敢て・肯て(読み)あえて

精選版 日本国語大辞典 「敢て・肯て」の意味・読み・例文・類語

あえ‐て あへ‥【敢て・肯て】

〘副〙 (動詞「あう(敢)」の連用形に助詞「て」が付いて一語化した語)
① (肯定にも否定にも用いる) 困難な状況をおして。積極的に、力いっぱいに。
万葉(8C後)三・三八八「いざ児等(こども) 安倍而(アヘて)漕ぎ出む にはも静けし」
② (否定辞と呼応して用いる)
(イ) (強めていう) いっこうに。さっぱり。決して。
※栄花(1028‐92頃)かがやく藤壺「成出で清げならぬをばあへて仕うまつらせ給ふべきにもあらず」
(ロ) (ふつうは、そうでないのではないかと思われることでも、取り立てて異をさしはさまない態度を、積極的に示す) 別に、取り立てて。わざわざ…するというのではない。
※俳諧・おらが春(1819)「敢て世塵を厭ず」
[語誌]平安時代には、漢文訓読系の資料に多く、仮名文系の資料には、あまり見られない。漢文訓読の場合、否定を伴った「不敢」「不肯」等の訓読に用いられ、「アヘテ…ズ」などとなる。仮名文でも、「敢ふ」は用いられるが、この場合も否定語を伴った「…あへず」「え…あへず」が多い。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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