精選版 日本国語大辞典 「空」の意味・読み・例文・類語
くう【空】
うつほ【空】
うつぼ【空】
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気象学的には地上にいる人の目に見える範囲を空とよぶ。
われわれは空を地平面で区切られた半球だと思っているが,実は押しつぶした丸天井または鏡餅のように,いくらか扁平に知覚しているらしい。人間が地平線から高度45度と思う所を高度計で測ってみると,35度ぐらいしかない。また太陽や月が地平線に近いときには特に大きく見えることから,人は天空を市女笠(いちめがさ)のような形に知覚していると主張する心理学者もある。
晴天の空は青く見えるのがふつうであるが,これは太陽光が地球の大気に入り,そこにある空気分子に当たって,入射光の方向とはちがう方向に散乱されたものが目に入るときに,青の光が主になるからである。散乱現象は散乱される光の波長と,散乱をおこす粒子の大きさに関係する。散乱現象については有名なレーリーの法則というのがある。これは光の波長に比べて粒子が小さい場合に適用されるもので,散乱光の強さは入射光の波長の4乗に逆比例するのである。太陽光の中には赤から紫までの波長の光が含まれているが,赤の波長は紫の2倍ぐらいはあるから,散乱光の中の波長の長い方,すなわち赤に近い色の光はずっと弱くなる。それで空の色は青く見えるのである。日の出,日没のときの朝焼け,夕焼けの空の色も同じ法則で説明できる。
空気中に汚染物質,塵埃(じんあい),凝結核,微小水滴などが多くなったときの散乱現象についてはミーMieの散乱則(この現象を研究した学者の名前による)がある。それによると,これら粒子の大きさが,光の波長に比べてずっと大きいときは,散乱光の強さは光の波長に無関係になる。霧粒や雲粒の粒子は,光の波長よりずっと大きいから,霧や雲に光が当たると白く見える。また大気中に浮遊する細塵や微水滴なども,その数が多くなると空の青い色は薄くなって白っぽくなる。また粒子の大きさがこれらの間にあるときは,散乱光の強さは波長の0乗から4乗に逆比例するという。0乗は1で,波長に無関係であり,これは今説明したとおりである。4乗は微小粒子の場合で,レーリーの法則で表現されている。
ジェット機で10kmまたはそれ以上の高空を飛ぶときによく経験するが,空は黒ずんだ紫色に見える。これは上記のレーリー散乱を考えればよく理解できる。また1961年に最初の人間衛星が飛んだとき,飛行士が〈地球は青かった〉といったと伝えられているし,また宇宙空間から見た青い地球の写真も撮られている。
低気圧などが近づいてくるときには,その前面,中心域,側面,後面で,それぞれ特徴のある雲の分布が見られる。それで雲を観測する場合に,上,中,下層の雲の状態を30種に分けて見るやり方がある。これを〈空の状態〉あるいは〈雲の状態〉という。
執筆者:畠山 久尚
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