。富を見飽きることなく求める大王の欲望が大きいためで,死んで土にかえるまじないとしてこれに土をかけたところ,目の欲望もなくなって小箱は軽く持ち上げられた。また,アイスキュロスはプロメテウスが人間に火を与える一方,将来を見る目のない盲目の希望を植えつけたとしているが,マヤ族伝説でもフラカン神らが人間をつくった際,神より不完全なものとするために目に息を吹きかけて曇らせ,一部しか見えないようにしている。日本の民話には女に化身した大蛇が男と交わって生んだ子が,去った母にもらった目玉によって育つ話がある。C.G.ユングが目は母の胸だというのはこれとは意味を異にしており,瞳が子どもになっている。また,邪視は見る目がもたらす危害だが,メドゥーサの首はこれを見る者を石に変える。

 台風の目はeye of the stormの直訳だが,雄牛の目bull's eyeは的の中心,猫の目cat's eyeは宝石の一種,〈バルト海の目〉はゴトランド,〈ギリシアの目〉はアテネである。以上のように目が象徴するものは多様だが,際だっていて他に例を見ないのはエジプト文字のホルスの目である(図13)。6個の部分はそれぞれ1/2,1/4,……,1/64を表す数字で,全部加えれば63/64だが,これがホルスの目の魔力によって64/64すなわち1になるとされている。
片目 →邪視 →一つ目
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「目」の意味・わかりやすい解説

目(め)

eye

光の強弱や波長を刺激として受容する感覚器官で、ヒトの場合は頭骨の前面に左右1対ある眼窩(がんか)内にそれぞれあって上下の眼瞼(がんけん)(まぶた)で保護されている。目は主として眼球と視神経からなり、これに眼球付属器(眼瞼、結膜、涙器、眼筋など)が加わって視覚器を構成する。

[桑原安治・大島 崇]

眼球

眼球は後方で視神経に連なり、ほぼ球形で、成人の平均直径は24ミリメートル。眼球壁は3層からなり、最外層は角膜と強膜、中層はぶどう膜、最内層は網膜である。

[桑原安治・大島 崇]

角膜

眼球の前方にある時計皿状の透明な膜で、光線を通過させて眼内に送る。俗に黒目とよばれる部分に相当する。成人で平均直径11ミリメートル、厚さ約1ミリメートル。周辺部の強膜から膨隆し、外から見ると奥にある虹彩(こうさい)が透けて見え、中央に瞳孔(どうこう)が見える。

[桑原安治・大島 崇]

強膜

角膜に連なって眼球の後方約6分の5を占める強靭(きょうじん)な膜で、膠原(こうげん)線維が密集して血管が少ないため白色不透明である。俗に白目とよばれる部分に相当し、角膜の周辺で結膜(球結膜)に移行する。角膜とともに眼球を保護して眼球内圧を一定に保ち、眼球の形を維持するのに役だっている。厚さは約1ミリメートルで、後方では視神経鞘(しょう)に連なり、内側はぶどう膜に接している。

[桑原安治・大島 崇]

ぶどう膜

眼球外壁の強膜と内側の網膜との間にある中膜で、血管および黒褐色の色素細胞に富み、脈絡膜、毛様体、虹彩からなる。

 脈絡膜はぶどう膜の大部分を占め、厚さは約0.3ミリメートルで、網膜外層の栄養をつかさどる。前方は毛様体、さらに虹彩に連なり、眼球内に余分な光が入るのを防いでいる。

 毛様体はぶどう膜の前方部が肥厚して内方に突出した部分で、平滑筋が含まれる。脈絡膜の前端にあって虹彩根部の後方に連なり、水晶体赤道部を取り囲み、後方から見ると輪状になっている。内面には70~90個の毛様体突起が経線方向に走り、これから毛様体小帯(チン小帯)が出て水晶体赤道部に付着している。毛様体は眼房水を産生し、角膜や水晶体の栄養をつかさどるとともに、目の調節作用を営んでいる。

 虹彩はぶどう膜の前端部で、中央に円形の瞳孔がある円盤状の薄い膜であり、角膜の後方にあって日本人では概して黒褐色に見える部分である。虹彩の組織は色素細胞に富み、その色素の色や血管の多少によって虹彩の色が異なって見える。虹彩には瞳孔括約筋と瞳孔散大筋とよばれる筋肉があって、虹彩の幅を伸縮させることによって瞳孔の大きさを変え、眼内に入る光の量を加減する。

[桑原安治・大島 崇]

網膜

眼球壁の内面にあって後方約4分の3の範囲に広がる薄い膜で、その内面は硝子体(しょうしたい)に接し、外面は脈絡膜に接する。検眼鏡で前方から観察できるが、これを臨床的に眼底像とよんでいる。物体の像が結ばれる部分で、後極部には黄斑(おうはん)部があり、その中央部は中心窩とよばれて、もっとも視力のよい部分である。後極部から4~5ミリメートル内側に視神経が眼球壁を貫く視神経乳頭がある。この部分は網膜の組織を欠き、これが盲点に相当する。網膜には桿状体(かんじょうたい)および錐状体(すいじょうたい)とよばれる視細胞があり、光や色を感ずる。

 眼球の内容は硝子体、水晶体、眼房水からなり、眼球内圧の維持と光線の屈折に関与する。

[桑原安治・大島 崇]

硝子体

無色透明な半流動体で、卵白よりやや固く、眼球内腔(ないくう)の約5分の4を満たし、眼球の形状を保ち、外力による変形に抵抗するとともに、眼内に入った光線を網膜まで通過させるが、その屈折率は1.335である。

[桑原安治・大島 崇]

水晶体

眼球前半部中央にあり、前方は瞳孔および虹彩、後方は硝子体で境された両凸面レンズ状の形をした透明な組織で、直径約9ミリメートル、前後の厚みが3.7~4.4ミリメートル、屈折率1.44~1.55である。毛様体筋の収縮によって厚みが変わり、目の調節作用に関係する。

[桑原安治・大島 崇]

眼房水

角膜、毛様体、水晶体、硝子体で囲まれた腔を満たす透明な液体で、虹彩を境として腔が前後に分かれ、それぞれを満たす液体を前房水、後房水という。眼房水は毛様体で産生され、瞳孔を通じて前房に流れ、虹彩根部(付着部)と角膜とのなす隅角(ぐうかく)の部分から強膜静脈洞に吸収される。こうして眼房水はつねに循環しながら眼圧の維持をはじめ、水晶体、虹彩、角膜の栄養に主要な役割を演ずる。

[桑原安治・大島 崇]

眼球付属器

眼瞼、結膜、涙器、眼筋、眉(まゆ)が含まれ、おもに眼球を保護している。

[桑原安治・大島 崇]

眼瞼

上眼瞼と下眼瞼に分けられ、外面は皮膚、内面は結膜(眼瞼結膜)に覆われ、その間に上眼瞼挙筋と眼輪筋とよばれる筋肉があって眼瞼を開閉する。眼輪筋の後方にマイボーム腺(せん)とよばれる脂腺を内蔵した瞼板という組織があって、眼瞼の形を整えている。また、眼瞼の縁には睫毛(しょうもう)(まつげ)が上下に並列して生えている。

[桑原安治・大島 崇]

結膜

眼球の表面と眼瞼の裏面を覆う薄い粘膜で、上下の眼瞼の裏面から延びて根元で反転し、角膜縁で終わっており、眼瞼結膜、結膜円蓋(えんがい)、眼球結膜の3部に分けられる。

[桑原安治・大島 崇]

涙器

涙腺と涙道からなり、涙腺は上眼瞼の後方、眼窩外上部にあって涙を分泌する。涙道は、目を潤した涙が上下の眼瞼の合一する内側端(内眼角部)で上下の眼瞼に開口する細い涙小管を通り、1本に合して鼻腔(びくう)に通ずる経路をさす。

[桑原安治・大島 崇]

眼筋

眼球の位置を一定に保ち、あるいは眼球の運動に関係する筋で、外眼筋と内眼筋に大別される。外眼筋は四つの直筋(内直筋、外直筋、上直筋、下直筋)と二つの斜筋(上斜筋、下斜筋)からなる随意筋であり、眼球を意志に従っていろいろの方向に動かすが、内眼筋は虹彩と毛様体にある不随意筋である。

[桑原安治・大島 崇]

いわゆる眉毛で、上眼瞼の上部、上眼窩縁の真上にあたるところに弓状に生えており、眉弓(びきゅう)とよばれる。

[桑原安治・大島 崇]

目の機能

目は視覚をつかさどる器官で、その機能はきわめて複雑かつ微妙であり、感覚器官のうちもっとも精確なデータを脳に送っている。視覚の受容器官は網膜であり、おもに水晶体によって光を屈折させ、物体の像を正しく網膜に結ばせている。この物体の遠近に応じて目の焦点をあわせる働きを調節作用という。また視覚には、光の量の多少によって生ずる明暗感覚と、光の波長の差に基づく色覚がある。網膜には、光の強さに対する感覚順応がみられ、明るい所から暗い所にいきなり入ったときにみられる暗順応と、逆の場合にみられる明順応がある。

 目の解像力を視力といい、実際には2点を2点として識別できる能力をさし、物体の形や存在を認識する目の機能である。また、1点を注視したとき、眼球を動かさずに見ることができる範囲を視野(しや)という。この視野中にある限局性の視野欠損(見えない部分)を暗点といい、その生理的なものが盲点である。

 あまり疲労をおこさないで物体をはっきり持続的に見ることができる最短距離を明視距離といい、普通は25~30センチメートルで、近視眼では明視距離がこれより短く、遠視眼では逆に長くなっている。また、眼前の1点に両眼の視線を集中させる機能を輻輳(ふくそう)といい、同時に瞳孔が縮小(縮瞳)して調節が行われる。なお、物体をはっきり見ることができる最短距離を近点といい、明視距離よりは短い。近点で物体を見る場合は、調節および輻輳を極度に行うので目が非常に疲れる。

[桑原安治・大島 崇]

目の病気

目そのものの疾患ばかりでなく、他の臓器や全身性の疾患に関連してみられる眼症状も多い。眼底検査は、高血圧症、動脈硬化症、糖尿病などの診断にも役だつ。また、皮膚粘膜眼症候群に含まれるベーチェット病、あるいはサルコイドーシスなどでは、ぶどう膜炎の症状がみられる。ここでは、目の各部位および機能に大別して、それぞれのおもな疾患を列挙する。なお各疾患についてはそれぞれの項目を参照されたい。

[桑原安治・大島 崇]

部位別疾患

眼瞼の疾患には、麦粒腫(ばくりゅうしゅ)(ものもらい)、霰粒腫(さんりゅうしゅ)、ただれ目(眼瞼縁炎や眼瞼湿疹(しっしん)の総称)、眼瞼内反、眼瞼下垂、さかさまつげなどがあり、涙器の疾患には、涙腺炎、涙嚢炎(るいのうえん)、鼻涙管閉塞(へいそく)などがある。結膜疾患には、ウイルス性結膜炎、アポロ病(急性出血性結膜炎)、トラコーマなどのはやり目のほか、角結膜炎、膿漏眼(のうろうがん)(化膿性結膜炎)、濾胞性(ろほうせい)結膜炎などの結膜炎をはじめ、球結膜下出血、結膜乾燥症、結膜濾胞症などがある。角膜疾患には、角膜炎、角膜潰瘍(かいよう)、角膜混濁、角膜実質炎、角膜腫瘍(しゅよう)、角膜軟化のほか、突き目、パンヌス、フリクテンなどがある。強膜の疾患には、強膜炎などがあり、ぶどう膜の疾患には、ぶどう膜炎、虹彩炎、虹彩毛様体炎のほか、原田病、交感性眼炎などがある。眼底の網膜や脈絡膜の疾患としては、脈絡膜炎、中心性網膜炎、糖尿病網膜症、未熟児網膜症、網膜芽細胞腫、黒内障性猫眼(ねこめ)、網膜色素変性症、網膜剥離(はくり)、網膜脈絡膜萎縮症(いしゅくしょう)、眼底出血などがある。水晶体の疾患としては白内障が知られ、硝子体の疾患には硝子体混濁、硝子体出血、飛蚊症(ひぶんしょう)などがある。視神経疾患には、うっ血乳頭、球後視神経炎、視神経炎、視神経萎縮、視神経交叉(こうさ)症候群などがある。ほかに雪盲(せつもう)、眼感染症、全眼球炎、眼窩腫瘍、眼窩蜂巣織炎(ほうそうしきえん)などもある。

[桑原安治・大島 崇]

機能別疾患など

屈折異常による近視、遠視、乱視のほか、調節異常の老視、視野異常の視野欠損や盲点、視力異常の弱視や眼精疲労などがある。さらに、眼位異常の斜視、眼圧異常の緑内障、眼筋異常の眼筋麻痺(まひ)や複視など、光覚異常の夜盲症、色覚異常、色視症などもある。

[桑原安治・大島 崇]

動物における目

光を感じる感覚器官。眼とも書く。動物は目の助けを借りて環境中の光要因に対して定位することができ(走光性)、また環境を視覚によってとらえることができる。

 無脊椎(むせきつい)動物のもっとも簡単な目は原生動物のミドリムシの眼点の近くにある光受容器で、これは細胞質が光を感じるように特殊化したものである。多細胞動物の目には光を感じる視細胞がある。ミミズなどの表皮中には視細胞が散在していて明暗のみを感じ、分散光感覚器官とよばれる。クラゲやヒトデの平眼(眼斑(がんぱん))は表皮に視細胞が集団をなし、それによって光源の方向と運動が感じられる。プラナリアの色素杯単眼は視細胞の集団を半球形の色素細胞層が囲み、光は色素細胞層の開口部のみから入射するので、平眼より方向性が正確となる。

 アワビなどの穴眼(けつがん)は表皮の一部が落ち込んでその底部に感覚細胞が配列したもので、この落ち込みがさらに進行すると開口部が瞳孔(どうこう)となって、カメラ眼が形成され、初めて形態視が可能になる。その原始的なものはオウムガイにみられる。カメラ眼では視細胞層は網膜とよばれ、多くの場合はレンズが発達して解像力がきわめてよくなっている。

 レンズのあるカメラ眼は頭足類や脊椎動物にみられるが、これらは進化的には独立に発達したもので、進化の収斂(しゅうれん)の一例となっている。頭足類のレンズは細胞の分泌物で非細胞性のものであるが、脊椎動物のレンズは表皮に由来する細胞性の器官である。脊椎動物の目にはさらに、光量を調節する虹彩、保護の役割を果たす角膜、眼球全体を保護する強膜、脈絡膜をもち、レンズと網膜の間には硝子体が存在する。網膜の中心付近には視細胞が密に並んでいる部分(黄斑)があってもっとも感度がよく、一方、視神経の束が網膜を通過する部分は光を感じないので盲点とよばれる。

 昆虫類や多毛類の複眼は、数千ないし数万の個眼が蜂(はち)の巣状に配列されたもので、個眼は表面から順に、レンズの役割を果たすキチン質の晶体、上皮細胞、硝子体細胞、硝子体、視細胞によって構成されている。複眼は獲物などの速い動きを正確にとらえることができるといわれる。

[八杉貞雄]

民俗

目にまつわる民俗は多方面にわたっているが、目の病気や失明など、どちらかといえばマイナス条件に関するものが多い。2月と12月の8日を事八日(ことようか)といい、軒に目籠(めかご)を出す年中行事が広く分布する。その理由として、この日は一つ目小僧が訪れてくるので、目の多いざるや籠を出して対抗するのだという。事八日に現れる妖怪(ようかい)とは別に、一般にも一つ目小僧は妖怪の一種目に数えられている。

 眼病については、いろりやかまどで薪(たきぎ)を燃やす生活では、煙のために目を冒されることが多く、結膜炎のことを病目(やんめ)、ただれ目、くされ目などといった。病目送りなどといって、目やにを綿につけて竹に挟み、四つ辻(つじ)などに送り出す呪法(じゅほう)がある。目の周囲にできる麦粒腫には関心が強く、「ものもらい」「めばちこ」「めちんこ」などの地方名が多く、またそれを落とすための呪法も多様である。7軒の家から食べ物をもらい集めて食べるとか、畳の縁(へり)で櫛(くし)をこすって当てるとか、障子の穴越しに、糸で結び切ってもらうまねをするとか、井戸に大豆を落とすとか、ざるを井戸に少しのぞかせ、治してくれれば全部見せてやるというなど、さまざまの呪法がある。

 薬師様は主として目の神様とされており、眼病の人は、「め」「目」の文字を自分の年齢の数だけ紙に書き、絵馬(えま)のような気持ちで薬師堂に貼(は)り付けたりする。三日月(みかづき)は目の形に似ているので、三日月様を目の神とする地方もある。井戸の神(水神)も目の神で、井戸神を祀(まつ)るときは、竹串(たけぐし)の上部に三角形の紙を挟み、それに目を描いて立てる所もある。昔は盲目の人に対する社会の対応が十分でなく、生活の手段も限られており、あんま、いたこなどの祈祷師(きとうし)、瞽女(ごぜ)、琵琶法師(びわほうし)などになる人が多く、それぞれの民俗を形成した。占いの手段の人相(にんそう)でも、目や眉毛、まつげには関心が強く、その形などを判断の材料にするし、目の近くのほくろを泣きぼくろといったりする。目は心の窓ともいって、多くの諺(ことわざ)がある。

[井之口章次]



目(もく)
もく

生物を分類するときの類別に用いる一段階の名称。綱と科の中間にある段階であって、綱との間には亜綱や上目など、また科との間には亜目や上科などの段階が置かれることが多い。目は共通した明らかな特徴を備える科を集めて構成されるが、一方では綱に含まれる生物を主要な体制の特徴などにしたがって区分したものである。昆虫類(綱)を例にあげると、体の区分や脚(あし)の数などは共通であるが、はねの有無や脈の特徴、口器の形状、尾角の存否や形、幼期の状態などによって、トンボ、カゲロウ、直翅(ちょくし)(バッタなど)、シラミ、半翅(セミ、カメムシなど)、甲虫、膜翅(ハチ、アリ)、鱗翅(りんし)(チョウ、ガ)、双翅(ハエ、アブ、カ)、ノミなど、比較的識別しやすい約30の目に分けられている。

[中根猛彦]

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普及版 字通 「目」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 5画

[字音] モク
[字訓] め・みる・めくばせする・かなめ

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
めの形。〔説文〕四上に「人の眼なり。象形」とし、「子(瞳)を重ぬるなり」、すなわち重瞳子(ちようどうし)であるという。〔尚書大伝〕に古の聖人を重瞳子とし、〔史記、項羽紀〕に項羽も重瞳子で、その苗裔であろうかという。瞳子を大きく写した字は臣、(望)・監の字などがその形に従う。古くは目は横長の形にしるした。目を動詞にして、目撃・目送のように用いる。また眉目は最もめだつところであるから、標目・要目のようにいう。

[訓義]
1. め、まなこ、めだま。
2. みる、みつめる、めくばせする、ながめる。
3. なづける、なづけいう、しる、しるす、みしる。
4. かなめ、くわけ、こわけ。
5. みわける、しなさだめ。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕目 メ・マナコ・ミル・ナヅク・シルス・メヅカラ・モチ・アキラカ/目 チカメ

[部首]
〔説文〕に眼・・瞋など百十二字、重文八、〔新附〕に眸など六字、〔玉〕にはすべて三百四十字を属する。(よう)・(とう)などのほかは、おおむね形声字。眼はもと呪眼。これによって姦邪を卻(しりぞ)けた。は涙の象形字。古人を懐うことを懷(懐)といい、字はに従う。は、その人の衣中に(なみだ)を垂らす形で、死者を懐うことをいう。

[語系]
目miukは眸miuと声近く、目の瞳子の部分を眸という。

[熟語]
目痾・目囲・目意・目翳・目・目・目近・目禁・目撃・目瞼・目験・目眩・目語・目巧・目耕・目今・目昏・目指・目使・目施・目・目識・目眦・目・目次・目疾・目汁・目笑・目捷・目睫・目数・目成・目・目睛・目精・目前・目送・目断・目・目的・目徹・目図・目睹・目覩・目挑・目逃・目動・目瞳・目波・目標・目品・目瞑・目覧・目力・目礼・目録・目論
[下接語]
怡目・一目・目・暈目・悦目・横目・科目・過目・課目・開目・礙目・刮目・豁目・眼目・窮目・魚目・極目・寓目・群目・目・眩目・項目・綱目・目・細目・指目・耳目・衆目・恂目・瞬目・書目・除目・条目・色目・拭目・属目・触目・嘱目・矚目・心目・深目・瞋目・数目・清目・節目・送目・総目・側目・大目・題目・奪目・著目・注目・張目・天目・目・怒目・頭目・瞠目・徳目・反目・万目・費目・眉目・美目・鼻目・標目・眇目・品目・目・目・方目・満目・名目・盲目・遊目・要目・揚目・両目

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百科事典マイペディア 「目」の意味・わかりやすい解説

目【め】

眼とも。光の刺激を感受する感覚器。ヒトの目は左右1対で,頭蓋の眼窩(がんか)内にある眼球と,その付近の結膜涙器まぶた眼筋などの副眼器からなる。眼球は視覚をつかさどり,副眼器はこれを保護し補助する。狭義には眼球だけを目という。眼球壁は3層からなり,外層は強膜角膜,中層は脈絡膜虹彩(こうさい)と毛様体,内層は網膜が構成する。内部の大部分は硝子(しょうし)体で満たされ,水晶体を隔てた前眼房は眼房水で満たされている。虹彩は絞りの役をし瞳孔(どうこう)を縮散して眼球内に入る光量を調節し,瞳孔から入った光線は水晶体で屈折し網膜上に像を結び,視神経によって大脳に導かれて視覚を生じる。水晶体の湾曲の度合(厚さ)の調節は毛様体がつかさどる。なお,いわゆる目の色は虹彩の色で人種特徴の一つ。主としてメラニンの量で決定され,ごく少量なら青色,量がふえるに従い,灰色,緑色,褐色,黒褐色と変異する。毛髪の色と関連し毛髪が淡色ならば虹彩の色も淡い。→視野視力〔動物の目〕 機能上,単に明暗を感じるだけの明暗視,光の方向を知る方向視,物体の像を結ぶ形態視の3段階がある。視細胞の集合体であるクラゲの平眼や眼点は明暗視の段階。一定方向の光だけを他から遮断(しゃだん)して視細胞に到達させるプラナリアの目は方向視の段階。並列した視細胞がへこんだ杯眼やさらに深く陥没した窩眼(アワビ)は形態視の原始的段階で,これに光線集中のための水晶体が発達したのが脊椎動物と頭足類のレンズ眼である。節足動物の複眼は特殊なレンズ眼。爬虫類の一部には頭頂付近に顱頂眼(ろちょうがん)と呼ばれる光受容器がある。
→関連項目加齢黄斑変性症眼圧

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「目」の意味・わかりやすい解説


もく
order

生物分類学における分類群の一階級で,綱と科との間におかれるもの。植物の場合には,タイプになる属名のラテン語の語尾に-alesを付すことになっている。動物の分類では特に規定されていないが,菌類ではおおよそ植物の慣行に従っている。目の上下に下綱,上目,(目) ,亜目のように各種分類階級を設けることがある。


」のページをご覧ください。

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防府市歴史用語集 「目」の解説

 国司の位の中の一番低いものが「目」です。国の等級によっては、大・少2つの「目」が置かれました。

出典 ほうふWeb歴史館防府市歴史用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【国司】より

…こうして令制的な国司制は斉明朝ころには全国的に成立し,その国司の下で編戸,里制の整備,戸籍の作成,班田の実施などが着々と進められたが,大税の管理権など,その権限はまだ制限されていた面もあったようで,国司制が完成の域に達したのは,大宝律令の制定(701)によってであった。
[制度]
 表のごとく,全国約60の国は大・上・中・下の4等級に分けられ,国司はその等級によって定員を異にしたが,その官制は守(かみ)(長官),介(すけ)(次官),掾(じよう)(判官),目(さかん)(主典)の四等官と史生(ししよう)(書記)から成っていて,これらは中央官人が6年(のちに4年)の任期で赴任し,その下に多数の現地出身の属吏がいた。職員令の規定によると一般の国の守は,祠社,戸口,簿帳,百姓の字養,農桑の勧課,所部の糺察,貢挙,孝義,田宅,良賤,訴訟,租調,倉廩,徭役,兵士,器仗,鼓吹,郵駅,伝馬,烽候,城牧,公私の馬牛,闌遺の雑物および寺,僧尼の名籍のことをつかさどり,とくに陸奥,出羽,越後等の国はそのほかに饗給,征討,斥候をつかさどり,壱岐,対馬,日向,薩摩,大隅等の国は鎮捍,防守および蕃客,帰化を惣知し,また三関国(伊勢,美濃,越前)は関剗および関契のことをつかさどることになっている。…

【台風】より

… 台風は,西暦年の下2けたとその年の発生順位(台風発生とみとめた日時の順)2けたの4けたの数字で呼ぶ。たとえば1959年の15番目の台風は59と15をつないで〈台風5915号〉と呼ぶ。台風情報では通常,西暦年を省略して〈台風15号〉のように呼ぶ。…

【学名】より

…学名は種名について与えられるだけでなく,すべての階級の生物名について定められるものである。植物では,目order以下の階級のすべての分類群については,一定の条件の下で先取権priorityが認められており,規約に合うように公表された最も古い学名を正名correct nameとすることになっている。一方,動物の場合には,科family以下の階級の分類群だけに命名規約が適用されるが,ふつうはより高次の分類群についても規約を準用している。…

【分類学】より

…命名については国際動物(植物)命名規約によって方法が規定されている。 分類群の階級としては,種speciesを基本的な単位として,それより上級に属genus,科family,目order,綱class,門division(動物ではphylum)などが設けられ,それらの間にもいくつかの階級を設けてもよいことになっている。種以下の分類群としては,動物の命名規約では,亜種subspeciesだけが認められているが,植物の場合には,亜種のほかに変種variety,亜変種,品種などの階級も認められている。…

【分解能】より

…光学系の結像性能を表すもので,その評価法には対象とする光学系によって次のような種類がある。
[分光器の分解能]
 近接する2本のスペクトル線を分離して観察できる能力をいい,波長λの近くでδλの波長差を分離できるときの分解能をλ/δλで定義する。これは分散系の性能とレンズの結像性能で決まるが,レンズを無収差としたとき,回折格子分光器では回折次数をm,開口に含まれる格子線の数をNとしてmNで,またファブリ=ペロー干渉分光器では干渉次数をkフィネスRとしてkRで,プリズム分光器ではプリズムの底辺の長さをt,プリズム材料の分散をδn/δλ(nはプリズムの屈折率)として,t・(δn/δλ)で与えられる。…

【ルチア】より

…4世紀初め,ディオクレティアヌス帝の迫害で殉教したシチリア島シラクサの聖女。ラテン語読みではルキア。伝説によれば,アガタの墓に詣で母の病気回復を願ったところ,すぐにいやされた。神に感謝して財産を貧者に施したため,婚約者に密告され,捕らえられた。連行される際,大勢の兵士や牛に引かれたが動かず,火刑にも無事であったため,剣で首を切られた。また,彼女のひとみの美しさのとりこになり苦しむ青年があると聞き,自分の目をくりぬいて届けさせたとの伝説もある。…

※「目」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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