虫(読み)ムシ

デジタル大辞泉 「虫」の意味・読み・例文・類語

むし【虫】

1 人類・獣類・鳥類・魚貝類以外の小動物の総称。特に、昆虫をいう。
2 美しい声で鳴く昆虫。スズムシ・マツムシなど。「虫の音ね」《季 秋》「鳴く―のただしく置ける間なりけり/万太郎」
3 衣類や紙などを食い荒らす害虫。「セーターを虫に食われる」「虫干し」
4 人間のからだに寄生する害虫。蠕形ぜんけい動物の回虫をいうことが多い。「虫くだし」
5 子供の体質が弱いために起こる種々の病気。「疳かんの虫が起こる」「虫をわずらう」
6 人間の体内にいて、意識や心理状態を左右すると考えられていたもの。潜在する意識や、感情の動きをいう。「浮気の虫が動き出す」
7 一つの事に熱中する人。「本の虫」「勉強の虫」
8 (3にたとえて)愛人。情夫。隠し男。
「小いやらしく―があるから」〈人・梅児誉美・三〉
9 他の語と複合して、そのようなことをする人や、そのような性質の人をあざけっていう語。「泣き虫」「弱虫」
[下接語]青虫・赤虫・油虫・稲いな虫・芋虫・蛆うじ虫・金食い虫・兜かぶと虫・髪切かみきり虫・かんかん虫・疳かんの虫・木食きくい虫・糞くそ虫・轡くつわ虫・毛虫・黄金こがね虫・米食い虫・米搗こめつき虫・米の虫・逆さか虫・真田さなだ虫・地虫・尺取虫・吝しわ虫・心しん食い虫・鈴虫・草履虫・玉虫・田虫・恙つつが虫・出出でで虫・でんでん虫・天道てんとう虫・点取り虫・毒虫・長虫・泣き虫・夏虫・南京ナンキン虫・苦にが虫・根切ねきり虫・野虫・鋏はさみ虫・裸虫・羽は虫・葉虫・腹の虫・火取り虫・紐ひも虫・塞ふさぎの虫・船食ふなくい虫・船ふな虫・放屁へひり虫・松食まつくい虫・松虫・水虫・蓑みの虫・雪虫・弱虫・綿虫
[類語](7)マニア・物好き・酔狂・好事家こうずか・おたく・狂・狂い・気違い・ディレッタント・マニアック・病的・クレージー・いかれる・神経質・凝り性・モノマニア・モノマニアック・偏執狂・執念深い・アブノーマル・異常・異様・狂的・通つう・こだわり・こだわる・道楽・痴しれ者・凝り屋・執拗しつよう・しつこい・サブカルチャー・物見高い・物好き者しゃ・好事こうず・数寄すき・多趣味・悪趣味・好奇・好奇心・新しがり・新しがり屋・新し物好き・初物食い・心寄せ・好き好き・気に入り・お気に入り・趣味・好み・嗜好しこう・同好・横好き・愛惜・愛好・覗のぞく・覗のぞき見・覗のぞき見る・覗のぞき込む・盗み見る・窺うかがう・透き見・野次馬・野次馬根性・興味本位・興味津津しんしん・鵜うの目鷹たかの目・目を輝かす・目を奪われる・見る目嗅かぐ鼻・嗅かぎ回る・助平根性・物珍しい

ちゅう【虫〔蟲〕】[漢字項目]

[音]チュウ(漢) [訓]むし
[学習漢字]1年
〈チュウ〉
1 むし。「虫媒花/益虫・回虫・害虫・駆虫・甲虫・昆虫・成虫・精虫・防虫・幼虫・寄生虫」
2 動物の総称。「羽虫(=鳥)・裸虫(=人間)」
〈むし〉「虫歯/青虫・鈴虫・長虫・水虫・弱虫」
[難読]虫唾むしず

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精選版 日本国語大辞典 「虫」の意味・読み・例文・類語

むし【虫】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ① 小さな動物。人・獣・鳥・魚・貝など以外の小動物の総称。主に昆虫類をさしていうことが多い。
    1. [初出の実例]「夏務始(ムシ)の蝱(ひむし)の衣二重着て隠み宿りは豈良くもあらず」(出典:日本書紀(720)仁徳二二年正月・歌謡)
  3. ② 特に、美しい声で鳴くもの。鳴き声を聞いて楽しむ虫。秋鳴く虫の総称。鈴虫、松虫、蟋蟀(こおろぎ)など。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「前栽の中に、むしの声なきければ」(出典:阿波国文庫旧蔵本伊勢物語(10C前)N)
  4. ③ 人の体内に住んでいるという三尸(さんし)の虫のこと。また、人体などに寄生する蠕形動物の呼び名。寄生虫。特に、回虫をさす。また、それによって生じる腹痛。陣痛のたとえにもいう。
    1. [初出の実例]「円秀持病虫指出、俄に仰二付良鎮一了」(出典:大乗院寺社雑事記‐文明一五年(1483)正月一二日)
  5. ④ 小児の体質が弱いために起こる種々の病気。子どもの病気で、原因がはっきりわからない症状の総称。特に、ひきつけ、てんかんなどをさす。疳の虫。疳。むしけ。
    1. [初出の実例]「おむしの薬もくはへくはへせんじたる、おせんじもの」(出典:虎明本狂言・煎物(室町末‐近世初))
  6. ⑤ 人間の体内にいるとされて、身体や感情などにさまざまの影響を与えると考えられたもの。種々の病気の原因となったり、感情をたかぶらせたりするもとになるとするもの。近世ごろには、人体には九つの虫がいて、それぞれが病気を引き起こしたり、心の中の意識や感情を呼び起こしたりすると信じられていた。腹の虫、心の虫などの類。
    1. [初出の実例]「夫婦ともに嫌ふむしあってわづらひ出せば」(出典:浮世草子・西鶴織留(1694)四)
  7. ⑥ ( 衣類などに付いて食い荒らす虫にたとえていう ) ひそかにもっている愛人。情夫。間夫(まぶ)。
    1. [初出の実例]「はやり出のさまにはわるい虫かつく〈宗因〉」(出典:俳諧・山之端千句(1680)下)
  8. ⑦ 牢(ろう)。牢屋。牢が虫籠のようであるところからいうか。一説に、盗人仲間の隠語とし、「六四」の字を当てて、牢の食事は、麦と米が六対四の割合であったところからいうとも。
    1. [初出の実例]「乳守の町で喧𠵅仕出し。和泉が窂(ムシ)へかまって、百日の上女房子を誰が養ふたと思ふ」(出典:浄瑠璃・夏祭浪花鑑(1745)七)
  9. ⑧ ( 「芸の虫」の略 ) 芸達者な人。芸のじょうずな役者。名優。
    1. [初出の実例]「上手な役者をむしといふはいかに。下手な者をだいこといふがごとし」(出典:二篇おどけむりもんどう(1818‐30頃か))
  10. ⑨ 一つのことに熱中する人。異常と思われるくらいにその事にとらわれている人にいう。「本の虫」
    1. [初出の実例]「『勉強の虫』といはれることは名誉である場合が多い」(出典:学生と読書(1938)〈河合栄治郎編〉いかに書を読むべきか〈倉田百三〉二)
  11. ⑩ 他の語と複合して、そのような性質である人をあざけったりいやしめたりしていう語。「泣き虫」「弱虫」など。

むしょ【虫・六四】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「むしよせば(虫寄場)」の略「むしよ」の変化した語 ) 監獄のことをいう、盗人仲間の隠語。〔隠語輯覧(1915)〕
    1. [初出の実例]「そうよ、刑務所(ムショ)から出たばかりの家なしだ」(出典:聖ヤクザ(1949)〈田中英光〉)

虫の補助注記

「刑務所」の略と解されることもあるが、「監獄」を「刑務所」と改称したのは大正一一年(一九二二)で、この語はそれ以前から使われていた。

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普及版 字通 「虫」の読み・字形・画数・意味

虫
常用漢字 6画

(旧字)蟲
18画

[字音] チュウ・キ
[字訓] むし

[説文解字]

[字形] 会意
正字は蟲に作り、三虫に従う。〔説文〕十三下に「足るもの、之れを蟲と謂ふ。足無きもの、之れを豸(ち)と謂ふ。三虫(き)に從ふ」という。豸は貍(り)・(びよう)の従うところで、明らかに足があり、〔説文〕のいうところは逆である。〔荘子、在宥〕「災ひ、木にび、ひ、止蟲にぶ」の止は豸の仮借。蟲は蛇や昆虫類、また羽毛介のものを含めていうこともある。いま略字として用いる虫は別の字で、本音はキ、まむしをいう。

[訓義]
1. むし。
2. 虫(き)はまむし。
3. 羽毛介の総名に用いる。

[古辞書の訓]
〔和名抄〕蟲 无之(むし) 〔立〕蟲 ムクメク・ムシ

[部首]
〔説文〕に虫(き)・(こん)・蟲の三部があり、蟲部に蠱(こ)など四字を属する。その部にはまた(ぼう)・(ひ)・蜚(ひ)など別体の字として加えており、これによっていえば、この三部の間に厳密な区別があるわけではない。

[声系]
〔説文〕に蟲声として融など四字を収める。その字はみな融のように、蟲の省声に従うとするが、融は会意字とみるべきである。釜鬲の外に蟲がこぼれるようにれ、器中のものがすでに融解していることを示す。

[語系]
蟲diong、動dongは声義近く、蟲とは蠢動(しゆんどう)するものをいう。

[熟語]
虫化▶・虫害▶・虫蝎▶・虫気▶・虫▶・虫▶・虫蟻▶・虫垢▶・虫蝗▶・虫災▶・虫児▶・虫聚▶・虫書▶・虫▶・虫声▶・虫旋▶・虫蛆▶・虫霜▶・虫蛇▶・虫豸▶・虫虫▶・虫▶・虫篆▶・虫臂▶・虫文▶・虫螟▶・虫網▶・虫妖▶・虫羅▶・虫鏤▶・虫籠▶
[下接語]
羽虫・益虫・夏虫・華虫・介虫・害虫・玉虫・吟虫・穴虫・甲虫・狡虫・蝗虫・昆虫・沙虫・三虫・鷙虫・小虫・水虫・生虫・成虫・草虫・蟄虫・雕虫・蠹虫・飛虫・螟虫・毛虫・野虫・幼虫・裸虫・虫

虫
6画

[字音] キ・チュウ
[字訓] むし・まむし

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
蛇など、爬虫類の形。〔説文〕十三上に「一名蝮(まむし)」とし、また虫類の総名に用いる。〔爾雅、釈魚〕「蝮(ふくき)」の〔注〕に、江淮以南では蝮、江淮以北ではといい、江南のものには猛毒があるという。虫は古く呪霊をもつものがあるとされて、蠱術(こじゆつ)に用い、蠱による呪詛を(たたり)という。は虫の形に従う字である。(こん)は虫類の総名、蟲は小さな虫の集まる形。いま虫を蟲の意に用いる。

[訓義]
1. むし。
2. まむし。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕虫 ムシ 〔字鏡集〕虫 フトウシ・ムシ

[部首]
〔説文〕に百五十三字、〔新附〕に七字を属し、〔玉〕には五百二十五字を収める。江南の開発に伴って、多くの種類が加えられたのであろう。〔説文〕虫部の字のうち、蜀は牡器を主とする牡獣の象で、虫の部分が牡器、これを縊って去勢することを(けん)という。この蜀・の二文を、この部より除くべきである。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「虫」の意味・わかりやすい解説

虫
むし

一般に昆虫類の総称として用いられるが、動物の総称でもあり、鳥を羽虫、獣を毛虫、亀(かめ)の類を甲虫、竜のように鱗(うろこ)のある動物を鱗虫(うろこむし)といい、人間を裸虫(はだかむし)などといったりする。また鳥獣魚貝などを除いた小動物を総称したり、道教で人間の体内にすむと説く三尸(さんし)の虫をいったり、人体に寄生する回虫などもいい、近世には、人間の体内にあって、その人の健康状態や感情の動きにさまざまな影響を与える9匹の虫の存在が信じられていた。

[宇田敏彦]

文学

古典文学では、獣・鳥・魚以外の小動物を広くいうことが多い。『和名抄(わみょうしょう)』には、足のある虫を「蟲」、足のない虫を「豸(ち)」というとし、「鱗介(りんかい)(魚貝類)惣名也」ともある。人の体中にいて、健康や感情に影響を及ぼすとされたり(腹の虫)、子供の病気の原因とされたり(癇(かん)の虫)、物事に熱中することの比喩(本の虫)や軽蔑するときの形容(弱虫)に用いられたりする。民俗的な伝承や風習にもみえ、『日本書紀』皇極(こうぎょく)天皇3年(644)条には、蚕に似た虫(イモムシか)を「常世神(とこよのかみ)」として祭る記事がみえる。また、イナゴなど農作物を荒らす害虫を追い払う「虫送り」という呪術(じゅじゅつ)的な行事があり、秋の季題にもなっている。また、庚申(こうしん)の夜に眠ると、人の体内にいるという三尸虫が害をなし、命を縮めるといわれ、神仏を祭り、夜を徹して詩歌を詠むなどの催しも行われた。『万葉集』に、「この世にし楽しくあらば来(こ)む世には虫に鳥にも我はなりなむ」(巻3・大伴旅人(おおとものたびと))などと詠まれており、『万葉集』の虫には、あきづ(蜻蛉)、か(蚊)、こ(蚕)、こほろぎ(蟋蟀)、すがる(蜂)、せみ(蝉)、てふ(蝶)、はへ(蠅)、ひぐらし、ひひる(ひむし。蛾)、ほたる(蛍)などの名がみえる。『古事記』仁徳(にんとく)天皇条には「匍(は)ふ虫」「鼓(つづみ)」「飛ぶ鳥」と、蚕が繭となり成虫となる三態が比喩(ひゆ)的に記されている。虫は、「虫けら」(『うつほ物語』「俊蔭(としかげ)」)などとよばれることもあるが、鳴く声がもてはやされ、『古今集』には、きりぎりす(蟋蟀)、くも(蜘蛛)、せみ(うつせみ)、すがる(鹿と混同)、ひぐらし、ほたる、まつむし(鈴虫か)などの名がみえる。夏の火に群がる虫は「夏虫」と総称され、すでに『万葉集』からみられ、『古今集』の「夏虫の身をいたづらになすことも一つ思ひによりてなりけり」(恋1)などと、恋に身を焦がすことの比喩として詠まれた。虫は庭に放したり、籠(かご)に入れたりして、声を賞美したり、虫の宴を催して詩歌管絃(かんげん)を楽しむこともあった(『源氏物語』「野分(のわき)」「鈴虫」など)。『枕草子(まくらのそうし)』「虫は」の段には、すずむし(松虫か)、ひぐらし、てふ、まつむし、きりぎりす、はたおり(キリギリス)、われから(『古今集』などに、海人(あま)の刈る藻に住む虫、と詠まれる)、ひを虫(カゲロウか)、ほたる、みのむし(蓑虫)、ぬかづきむし(コメツキムシか)、はへ、夏虫、あり(蟻)などがあげられている。『枕草子』には、のみ(蚤。「にくき物」)、くつわむし(轡虫。「笛は」)などもみられる。『源氏物語』「橋姫(はしひめ)」には、しみ(紙虫)が出てくる。『古今(こきん)和歌六帖(ろくじょう)』六には、虫、せみ、夏虫、きりぎりす、まつむし、すずむし、ひぐらし、ほたる、はたをりめ、くも、てふ、の題があり、『和漢朗詠集』秋には、虫の項がある。『堤(つつみ)中納言物語』の「虫めづる姫君」は、蝶よりも毛虫が好きな姫君が登場し、いぼじり(カマキリ)やかたつむりを集めたり、男童にけら(オケラ)、ひき(ヒキガエル)、いなご、あまびこ(ヤスデ)など虫にちなむ名をつけたりする。『古今著聞集(ここんちょもんじゅう)』二十・魚虫禽獣(きんじゅう)には、白虫(シラミ)に報復されて死んだ男の説話、院政期の堀河(ほりかわ)朝に始まったという、殿上人たちが野で虫をとり内裏(だいり)に奉る虫撰(えら)びの行事の記事がみえる。謡曲『松虫』には、「きりはたりちょう」(キリギリス)、「つづりさせてふ」(コオロギ)、「りんりんりん」(スズムシ)という虫の擬声語が記されている。横井也有(やゆう)の『鶉衣(うずらごろも)』の「百虫譜(ひゃくちゅうのふ)」は虫尽くしになっているが、虫の範囲は広く、蛙(かえる)・蛇・蟹(かに)など、両生類・爬虫(はちゅう)類・甲殻類などにも及んでいたようである。季題は秋で、草むらに集(すだ)く虫が対象になっている。

[小町谷照彦]


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改訂新版 世界大百科事典 「虫」の意味・わかりやすい解説

虫 (むし)
bug
insect

虫の字は虺の古文として用いられて〈キ〉と読み,元来はヘビ類の総称であるという。昆虫は蟲と書くのが正しく,蟲豸(ちゆうち)は肢のあるむしで,肢のないものが豸(ち)である。中国ではトラを大蟲といったように,〈虫〉は今の動物分類学上の昆虫のみではなく,虫偏のつく漢字の示すように動物の総称に用いられた。

 日本ではもっぱら地表をはう種類に対してこの文字を用い,〈むし〉または〈はうむし〉と称した。大祓の詞に〈昆虫の災〉というのは作物の害虫や人体寄生虫に悩まされることが多かったからで,蛇もまた虫の一種であった。むしの語義は蒸しで,産出の意があり,土中や叢中から大量に発生化生する状態を呈することからきているという。《東雅》ではむしとうじとは語源を同じくし,群生することに由来すると説明している。とくに卵から幼虫を生じ,幼虫がさなぎとなりやがて成虫となって羽化する昆虫類は,微小のものから生命が発生して大きな蝶蛾となることから,虫の代表とされ,古代には一種の霊物とみなされたようである。蚕はその繭が糸として有用であるため,虫の中でもとくに注意され尊敬された。これに似たものとして古人は蝶や蛾の類をも霊物とし,あるいは祖先の霊が季節的に出現するものとして捕殺を忌み,時としてこれを他界のものとして幸運を祈ることもあった。《日本書紀》皇極天皇3年(644)7月には,東国富士川沿岸に大生部多(おおうべのおお)なる者があって,人々に虫を祭ることを教え,これは常世の神であって不死の生命をもち,この虫を祭れば富を得て長命すると記され,そのため多くの巫覡らが人にこれを祭らせて財を捨てさせ,歌舞して虫を座にすえて祭り祈ったという。この虫がどのような種類のものかは明らかでないが,おそらくその化生して次代に生命がうけつがれていく神秘性が,多くの人々の心理に深く印象されていたことに裏づけられる現象であろう。疳(かん)の虫など〈虫〉の呼称が小児の病気一般の名であったことも,恙虫(つつがむし)をはじめとする人体寄生虫がもっともふつうな病源であったことによるが,逆にこれらの虫を生のまま,あるいは乾燥,黒焼きなどにして病気を治すのにも用いた。ハチの子,カエル,蛇などは食物の一端としても用いられた。
→昆虫
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虫 (むし)

新舞踊劇。2世市川猿之助(のちの猿翁)構成,振付。今儀謹次郎作曲。1921年11月東京明治座第2回春秋座公演で初演された。前年の外遊中に見たバレエ・リュッスに影響をうけて創作したもの。夏の盛りに歌い踊り楽しんでいた虫も,秋風が吹いてついに地下に入り死んでいくさまを,尺八を基調にした5段構成でこしらえた。当時としては珍しく歌詞はない。好評で新舞踊運動に拍車をかける気運をもたらした。
→新舞踊
執筆者:

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世界大百科事典(旧版)内の虫の言及

【虫】より

…虫の字は虺の古文として用いられて〈キ〉と読み,元来はヘビ類の総称であるという。昆虫は蟲と書くのが正しく,蟲豸(ちゆうち)は肢のあるむしで,肢のないものが豸(ち)である。…

【カメムシ(亀虫∥椿象)】より

…半翅目カメムシ科Pentatomidaeおよび近縁の陸生異翅亜目に属する昆虫の総称。イネ害虫クロカメムシのように黒色で体型が動物のカメに似るものがいるのでこの名がある。しかし,体型は種々あって必ずしもカメに似ない。椿象(ちんぞう)は古い中国での呼称で現在は科が用いられる。 カメムシ科は体長2~40mmくらいで,体は幅広く卵形,または楯形。頭部は三角形で複眼間の幅は広い。触角は4~5節,口吻(こうふん)は4節で多くの種類は植食性である。…

【昆虫】より

…昆虫類は蛛形(ちゆけい)類(クモ,ダニ,サソリなど),多足類(ムカデ,ヤスデなど),甲殻類(エビ,カニ,ミジンコ,ワラジムシなど)などとともに節足動物に属し,体や付属肢は多くの環節からなる。英語のinsectは,分割されたものを表すラテン語insectumに由来する。昆虫類は全動物の種類の3/4を占める最大の生物群であり,総種類数75万とよくいわれるが,毎年発表される莫大な新種の数からみて,実際ははるかに多くの種類を含むであろう。…

【小児医学】より

…小児の病気のなかで最も恐れられていたのは痘瘡,麻疹であり,大量の子どもがこれで死んだ。小児特有の病気として古くからいわれてきたものに〈虫(むし)〉と〈疳(かん)〉がある。虫という病名は,本来医学用語の体熱の蒸(むし)から出たとされ,のちに小児に多い寄生虫と結びつけて広く用いられるようになった。…

※「虫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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