[1]
[一] (━する) 組み立ててつくり上げること。
① 物をつくり出すこと。多くの場合、
善美を尽くしてつくること。また、そうして出来上がった物やその構造。こしらえ。
意匠。
※小右記‐長元四年(1031)二月一一日「戌時中納言移
二徙北家
一。只結
二構西廊
一営渡云々」 〔
王延寿‐
魯霊光殿賦〕
(ロ) 抽象的なものごとや
論理の構成など、(イ)以外のいろいろなものについていう。
※
兵範記‐保元元年(1156)九月一八日「近代社司等、好立
二神領
一、奪
二妨公田
一、供
二最少之上分
一、籠
二広博之四至
一、結構之至、尤非
二穏便
一」
② 心の中で、ある考えを作りかまえること。計画。意図。企て。
※
水左記‐承暦四年(1080)二月四日「八日於
二東北院
一可
レ被
レ修
二十種供養
一之由所
二被
レ示給
一也。是兼曰結構也」
※東大寺続要録(1281‐1300頃)仏法篇「一両之結構普駈二諸宗一」
④ 実現すること。執行すること。
※醍醐寺雑事記‐慶延記・一〇・元暦元年(1184)七月二〇日「抑此度結構者、自二去々年一、天下騒動、而諸寺諸山、遇二追捕追討一、各不レ静」
⑤ ぜいたくをすること。
※仮名草子・身の鏡(1659)下「其身の程をしらざると云は、身まづしくして
美麗をこのみ、
衣食まで
借銭をしてなりとも結構
(ケッカウ)し」
※浄瑠璃・心中二つ腹帯(1722)三「結構とは
冥加の事、
とうなんとは野老
(ところ)なり」
[2] 〘形動〙 ((一)の意から転じて) よく出来上がっているさま。申し分のないさま。よいさま。
① すぐれているさま。立派なさま。好ましいさま。
※六物図抄(1508)「けっこうな物を着たがるは
婬欲の心なり」
② ねんごろなさま。手厚いさま。
※玉塵抄(1563)六「此の詩は
群臣の臣下どもよい賓客をあつめてけっこうにもてなし酒の
さかなをととのえて酒をのみ歌舞してたのしんだことを作たぞ」
③ 心がけがよいさま。気立のよいさま。好人物のさま。お人好し。
※虎寛本狂言・止動方角(室町末‐近世初)「扨も扨も、結構なをぢご様じゃ。けふも色々の物を皆貸させられた」
④ 十分なさま。満足なさま。それでよいとみなされるさま。
※二人女房(1891‐92)〈
尾崎紅葉〉中「お前も風を引かんかえ。結構結構
(ケッコウケッコウ)」
⑤ それ以上必要としないさま。丁寧に断る場合に用いる。「『
お茶はいかがですか』『結構です』」
[3] 〘副〙 十分満足であるというほどではないが、一応よいといえるさまをいう。
程度が低いと見こんでいた
予想からは、案外程度が高いことを表わす。かなり。
※雑俳・柳筥(1783‐86)四「けっこう質を置んすとかわひがり」