デジタル大辞泉
「子」の意味・読み・例文・類語
し【子】
[名]
1 こども。特に、男児。
2 学徳のある人物に対する敬称。先生。特に、孔子をさす。
3 五爵の第四位。子爵。「公侯伯子男」
4 漢籍を経・史・子・集に分類した四部の一。諸子百家の著述を集めた部門。→漢文学1
[代]二人称の人代名詞。対等または目下の者に対して用いる。君。
「―是れより左に路を取らば必ず常灯あり」〈織田訳・花柳春話〉
[接尾]
1 名詞に付いて、そのことをもっぱら行う男性の意を表す。「編集子」「コラム子」
2 古く、貴族の女子の名に添えて用いる。「光明子」「式子内親王」
3 助数詞。囲碁で、置き石の数を数えるのに用いる。目。「二子局」
ね【▽子】
1 十二支の一で、その1番目。
2 方角の名。北。
3 時刻の名。今の夜中の12時ごろ、およびその後の2時間。または夜中の12時前後の2時間。
4 1にあたる年や日。
5 陰暦11月の異称。
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こ【子・児】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 両親の間に生まれた人。人間の男女の間にできた人。⇔親。
- [初出の実例]「吾(あ)か高天原所御(たかまのはらにきこしめす)斎庭(ゆには)の穂を以て亦吾か児(コ)に当御(まかせまつ)る」(出典:日本書紀(720)神代下(寛文版訓))
- 「銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむにまされる宝古(コ)にしかめやも」(出典:万葉集(8C後)五・八〇三)
- ② 獣、鳥、魚、昆虫など動物の雌雄の間に生まれたもの。卵生の鳥や魚などの場合には、卵そのもの、あるいは卵から孵化したものをいう。
- [初出の実例]「汝が御子や 遂に知らむと 雁は古(コ)産らし」(出典:古事記(712)下・歌謡)
- ③ 実子のほか、養子、継子などの総称。
- [初出の実例]「一生に一人ある子なり、かたち身の才人にすぐれたり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
- 「子は其家に在る父の親権に服す」(出典:民法(明治二九年)(1896)八七七条)
- ④ 年少のもの。幼稚な人。わらべ。
- [初出の実例]「これほどいつくしき子具し奉りたる事、これぞはじめなる」(出典:義経記(室町中か)二)
- ⑤ 人を親しんでいう語。男にも女にもいい、多く、地名などに続けて用いて、愛称の意を添える。
- [初出の実例]「みつみつし 久米の古(コ)が 頭椎(くぶつつ)い 石椎いもち 撃ちてし止まむ みつみつし 久米の古(コ)らが」(出典:古事記(712)中・歌謡)
- ⑥ 男から愛する女性をさしていう語。
- [初出の実例]「眉画き 濃に画き垂れ 逢はしし女(をみな) かもがと 我が見し古(コ)ら かくもがと 吾が見し古(コ)に」(出典:古事記(712)中・歌謡)
- ⑦ 娘。若い女性を、年長者がいう。主に近世以降の用法。
- [初出の実例]「あの町で奉子する子は、どんな気じゃしらん」(出典:咄本・新板臍の宿かへ(19C中)二)
- ⑧ 芸娼妓。抱え主、または客がいう。
- [初出の実例]「ハテノウどの子にしやう、久さん大年増は」(出典:洒落本・寸南破良意(1775)年季者)
- ⑨ ( 「━の子」の形で ) そういうことをする運命をもって生まれてきた者、すっかりそのものや状態にひたりきっている者の意にいう。
- [初出の実例]「われ男の子意気の子名の子つるぎの子詩の子恋の子ああもだえの子」(出典:紫(1901)〈与謝野鉄幹〉清狂)
- ⑩ 草木の幹から分かれて、別に生え出たもの。
- [初出の実例]「八田の 一本菅は 古(コ)持たず 立ちか荒れなむ」(出典:古事記(712)下・歌謡)
- ⑪ あるものを元として、それより生ずるものをいう。⇔親。→このしろ(利)。
- [初出の実例]「貸倍(かりもののコ)」(出典:日本書紀(720)持統五年三月(寛文版訓))
- 「金が子(コ)を産(うん)で家賃が流込む」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)
- ⑫ 中心になるようなおもだったものに対して、それに従属するもの。大小相対するもののうちの小さな方。「子会社」「子分」など。⇔親。
- [初出の実例]「Co(コ)。例、イカリ ノ co(コ)〈訳〉木碇の端に横ざまに付けた石で、碇がまっすぐ水底に沈むようにするためのもの」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- ⑬ 親船に対し、これに付属する小船をいう。
- [初出の実例]「みなとへつくと親舟は子をおろし」(出典:雑俳・柳多留‐三一(1805))
- ⑭ 格子を組み立てている桟、あるいは、梯子の横木をいう。→格(こ)。
- ⑮ なますに交ぜる魚介類や、汁に入れる実などをいう。
- [初出の実例]「此笋を入麺のこにせよと云て」(出典:山谷詩集鈔(1647)一九)
- 「下風膾(おろしなます)の子(コ)もなくあへて」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)三)
- ⑯ キリスト教で、天の父なる神に対しキリストをいう。
- [初出の実例]「子を信ずる者は窮(かぎり)なき生命をえ」(出典:引照新約全書(1880)約翰伝福音書)
- ⑰ 物や道具の名に付けて愛称の意を添える。また、言いぐせ。
- [初出の実例]「すべて器物にはわんのこ、おけのことこをつけて呼なり」(出典:八丈実記(1848‐55)方言)
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙
- ① 名詞や動詞の連用形に付けて、それ、また、それをする人の意を表わす。「舟子」「売子」「狩子」など。
- ② 特に、女性のする動作や仕事に付けて、それが若い娘であることを表わす。「守子」「縫子」「お針子」「踊子」など。
- ③ 人を表わす語に付けて愛称、親愛の意を添える。「背子」「娘子」など。
- ④ 男女の名の下に付けて用いる。主として、上代の用法で、身分のある人に用いることが多い。「中臣鎌子」「小野妹子」「蘇我馬子」など。
- ⑤ 女性の名に付けて、それが女であることを表わす。「花子」「珠子」「美知子」など。
- [初出の実例]「内侍、中臣のふさこにの給ふ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
し【子】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① こども。こ。特に男子をいう。
- [初出の実例]「まさに子は老なり、父は少なりとならふべし」(出典:正法眼蔵(1231‐53)法華転法華)
- [その他の文献]〔儀礼‐喪服〕
- ② 有徳の人、一家の学説をたてた人などの敬称。特に孔子をさす。
- [初出の実例]「しののたふまく、中庸のとくたる事、それいたれるかな」(出典:仮名書論語(室町中)雍也)
- ③ 漢籍を経・史・子・集に分けたいわゆる四部分類のうちの一つ。学者の学説を述べた著述の類。法家、農家などの諸子百家の書を主に含む。
- [初出の実例]「第三の庫を子といふ。これ子類なり。諸子・天文・歴書・算法・兵書・医書など、すべて十七種の書ををさむと也」(出典:間合早学問(1766)上)
- ④ 旧華族の爵位の第四番目。五爵の第四階に位するもの。ヨーロッパの貴族の階級についても用いる。子爵。〔改正増補和英語林集成(1886)〕 〔礼記‐王制〕
- ⑤ 利息。利子。三文子(さんもんし)、五文子(ごもんし)などと用い、この場合は、元金百文に対する一月分の利子をいう。〔上杉家文書‐享祿三年(1530)二月二日・毛利広春後室おうゑ須賀家依連署公用代借用証文〕
- ⑥ 囲碁で用いる黒白の石。碁石。
- [初出の実例]「下レ子声偏小、成レ都勢幾多」(出典:菅家文草(900頃)五・囲碁)
- [その他の文献]〔白居易‐池上二絶詩〕
- [ 2 ] 〘 代名詞詞 〙 対称。対等またはそれ以下の人に対して用いる。
- [初出の実例]「楚辞に曰。身既に死て神以て霊なり。子(シ)が魂魄鬼の雄となる」(出典:浄瑠璃・神霊矢口渡(1770)一)
- [その他の文献]〔韓非子‐難一〕
- [ 3 ] 〘 接尾語 〙
- ① 主として動作性の名詞に付けて、それを行なう男子の意を表わす。「編集子」「受付子」など。
- [初出の実例]「余は天下の秀才子(シ)と相知を辱ふす」(出典:花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉三八)
- ② 上代・中古、貴族の婦人の名に添えたもの。「光明子」「式子内親王」など。
- ③ 名の下に添えて、尊敬、時に親しみの意を表わす。特に、江戸の風流人の仲間で用いられたもの。
- [初出の実例]「荷兮子が奴僕をしておくらす」(出典:俳諧・更科紀行(1688‐89))
- ④ 自分の名の下に添えて、謙遜の意を表わす。
- [初出の実例]「半残雅丈 芭蕉子」(出典:半残宛芭蕉書簡‐貞享二年(1685)正月二八日)
ね【子】
- 〘 名詞 〙
- ① 十二支の一つで、その第一番目。ねずみ。
- [初出の実例]「ね うし とら う たつ み ひと夜ねてうしとらこそは思ひけめうきなたつみぞわびしかりける〈よみ人しらず〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)物名・四二九)
- ② ①を年月日・方角・時刻に配して、その呼び名とするもの。
- (イ) ①にあたる年や日。
- [初出の実例]「初春の初禰(ネ)の今日のたまばはき手にとるからにゆらく玉の緒」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四九三)
- (ロ) 北の方角。北。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
- [初出の実例]「昼日に星顕はる、方角に寄て吉凶有。今見る所は北方子(ネ)の方」(出典:浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)九)
- (ハ) 現在の午前零時頃。また、その前後二時間。一説に、その後二時間。子の刻。子の時。
- [初出の実例]「時丑三つ、ね四つなど、はるかなる声にいひて」(出典:枕草子(10C終)二九〇)
- (ニ) ( 北斗七星の柄が初昏に子(ね)の方向をさす月の意から ) 陰暦一一月の異称。《 季語・冬 》
- [初出の実例]「又十一月は子月なる故に、子の日を用る事は其子細ある事なり」(出典:俳諧・滑稽雑談(1713)一一月)
っこ【子】
- 〘 接尾語 〙
- ① 特定の状態にある人、特定の動作をする人を、やや軽く見ていう。「末っ子」「ちびっ子」「売れっ子」「にくまれっ子」「いじめっ子」「甘えっ子」「いたずらっ子」「駄々っ子」「一人っ子」「娘っこ」「小僧っこ」「あまっこ」「甥(おい)っ子」「鍵っ子」「現代っ子」「秘蔵っ子」「ぶりっ子」
- ② その土地出身の人の意を表わす。「江戸っ子」「浜っ子」「土地っ子」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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普及版 字通
「子」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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子
ね
十二支の第1番目。「ねずみ」ともいい、十二支獣としてネズミがあてられる。北斗七星の柄(え)が日没時に子の方向をさす月というところから、陰暦11月の異称として用いられる。また、正月の子の日には人々は野に出て小松を引き、千代の寿を祝って遊ぶ子の日の遊びの習俗があり、また子の日には爪(つめ)を切るのを忌む風習もあった。時刻としても用いられ、今日の午前零時を中心とした前後2時間を「子の刻」「子の時」といった。方角としては北をいう。
[宇田敏彦]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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子
十二支の一つ。陽の水で、季節は冬、月は12月、時間は23~1時、方位は北を表す。
出典 占い学校 アカデメイア・カレッジ占い用語集について 情報
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子
ツリー構造のある節に対して、分岐先にある節のこと。
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の子の言及
【親子】より
…父母と子の関係を指すが,生みの親と子の血縁的な関係だけではなく,養親と養子,親分と子分,親方と子方の関係のように,法制上,習俗上親子関係が擬制される関係([擬制的親族関係])を指しても用いられる。
[親子と血縁]
親子関係では,とくに血のつながりという自然的要素が強調されるが,いずれの社会でも,血のつながりがあればただちに社会的にも親子関係が発生するとされているわけではない。…
【子ども(子供)】より
…子どもという言葉と概念について考えようとする際に,まず注目されるのは,その意味の多様性であろう。現在最も一般的なのは,おとな(成人)の対概念としての子どもであり,この場合は,個体としての生命の発生から成人するまでのあらゆる段階にあるもの,すなわち,胎児,乳幼児,児童,少年少女などを総称する。…
【爵位】より
…
[ヨーロッパ]
古代ローマの貴族には,位階序列を表す称号はなく,ヨーロッパの爵位は,中世・近世においてその発達をみることができる。国と時代により差異はあるが,一般に知られている爵位は,公(デュークduke),侯(マーキスmarquis),伯(アールearl),子(バイカウントviscount),男(バロンbaron)の5位階である(かっこ内は英語)。これらのうち,公と伯の呼称が歴史的に見て最も古く,それぞれ古ゲルマンの軍事統率者であるドゥクスdux(ドイツ語は[ヘルツォーク],フランス語はデュクduc),フランク国王の統治権とりわけ裁判権を地方管区ごとに執行する役人としてのコメスcomes(ドイツ語は[グラーフ],フランス語はコントcomte)とにさかのぼる。…
※「子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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