忙しい(読み)セワシイ

デジタル大辞泉 「忙しい」の意味・読み・例文・類語

せわし・い〔せはしい〕【忙しい】

[形][文]せは・し[シク]
用事が多くてひまがない。いそがしくて休む間もない。せわしない。「―・い日々を送る」
気がせいて落ち着かない。せかせかしている。せわしない。「―・く立ち去る」
速い調子で続くさま。絶え間がない。せわしない。「―・く息をつく」
経済的にゆとりがない。
「よくよく―・しければこそ芝居並みの利銀にて何程でも借らるるなり」〈浮・胸算用・二〉
いそがしい[用法]
[派生]せわしがる[動ラ五]せわしげ[形動]せわしさ[名]
[類語]いそがしい慌ただしいせわしない気ぜわしい目まぐるしいきりきり舞い東奔西走てんてこ舞い多忙繁忙繁多繁劇多事多端多用繁用席の暖まるいとまもない猫の手も借りたいそそくさせかせか性急拙速多端忙殺怱忙そうぼう倥偬こうそう怱怱そうそう大忙し取り紛れる手が塞がる目が回る応接にいとまがないあくせくこせこせばたばたせっかちあたふた気早気早い大わらわ貧乏暇無し甲斐甲斐かいがいしいそわそわ右往左往慌てふためく動き回るちょこまかうそうそ倉卒押せ押せてんやわんややいのやいのうろうろうろちょろどぎまぎおたおたまごまごどぎどぎもじもじぐじぐじぐずぐずいじいじ因循くよくようじうじちゃかちゃかふらふらよたよたもぞもぞふわふわおどおどびくびくきょときょとぐらぐら倉皇軽佻浮薄浮薄闇雲やみくも軽挙妄動後先なしうわずるうわつくうろたえる

いそがし・い【忙しい】

[形][文]いそが・し[シク]《動詞「急ぐ」の形容詞化
多くの用事に追われて暇がない。多忙である。「目が回るほど―・い」
せかせかして落ち着かない。せわしない。「―・い性分だねえ」
[派生]いそがしがる[動ラ五]いそがしげ[形動]いそがしさ[名]
[用法]いそがしい・せわしい――「忙しい(せわしい)日々を過ごす」「飛行機が忙しく(せわしく)離着陸を繰り返す」などでは、相通じて用いられる。◇「忙しい」は「注文が増えて、忙しくなった」のように用いられるほか、「猫の手も借りたいほど忙しい」などの慣用句や、「資金繰りに忙しい」のような比喩的な言い方に及ぶ。これらは「せわしい」に置き換えられない。◇「せわしい」は「せわしいしゃべり方をする」「車の往来がせわしい」のように、主観的で落ち着かないことに重点がある。したがって、「仕事が忙しい」とはいうが、「仕事がせわしい」とは普通いわない。◇類似の語に「せわしない」「あわただしい」「いそがわしい」がある。「せわしない」は「せわしい」の強調形であり、「あわただしい」は不安定で流動的な感じが中心で、「あわただしい年の暮れ」「政局があわただしくなった」などと用いる。「いそがわしい」は文語的で、「せわしい」「あわただしい」に近い
[類語](1せわしいせわしない気ぜわしいあわただしい目まぐるしいそそくさせかせか性急拙速多端忙殺多忙繁忙繁多繁劇多事多端多用繁用怱忙そうぼう倥偬こうそう怱怱そうそう大忙し東奔西走てんてこ舞いきりきり舞い取り紛れる手が塞がる目が回る応接にいとまがない席の暖まるいとまもない猫の手も借りたいあくせくこせこせばたばたせっかちあたふた気早気早い大わらわ貧乏暇無し甲斐甲斐かいがいしいそわそわ右往左往慌てふためく動き回るちょこまかうそうそ倉卒押せ押せてんやわんややいのやいの

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精選版 日本国語大辞典 「忙しい」の意味・読み・例文・類語

せわし・いせはしい【忙】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]せは〘 形容詞シク活用 〙
  2. 速度や調子などが速く、次から次へと間断なく続いている。ゆったりしていない。せわしない。
    1. [初出の実例]「異の儀(よそほひ)を設(まうけ)て険(セハシク)曲れるをもて性と為」(出典:石山寺本成唯識論寛仁四年点(1020))
    2. 「あまりの意外に息もせはしく」(出典:蝴蝶(1889)〈山田美妙〉一)
  3. しなければならないことなどが多く重なったりして暇がない。いそがしい。多忙である。せわしない。
    1. [初出の実例]「世中は秋の山田の庵(いほ)なれや畦(あぜ)の通ひ路せはしかるらむ」(出典:長秋詠藻(1178)上)
  4. とげとげしくきびしい。小さなことにこだわり、ゆとりがない。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「あまりせはしうてわるひ、ちとそちへくつろがしめ」(出典:虎明本狂言・乳切木(室町末‐近世初))
  5. 経済的に切迫している。苦しい。世の中をわたっていくことがむずかしい。
    1. [初出の実例]「されば其聟(むこ)どのかたも、よくよくせはしければこそ、芝居並の利銀にて何程でも借らるるなり」(出典:浮世草子・世間胸算用(1692)二)
    2. 「玉屋新兵衛腹の中から世のせはしきことをしらず」(出典:浮世草子・傾城歌三味線(1732)一)
  6. せかれることがあって落ち着きがない。せかせかしている。気ぜわしい。せわしない。
    1. [初出の実例]「鬼うばがあまりにせはしく申侍るもうるさければ」(出典:御伽草子・福富長者物語(室町末))
    2. 「物の煮えるのを待てないほど気がせはしく」(出典:夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第二部)

忙しいの語誌

( 1 )の意では、挙例の「石山寺本成唯識論寛仁四年点」が早いが、その後院政期の和歌に「水の流れ」についての例が見られる。
( 2 )室町後期になると、の「忙しい」の意を受けて、それによる否定的な印象・評価を強調するの意が生じた。「日葡辞書」は「せわせわしい」と同義とし、「せわせわしい人」とは「しみったれで口うるさく、振舞いのいやらしい人」と記述している。別に「せわしなし」が「名語記」に見え、主として他から見て好ましくない状態について用いられている。

忙しいの派生語

せわし‐が・る
  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙

忙しいの派生語

せわし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

忙しいの派生語

せわし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

いそがし・い【忙・急】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]いそが〘 形容詞シク活用 〙 ( 動詞「いそぐ(急)」の形容詞化 )
  2. 早くしなければならない用事に追われるさまである。また、用事が多く重なったりして暇がない。多忙である。
    1. [初出の実例]「吾は今劇務(イソカシ)」(出典:石山寺本大般涅槃経平安初期点(850頃))
    2. 「宮仕へいそがしく」(出典:伊勢物語(10C前)六〇)
  3. せかされるような感じで落ち着かない心持ちである。気がせくさまだ。あわただしい。せわしい。
    1. [初出の実例]「例の心のくせなれば、いそがしくもおぼえず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)宿木)
    2. 「遽(イソ)がしく馬を下り」(出典:二人比丘尼色懺悔(1889)〈尾崎紅葉戦場)
  4. ものごとが次から次へとたえまなく続くさまにいう。とめどない。
    1. [初出の実例]「なぜに〈略〉涙がいそがしうこぼれることやら」(出典:古今集遠鏡(1793)五)

忙しいの派生語

いそがし‐が・る
  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙

忙しいの派生語

いそがし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

忙しいの派生語

いそがしげ‐さ
  1. 〘 名詞 〙

忙しいの派生語

いそがし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

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