デジタル大辞泉
「上手」の意味・読み・例文・類語
うわ‐て〔うは‐〕【上手】
[名]
1 位置・方向が上のほう。うえ。特に、風上・川上などをいう。かみて。「風の上手にまわる」⇔下手。
2 相撲で、四つに組んで相手の差し手の上から相手のまわしを取ること。また、その手。「上手を引く」⇔下手。
3 囲碁・将棋で、対局者のうち段位・力量のすぐれたほう。⇔下手。
4 犬追物で、自分の馬の前に立つ射手。
5 石帯の左の一端についている革帯。
[名・形動]
1 技能・学問・知識などが他よりすぐれていること。また、その人。「役者が一枚上手だ」「相手の上手を行く」
2 人を脅かすような態度をとること。また、そのさま。高飛車。⇔下手。
「この―な物言いが変に私を圧迫した」〈志賀・暗夜行路〉
[類語]上部・上手・上方・高み・上位・優位・優越・高位・上席
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
うわ‐て うは‥【上手】
〘名〙
※
平家(13C前)四「つよき馬をばうは手にたてよ」
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)三「
河上(ウワテ)に舟の見えねへのが山でごぜすと」
② (特に、江戸(東京)
隅田川の上流の意から) 向島あたりをさしていう語。
※人情本・春色雪の梅(1838‐42頃か)初「今日は
何所だ。川上
(ウハテ)か」
③ 石帯(せきたい)の左の端についている革帯。本帯に付属し、腰の上方から石帯にはさむ。
※日中行事(1334‐38頃)「
束帯の人はうはてをはづす」
④
犬追物(いぬおうもの)で、自分の馬の前に立った射手。⇔
下手(したて)。〔犬追物付紙日記(1460‐66頃か)〕
⑤ 相撲で、相手の差し手の上から相手のまわしを取ること。また、その手。⇔
下手(したて)。
※浄瑠璃・平家女護島(1719)一「有王が大たぶさ菊王が大唐輪、みだしかけふりかけ、下手上手に
押合て」
⑥ (形動)
技芸、才知などが、他の人よりすぐれているさま。また、その人。上手
(じょうず)。また転じて、一段と悪いことにもいう。
※
古本説話集(1130頃か)二六「さきざきなに事も、長能
(ながたう)はうはてをうちけるに」
⑦ (形動) 人を威圧するような態度をとること。また、そのさま。たかびしゃ。
※
酒中日記(1902)〈
国木田独歩〉五月一三日「母は何所
(どこ)までも上手
(ウハテ)『何が余
(あんまり)だね。それは此方
(こっち)の文句だよ』」
じょう‐ず ジャウ‥【上手】
〘名〙
① (形動) 物事にたくみなこと。その道にたくみで、すぐれていること。てぎわのよいこと。また、そのさまや人。巧者。巧手。名人。
※三代格‐一五・天応元年(781)三月八日「一町以賜二歩射之上手一」
※大和(947‐957頃)一三五「かへし、上ずなればよかりけめど、えきかねば書かず」
② (形動) おせじのうまいこと。
如才(じょさい)のないこと。また、そのさま。おじょうず。口じょうず。
※
史記抄(1477)一七「天然人の気に合ふ様に上手な者があるものぢゃぞ」
③ 江戸時代、囲碁・将棋の七段の別称。桃山時代に召し出された碁将棋衆を上手衆と言ったのがその始まり。江戸時代には免状は七段までで、上手に何子になったから何段を許すという形式を採り、上手になると外家(家元外)でも僧形になれば御城碁出仕を許された。
※仮名草子・仁勢物語(1639‐40頃)上「負け度重なりければ、主、其相手に夜毎に上手を付けて、打たせければ」
④ (━する) たくみにはかりごとをめぐらすこと。
※
源平盛衰記(14C前)
二八「人に上手
(ジャウズ)せられぬ前に木曾を討たんとて」
かみ‐て【上手】
① 川の上流の方。
※
狂言記・丼礑(1660)「ああ、いかふふかさうな、かみてへうって見ませう」
② 上座に近い所。
③ 舞台の、客席から見て右手の方。
※
歌舞伎・四天王楓江戸粧(1804)三立「
猪熊入道引き戻して上手
(カミテ)へ突きやる」
④ 魚網の引綱の左の方。こうて。
※
袖中抄(1185‐87頃)二〇「よわくひけば、かみても
しもても綱ゆるびてわろければ」
こう‐て かう‥【上手】
〘名〙 (「かみて」の変化した語) 網の左の大綱。
※袖中抄(1185‐87頃)二〇「引く島の網のうけ舟波間よりかうてふさすとゆふしでてかく」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
普及版 字通
「上手」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
上手
かみて
舞台用語。客席から向かって中央から右側のこと。反対の左側を下手 (しもて) と呼ぶ。客席の方は上手側を東,下手側を西と呼ばれる。歌舞伎から出た呼び名だが,他の演劇でも使われ,映画・テレビでもカメラから見て右側を上手,左側を下手と呼ぶ。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報