デジタル大辞泉
「間」の意味・読み・例文・類語
かん【間】
[名]
1 物と物、場所と場所とを隔てる空間的な広がり。また、その距離。「天地の間」「その間約八キロ」「目睫の間に迫る」
2 ある時点とある時点とのあいだ。あるひと続きの時間。「その間の事情はわからない」「ボールが外野を転々とする間に」
3 すきま。間隙。「多忙の間を縫って出席する」「間に乗じる」
4 心の隔たり。「間を生じる」
[接尾]名詞に付いて、ある物事・時間・場所と他の物事・時間・場所とのあいだ、人と人との関係などの意を表す。「五日間」「東京、大阪間」「学校間の連絡」「夫婦間のもめごと」
[類語]間・間隔・隔たり・間・間合い・合間・距離・時間・インターバル
けん【間】
[名]長さの単位。1間はふつう6尺(約1.82メートル)の長さ。田や土地を測る場合は6尺5寸(約1.97メートル)、室内の畳の寸法では6尺3寸(約1.91メートル)をそれぞれ1間とすることもある。
[接尾]助数詞。
1 碁盤・将棋盤などの目数を数えるのに用いる。「三間とび」「二間びらき」
2 建物の正面の柱と柱との間、また、ひろく四方を柱で囲まれた空間を数えるのに用いる。「三十三間堂」
「百八十―の廻廊をぞ造られける」〈平家・三〉
まん【▽間】
《「ま(間)」の音変化》めぐりあわせ。運。
「―よくば勝軍の場」〈浮・新色五巻書・一〉
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あいだあひだ【間】
- 〘 名詞 〙
- [ 一 ] 二つのものにはさまれた部分。
- ① 空間的に、二つのものにはさまれた部分。物と物とのま。中間。あいま。あわい。
- [初出の実例]「白玉の間(あひだ)開(あ)けつつ貫(ぬ)ける緒も縛(くく)り寄すればまたも逢ふものを」(出典:万葉集(8C後)一一・二四四八)
- 「陸(くが)と島の間」(出典:平家物語(13C前)一一)
- ② 時間的に、二つの部分にはさまれた時。時間の連続の切れた部分。絶え間。間隔。
- [初出の実例]「ほととぎす安比太(アヒダ)しまし置け汝(な)が鳴けば吾が思(も)ふ心いたもすべなし」(出典:万葉集(8C後)一五・三七八五)
- 「一つつきてあひだのあるは鐘撞(かねつき)も心あり」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
- ③ 人と人との関係。事物相互の関係。間柄。仲。
- [初出の実例]「教ふるに天(きみ)人(たみ)の際(アヒタ)を以てす可からざることを見て」(出典:日本書紀(720)神武即位前(北野本訓))
- 「宮のあひだの事、おぼつかなくなり侍りにければ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)賢木)
- 「日本鉄道の曾我とは非常に懇意の間だ」(出典:駅夫日記(1907)〈白柳秀湖〉一二)
- ④ 人と人の間柄が悪くなった状態。紛争。
- [初出の実例]「源権守・法一か間之少免事」(出典:東寺百合文書‐ハ・長祿三年(1459)八月二九日・若狭太良庄百姓申状)
- ⑤ 二つ以上のもののうちの範囲を表わす。…のうち。…の中で。
- [初出の実例]「彼の入道父子が間(あひだ)に一人さし殺して、腹切らんずる物を」(出典:太平記(14C後)二)
- 「労働者同志の間にはほとんど何の会話も交されない」(出典:労働者誘拐(1918)〈江口渙〉)
- [ 二 ] あるひとまとまりの部分。
- ① 空間のへだたり。距離。
- [初出の実例]「己妻(おのづま)をひとの里に置きおほほしく見つつそ来ぬる此の道の安比太(アヒダ)」(出典:万葉集(8C後)一四・三五七一)
- 「少しく距離(アヒダ)の遠かりしゆゑ」(出典:狐の裁判(1884)〈井上勤訳〉六)
- ② 時間的に、限られた範囲。
- (イ) 時の経過におけるある範囲。期間内。うち。ほど。
- [初出の実例]「年月も いまだあらねば 心ゆも 思はぬ阿比陁(アヒダ)に うち靡き 臥(こや)しぬれ」(出典:万葉集(8C後)五・七九四)
- 「かた時のあひだとてかの国よりまうでこしかども」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- 「二時の間か、又は三時の間、稽古致しますと」(出典:小学教授書(1873)〈文部省〉)
- (ロ) 特別の時間でない、普通の時。なんでもない時。
- [初出の実例]「間(アヒダ)の洒落る時とは違ふ。用の咄しの時はまじめがいい」(出典:滑稽本・魂胆夢輔譚(1844‐47)初)
- [ 三 ] 形式名詞化して用いられる。
- ① ( 接続助詞のように用いて ) 原因、理由を示す。…によって。…が故に。…ので。
- [初出の実例]「東宮雑事不レ閑間、可レ然令旨等未下」(出典:御堂関白記‐寛弘八年(1011)六月一三日)
- 「道はせばくて、馬何かとひしめきけるあひだ、此の大童子走りそひて」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一)
- ② 「この間」の形で、漠然とした時を示す。
- [初出の実例]「このあひだ病重くなりにけり」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)哀傷・一三二二・詞書)
間の語誌
( 1 )基本的には、基準となる二つのものが存在し、それにはさまれた部分をいう([ 一 ]の用法)。空間(「東京と京都の間」)・時間(「間をおかずに出発する」)どちらの場合もあり、また、そのはさまれた部分は大きなものである場合(「月と地球の間」)、すきまがない場合(「二枚の紙の間」)、抽象的なものである場合(「親子の間」)などがある。それに対し、基準となる二者を明示せずに、そのはさまれた部分を全体として一つのものとしてとらえる用法もある([ 二 ]の用法)。「夏休みの間」「花が咲いている間」など。
( 2 )現代語では[ 二 ]の用法は時間的なものに限られるが、古くは空間的用法も存在した。万葉‐七〇〇「かくしてやなほやまからむ近からぬ道の間(あひだ)をなづみまゐ来て」など。
( 3 )[ 二 ]の用法では、「間」の前に用言・助動詞の連体形による連体修飾が来ることが多く、この用法から[ 三 ]の用法が派生した。[ 三 ]の用法は、記録資料に多く用いられ、中世以後一般化した。
ま【間】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- [ 一 ] 空間的にいう。
- ① ある物の存在する近くの空間を漠然とさしていう。そば。あたり。
- [初出の実例]「朝霧の おほになりつつ 山城の 相楽(さがらか)山の 山の際(ま)に 行き過ぎぬれば」(出典:万葉集(8C後)三・四八一)
- ② 二つ以上の同質の物のあいだにある空間。あいだ。あわい。
- [初出の実例]「紀の国の雑賀(さひか)の浦に出で見れば海人(あま)のともし火浪の間(ま)ゆ見ゆ」(出典:万葉集(8C後)七・一一九四)
- ③ 連続して並んでいるようなものの中間の、あいている空間。すきま。転じて、人と人との関係に生じた間隙。→間(ま)無し・間(ま)無し。
- [初出の実例]「武田与所司代有レ間云々」(出典:十輪院内府記‐文明一七年(1485)八月九日)
- ④ 建物の柱と柱の間。
- (イ) 建物の居住区で二本の柱を一辺とする部分。
- [初出の実例]「ま一つに臼四つ立てたり、臼一つに女ども八人たてり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上上)
- (ロ) 柱間と規格化された畳の寸法との関係を示す名。「京間」「江戸間」など。
- ⑤ 部屋などの一区切り。古代の家屋は、部屋としての独立した構造を持たないことが多いので、几帳、障子、襖などで区切られた一区画をさしていい、前項の例と区別しがたい場合も多い。部屋がそれぞれ独立して作られるようになると、主として部屋をさしていう。「居間」「次の間」「床の間」など。
- [初出の実例]「次のまに長炭櫃にひまなく居たる人々」(出典:枕草子(10C終)一八四)
- [ 二 ] 時間的にいう。
- ① ある限定された時間的なひろがり。
- [初出の実例]「蜷(みな)の腸(わた) か黒き髪に いつの麻(マ)か 霜の降りけむ」(出典:万葉集(8C後)五・八〇四)
- ② ある動作・状態が継続している時間帯。間(かん)。
- [初出の実例]「夕闇は道たづたづし月待ちていませ我が夫子(せこ)その間(ま)にも見む」(出典:万葉集(8C後)四・七〇九)
- ③ 継続していたものが途切れたり中断したりする時間。絶え間。→間(ま)無し・間(ま)無し。
- [初出の実例]「もしそれが雨降りの夜でもあれば、滴のポトンポトンという音が、語彙に乏しい会話の間(マ)を埋め」(出典:海を見に行く(1925)〈石坂洋次郎〉)
- ④ 何かをするのに振り当てる時間。機会。
- [初出の実例]「おいそがしいから、夫で此方へお出なさるお間(マ)がなひので在(あら)ふ」(出典:人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)四)
- ⑤ 邦楽・舞踊・演劇で、音と音、動作と動作の間の休止の時間的長短をいう。転じて、拍節・リズム・テンポと同意に用いる。
- [初出の実例]「唄の間(マ)外したで沢山なを未足らぬか儂が肱へぶつかって」(出典:門三味線(1895)〈斎藤緑雨〉二〇)
- ⑥ めぐりあわせ。運。
- [初出の実例]「『お亀、与兵衛が勘当のその内に丁度くたばったから、ソレ、殺し手は与兵衛となるワ』『成る程、こいつは好い間(マ)だの』」(出典:歌舞伎・絵本合法衢(1810)五幕)
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙
- ① 柱と柱の間を単位として数える時に用いる。実際の長さは一定しないが、六尺から一〇尺ぐらいをさす。室町時代には七尺ないし六・五尺であった。
- [初出の実例]「灯籠(とうろ)に火ともしたる二まばかりさりて」(出典:枕草子(10C終)一九三)
- ② [ 二 ]①から、建物や部屋の広さをいうのに用いる。一間は、たてよこ一間に一間の広さをいい、五間といえば二間に二間半の広さをいう。
- [初出の実例]「一 清涼殿。〈略〉二間。敷二畳二帖一」(出典:禁秘鈔(1221)上)
- ③ 部屋の数を数えるのに用いる。「三間の家」
- ④ 一定の区切られた空間を数えるのに用いる。障子の桟で囲まれた一区切など。
- [初出の実例]「明り障子〈略〉なほ一間づつ張られけるを」(出典:徒然草(1331頃)一八四)
けん【間】
- [ 1 ] 〘 接尾語 〙 ( 撥音を受けるときは「げん」とも )
- ① 建物の外面、主として正面の柱と柱との間。また、ひろく、四方を柱で囲まれた空間を数えるのにも用いる。
- [初出の実例]「檜皮葺板敷屋二宇 各四間在東庇」(出典:薬師院文書‐延暦七年(788)一二月二三日・大和国添上郡司解)
- [その他の文献]〔陶潜‐帰園田居詩〕
- ② 碁盤、将棋盤などの目を数えるのに用いる。「三間飛び」
- [初出の実例]「ひらいて大手(おほで)をとる又一っけんにげるあたまから銀とうつ」(出典:洒落本・娼妓絹籭(1791)序)
- ③ 建物を数える単位。
- [初出の実例]「家 壱区〈略〉地 弐町、墾田 柒町壱段、屋 捌宇、板倉 柒間、価銭柒拾貫文」(出典:内閣文庫所蔵文書‐天平二〇年(748)一〇月二七日・太政官符案)
- ④ 兜(かぶと)の鉢を構成する、上が狭く下が広い鉄の板金を縦矧(たてはぎ)にしたものを数えるのに用いる。少ないもので四枚、多くて二四〇枚張り寄せる。
- [初出の実例]「殊更六十二間のかぶとを、同しなひにて打くだきなんど仕る程の上手にて」(出典:甲陽軍鑑(17C初)品四〇下)
- ⑤ 扇の骨と骨の間を数えるのに用いる。
- [初出の実例]「腰より扇をとり出し、三げんばかり押開き」(出典:浄瑠璃・十二段草子(1610‐15頃か)七)
- [ 2 ] 〘 名詞 〙 長さの単位。ふつう一間は曲尺(かねじゃく)で六尺(約一・八二メートル)にあたる。また、田や土地には六尺五寸、室内の畳には六尺三寸(これを京間(きょうま)といい、田舎間(いなかま)と区別する)を一間とすることがある。平安時代には住宅の柱間は一〇尺程度で不定であったが、鎌倉時代には八尺、室町時代には七尺ほどとなり、応仁乱後ごろから六尺五寸に固定した。
- [初出の実例]「十間ばかりある鑓を、四五人ゆすりかけて参る程に」(出典:虎明本狂言・空腕(室町末‐近世初))
間の補助注記
長さの単位としては、漁業関係者の間で用いられる「間」がある。大人が両手をひろげた時の長さに相当し、約一五〇センチメートルという。
かん【間】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 物や人、または、場所などのそれぞれのあいだ。間隔。また、その空間。
- [初出の実例]「船をかりて松島にわたる。其間二里余、雄島の磯につく」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)松島)
- [その他の文献]〔礼記‐楽記〕
- ② 事と事との時間的なへだたり。また、一続きの時間。
- [初出の実例]「舞・はたらきの間〈略〉風度し出ださんかかりを、うち任せて心のままに、せさすべし」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)一)
- 「医学士の挙動脱兎の如く神速にして聊か間(カン)なく」(出典:外科室(1895)〈泉鏡花〉上)
- [その他の文献]〔孟子‐離婁・下〕
- ③ 人や物事のあいだの関係。仲(なか)。
- [初出の実例]「俺アその間(カン)の消息は一向に不知案内だが」(出典:今年竹(1919‐27)〈里見弴〉三人上戸)
- ④ よい機会。しお。〔後漢書‐寇恂伝〕
- ⑤ 心のへだたり。仲たがい。
- [初出の実例]「直義卿与師直有レ間、就レ之可レ有二兵火旨一、都人士女騒動」(出典:園太暦‐貞和五年(1349)閏六月二日)
- [その他の文献]〔春秋左伝‐哀公二七年〕
- ⑥ まわしもの。間諜(かんちょう)。
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙 ある時間、場所、人、物と、他の時間、場所、人、物とのあいだをいう。
- [初出の実例]「東京青森間(九月一日)、続て門司佐賀間汽車の開通あり」(出典:東京日日新聞‐明治二五年(1892)一月一五日)
まん【間】
- 〘 名詞 〙 ( 「ま(間)」の変化した語。一説に「間(ま)」と「運(うん)」とが結びついたものとも ) はずみ。まわり合わせ。めぐり合わせ。しあわせ。運。
- [初出の実例]「きのふは御こし候はんのよし、まんに候へとも」(出典:評判記・吉原用文章(1661‐73)一三)
ひ【間】
- 〘 名詞 〙 「ひま(隙)」の古形。
- [初出の実例]「間(ヒ)に乗て脱るること得て」(出典:日本書紀(720)雄略八年二月(前田本訓))
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
普及版 字通
「間」の読み・字形・画数・意味
間
常用漢字 12画
(旧字)
12画
(異体字)
12画
[字音] カン
[字訓] すきま・あいだ・しずか
[説文解字]
[金文]
[字形] 会意
旧字はに作る。門+(月)。〔説文〕十二上に「隙なり。門ととに從ふ」とし、古文としてを録する。は月光と解されているが、金文の字形によって考えると、門に肉をおいて祈る儀礼を示す字であるらしく、そこから離隔・安静の意が生ずるのであろう。〔左伝、定四年〕「管(叔)(叔)を(ひら)きて王室を(きかん)す」とあり、その呪詛的方法を示す字と考えられる。
[訓義]
1. あいだ、すきま、へだつ、うかがう。
2. しずか、やすらか、くつろぐ、いこう。
3. ひそかに、こっそり。
4. 時間的にへだたる、このごろ、しばらく。
5. 距離的にへだたる、あいま、へだたる、はなれる、へや。
6. 簡と通じ、大きい、はぶく。
7. 閑と通じ、ふせぐ、ふさぐ。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕 ハジメ・ミテル・ヒマ・シバラク・コノゴロ・ウカガフ・サカフ・タガヒニ・ヒソカニ・アヒタマ・ママニ・イフ・アツカル・マシナフ・イユ・マジハル・シヅカニ・フサク・アヒダム・ハサマル・ソシル・カサル・アヒダ・マ/人 ヨノナカ/中 ナカコロ/此 ココ/彼間 カシコ/偸 アカラサマ/諜 ウカミス 〔字鏡集〕 ハシタ・サカフ・ヘダツ・マジナフ・ハカル・マホル・アタフ・フサク・アツラフル・ママニ・コホル・イロフ・ツシル・イユ・ハサマル・ヒソカ・カザル・マジハル・シヅカニ・アヒタム・タガヒニオクル・アハ(シバ)ラク・コノコロ・イトマ・ヒラク・ミタル・タガヒニ・セキ・トル・アツラフ・マ・ヒマ・ヨ
[声系]
〔説文〕に声として・(簡)・・・・嫺など十四字を収める。・・・嫺など、通用の義をもつものがある。
[語系]
kean、隙khyakは声義の関係がある。隙は神の陟降する神梯((ふ))の前に玉(日)をおき、その光が上下に照射する象で、神と人との間を隔てるもの、いわゆる神人の際を示す。も門において肉(月)を供えて祀る象で、隙と同様の意味をもつ字である。*語彙は閑字条参照。
[熟語]
間雲▶・間詠▶・間宴▶・間園▶・間▶・間暇▶・間架▶・間雅▶・間隔▶・間闊▶・間官▶・間間▶・間漢▶・間関▶・間▶・間居▶・間▶・間径▶・間隙▶・間郤▶・間▶・間潔▶・間月▶・間健▶・間言▶・間語▶・間口▶・間行▶・間候▶・間▶・間構▶・間坐▶・間歳▶・間雑▶・間散▶・間▶・間止▶・間伺▶・間廁▶・間視▶・間事▶・間者▶・間執▶・間習▶・間処▶・間情▶・間色▶・間心▶・間人▶・間甚▶・間靖▶・間静▶・間寂▶・間染▶・間然▶・間阻▶・間▶・間疎▶・間澹▶・間▶・間澹▶・間断▶・間談▶・間地▶・間諜▶・間丁▶・間適▶・間土▶・間道▶・間衲▶・間廃▶・間伏▶・間歩▶・間放▶・間謀▶・間謗▶・間民▶・間離▶・間麗▶・間路▶・間話▶
[下接語]
安間・雲間・乖間・間・期間・窺間・居間・峡間・行間・空間・間・候間・山間・讒間・伺間・時間・週間・瞬間・少間・承間・乗間・人間・世間・静間・草間・艙間・俗間・待間・中間・田間・投間・偸間・等間・発間・反間・眉間・幇間・坊間・民間・夜間・有間・幽間・優間・余間・腰間・欄間・離間・林間
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
間 (ま)
人間の行動や表現にとって,リズムは本質的な構成原理であるが,間はそのリズムの変調現象の一種であり,特殊なかたちをとったリズムの現れ方だといえる。通常,リズムはさまざまな脈動,波動,周期運動のなかに見てとられるが,その本質は単なる機械的な拍節の反復ではない。それはむしろ,ひと息の緊張した生命の躍動であって,その流れが拍節の反復によって分断され,勢いを堰(せ)きとめられ,それによってかえって緊張を高めたときに生じる現象だ,と見ることができる。すなわち,リズムは本質的に両義的な生命の顕現形態であり,運動のなかに停止を,持続のなかに分節を,時間のなかに空間を,生のなかに死を含んだ現象である。この微妙な矛盾の均衡は,運動に精密な構造を要求することになり,たとえば三段跳びに見られるように,ホップ,ステップ,ジャンプの三拍節は,互いに省略も入れ替えも許さない必然的な結合を作ることになる。また,この両義的な性格は,リズムを感受する意識にも矛盾した状態を惹(ひ)き起こし,音楽や舞踏が典型的に示すように,人の心をいきいきと覚醒させると同時に,一種の陶酔状態に置く。
したがって,リズムはその流れのなかに必然的な断絶を含み,拍節相互のあいだに空隙(くうげき)を必要とするものであるが,この空隙がときに特別に拡大された状態が,いわゆる間にほかならない。それは,拍節の反復に軽度の混乱をあたえ,それによって機械的な規則性の印象を防ぐとともに,流れをより大きく堰きとめて迫力を増す働きをする。いわば,リズムはその構造を歪められ,力を矯(た)められたときに活力を増すのであって,これは多くの行動について,俗に文字通り〈矯め〉という言葉で知られている。たとえば,野球の投手や打者は,基本的に一,二,三の三拍のリズムに従いながら,そこに一呼吸の〈矯め〉を置くことによって,逆に運動の正確さと躍動感を保っている。この〈矯め〉は,通常はさらに目だたぬかたちで現れるものであり,すべて〈しなやか〉な,〈粘りのある〉行動と呼ばれるものは,それがもっとも微妙に含まれた行動だと見ることができる。
当然,間はあらゆるリズミカルな表現の行動,とくに音楽,演劇にとって重要な技法のひとつとなる。西洋においても,音楽の休止符,近代演劇の台詞(せりふ)の間など,この技法を随所に見ることができるが,とりわけ日本芸術においては,これがしばしば中心的な地位を占めている。能の音楽の場合,演奏の焦点はむしろ休拍の置き方にあって,いかに〈間を数える〉かということが,技術の最高の秘伝とされているという。また,近世舞踊の場合にも,基本的には能の八拍子(やつびようし)にしたがいながら,拍子に乗りすぎることを嫌い,いかに〈間を抜く〉かが芸の眼目になっているといわれる。この精神は古く能楽の草創期にさかのぼり,世阿弥もまた,〈わざ〉と〈わざ〉との間隙(かんげき)を大切にして,いわゆる〈せぬひま〉をおもしろく見せるくふうを要求している。彼によれば,芸の要諦は〈万能を一心に綰(つな)ぐこと〉,すなわち〈わざ〉の根底に内面の緊張を持続することであるが,この間隙にこそその緊張が直接に露呈する,というのである。ここには,リズムの本質についての普遍的な理解があるとともに,間についての日本的な美意識の正確な説明が見られる,といえよう。こうした独特の美意識の由来は,おそらく表現に関する日本人の逆説的な美学,すなわち完全な表現を直接にめざすことを避け,あえて不完全によって完全を暗示することを好む,一般的な芸術観に帰せられるだろう。それは,〈月も雲間のなきはいや〉という〈わび〉の精神に通じ,エロティシズムに禁欲的な諦念(ていねん)を加味する〈いき〉の思想にも通じている。さらに絵画における余白,詩歌における余情の重視は,まさに間の美学が視覚的なリズムに及び,言語の意味そのもののリズムにひろがった例だ,と見ることができるだろう。
執筆者:山崎 正和
間 (けん)
尺貫法における長さの単位。その起源は定かでないが,日本では中世以来測地用の慣用単位であり,その大きさは太閤検地の際は6尺3寸,江戸時代は6尺1分であったという。1891年制定の度量衡法では6尺(約1.818m)=1間,60間=1町,36町=1里とし,1間四方の面積を1歩(坪)とした。間はまた,中国古来から,柱と柱の間隔をいい,部屋や家屋の広さを表すのに用いた。
→畳
執筆者:三宅 史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
間(ま)
ま
日本人には間という微妙な意識がある。名人といわれる落語家の語り口は間のうまさが絶妙だし、剣道では間のとり方が勝敗を決する。日常的にもぼんやりして「間が抜ける」と、約束に「間に合わず」、「間の悪い」思いをする、といったように、間ということばの用法は広い。このような間の意識には、間取りとか隙間(すきま)といった「空間意識の間」と、太鼓の間とか、間を外すといった「時間意識の間」とがある。
まず時間意識の間からみると、リズムとかタイミングともいいかえられるが、日本の間と西洋のリズムの間にはかなり差がある。江戸時代の『南方録(なんぽうろく)』という本は「音楽の拍子でも、合うのはよいが拍子に当たるのは下手だ。雅楽には峯すりの足というのがあって、拍子を打つ瞬間の峯に舞の足の峯が当たらずに、ほんのわずかずらすのが秘伝だ」と述べている。機械的な正確さで拍子と足が当たるのではなく、間に長短があってその微妙なずれが雅楽をよりおもしろく見せるという。どうやら日本の間にはリズムやタイミングのずれを喜ぶ不規則性が加味されている。しかもたいせつな点は、西洋のリズムは音や動作を伴う拍子そのものが耳に響くが、日本の間は拍子と拍子のあいだの空白を意識する違いがある。この空白はからっぽの空ではなく、次の拍子への緊張感を充実させた空である。つまり微妙に伸縮する時間の空白が間であり、それは空間意識の間に通じる。千利休(せんのりきゅう)は絵画のなかに描き残された空白の部分にわびの美があるといった。絵画や文学の余白、余情という無規定、空白の間に美を認める考えは、日本の建築にも表れる。西洋の大建築では、完全な、しかもバランスのとれた設計図があって細部まで決定されて工事が始まる。しかし日本の代表的建築である桂(かつら)離宮をみると、初めの計画にはなかった2回の増築によって建物はアンバランスに発展し、現在の姿が完成した。初めから増築の余地が予定されていて、余白(間)に新しい意匠を加えて全体が完成される。日本人の空間意識の間には、余白という無規定性あるいは非相称性が含まれる。
では、どこから日本人の間の発想が生じたのか。間の意識の根底には、日本人が自分と他人との関係を非常に重視する思想があるだろう。本来は人々の世界という意味の人間(じんかん)を日本人は人間(にんげん)という意味に転換させたが、それも、人と人との間柄のなかに人は存在しているという意識の表れだった。相手と自分の微妙な間柄を表現する謙譲語や敬語が異常に発達したのも日本語の特徴である。あるいは世の中を意味する世間ということばを、自己と世の中の間の社会関係として世間体などと使うのも、他者の目をつねに意識する日本人の社会心理である。このような相手と自分の間柄(間合い)を重視する土着的な日本人の意識が、人間関係の微妙さを表現するさまざまの文化を生み、空間や時間の間に、西洋にはない不規則性や無規定性などの微妙な変化を鑑賞する日本の伝統文化を創造したとみることができよう。
[熊倉功夫]
『西山松之助他著『日本人と「間」――伝統文化の源泉』(1981・講談社)』▽『南博編『間の研究――日本人の美的表現』(1983・講談社)』▽『井上忠司著『世間体の構造』(1979・日本放送出版協会)』
間(長さの単位)
けん
尺貫法の長さの単位。6尺をいう。約1.818メートル。間は元来単位ではなく、建物の柱間を意味していた。したがって一定の長さをとることはなく、設計しだいであった。土地の場合は時の政権の方針で伸縮され、豊臣(とよとみ)秀吉はそれまでの6尺5寸間を6尺3寸間に改めて検地を行っている。6尺が1間に定着したのは江戸時代であり、それでも実際に用いる間尺はまちまちであった。1891年(明治24)度量衡法によって正式に6尺と定められた。
[小泉袈裟勝]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
間
ま
日本音楽の用語。間拍子ともいう。リズム,拍節,テンポなどを示す。 (1) リズム 音と音との間の意味であるが,特に打楽器的性格をもつ邦楽器演奏においては,間隔の微妙な伸縮の取り方が重視される。リズム感のよしあしを示すのに「間がよい」「間が悪い」という。特に謡曲では拍子合 (ひょうしあい) の謡において詞型の基本である七・五調のほか,字余り,字足らずの句も8拍子に納めるために,謡出しの位置を変えて拍節を一貫させるが,そのために各句の直前に生じる空白部分を間といい,それぞれ半声 (はんせい) の間,本間,ヤの間,ヤアの間などの名称がある。 (2) 拍節 近世邦楽の基本の1拍子 (2拍) における第1拍を表間 (おもてま) ,第2拍を裏間という。 (3) テンポ 地歌箏曲の拍子の取り方に,「小間 (こま) 」と小間の1拍を倍の拍に取るゆっくりした「大間 (おおま) 」とがある。速度の速い場合「早間」という。小唄は端唄などよりテンポが速いということから「早間小唄」あるいは「早間」ともいわれた。
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間【けん】
(1)尺貫法の長さの単位。おもに土地,建物などに使用。尺の実質的な長さが時代によって異なるため,尺と間の関係もそれに応じて変化しているが,1891年(明治24年)制定の度量衡法では1間=6尺(約1.818m)とされた。(2)日本建築の柱間(はしらま),すなわち柱と柱との間。たとえば三十三間堂は柱間が33あるための呼称。
間【ま】
日本の音楽,舞踊,演劇などの用語。拍と拍との時間的間隔。転じてリズムやテンポの意にも用いられる。(1)拍の単位の意。伝統的な音楽で1つの拍子を2分割した場合に,第1拍を〈表間〉,第2拍を〈裏間〉という。(2)リズムの意。〈間がのびる〉などという。(3)テンポの意。テンポの早いことを〈早間〉という。
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間
けん
長さの単位。主として建築や土地測量で用いられた。元来建物の柱間(はしらま)の基準として6尺を1歩(ぶ)とする単位が用いられていたが,歩が6尺四方を表す面積単位に転用されるようになると,かわって間合いを意味する間の字が単位となった。尺の長さの伸長に応じて間の表す長さは変化し,また中世・近世の検地では,権力者の政策的意図により6尺5寸あるいは6尺3寸を1間として検地を行った。ただし基本は1間=6尺であり,曲尺(かねじゃく)で約1.82mにあたる。
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間(かん)
五線譜の線で引かれた線と線の間のこと。下から第一間、第二間と上に数え,全部で四間ある。又、第一線より下は下(しも)一間、五線より上は上一間。
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けん【間】
尺貫法の長さの単位。1間は6尺。約1.818m。日本古来の単位で、主に土地・建物などに用いた。現在では、商取引上での使用が禁止されている。
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世界大百科事典(旧版)内の間の言及
【石見検地】より
…江戸幕府の代官頭大久保石見守長安が実施した検地。徳川家康の関東入国以来,[大久保長安]は1590年(天正18)9月武蔵国多摩郡経久郷(府中市)の検地を上限として検地を行うが,石見検地という場合,通常は慶長年間(1596‐1615)に武蔵,甲斐,美濃,越後,石見などに実施した検地をいう。石見検地は300歩を1反とし,従来の1間=6尺5寸を6尺1分に短縮し打ち出しの強化をはかったが,反面地域によっては旧来の貫文制を踏襲した検地も行った。…
【検地竿】より
…間竿(けんざお)ともいう。太閤検地以来,検地の際に使用された測量用具で,検地のことを竿入・竿打などともいった。…
【検地条目】より
…太閤検地も当初はまだ従来の慣習を踏襲するところがあったが,数年の施行過程をへてしだいに統一規準を設ける方向にすすみ,1589年(天正17)には検地条目の体裁をもった秀吉朱印状が出された。これは5間×60間=300歩を1反とすること,上田は京枡1石5斗(約270.6l),以下2斗(約36.1l)下り,上畑は1石2斗,以下2斗下りなどの斗代とすること,検地役人の非法禁止など,将来の検地条目の根幹となる内容5ヵ条からなっている。その後検地条目は毎年のように出されていき,最もまとまった94年(文禄3)の12ヵ条に至っている。…
【尺】より
…したがって1尺は約30.303cmであり,分量単位は1/10尺の寸,以下十進法による分(ぶ),厘,毛である。倍量単位は寸法用と距離・間隔用に分かれ,寸法用の倍量単位は10尺に等しい丈,距離用の倍量単位は6尺の間(けん),60間の町,36町の里である。(2)鯨尺の尺。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」