能(漢字)

普及版 字通 「能(漢字)」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 10画

[字音] ノウ・タイ
[字訓] よくする・たえる・おさめる

[説文解字]
[金文]

[字形] 象形
水中昆虫の形に象る。〔説文〕十上に「熊の屬なり。足は鹿に似たり。に從ひ、(い)聲」とし、その獣は堅中にして賢能と称し、彊壮にして能傑と称するのであるという。熊・羆(ひぐま)のような獣の象形字とするものであるが、金文字形(えい)の従うところの(えい)の形と最も近く、やどかりの形に似ている。〔爾雅、釈魚〕に「鼈(べつ)は三足の能なり」、また〔玉〕にも「能は三足の鼈なり」とあり、水中のものとする解釈があった。周初の金文〔也(やき)〕に「多王能くしたまへり」、〔詩、大雅、民労〕に「きを柔らげ邇(ちか)きを能(をさ)む」のように用いる。賢能の意は、〔左伝〕など、列国期以後の文に至ってみえる。能を熊の意に用いることもあり、〔左伝、昭七年〕「今、熊の寢門に入るをむ」の「熊」を、一本に「能」に作り、〔国語、晋語八〕の〔昭注〕に「熊は羆に似たり」という。〔楚辞、天門〕に、鯀(こん)が黄熊となって羽淵に入ったとする神話が歌われており、黄熊も水中に住むものとされている。熊は水中でも活躍することができる猛獣である。能の古音は態(たい)と近く、〔楚辞、離騒〕に佩・能を韻している。

[訓義]
1. よくする、あたう、たえる。
2. おさめる、ならす、したしむ。
3. わざ、ちから、はたらき。
4. 態と通じ、さま、かたち。
5. 獣の名、熊の一種。
6. 而・乃と通じ、かくのごとき、すなわち。
7. 耐・忍・任と通じ、たえる。

[古辞書の訓]
名義抄〕能 ヨシ・ヨク・ヨクス・ヨウス・タフ・タヘタリ/不能 イナトナラバ

[部首]
〔説文〕に熊・罷の二字を属し、〔玉〕は(だ)のみを属する。は「獸、鼠に似たり。之れをらへば目をらかならしむ」という。〔玉〕は別に熊部を立て、熊・羆を属する。

[声系]
〔説文〕に能声として日部の字一字を収め、態については会意とする。能に態の声があり、態は能声の字とみてよい。

[語系]
能・耐nは同声。また乃・廼nも同声。(忍)njin、任njimも声近く、忍耐堪任の意をもつ。みな一系の語である。

[熟語]
能寒能因・能画・能官・能幹・能御能亨・能傑・能賢・能言能箇・能士能子・能事・能者・能術・能書・能処能臣・能人・能政・能否・能品・能文・能弁・能様能吏・能力
[下接語]
異能・英能・援能・可能・官能・幹能・簡能・奇能・器能・機能・伎能・技能・芸能・権能・賢能・功能・効能・才能・材能・志能・殊能・十能・職能・性能・全能・多能・堪能・知能・智能・忠能・低能・任能・万能・表能・不能・本能・無能・有能・庸能・吏能・良能・廉能

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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