無・无(読み)む

精選版 日本国語大辞典 「無・无」の意味・読み・例文・類語

む【無・无】

[1] 〘名〙
① ないこと、存在しないこと。
※正法眼蔵(1231‐53)摩訶般若波羅蜜「いはゆる戒定慧、及至度有情類等なり。これを無といふ」
※物質の弾道(1929)〈岡田三郎〉「愛着執心は全然無(ム)ではあるが」 〔老子‐四〇章〕
② 仏語。
(イ) ある行為、はたらきを否定すること。はたらきをおこさせないようにすること。
※妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)五「諸法は有なり、無(ム)(〈注〉ナキ)なり、これ実なり、非実なり」
(ロ) 禅宗で、修行者がその意味を問い、解決しなければならないとさせるもので、経験や知識以前の純粋な意識にかかわるもの。〔無門関‐一則〕
(ハ) 仏をいう。
※随筆・春波楼筆記(1811)「仏とは釈迦の名づくる者にして、天の大気虚空を云ふ。之を無と名づく、是を仏とす」
③ 無駄の意を表わす。→無になる無になす
④ (Nichts の訳語) 哲学で、キェルケゴールでは不安の観念と結びつき、神の前にあって微小なものと意識された人間存在の在り方。神の死を主張したニーチェでは、神の代わりに人間を支えるもの。ハイデガーでは、人間にとっての死の可能性の観念。
[2] 〘接頭〙 漢語名詞の上に付けて、そのものが存在しないこと、その状態がないことを表わす。「無免許」「無資格」「無修正」「無抵抗」「無理解」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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