(読み)ツネ

デジタル大辞泉 「常」の意味・読み・例文・類語

つね【常/恒】

いつでも変わることなく同じであること。永久不変であること。「有為転変の、―のない世」
いつもそうであること。ふだん。平素。「―と変わらぬ笑顔」「朝の散歩を―とする」
特別でないこと。普通。平凡。「―の人」
昔からそのようになるとされていること。当然の道理。ならい。ならわし。「栄枯盛衰は世の―」
他の例と同じように、その傾向のあること。とかくそうありがちなこと。「子に甘いは親の―」→常に
[類語](2不断日頃ひごろ常日頃つねひごろ常常いつも平生へいぜい平素日常平常通常常時常住行住座臥ぎょうじゅうざが常に絶えず終始始終ずっと日夜夜昼絶え間ない明け暮れ明けても暮れても寝ても覚めても朝な夕な昼夜をおかず昼夜を分かたず夜を日に継ぐ/(3平凡ありきたり凡俗ありふれる普通一般一般的尋常通常平常通例標準標準的平均的ただ当たり前常並み世間並み十人並み月並み凡庸日常茶飯日常茶飯事平平凡凡常套決まりお定まり平板類型的紋切り型芸がないノーマルレギュラースタンダード

じょう【常】[漢字項目]

[音]ジョウ(ジャウ)(呉) [訓]つね とこ とわ とこしえ
学習漢字]5年
〈ジョウ〉
いつも変わらない。いつも同じ状態が続くこと。「常時常任常備常用常緑樹経常恒常通常日常非常平常無常
特別でない。普通の。「常識常人異常尋常正常
いつも変わることのない道徳。「五常綱常
常陸ひたち国。「常州常磐じょうばん
〈とこ〉「常夏常夜
[名のり]つら・とき・ときわ・のぶ・ひさ・ひさし
難読常磐ときわ常陸ひたち

とわ〔とは〕【常/永久】

[名・形動]《古くは「とば」とも》いつまでも変わらないこと。また、そのさま。とこしえ。永遠。えいきゅう。「―の別れ」
[類語]永久永遠永世常しえ恒久悠久長久経常不変常しなえ悠遠常磐永劫永代久遠無限無窮不朽万代不易万世不易万古不易千古不易久しい久しぶり久方ぶり久久しばらくぶり

とこ【常】

[語素]名詞・形容詞などに付いて、いつも変わらない、永久不変の、などの意を表す。「夏」「世」「めずらし」
[補説]古くは格助詞「つ」を介して名詞に付くこともあった。「常つ国」「常つ御門みかど」など。

とこ‐とわ〔‐とは〕【常】

[名・形動ナリ]《古くは「とことば」》永久に変わらないこと。また、そのさま。とこしえ。
「わが御門みかど千代―に栄えむと」〈・一八三〉

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精選版 日本国語大辞典 「常」の意味・読み・例文・類語

つね【常・恒】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 形動 ) 同じ状態で、長く時を経過すること。いつも変わらないでいるさま。また、そういうもの。永久不変。常住。副詞的にも用いる。
    1. [初出の実例]「鏡なく かくし都禰(ツネ)見む 面変りせず」(出典:万葉集(8C後)一八・四一一六)
    2. 「如来の道地に墜ちず、之を弘むる者衆し。何の常(ツネ)か有らむ」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)八)
  3. ( 形動 ) 日常普通に見られる行為や状態であること。いつもの通りであるさま。ふだん。平素。副詞的にも用いる。
    1. [初出の実例]「都禰(ツネ)知らぬ道の長手をくれくれと如何(いか)にか行かむ糧米(かりて)は無しに」(出典:万葉集(8C後)五・八八八)
  4. ( 形動 ) 日常の事物や状態を基準にした価値判断で、普通の程度であるさま。特殊でないありふれた事物、状態。人並み。あたりまえ。
    1. [初出の実例]「薬師は 都禰(ツネ)のもあれど 賓客(まらひと)の 今の薬師 貴かりけり 賞(め)だしかりけり」(出典:仏足石歌(753頃))
    2. 「文の箱は多くは右に付く。手箱には軸に付くるも常の事なり」(出典:徒然草(1331頃)九五)
  5. 絶え間をおかないで続けること。中断することがないこと。副詞的にも用いる。
    1. [初出の実例]「常(つね)(や)まず通ひし君が使来ず今は逢はじとたゆたひぬらし」(出典:万葉集(8C後)四・五四二)
  6. 変わることなく継続的に行なわれること。
    1. [初出の実例]「常の例に依りて、廿年(はたとせ)に一遍び、大宮新に仕へ奉りて」(出典:延喜式(927)祝詞)
  7. 同類のものが共通してそなえている性質や傾向。
    1. [初出の実例]「十月(かみなづき)しぐれの常(つね)か吾が背子が宿の黄葉(もみちば)散りぬべく見ゆ」(出典:万葉集(8C後)一九・四二五九)

とこ‐とわ‥とは【常とわ・恒とわ】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 ) ( 古くは「とことば」 )
  2. いつまでも変わらないこと。永久不変であること。また、そのさま。とこしえ。
    1. [初出の実例]「これの世は 移り去るとも 止己止婆(トコトバ)に 栄残(さのこ)り坐(いま)せ 後の世のため 又の世のため」(出典:仏足石歌(753頃))
  3. いつも。つね。平生(へいぜい)
    1. [初出の実例]「智慧の徳水鎮(トコトハ)に恒に盈てるに、百千の勝定咸く充満せり」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)六)

常の語誌

「とこ」は永久不変の意味の「常」で、「とば」の語源は不明であるが、平安時代以後「とは」からハ行転呼音をへて「とわ」の形となって「とこ」が脱落し、今日の「とわに」に至っている。「とはに」は平安時代以後現われ、今日では「とわ」に「永久」の意味が込められている。


じょうジャウ【常】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 尺度の名。一丈三尺(約三・九四メートル)をいう。中国では尋(ひろ)の倍の一丈六尺(約四・八五メートル)をいう。
    1. [初出の実例]「制。以商布二丈六尺段。不常」(出典:続日本紀‐和銅七年(714)二月庚寅)
    2. [その他の文献]〔史記‐李斯伝〕
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙 いつも。いつでも。
    1. [初出の実例]「てきは常かんしゃくじゃ」(出典:洒落本・月花余情(1746)燕喜篇)

とこ【常】

  1. 〘 造語要素 〙 名詞およびこれに準ずる語句の上に、助詞「つ」を介して、あるいは直接に付く。また、形容詞の上に付いたり、副詞をつくったりする。常である、永久不変の、などの意味を表わし、その永遠性をほめたたえる気持をこめることもある。「とこつ御門(みかど)」「とこ夏」「とこ葉」「とこ初花」「とこ滑(な)め」「とこめずらし」「とこしくに」「とこしえ」「とことわ」など。
    1. [初出の実例]「天之常立神〈常を訓みて登許(トコ)と云ひ、立を訓みて多知(たち)と云ふ〉」(出典:古事記(712)上)

とわとは【常・永久】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 ) ( 古くは「とば」 ) いつまでも変わらないこと。永久不変であること。また、そのさま。とことわ。とこしえ。つね。
    1. [初出の実例]「風ふけばとはに浪こすいはなれやわが衣手のかはく時なき」(出典:伊勢物語(10C前)一〇八)

とこ‐し【常】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 ( 「とこ(常)」の形容詞化 ) 常に変わらない。→とこしくに

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普及版 字通 「常」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 11画

[字音] ジョウ(ジャウ)
[字訓] つね・かつて

[説文解字]
[金文]
[その他]

[字形] 形声
声符は(尚)(しよう)。〔説文〕七下に「下(かくん)なり」とし、重文として裳を録する。いまは区別して用いる字である。常は一定幅の巾。金文にを常時の意に用い、〔鼎(こつてい)〕に「必ず(つね)に厥(そ)の邑に處(を)らしめよ」、また〔因敦(いんしたい)〕に「永く典と爲せ」のように用いる。嘗と通用し、「かつて」と訓することがある。

[訓義]
1. つね、つねに、ひさしい。
2. さだめ、のり、かわらぬ。
3. ひごろ、おおむね。
4. 嘗と通じ、かつて。
5. 長さの単位、尋の倍、尋は左右の手を広げた長さ、尋常。
6. はた、太常。
7. 裳と通じ、もすそ。
8. 祥と通じ、忌明けの祭り。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕常 ツネニ・ツヒニ・スガタ・トキハ・レイ/非常 メヅラシ・ハナハダシ・アヤフシ/異常 ハナハダシ 〔立〕常 ノリ・トコトハ・コトハ・レイ・トコハカ・ココロヒク・トコシナヘ・モチヰ

[語系]
常・裳zjiangは同声。常は太常、天子の旗。裳は衣に対して下。いずれも常幅のものを用いる意であろう。・嘗zjiangも同声。金文にを常時の意に用いる。「嘗(かつ)て」の意は、おそらく嘗試することを終えることからの転義。常・曾の字をも、その義に用いる。

[熟語]
常位・常佳・常価・常娥・常懐・常格・常額・常玩・常軌・常紀・常・常義・常客・常旧・常居・常御・常業・常均・常経・常刑・常形・常計・常憲・常故・常語・常行・常骨・常祭・常歳・常算・常・常師・常祀・常次・常事・常時・常式・常識・常儒・常羞・常住・常準・常処・常賞・常状・常常・常情・常職・常心・常人・常数・常生・常制・常青・常勢・常饌・常然・常膳・常宗・常操・常則・常態・常談・常秩・常棣・常典・常途・常度・常套・常道・常馬・常班・常備・常品・常服・常分・常辟・常奉・常俸・常法・常民・常務・常用・常庸・常理・常緑・常倫・常類・常例・常礼・常隷・常論
[下接語]
異常・居常・経常・故常・五常・恒常・綱常・尋常・正常・大常・通常・天常・典常・日常・非常・不常・平常・無常・庸常・倫常

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【旗】より

…歴史的には源氏の白旗,平家の赤旗が知られている。千葉常胤(ちばつねたね)が奥州追討にあたり源頼朝に献上した旗は,1丈2尺2幅で,その上部に伊勢大神宮,八幡大菩薩,下部に鳩2羽が白糸で縫いとられていたという(《吾妻鏡》)。旗指物【西垣 晴次】
[中国]
 〈はた〉を通称して,旗(き)あるいは旌旗(せいき)などというが,もともと〈旗〉〈旌〉ともに〈はた〉の一つの種類を表す語である。…

※「常」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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